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ゲーム理論におけるゲームの例

ダウンズの投票参加モデルと中位投票者定理

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有権者の選好関係に関する単峰性と対称性の仮定

ある1つの政治的争点に注目した場合、それに関連して選択し得る様々な政治的立場や政策を数直線\(\mathbb{R} \)上の点として一列に並べて表現することができます。具体例を挙げると、政府による「財政支出の規模」という争点に注目した場合、数直線上の左側の点により少ない財政支出に対応させ、右側の点により大きい財政支出を対応させることにより、採用し得る様々な財政支出の規模を数直線上の点として一列に並べることができます。

ある1つの政治的争点に注目した上で、それに関連して採用し得る政治的立場ないし政策からなる集合が\(X\subset \mathbb{R} \)として表現されているものとします。以降ではこれを政策集合と呼び、\(X\)の個々の要素を政策と呼びます。有権者はその争点に対して自身の意見を持っており、それは\(X\)上の政策どうしを比較する選好として表現されるものとします。有権者にとって集合\(X\)の中に最も望ましい政策が1つだけ存在するのであれば、それを至福点(bliss point)と呼びます。有権者\(i\)の至福点を\(\theta_{i}\in X\)で表記します。また、政策\(x\in X\)が実現した場合に有権者\(i\)が得る利得を\(u_{i}\left( x,\theta _{i}\right) \)で表記します。つまり、至福点\(\theta _{i}\)を持つ有権者\(i\)の利得関数は、\begin{equation*}u_{i}\left( \cdot ,\theta _{i}\right) :X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}と定義されるということです。有権者\(i\)にとって政策\(\theta _{i}\)が唯一の至福点であることは、\begin{equation*}\forall x\in X\backslash \left\{ \theta _{i}\right\} :u_{i}\left( \theta
_{i},\theta _{i}\right) >u_{i}\left( x,\theta _{i}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして表現されます。

加えて、有権者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{i}\right) \)は以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x,x^{\prime }\in X:x<x^{\prime }\leq \theta
_{i}\Rightarrow u_{i}\left( x^{\prime },\theta _{i}\right) >u_{i}\left(
x,\theta _{i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \forall x,x^{\prime }\in X:x>x^{\prime }\geq \theta
_{i}\Rightarrow u_{i}\left( x^{\prime },\theta _{i}\right) >u_{i}\left(
x,\theta _{i}\right) \\
&&\left( c\right) \ \forall x,x^{\prime }\in X:\left( \left\vert x^{\prime
}-\theta _{i}\right\vert =\left\vert x-\theta _{i}\right\vert \Rightarrow
u_{i}\left( x^{\prime },\theta _{i}\right) =u_{i}\left( x,\theta _{i}\right)
\right)
\end{eqnarray*}を満たすものとします。条件\(\left( a\right) ,\left( b\right) \)は、自身の至福点\(\theta _{i}\)以下の政策どうしを比較した場合には\(\theta _{i}\)に近い方を好み、\(\theta _{i}\)以上の政策どうしを比較した場合にも\(\theta _{i}\)に近い方を好むことを意味します。\(\left( a\right) \)と\(\left( b\right) \)を総称して単峰性(single peaked)の仮定と呼びます。条件\(\left(c\right) \)は、至福点\(\theta _{i}\)から等しい距離にある政策どうしを同じ程度好むことを意味します。\(\left( c\right) \)を対称性(symmetric)の仮定と呼びます。有権者の利得関数が単峰性と対称性を満たすこととは、その有権者は唯一の至福点を持つとともに、至福点により近い政策をより好むことを意味します。

