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ユークリッド空間

n次元空間

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ベクトル加法

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n次元空間

有限\(n\)個の実数空間\(\mathbb{R} \)の直積集合を、\begin{eqnarray*}\mathbb{R} ^{n} &=&\mathbb{R} \times \cdots \times \mathbb{R} \\&=&\{\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \ |\ \forall i\in \left\{ 1,\cdots
,n\right\} :x_{i}\in \mathbb{R} \}
\end{eqnarray*}で表記し、これを\(n\)次元空間(\(n\)-dimensional space)やユークリッド\(n\)空間(Euclidean \(n\) space)などと呼びます。

\(n\)次元空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の要素\(\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \)を、\begin{equation*}\boldsymbol{x}=\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
\end{equation*}と表記できるものと定めます。\(\mathbb{R} ^{n}\)の要素を\(\mathbb{R} ^{n}\)の(point)やベクトル(vector)、もしくは行ベクトル(row vector)などと呼びます。

ベクトル\(\boldsymbol{x}\in \mathbb{R} ^{n}\)を構成する個々の実数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)をベクトル\(\boldsymbol{x}\)の成分(component)や座標(coordinate)などと呼びます。

ベクトル\(\boldsymbol{x}\in \mathbb{R} ^{n}\)の成分を縦に並べて、\begin{equation*}\boldsymbol{x}=\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
\vdots \\
x_{n}\end{array}\right)
\end{equation*}と表記してもよいものと定めます。これを列ベクトル(column vector)と呼びます。行ベクトルと列ベクトルは厳密には区別されるべき概念ですが、以降では特に断りのない限り、両者は交換可能であるものとします。

例(1次元空間)
\(1\)次元ベクトルは実数と一致するため、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{1}=\mathbb{R} \end{equation*}が成り立ちます。\(1\)次元空間は実数空間と一致するということです。したがって、\begin{eqnarray*}1 &\in &\mathbb{R} ^{1} \\
-3 &\in &\mathbb{R} ^{1} \\
\frac{1}{3} &\in &\mathbb{R} ^{1}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。\(\mathbb{R} ^{1}\)の点\(x\)は数直線上の点として表現することができます。
例(2次元空間)
\(2\)次元ベクトルは2つの実数を成分として持つベクトルであるため、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{2}=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \ |\ x_{1}\in \mathbb{R} \wedge x_{2}\in \mathbb{R} \}\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
\left( 1,2\right) &\in &\mathbb{R} ^{2} \\
\left( -3,1\right) &\in &\mathbb{R} ^{2} \\
\left( \frac{1}{2},-7\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。\(\mathbb{R} ^{2}\)の点\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)は平面上の点として表現することができます。
例(3次元空間)
\(3\)次元ベクトルは3つの実数を成分として持つベクトルであるため、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{3}=\{\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \ |\ x_{1}\in \mathbb{R} \wedge x_{2}\in \mathbb{R} \wedge x_{3}\in \mathbb{R} \}\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
\left( 1,0,2\right) &\in &\mathbb{R} ^{3} \\
\left( 1,-3,4\right) &\in &\mathbb{R} ^{3} \\
\left( \frac{1}{3},-8,-\frac{2}{3}\right) &\in &\mathbb{R} ^{3}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。\(\mathbb{R} ^{3}\)の点\(\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \)は空間上の点として表現することができます。
例(4次元空間)
\(4\)次元ベクトルは4つの実数を成分として持つベクトルであるため、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{4}=\{\left( x_{1},x_{2},x_{3},x_{4}\right) \ |\ x_{1}\in \mathbb{R} \wedge x_{2}\in \mathbb{R} \wedge x_{3}\in \mathbb{R} \wedge x_{4}\in \mathbb{R} \}\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
\left( 1,0,2,1\right) &\in &\mathbb{R} ^{4} \\
\left( 1,-3,4,-1\right) &\in &\mathbb{R} ^{4} \\
\left( \frac{1}{3},-8,-\frac{2}{3},\pi \right) &\in &\mathbb{R} ^{4}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。\(\mathbb{R} ^{4}\)の点\(\left( x_{1},x_{2},x_{3},x_{4}\right) \)を視覚的に表現することはできません。

 

