ユークリッド空間上の非空な部分集合に対して、その極大元や極小元を定義します。1次元ユークリッド空間においてこれらは最大元や最小元と等しい概念ですが、多次元ユークリッド空間においては異なる概念です。

2019年6月16日:公開

極大元・極小元

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)について、そのある点\(a\)よりも大きい点が\(A\)の中に存在しないならば、つまり、\begin{equation*}
\exists a\in A,\ \forall x\in A:\lnot \left( a<x\right)
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の極大元(maximal element)と呼びます。

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)について、そのある点\(a\)よりも小さい点が\(A\)の中に存在しないならば、つまり、\begin{equation*}
\exists a\in A,\ \forall x\in A:\lnot \left( x<a\right)
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の極小元(minimal element)と呼びます。

定義より、\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)の極大元や極小元はいずれも\(A\)の要素でなければなりません。

例(極大元・極小元)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合である区間\(\left[ 0,1\right] \)に属する点\(1\)と任意の\(x\in \left[ 0,1\right] \)の間には\(x<1\)という関係は成り立たないため、\(\left[ 0,1\right] \)の極大元は\(1\)です。\(\left[ 0,1\right] \)の極小元が\(0\)であることも同様にして示されます。
例(極大元・極小元)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{2}\)の非空な部分集合\begin{equation*}
A=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ -1\leq x_{1}\leq 1,\ -1\leq x_{2}\leq 1\}
\end{equation*}について考えます。\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) =\left( 1,1\right) \)に注目すると、\(A\)の任意の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \in A\)に対して\(a_{1}<x_{1}\)と\(a_{2}<x_{2}\)はいずれも成り立たないため、\(a<x\)は成り立ちようがありません。したがって\(a\)は\(A\)の極大元です。同様に、\(A\)の点\(b=\left( -1,-1\right) \)が\(A\)の極小元であることが示されます。

 

極大元・極小元の同値表現

極大元や極小元を以下のように表現することもできます。

命題(極大元・極小元の言い換え)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の非空な部分集合\(A\)について、ある点\(a\in A\)が存在して、\begin{equation*}
\forall x\in A:\left( a\leq x\ \Rightarrow \ a=x\right)
\end{equation*}が成り立つことは\(a\)が\(A\)の極大元であるための必要十分条件であり、\begin{equation*}
\forall x\in A:\left( x\leq a\Rightarrow x=a\right)
\end{equation*}が成り立つことは\(a\)が\(A\)の極小元であるための必要十分条件である。
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つまり、\(A\)のある点\(a\)について、\(a\)以上であるような\(A\)の任意の点が\(a\)と等しいことは、\(a\)が\(A\)の極大元であるための必要十分条件です。一方、\(a\)以下であるような\(A\)の任意の点が\(a\)と等しいことは、\(a\)が\(A\)の極小元であるための必要十分条件です。

 

極大元・極小元は存在するとは限らない

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合の最大元や最小元と同様に、極大元や極小元もまた存在するとは限りません。以下の例から明らかです。

例(極大元・極小元)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合である区間\(\left( 0,1\right) \)に極大元\(a\)が存在するものと仮定します。極大元の定義より\(a\)は\(\left( 0,1\right) \)の要素ですから\(0<a<1\)であると同時に、\(0<x<1\)を満たす任意の\(x\in \mathbb{R}\)に対して\(a<x\)は成り立ちません。このとき、限りなく小さい\(\varepsilon >0\)をとれば\(0<a+\varepsilon <1\)が成り立ちますが、これは、\(a\)よりも大きい\(\left( 0,1\right) \)の要素\(a+\varepsilon \)が存在することを意味しており、それは\(a\)が\(\left( 0,1\right) \)の極大元であることと矛盾します。したがって\(\left( 0,1\right) \)には極大元が存在しません。\(\left( 0,1\right) \)に極小元が存在しないことも同様に示されます。

 

多次元ユークリッド空間の部分集合の極大元・極小元は一意的とは限らない

\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合が極大元や極小元を持つ場合には、それらはそれぞれ一意的に定まります。