例(単峰性と対称性)
政策集合が有界閉区間\(\left[ 0,1\right] \subset \mathbb{R} \)であるとともに、有権者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left(\cdot ,\theta _{i}\right) :\left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの政策\(x\in \left[0,1\right] \)に対して定める値が、\begin{equation*}u_{i}\left( x,\theta _{i}\right) =-\left\vert x-\theta _{i}\right\vert
\end{equation*}であるものとします。絶対値の定義より、\begin{equation*}
u_{i}\left( x,\theta _{i}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-x+\theta _{i} & \left( if\ x>\theta _{i}\right) \\
\theta _{i} & \left( if\ x=\theta _{i}\right) \\
x-\theta _{i} & \left( if\ x<\theta _{i}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。\(u_{i}\left( \cdot ,\theta_{i}\right) \)は点\(\theta _{i}\)において単独で最大値\(0\)をとり、\(x>\theta _{i}\)において狭義単調減少であり、\(x<\theta_{i}\)において狭義単調増加です。加えて、\(u_{i}\left(\cdot ,\theta _{i}\right) \)のグラフは\(x=\theta_{i}\)を中心に左右対称であるため、この有権者\(i\)の選好は単峰性と対称性を満たします。
例(単峰性と対称性)
政策集合が有界閉区間\(\left[ 0,1\right] \subset \mathbb{R} \)であるとともに、有権者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left(\cdot ,\theta _{i}\right) :\left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの政策\(x\in \left[0,1\right] \)に対して定める値が、\begin{equation*}u_{i}\left( x,\theta _{i}\right) =-\left( x-\theta _{i}\right) ^{2}
\end{equation*}であるものとします。\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{i}\right) \)は狭義凹関数であるとともに点\(x=\theta _{i}\)において単独で最大値\(0\)をとります。加えて、\(u_{i}\left( \cdot ,\theta_{i}\right) \)のグラフは\(x=\theta _{i}\)を中心に左右対称であるため、この有権者\(i\)の選好は単峰性と対称性を満たします。

 

中位投票者

有権者たちの至福点は政策集合\(X\)上の点としてそれぞれ表現されますが、その分布は連続型の確率変数\(\theta \)の確率分布として表現されるとともに、それは\(X\)上で連続かつ狭義の単調増加であるような分布関数\(F:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)として記述されるものと仮定します。つまり、点\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、至福点の値が\(x\)以下である有権者の割合が、\begin{equation*}\Pr \left( \theta \leq x\right) =F\left( x\right)
\end{equation*}で与えられるということです。一般に、確率変数\(\theta \)のメディアン(中央値)は、\begin{equation*}\Pr \left( \theta \leq x^{m}\right) \geq \frac{1}{2}\wedge \Pr \left( \theta
\geq x^{m}\right) \geq \frac{1}{2}
\end{equation*}を満たす点\(x^{m}\in \mathbb{R} \)として定義されますが、分布関数\(F\)が連続である場合には、\begin{equation*}F\left( x^{m}\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。さらに、分布関数\(F\)が狭義の単調増加関数である場合にはメディアン\(x^{m}\)が一意的に定まることが保証されます。

以上を踏まえた上で、メディアン\(x^{m}\)を至福点として持つ有権者を中位投票者(median voter)と呼びます。定義より、中位投票者の至福点\(x^{m}\)以下の至福点を持つ有権者の割合と、\(x^{m}\)以上の至福点を持つ有権者の割合はともに\(\frac{1}{2}\)になります。

例(中位投票者)
政策集合が有界閉区間\(\left[ 0,1\right] \subset \mathbb{R} \)であるとともに、有権者たちの至福点は\(\left[ 0,1\right] \)上の連続一様分布にしたがって分布しているものとします。つまり、分布関数\(F:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
x & \left( if\ 0\leq x<1\right) \\
1 & \left( if\ x\geq 1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるということです。このとき、\begin{equation*}
F\left( \frac{1}{2}\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}が成り立つため、メディアンは\(\frac{1}{2}\)です。したがって、中位投票者とは至福点が\(\frac{1}{2}\)であるような有権者に相当します。

 

ダウンズの投票参加モデル

選挙において1つの議席をめぐって2人の候補者が争っている状況を想定します。そこでは1つの政治的争点が問題になっており、その争点に関する政策集合が\(X\subset \mathbb{R} \)として与えられているものとします。また、それぞれの有権者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left( \cdot,\theta _{i}\right) :X\rightarrow \mathbb{R} \)は単峰性と対称性の仮定を満たすものとします。

2人の候補者\(1,2\)は有権者たちに対して自身の公約\begin{equation*}x_{1},x_{2}\in X
\end{equation*}をそれぞれ掲げます。候補者にとって重要なことは自分が当選することであり、そのためなら政策集合\(X\)上のいかなる政策をも公約として掲げることを厭わず、さらに、当選後には自身の公約を実施すること、すなわち公約にコミットするものと仮定します。また、それぞれの候補者は対立候補が掲げる公約を観察できない状態で自身の公約を決定しなければならない状況を想定します。

