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ユークリッド空間

実ベクトル空間の点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)へのユークリッド距離(Euclideandistance from \(x\) to \(y\))を、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_{i}-y_{i})^{2}}
\end{equation*}と定義します。誤解の恐れがない場合には、これをシンプルに\(x\)から\(y\)への距離(distance)と呼びます。

点\(x,y\)の任意の成分\(x_{i},y_{i}\ \left( i=1,\cdots ,n\right) \)は実数であり、さらに実数空間\(\mathbb{R} \)は四則演算について閉じているため、上のように定義される距離\(d\left( x,y\right) \)は常に1つの実数として定まります。したがって、それぞれの順序対\(\left(x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対してユークリッド距離\(d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \)に相当する実数を1つずつ定める写像\begin{equation*}d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これをユークリッド距離関数(Euclidean distance function)と呼びます。誤解の恐れがない場合には、これをシンプルに距離関数(distance function)と呼びます。

実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上にユークリッド距離関数\(d\)が定義されているとき、これらの組\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)をユークリッド空間(Euclidean space)や\(n\)次元ユークリッド空間(\(n\)-dimensional Euclidean space)などと呼びます。ただし、\(\mathbb{R} ^{n}\)においてユークリッド距離関数\(d\)が定義されていることが文脈から明らかである場合には、ユークリッド空間をシンプルに\(\mathbb{R} ^{n}\)と表記します。

例(ユークリッド空間)
\(1\)次元ユークリッド空間の点\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離は、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) ^{2}}\quad \because \text{距離の定義} \\
&=&\left\vert x-y\right\vert \quad \because \text{絶対値の定義}
\end{eqnarray*}となります。つまり、\(\mathbb{R} \)の2つの点の間の距離はそれらの差の絶対値と一致します。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}d\left( 1,4\right) &=&\left\vert 1-4\right\vert =3 \\
d\left( -1,8\right) &=&\left\vert -1-8\right\vert =9 \\
d\left( \frac{4}{5},\frac{1}{10}\right) &=&\left\vert \frac{4}{5}-\frac{1}{10}\right\vert =\frac{7}{10}
\end{eqnarray*}などとなります。

例(ユークリッド空間)
\(2\)次元ユークリッド空間の点\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離は、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\sum_{i=1}^{2}(x_{i}-y_{i})^{2}}\quad \because
\text{距離の定義} \\
&=&\sqrt{\left( x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left( x_{2}-y_{2}\right) ^{2}}
\end{eqnarray*}となります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\sqrt{\left(
1-3\right) ^{2}+\left( 2-1\right) ^{2}}=\sqrt{5} \\
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\sqrt{\left(
-1-7\right) ^{2}+\left( 3-2\right) ^{2}}=\sqrt{65} \\
d\left( \left( \frac{2}{3},-1\right) ,\left( -\frac{1}{2},-2\right) \right)
&=&\sqrt{\left( \frac{2}{3}+\frac{1}{2}\right) ^{2}+\left( -1+2\right) ^{2}}=\frac{\sqrt{85}}{6}
\end{eqnarray*}などとなります。

例(ユークリッド距離)
点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_{i}-y_{i})^{2}}\quad \because
\text{距離の定義} \\
&=&\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }\quad \because \text{内積の定義} \\
&=&\left\Vert x-y\right\Vert \quad \because \text{ノルムの定義}
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。つまり、ユークリッド距離と内積の間には、\begin{equation*}
d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }
\end{equation*}という関係が成り立ち、ユークリッド距離とノルムの間には、\begin{equation*}
d\left( x,y\right) =\left\Vert x-y\right\Vert
\end{equation*}という関係が成り立ちます。例えば、\(\mathbb{R} ^{2}\)上の2つの点\begin{eqnarray*}x &=&\left( 3,5\right) \\
y &=&\left( 6,9\right)
\end{eqnarray*}の間の距離を求める際に、\(d\)の定義にしたがうのであれば、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( 3-6\right) ^{2}+\left( 5-9\right) ^{2}}\quad \because d\text{の定義} \\
&=&\sqrt{9+16} \\
&=&\sqrt{25} \\
&=&5
\end{eqnarray*}となりますし、ユークリッド距離と内積の関係を利用するのであれば、\begin{eqnarray*}
d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }\quad \because \text{距離と内積の関係} \\
&=&\sqrt{\left( -3,-4\right) \cdot \left( -3,-4\right) } \\
&=&\sqrt{9+16}\quad \because \text{内積の定義}
\\
&=&\sqrt{25} \\
&=&5
\end{eqnarray*}となりますし、ユークリッド距離とノルムの関係を利用するのであれば、\begin{eqnarray*}
d\left( x,y\right) &=&\left\Vert x-y\right\Vert \quad \because \text{距離とノルムの関係} \\
&=&\left\Vert \left( -3,-4\right) \right\Vert \\
&=&\sqrt{9+16}\quad \because \text{ノルムの定義} \\
&=&\sqrt{25} \\
&=&5
\end{eqnarray*}となります。どの方法を利用しても結果は同じであるため、好きな方法を利用できます。

 

ユークリッド距離の非負性

点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}d\left( x,y\right) \geq 0
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(x\)から\(y\)への距離は必ず非負の実数になるということです。ユークリッド距離関数\(d\)が満たすこのような性質を非負性(non-negativity)と呼びます。

命題(ユークリッド距離の非負性)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) \geq 0
\end{equation*}を満たす。

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ユークリッド距離の不可識別者同一性

点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(x\)から\(y\)への距離が\(0\)であることと、\(x\)と\(y\)が同じ点であることは必要十分です。ユークリッド距離関数\(d\)が満たすこのような性質を不可識別者同一性(identity of indiscernibles)と呼びます。

