ユークリッド空間上の非空な部分集合に対して、その上界や下界を定義します。ユークリッド空間の部分集合が上界と下界をともに持つとき、その集合は有界であると言います。有界であることは直方体、ノルム、集合の直径など様々な概念を用いて表現可能です。
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上界

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)について、\(\mathbb{R}^{n}\)のある点\(a\)が\(A\)の任意の点以上ならば、つまり、\begin{equation*}
\forall a\in \mathbb{R}^{n},\ \forall x\in A:x\leq a
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の上界(upper bound)と呼びます。

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)の最大元や極大元などは\(A\)の点でなければならない一方で、\(A\)の上界は必ずしも\(A\)の点である必要はありません。したがって、\(A\)の最大元は同時に\(A\)の上界ですが、\(A\)の上界は\(A\)の最大元であるとは限りません。

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)の上界は存在するとは限らず、また、存在する場合も一意的であるとは限りません。実際、ある点\(a\in \mathbb{R}^{n}\)が\(A\)の上界ならば、\begin{equation*}
\forall x\in A:x\leq a
\end{equation*}が成り立ちますが、このとき\(a\leq a^{\prime }\)を満たす任意の点\(a^{\prime }\in \mathbb{R}^{n}\)について\(\leq \)の推移性より\(x\leq a^{\prime }\)が成り立つため、この\(a^{\prime }\)もまた\(A\)の上界です。そこで、\(A\)のすべての上界からなる集合を、\begin{equation*}
U\left( A\right) =\{a\in \mathbb{R}^{n}\ |\ \forall x\in A:x\leq a\}
\end{equation*}で表します。その上で、\(A\)に上界が存在するとき、すなわち\(U\left( A\right) \not=\phi \)が成り立つとき、\(A\)は上に有界(bounded from above)であると言います。

例(上界)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合\(\left( 0,1\right) \)に最大元は存在しません。一方、\(1\)以上の任意の点は\(\left( 0,1\right) \)に属する任意の点以上であるため、\(\left( 0,1\right) \)は上に有界であると同時に\(U\left( A\right) =\{a\in \mathbb{R}\ |\ a\geq 1\}\)となります。
例(上界)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{2}\)の非空な部分集合\begin{equation*}
A=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\}
\end{equation*}について考えます。\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \)を任意にとると、それに対して\(a_{1}<x_{1}\)もしくは\(a_{2}<x_{2}\)の少なくとも一方を満たす\(A\)の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)が存在するため\(\max A\)は存在しません。一方、例えば点\(a^{\prime }=\left( a_{1}^{\prime },a_{2}^{\prime }\right) =\left( 1,1\right) \)に対しては、\(A\)の任意の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)との間に\(x_{1}\leq a_{1}^{\prime }\)かつ\(x_{2}\leq a_{2}^{\prime }\)すなわち\(x\leq a^{\prime }\)が成り立つため、この\(a^{\prime }\)は\(A\)の上界です。ちなみに、\(A\)の上界からなる集合は、\begin{equation*}
U\left( A\right) =\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ 1\leq x_{1},\ 1\leq x_{2}\}
\end{equation*}となります。

 

下界

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)について、\(\mathbb{R}^{n}\)のある点\(a\)が\(A\)の任意の点以下ならば、つまり、\begin{equation*}
\forall a\in \mathbb{R}^{n},\ \forall x\in A:a\leq x
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の下界(lower bound)と呼びます。

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)の最小元や極小元などは\(A\)の点でなければならない一方で、\(A\)の下界は必ずしも\(A\)の点である必要はありません。したがって、\(A\)の最小元は同時に\(A\)の下界ですが、\(A\)の下界は\(A\)の最小元であるとは限りません。

\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)の下界は存在するとは限らず、また、存在する場合も一意的であるとは限りません。実際、ある点\(a\in \mathbb{R}^{n}\)が\(A\)の下界ならば、\begin{equation*}
\forall x\in A:a\leq x
\end{equation*}が成り立ちますが、このとき\(a^{\prime }\leq a\)を満たす任意の点\(a^{\prime }\in \mathbb{R}^{n}\)について\(\leq \)の推移性より\(a^{\prime }\leq x\)が成り立つため、この\(a^{\prime }\)もまた\(A\)の下界です。そこで、\(A\)のすべての下界からなる集合を、\begin{equation*}
L\left( A\right) =\{a\in \mathbb{R}^{n}\ |\ \forall x\in A:a\leq x\}
\end{equation*}で表します。その上で、\(A\)に下界が存在するとき、すなわち\(L\left( A\right) \not=\phi \)が成り立つとき、\(A\)は下に有界(bounded from below)であると言います。