それぞれの有権者\(i\)は候補者たちが掲げる公約を観察した上で、自身により大きい利得をもたらす政策を公約として掲げる候補者へ投票するものとします。つまり、候補者たちが掲げる公約からなる組が\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)である場合、\begin{equation*}u_{i}\left( x_{1},\theta _{i}\right) >u_{i}\left( x_{2},\theta _{i}\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には候補者\(1\)へ投票しますが、逆に、\begin{equation*}u_{i}\left( x_{1},\theta _{i}\right) <u_{i}\left( x_{2},\theta _{i}\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には候補者\(2\)へ投票します。また、\begin{equation*}u_{i}\left( x_{1},\theta _{i}\right) =u_{i}\left( x_{2},\theta _{i}\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には等しい確率でどちらか一方の候補者へ投票するものと定めます。有権者はいずれも投票を棄権することはないものとします。

2人の候補者が選択する公約の組が\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in X^{2}\)である場合に候補者\(j\ \left( =1,2\right) \)が得る得票率を\(d_{j}\left( x_{1},x_{2}\right) \in \left[ 0,1\right] \)で表記します。この関数\begin{equation*}d_{j}:X^{2}\rightarrow \left[ 0,1\right] \end{equation*}はどのような形状をしているのでしょうか。有権者の選好は単峰性と対称性を満たすため、\(x_{1}<x_{2}\)の場合、2つの公約\(x_{1},x_{2}\)の中点\(\frac{x_{1}+x_{2}}{2}\)より小さい至福点を持つ有権者はいずれも候補者\(1\)へ投票する一方で、\(\frac{x_{1}+x_{2}}{2}\)より大きい至福点を持つ有権者はいずれも候補者\(2\)へ投票します。したがって、この場合には、\begin{eqnarray*}d_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) \\
d_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&1-F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right)
\end{eqnarray*}となります。\(x_{1}=x_{2}\)の場合、いずれの有権者にとっても2つの公約\(x_{1},x_{2}\)は同じ程度望ましいため、有権者は等しい確率でどちらか一方の候補者へ投票します。したがって、この場合には、\begin{equation*}d_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) =d_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}となります。\(x_{1}>x_{2}\)の場合、先と同様に考えることにより、\begin{eqnarray*}d_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&1-F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) \\
d_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right)
\end{eqnarray*}となります。

特筆すべきは、それぞれの候補者\(j\)が得る得票率\(d_{j}\left( x_{1},x_{2}\right) \)は2人の候補者が選択する公約\(x_{1},x_{2}\)をともに変数として持っているという点です。つまり、候補者\(1\)は自身の公約\(x_{1}\)を変化させることを通じて自身の得票率を変化させることができますが、同時に、対立候補\(2\)が選択する公約\(x_{2}\)もまた候補者\(1\)の得票率に影響を与えます。候補者\(2\)の立場からも同様のことが言えます。つまり、それぞれの候補者にとって、自身の得票率は自身の行動だけでなく相手の行動によっても左右されるという意味において、2人の候補者の間には戦略的相互依存関係が成立しています。このような事情もあり、候補者による意思決定はゲーム理論の分析対象となります。

投票の結果、得票率がより多い候補者が当選し、得票率がより少ない候補者が落選します。2人の得票率が等しい場合には引き分けとします。候補者にとって最も望ましい結果は自身の当選であり、2番目に望ましい結果は引き分けであり、最も望ましくない結果は自身の落選であるものとします。

このような状況においてそれぞれのそれぞれの候補者はどのような意思決定を行うでしょうか。以上のような問題をダウンズモデル(Downsian model)やダウンズの投票参加モデル(Downsian model of electral participation)、ダウンズの空間モデル(Downsian spatial model)、近接性モデル(proximity model)などと呼びます。これは米国の政治学者アンソニー・ダウンズ(Anthony Downs)が1957年に発表したモデルです。

 

完備情報の静学ゲームとしてのダウンズの投票参加モデル

ダウンズモデルが想定する状況を2人の候補者をプレイヤーとするゲームと解釈します。2人の候補者はそれぞれの独立に意思決定を行う状況を想定しているため、ダウンズモデルは非協力ゲームです。さらに、2人の候補者はお互いに相手が掲げる公約を観察できない状態で自身の公約を決定する必要があるため、ダウンズモデルは静学ゲームです。また、有権者たちの利得関数と行動原理、至福点の分布、至福点のメディアン、さらに両候補者の目的が自身の当選であることなど、ゲームのルールの要素が両候補者にとって共有知識であれば、ダウンズモデルは完備情報ゲームです。

