n次元空間
有限n個の実数空間の直積集合をn次元空間と呼びます。これは実数のn組(成分が実数であるようなn次元ベクトル)をすべて集めてできる集合です。
有限個の実数空間の直積であるn次元空間上にベクトル加法やスカラー乗法などの演算を定義した上で、これがベクトル空間としての性質を満たすことを示します。さらに、内積やノルムなどの概念も導入します。
有限n個の実数空間の直積集合をn次元空間と呼びます。これは実数のn組(成分が実数であるようなn次元ベクトル)をすべて集めてできる集合です。
n次元空間の2つの点 x,y が与えられたとき、それらの対応する成分どうしを足すことにより得られる新たな点をxとyのベクトル和と呼びます。ベクトル和を与える演算をベクトル加法と呼びます。
ベクトル加法を用いてベクトル減法と呼ばれる演算を間接的に定義します。
係数として実数空間を採用した上で、それとn次元空間の上にスカラー乗法と呼ばれる演算を定義します。
実数空間をスカラー場とするn次元空間上に定義されたスカラー乗法を用いて、スカラー除法と呼ばれる演算を間接的に定義します。
実数空間をスカラー場とするn次元空間上にベクトル加法とスカラー乗法を定義したとき、これを実ベクトル空間と呼びます。
実ベクトル空間上にノルムという概念を導入すると、その空間はノルム空間としての性質を満たすことが示されます。つまり、ノルムは非負性、定性、斉次性、劣加法性を満たします。
実ベクトル空間上に内積と呼ばれる概念を導入したとき、その空間は内積空間としての性質を満たします。つまり、内積は非負性、定性、第一引数に関する加法性および斉次性、そして対称性を満たします。
n次元空間上に順序や狭義順序などの二項関係を定義し、そこから最大元や最小元、上界や下界、上限や下限などの概念を定義します。
n次元空間上に定義される標準的順序と呼ばれる二項関係は半順序である一方で全順序ではありません。
n次元空間上に定義される標準的狭義順序と呼ばれる二項関係は狭義順序である一方で狭義全順序ではありません。
n次元空間の非空な部分集合に対して、その最大元や最小元を定義します。最大元や最小元は存在するとは限りませんが、存在する場合にはそれぞれ一意的です。
n次元空間上の非空な部分集合に対して、その極大元や極小元を定義します。1次元空間においてこれらは最大元や最小元と等しい概念ですが、多次元空間において両者は異なる概念です。
n次元空間上の非空な部分集合に対して、その上界や下界を定義します。n次元空間の部分集合が上界と下界をともに持つとき、その集合は有界であると言います。有界であることは直方体やノルムなど様々な概念を用いて表現可能です。
n次元空間上の非空な部分集合に対して、その上限や下限を定義します。上に有界な点集合には上限が、下に有界な点集合には下限がそれぞれ存在します。
スカラー場として実数空間を採用した上で、n次元空間上にベクトル加法、スカラー乗法、順序などを定義したとき、これらは順序ベクトル空間としての性質を満たします。これを実順序ベクトル空間と呼びます。
n次元空間上の2つの点の間のユークリッド距離と呼ばれる概念を定義します。
n 次元空間上にユークリッド距離と呼ばれる概念を定義するとき、その空間を n 次元ユークリッド空間と呼びます。ユークリッド距離は絶対値を一般化した概念です。
ユークリッド距離を用いて、ユークリッド空間の部分集合どうしの距離や、部分集合と点の間の距離などを定義します。
ユークリッド距離を用いて、ユークリッド空間の部分集合の直径を定義します。集合が有界であることと、その集合の直径が有限な実数であることは必要十分です。
ユークリッド空間の部分集合が有界であることの意味は、標準的順序という概念を前提にせずとも、距離を用いて表現できることを示します。
ユークリッド空間上に存在する点の位置を特定するために点に対して座標を付与するルールを座標系と呼びます。
空間上に存在する点の位置を特定するために、それぞれの点に対して付与される数の組を座標と呼びます。最も基本的な座標系である直交座標系について解説します。
平面上に存在する点の位置を特定するために、それぞれの点に対して動径と偏角を成分とする座標を付与する座標系を極座標系と呼びます。
空間上に存在する点の位置を特定するために、それぞれの点に対して動径と方位角と高さを成分とする座標を付与する座標系を円筒座標系と呼びます。
空間上に存在する点の位置を特定するために、それぞれの点に対して動径と方位角と極角を成分とする座標を付与する座標系を球面座標系と呼びます。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での基礎になります。
ユークリッド空間上の無限個の点を順番に並べたものを点列と呼びます。点列は実数列を一般化した概念です。ここでは点列が収束することの意味を定義した上で、収束点列の性質について解説します。
ユークリッド距離をもとにユークリッド空間上の開集合と呼ばれる概念を定義した上で、その性質や、関連する概念などについて解説します。
実数空間もしくはその部分集合を定義とし、ユークリッド空間を終集合とする写像を曲線やベクトル値関数などと呼びます。ここでは曲線の収束や連続性などについて解説します。
多変数関数(スカラー場)という概念を定義するとともに、多変数関数が有限な実数へ収束すること、および連続であることの意味を定義した上で、連続な多変数関数の性質について解説します。
本節では多変数のベクトル値関数(ベクトル場)が収束することの意味や、連続であることの意味を解説します。本節で得られる知識は後に多変数のベクトル値関数の微分について学ぶ際の前提知識となります。