等しい点

2つのベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)が同一次元の空間に属するとともに対応する成分がすべて等しい場合には\(\boldsymbol{x}\)と\(\boldsymbol{y}\)は等しい(equal)といい、そのことを、\begin{equation*}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}
\end{equation*}で表記します。つまり、2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\boldsymbol{x} &=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \in \mathbb{R} ^{n} \\
\boldsymbol{y} &=&\left( y_{1},\cdots ,y_{m}\right) \in \mathbb{R} ^{m}
\end{eqnarray*}を等しいこととは、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ n=m \\
&&\left( b\right) \ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :x_{i}=y_{i}
\end{eqnarray*}がともに成り立つこととして定義されます。

2つのベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)が等しくない場合には、そのことを、\begin{equation*}\boldsymbol{x}\not=\boldsymbol{y}
\end{equation*}で表記します。つまり、2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\boldsymbol{x} &=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \in \mathbb{R} ^{n} \\
\boldsymbol{y} &=&\left( y_{1},\cdots ,y_{m}\right) \in \mathbb{R} ^{m}
\end{eqnarray*}を等しくないこととは、\begin{equation*}
n\not=m
\end{equation*}が成り立つか、もしくは、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ n=m \\
&&\left( b\right) \ \exists i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :x_{i}\not=y_{i}
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを意味します。

例(等しい点)
ベクトル\(\left( 1,1\right) \)は\(\mathbb{R} ^{2}\)の要素である一方で、ベクトル\(\left( 1,1,1\right) \)は\(\mathbb{R} ^{3}\)の要素です。つまり、これらのベクトルは属する空間に属しているため、\begin{equation*}\left( 1,1\right) \not=\left( 1,1,1\right)
\end{equation*}となります。

例(等しい点)
ベクトル\(\left( 1,1\right) \)とベクトル\(\left( \frac{2}{2},\frac{3}{3}\right) \)はともに\(\mathbb{R} ^{2}\)の要素であるとともに\(1=\frac{2}{2}\)かつ\(1=\frac{3}{3}\)が成り立つため、\begin{equation*}\left( 1,1\right) =\left( \frac{2}{2},\frac{3}{3}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

例(等しい点)
ベクトル\(\left( 1,2,3\right) \)とベクトル\(\left( 2,1,3\right) \)はともに\(\mathbb{R} ^{3}\)の要素であるとともに、同じ実数\(1,2,3\)を成分として持っています。ただ、対応する成分が等しくないため、これらは異なるベクトルです。つまり、\begin{equation*}\left( 1,2,3\right) \not=\left( 2,1,3\right)
\end{equation*}です。同一次元の空間に属し同じ数を成分として持つ場合でも、成分の並び方が変われば異なるベクトルとみなされるということです。

例(等しい点)
\(\left( x-y,x+y,z\right) =\left( 4,2,1\right) \)が成り立つものとします。すると、ベクトルの相等の定義より、\begin{eqnarray*}x-y &=&4 \\
x+y &=&2 \\
z &=&1
\end{eqnarray*}がすべて成り立ちます。これを解くと、\begin{equation*}
\left( x,y,z\right) =\left( 3,-1,1\right)
\end{equation*}を得ます。

 

演習問題

問題(等しい点)
以下のそれぞれの主張は正しいですか。理由とともに答えてください。

  1. \(\left( 0,0\right) \)と\(\left( 0,0,0\right) \)は等しいベクトルである。
  2. \(\left( 1,2\right) \)と\(\left( 2,1\right) \)は等しいベクトルである。
  3. \(\left( 1,2,3\right) \)と\(\left( \frac{2}{2},\frac{4}{2},\frac{6}{2}\right) \)は等しいベクトルである。
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問題(等しい点)
\(\mathbb{R} ^{3}\)の要素である以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}&&\left( x-y,x+y,z-1\right) \\
&&\left( 4,2,3\right)
\end{eqnarray*}が一致するための条件を求めてください。

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問題(座標軸上ないし平面上の点)
3次元空間上の点\(\left(x,y,z\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)について以下の問いに答えてください。

  1. \(\left( x,y,z\right) \)が\(x\)軸上の点であるための条件を特定してください。
  2. \(\left( x,y,z\right) \)が\(y\)軸上の点であるための条件を特定してください。
  3. \(\left( x,y,z\right) \)が\(y\)軸上の点であるための条件を特定してください。
  4. \(\left( x,y,z\right) \)が\(xy\)平面上の点であるための条件を特定してください。
  5. \(\left( x,y,z\right) \)が\(xz\)平面上の点であるための条件を特定してください。
  6. \(\left( x,y,z\right) \)が\(yz\)平面上の点であるための条件を特定してください。
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