囚人のジレンマと呼ばれるクラスのゲームおよびその具体例について解説します。
これまではプレイヤーたちが同一の利得関数を持つ囚人のジレンマについて考えてきましたが、状況を少し一般化して、プレイヤーたちが異なる利得関数を持つ場合の囚人のジレンマについて考えます。
冷戦期に行われた米ソ間の軍拡競争は囚人のジレンマとしての側面を持っていることを解説した上で、そこでのナッシュ均衡を求めます。また、両国の軍事負担が過大である場合、軍拡競争を鹿狩りゲーム(stag hunt)と解釈することもできます。
タバコメーカーによる広告競争は囚人のジレンマとして側面を持っていることを解説した上で、タバコ広告規制はメーカーにとっても望ましい政策であることを解説します。
オンラインで行われる試験は不正の監視が困難であることから、学生の間に囚人のジレンマに相当する戦略的相互依存関係が成立します。
対戦型のオンラインゲームにおいてチート行為が蔓延する理由は、その背景に囚人のジレンマであるような構造が存在するからです。
ボランティアのジレンマと呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
自身がわずかなコストを負担して全員に利益をもたらすか、もしくは他の人が行動するのかを待つか、以上の選択肢に直面したプレイヤーたちの間に成立する戦略的状況を描写するゲームをボランティアのジレンマと呼びます。
クールノー競争と呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
クールノー均衡では死荷重が発生します。つまり、同様の市場において完全競争が行われた場合の均衡と比較したとき、クールノー均衡では社会的余剰は最大化されません。
複占市場において両企業がカルテル通りに行動するか、もしくはカルテルをやぶってクールノー競争を行うかを選択する状況は囚人のジレンマであり、両企業がクールノー競争を行うことが支配戦略均衡になります。
クールノー競争において企業数が限りなく増えるにつれて企業間の競争が激化し、最終的にクールノー均衡は完全競争均衡へ限りなく近づいていきます。
クールノー競争が行われる複占市場において企業間の技術水準に差がある場合、すなわち企業間で限界費用に差がある場合にも、両企業の間の技術水準の差が十分小さい場合にはクールノー均衡が存在します。
クールノー競争と呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
同質財を供給する複占市場における企業間の価格競争をモデル化したゲームをベルトラン競争と呼び、ベルトラン競争におけるナッシュ均衡をベルトラン均衡と呼びます。
通常、独占市場や複占市場、寡占市場などの不完全競争市場において社会的余剰は最大化されません。一方、複占市場においてベルトラン競争が行われる場合には完全競争市場と同様に社会的余剰が最大化されます。こうした現象をベルトランのパラドクスと呼びます。
複占市場のプレイヤーである両企業にとって最良の結果は、カルテルを結んで独占均衡価格を維持することです。しかし、実際にはベルトラン競争(価格競争)を行うことが支配戦略均衡であるため、両社にとって効率的な結果が実現しません。
ベルトラン競争が行われる市場において企業数が1から2へ変化すると均衡価格が限界費用まで急激に下落して死荷重が喪失しますが、企業数をそれ以上増やした場合、均衡における各企業の供給量は企業数に逆比例する形で減少していく一方で、均衡価格や死荷重は変化しません。
等しい限界費用を持つ2つの企業がベルトラン競争を行う場合、均衡において両企業の利潤はゼロになります。一方、限界費用に差がある2つの企業がベルトラン競争を行う場合には、均衡において、相対的に効率的な企業は正の利潤を得られます。
ホテリングモデルと呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
2つの企業が商品を同一価格で販売している状況では、消費者は自分の好みに近い特性を持つ商品を購入します。消費者の好みが一様に分布している状況においては、均衡においてそれぞれの企業が供給する製品の特性が完全に一致し、結果として、製品差別化が行われないことになります。
商品の特性に対する消費者による好みの違いが線分上の分布として表現されるという想定のもと、ライバル関係にある2つの企業が商品の水平的差別化を行う状況をホテリングモデルとして定式化しましたが、同様のモデルを用いて企業間の商業立地を通じた競争を分析することができます。
美人投票と呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
プレイヤーたちが0から100までの実数を1つずつ投票し、全体の平均の2/3に最も近い数字を投票したプレイヤーが勝者として賞金を得るゲームを美人投票や平均の2/3の推測などと呼びます。美人投票をゲームとして定式化した上で、そのナッシュ均衡を求めます。
鹿狩りゲームと呼ばれる調整ゲームについて解説します。
調整ゲームの1つの典型例である鹿狩りゲーム(stag hunt)を定式化した上で、ナッシュ均衡を求めます。鹿狩りゲームでは複数均衡問題が発生するとともに、利得支配とリスク支配の間にトレードオフが成立します。
交渉ゲームと呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
資源量が所与である状況において2人のプレイヤーが取り分を同時に要求し、2人による要求量の和が資源量以下であれば各々は要求通りの取り分を得られる一方、要求量の和が総資源量を上回る場合には何も得られない、という構造のゲームをナッシュの要求ゲームと呼びます。
コモンズの悲劇と呼ばれるクラスのゲームについて解説します。
消費に競合性がある一方で排除不可能な商品やサービスをコモンズ(共有資源)と呼びます。集団がコモンズを共同で利用する場合、全員が過剰に資源を利用することが支配戦略均衡になり、結果として資源が枯渇してしまう問題をコモンズの悲劇と呼びます。
政治経済学におけるゲームの例、とりわけ投票行動に関する例について解説します。
1つの政治的争点をめぐって2人の候補者が選挙で争う場合、一定の条件のもとでは、2人の候補者はナッシュ均衡において中位投票者の至福点に等しい政策を公約として掲げます。これを中位投票者定理と呼びます。
本節では様々な種類のゲームについて解説しましたが、その理論的背景については以下から学ぶことができます。
完備情報の静学ゲームとは非協力かつ静学かつ完備情報であるようなゲームのことです。つまり、そこではプレイヤーたちの間に拘束的な合意は成立せず(非協力)、それぞれのプレイヤーは意思決定を行う際に他のプレイヤーたちが行った意思決定を事前に観察できず(静学)、なおかつゲームのルールはプレイヤーたちにとって共有知識です(完備情報)。完備情報ゲームにおける均衡概念はナッシュ均衡です。
不完備情報の静学ゲームとは非協力かつ静学かつ不完備情報であるようなゲームのことです。つまり、そこではプレイヤーたちの間に拘束的な合意は成立せず(非協力)、それぞれのプレイヤーは意思決定を行う際に他のプレイヤーたちが行った意思決定を事前に観察できず(静学)、なおかつ少なくとも1人のプレイヤーがゲームのルールに関して私的情報を持ちます(不完備情報)。不完備情報ゲームにおける均衡概念はベイジアンナッシュ均衡です。
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