行列式を定義するための準備として、順列の置換とその符号について解説します。
順列の置換は全単射と同一視できるため、複数の置換の合成写像を定義できます。これを置換の積と呼びます。置換の積の符号は、置換の符号どうしの積と一致します。
行列式を定義した上で、その基本的な性質について解説します。
正方行列の2つの行(列)を入れ替えると、その前後において、行列式の値は符号だけが変化します。以上の事実を利用すると、同じ行(列)を持つ正方行列の行列式の値はゼロになることが示されます。
正方行列の1つの行(列)のすべての成分をk倍すると、その前後において、行列式の値はk倍になります。以上の事実は、正方行列のある行(列)が共通因数を持つ場合、それを行列式の外にくくり出せることを同時に意味します。
行列式の1つの行(列)のそれぞれの成分が2つの実数の和に分解されているならば、この行列式を、それぞれの数を成分とする2つの行列式の和に分解できます。また、1つの行(列)の定数倍を別の行(列)に加えても、行列式の値は変化しません。
次数nの正方行列の行列式を計算するプロセスを、n個の次数n-1の正方行列の行列式を計算するプロセスへと簡略化できる根拠を与えるのが余因子展開です。
準備中
変数の個数と1次方程式の個数が等しい連立1次方程式に関しては、一定の条件のもとで、行列式を用いることにより解を求めることができます。
以下の分野の知識があると本節の内容を円滑に学習できます。
実数を特徴づける公理を出発点とした上で、実数空間上に定義された演算、順序、そして実数の連続性などについて議論します。さらに、数列や収束列、実数空間上の位相、実数空間上に定義された関数の性質などについて議論します。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での土台になります。
ユークリッド空間上の無限個の点を順番に並べたものを点列と呼びます。点列は実数列を一般化した概念です。ここでは点列が収束することの意味を定義した上で、収束点列の性質について解説します。
実数空間もしくはその部分集合を定義とし、ユークリッド空間を終集合とする写像を曲線やベクトル値関数などと呼びます。ここでは曲線の収束や連続性などについて解説します。
多変数関数(スカラー場)という概念を定義するとともに、多変数関数が有限な実数へ収束すること、および連続であることの意味を定義した上で、連続な多変数関数の性質について解説します。