例(下界)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合\(\left( 0,1\right) \)に最小元は存在しません。一方、\(0\)以下の任意の点は\(\left( 0,1\right) \)に属する任意の点以下であるため、\(\left( 0,1\right) \)は下に有界であると同時に\(L\left( A\right) =\{a\in \mathbb{R}\ |\ a\leq 0\}\)となります。
例(下界)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{2}\)の非空な部分集合\begin{equation*}
A=\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\}
\end{equation*}について考えます。\(A\)の点\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \)を任意にとると、それに対して\(x_{1}<a_{1}\)もしくは\(x_{2}<a_{2}\)の少なくとも一方を満たす\(A\)の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)が存在するため\(\min A\)は存在しません。一方、例えば点\(a^{\prime }=\left( a_{1}^{\prime },a_{2}^{\prime }\right) =\left( -1,-1\right) \)に対しては、\(A\)の任意の点\(x=\left( x_{1},x_{2}\right) \)との間に\(a_{1}^{\prime }\leq x_{1}\)かつ\(a_{2}^{\prime }\leq x_{2}\)すなわち\(a^{\prime }\leq x\)が成り立つため、この\(a^{\prime }\)は\(A\)の下界です。ちなみに、\(A\)の下界からなる集合は、\begin{equation*}
L\left( A\right) =\{\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R}^{2}\ |\ x_{1}\leq -1,\ x_{2}\leq -1\}
\end{equation*}となります。

 

有界

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)が上に有界かつ下に有界ならば、つまり、\(U\left( A\right) \not=\phi \)かつ\(L\left( A\right) \not=\phi \)が成り立つならば、\(A\)は有界(bounded)であると言います。

\(n\)次元の直方体(rectangle)という概念は、ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における 2 つの点\(a=\left( a_{1},\cdots ,a_{n}\right) ,\ b=\left( b_{1},\cdots ,b_{n}\right) \)を用いて、\begin{eqnarray*}
\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] &=&\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \\
&=&\{x\in \mathbb{R}^{n}\ |\ \forall i\in \{1,\cdots ,n\}:a_{i}\leq x_{i}\leq b_{i}\}
\end{eqnarray*}と定義されます。ただし、\(x=\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \)です。\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)が有界であることは、\(n\)次元の直方体を用いて以下のように表現可能です。

命題(直方体を用いた有界性の表現)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)に対して、\begin{equation*}
A\subset \prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \end{equation*}を満たす\(n\)次元の直方体\(\prod\limits_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \)が存在することは、\(A\)が有界であるための必要十分条件である。
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つまり、\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合\(A\)が有界であるとは、\(A\)を覆う\(n\)次元の直方体が存在することを意味します。

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合が有界であることは、ノルムを用いて以下のように表現することもできます。

ノルムについて復習する
命題(ノルムを用いた有界性の表現)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)に対して、\begin{equation*}
\exists \varepsilon \in \mathbb{R},\ \forall x\in A:\left\Vert x\right\Vert \leq \varepsilon
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が有界であるための必要十分条件である。
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つまり、集合\(A\)が有界であるとは、\(A\)に属する点のノルムがとり得る値の範囲が限定されていることを意味します。

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の部分集合が有界であることは、集合の直径を用いて以下のように表現することもできます。

集合の直径について復習する
命題(集合の直径を用いた有界性の表現)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の空でない部分集合\(A\)に対して、\begin{equation*}
\exists \varepsilon \in \mathbb{R}:\mathrm{diam}\left( A\right) \leq \varepsilon
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が有界であるための必要十分条件である。
証明を見る(プレミアム会員限定)

つまり、集合\(A\)が有界であるとは、\(A\)が有限な直径を持つことを意味します。

次回はユークリッド空間の部分集合の上限や下限について学びます。
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