そこで、ダウンズモデルを以下のような戦略型ゲーム\(G\)としてモデル化します。まず、ゲームのプレイヤー集合は\(I=\left\{ 1,2\right\} \)です。ただし、\(i\in I\)は候補者\(i\)を表します。また、候補者\(i\)の純粋戦略集合を\(X\subset \mathbb{R} \)と定めます。つまり、それぞれの候補者\(i\)は何らかの政策\(x_{i}\in X\)を選択します。プレイヤー\(i\)の利得関数\(u_{i}:X^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)として様々な可能性がありますが、ここでは、自身が当選した場合の利得を\(1\)、引き分け場合の利得を\(0\)、自身が落選した場合の利得を\(-1\)と定めます。つまり、候補者たちが選択する政策からなる組\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X^{2}\)に対してプレイヤー\(i\)の利得関数\(u_{i}\)が定める値は、\begin{equation*}u_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) >\frac{1}{2}\right) \\
0 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{1}{2}\right) \\
-1 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) <\frac{1}{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。ただし、\(d_{i}:X^{2}\rightarrow \left[ 0,1\right] \)は候補者\(i\)の得票率を特定する関数であり、これはそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in X^{2}\)に対して、\begin{equation*}d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) & \left( if\ x_{i}<x_{j}\right) \\
\frac{1}{2} & \left( if\ x_{i}=x_{j}\right) \\
1-F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) & \left( if\ x_{i}>x_{j}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。また、\(F:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は\(X\)の点を値としてとり得る連続型の確率変数\(\theta \)の確率分布を記述する分布関数であり、\(X\)上で連続かつ狭義の単調増加関数であるものとします。

 

ダウンズの投票参加モデルにおけるナッシュ均衡(中位投票者定理)

ダウンズモデルには以下のような純粋戦略ナッシュ均衡が存在します。

命題(ダウンズモデルの純粋戦略ナッシュ均衡)
戦略型ゲーム\(G\)のプレイヤー集合は\(I=\left\{ 1,2\right\} \)であり、それぞれのプレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略集合は\(X\subset \mathbb{R} \)であり、利得関数\(u_{i}:X^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in X^{2}\)に対して、\begin{equation*}u_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) >\frac{1}{2}\right) \\
0 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{1}{2}\right) \\
-1 & \left( if\ d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) <\frac{1}{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\(d_{i}:X^{2}\rightarrow \left[ 0,1\right] \)はそれぞれの\(\left(x_{1},x_{2}\right) \in X^{2}\)に対して、\begin{equation*}d_{i}\left( x_{1},x_{2}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) & \left( if\ x_{i}<x_{j}\right) \\
\frac{1}{2} & \left( if\ x_{i}=x_{j}\right) \\
1-F\left( \frac{x_{1}+x_{2}}{2}\right) & \left( if\ x_{i}>x_{j}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める。また、\(F:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は\(X\)の点を値としてとり得る連続型の確率変数\(\theta \)の確率分布を記述する分布関数であり、\(X\)上で連続かつ狭義単調増加であるものとする。このゲーム\(G\)には狭義の純粋戦略ナッシュ均衡\(\left(x_{1}^{\ast },x_{2}^{\ast }\right) \)が存在し、それは、\begin{equation*}x_{1}^{\ast }=x_{2}^{\ast }=x^{m}
\end{equation*}を満たす。ただし、\(x^{m}\)は\(\theta \)のメディアンである。
証明

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ダウンズモデルには純粋戦略ナッシュ均衡が存在するとともに、2人の候補者はともに均衡において中位投票者の至福点に等しい政策を公約として掲げることが明らかになりました。したがって、2人の候補者は均衡において等しい得票を得ます。有権者の選好が単峰性と対称性を満たす場合、有権者は自身の至福点に近い公約を掲げる候補者に投票します。その場合、均衡において2人の候補者が掲げる公約は中位投票者の至福点に一致し、結果として、政策面で差別化が行われないことになります。このような現象を中位投票者定理(median voter theorem)と呼びます。

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