命題(1次元ユークリッド空間における最大元・最小元の一意性)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合\(A\)が極大元もしくは極小元を持つ場合には、それらはそれぞれ一意的に定まる。
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上の命題の証明では、\(\mathbb{R}\)上に定義された大小関係\(\leq \)が完備律を満たすという事実が大きな役割を果たします。一方、\(2\)次元以上のユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)上に定義された順序\(\leq \)は完備律を満たさないため、\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合の極大元や極小元に関して同様の証明戦略は使えません。そして、以下の例から明らかであるように、\(2\)次元以上のユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)に関しては、その非空な部分集合が極大元や極小元を持つとき、それらは一意的に定まるとは限りません。

例(極大元・極小元)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{2}\)の非空な部分集合\begin{equation*}
A=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\}
\end{equation*}について考えます。\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \)の中でも\(a_{1}\geq 0\)かつ\(a_{2}\geq 0\)かつ\(a_{1}^{2}+a_{2}^{2}=1\)を満たすものは無限個存在しますが、その中から 1 つの点\(a\)を任意に選びます。この\(a\)とは異なる\(A\)の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)を任意に選ぶと、これと\(a\)の間に\(a<x\)は成り立たないため、\(a\)は\(A\)の極大元です。このような\(a\)は無限個存在するため、\(A\)は無限個の極大元を持ちます。\(A\)が無限個の極小元を持つことも同様にして示すことができます。

 

極大元と最大元の関係・極小元と最小元の関係

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合に最大元が存在する場合には、それは同時に一意的な極大元です。また、最小元は同時に一意的な極小元です。

命題(最大元は極大元・最小元は極小元)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の非空な部分集合\(A\)について以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \max A\text{が存在するならば、それは}A\text{の一意的な極大元である。} \\
&&\left( b\right) \ \min A\text{が存在するならば、それは}A\text{の一意的な極小元である。}
\end{eqnarray*}
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\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)に話を限定すると、先に示したように、その部分集合の極大元や極小元が存在する場合にはそれらはそれぞれ一意的です。さらに、上の命題の主張とは逆に、極大元は同時に最大元になり、極小元は同時に最小限になります。

命題(極大元は最大元・極小元は最小元)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合\(A\)について以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\text{の極大元が存在するならば、それは}\max A\text{である。} \\
&&\left( b\right) \ A\text{の極小元が存在するならば、それは}\min A\text{である。}
\end{eqnarray*}
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上の 2 つの命題から以下が導かれます。

系(極大元と最大元・極小元と最小元の関係)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合\(A\)について以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\text{の極大元と}\max A\text{は一致する。} \\
&&\left( b\right) \ A\text{の極小元と}\min A\text{は一致する。}
\end{eqnarray*}

一方、\(2\)次元以上のユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)においては、その部分集合の極大元はそもそも一意的に定まるとは限りませんし、極大元が存在する場合でもそれは最大元であるとは限りません。したがって、多次元のユークリッド空間において、その部分集合の極大元と最大元は概念として一致しません。最大元は極大元ですが、極大元は最大元であるとは限りません。極小元と最小元の関係についても同様です。この事実は以下の例からも確認できます。

例(極大元と最大元・極小元と最小元の関係)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{2}\)の非空な部分集合\begin{equation*}
A=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\}
\end{equation*}について考えます。\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \)を任意にとると、それに対して\(a_{1}<x_{1}\)もしくは\(a_{2}<x_{2}\)の少なくとも一方を満たす\(A\)の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)が存在するため、\(\max A\)は存在しません。一方、先に示したように、\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \)の中でも\(a_{1}\geq 0\)かつ\(a_{2}\geq 0\)かつ\(a_{1}^{2}+a_{2}^{2}=1\)を満たすものは無限個存在しますが、それらはいずれも\(A\)の極大元です。最小元と極小元の間にも同様の関係が成り立ちます。

次回はユークリッド空間の部分集合の極大元や極小元について学びます。
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