命題(ユークリッド距離の不可識別者同一性)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y
\end{equation*}を満たす。

証明

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点\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき\(x=x\)成り立つため、これと\(d\)の不可識別者同一性より、\begin{equation*}d\left( x,x\right) =0
\end{equation*}を得ます。つまり、点\(x\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(x\)自身への距離は\(0\)です。

命題(等しい点の間の距離)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,x\right) =0
\end{equation*}を満たす。

\(x\not=y\)を満たす点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x\not=y &\Rightarrow &d(x,y)\not=0\quad \because d\text{の不可識別者同一性} \\
&\Leftrightarrow &d(x,y)\not=0\wedge d\left( x,y\right) \geq 0\quad \because
d\text{の非負性} \\
&\Leftrightarrow &d\left( x,y\right) >0
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
x\not=y\Rightarrow d\left( x,y\right) >0
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、異なる2つの点\(x,y\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y \)への距離は正になります。

命題(異なる点の間の距離)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}x\not=y\Rightarrow d\left( x,y\right) >0
\end{equation*}を満たす。

ユークリッド距離の非負性と不可識別者同一性から上の2つの命題を導きましたが、逆に、上の2つの命題から非負性と不可識別者同一性を導くことができます。したがって以下を得ます。

命題(非負性と不可識別者同一性の特徴づけ)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( x,y\right) \geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:\left[ d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y\right] \end{eqnarray*}がともに成り立つことと、\begin{eqnarray*}
&&\left( c\right) \ \forall x\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( x,x\right) =0 \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:\left[ x\not=y\Rightarrow d\left( x,y\right) >0\right] \end{eqnarray*}がともに成り立つことは必要十分である。

証明

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ユークリッド距離の対称性

点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選びます。本来、2つの順序対\(\left(x,y\right) ,\left( y,x\right) \)は異なるものとして区別されるため、それらに対する距離である\(d\left( x,y\right) \)と\(d\left( y,x\right) \)もまた区別されます。ただ、実際には、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =d\left( y,x\right)
\end{equation*}となり両者は一致します。つまり、\(x\)から\(y \)への距離と\(y\)から\(x\)への距離は一致するということです。ユークリッド距離関数\(d\)が満たすこのような性質を対称性(symmetry)と呼びます。

命題(ユークリッド距離の対称性)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =d\left( y,x\right)
\end{equation*}を満たす。

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ユークリッド距離に関する三角不等式

点\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(x\)から\(z\)までの距離は、\(x\)から\(y\)を経由して\(z\)へ至る場合の距離以下になります。ユークリッド距離関数\(d\)が満たすこのような性質を三角不等式(triangle inequality)と呼びます。証明にはミンコフスキの不等式を利用します。

命題(ユークリッド距離に関する三角不等式)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,z\right) \leq d\left( x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{equation*}を満たす。

証明

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距離空間としてのユークリッド空間

ユークリッド距離の基本的な性質を明らかにしましたが、得られた結果を改めて整理します。

命題(距離空間としてのユークリッド空間)
ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は、\begin{eqnarray*}&&\left( M_{1}\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( x,y\right) \geq 0 \\
&&\left( M_{2}\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:\left[ d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y\right] \\
&&\left( M_{3}\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( x,y\right) =d\left( y,x\right) \\
&&\left( M_{4}\right) \ \forall x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( x,z\right) \leq d\left( x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{eqnarray*}を満たす。

一般の集合\(X\)が与えられたとき、関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、それが上の\(\left( M_{1}\right) \)から\(\left( M_{4}\right) \)に相当する性質を満たす場合には、それらの組\(\left( X,d\right) \)を距離空間(metric space)と呼びます。上の命題は、ユークリッド空間\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)が距離空間の1つであることを意味します。ここでは詳細に立ち入りませんが、ユークリッド空間の他にも距離空間の具体例は存在します。ユークリッド空間の一般化が距離空間です。距離空間については場を改めて詳しく解説します。

例(ユークリッド空間としての実数空間)
実数空間の点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、その絶対値は、\begin{equation}\sqrt{a^{2}}=\left\vert a\right\vert \quad \cdots (1)
\end{equation}をはじめとする様々な性質を満たします。さらに、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation}d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert \quad \cdots (2)
\end{equation}を定める関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\left\vert x-y\right\vert \quad \because \left(
2\right) \\
&=&\sqrt{\left( x-y\right) ^{2}}\quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となり、これは\(x\)から\(y \)へのユークリッド距離と一致します。加えて、絶対値の性質を用いることにより、\(d\)がユークリッド距離としての性質である\(\left( M_{1}\right) \)から\(\left( M_{4}\right) \)を満たすことが示されるため(演習問題にします)、絶対値が定義された\(\mathbb{R} \)はユークリッド空間であると言えます。
例(ユークリッド空間としての内積空間)
実ベクトル空間の点\(a,b\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それらの内積を、\begin{equation}a\cdot b=\sum_{i=1}^{n}\left( a_{i}\cdot b_{i}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}と定義すると、\(\left( \mathbb{R} ^{n},\cdot \right) \)は内積空間としての性質を満たします。さらに、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation}d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }
\quad \cdots (2)
\end{equation}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }\quad
\because \left( 2\right) \\
&=&\sqrt{\sum_{i=1}^{n}\left( x_{i}-y_{i}\right) ^{2}}\quad \because \left(
1\right)
\end{eqnarray*}となり、これは\(x\)から\(y \)へのユークリッド距離と一致します。加えて、内積の性質を用いることにより、\(d\)がユークリッド距離としての性質である\(\left( M_{1}\right) \)から\(\left( M_{4}\right) \)を満たすことが示されるため(演習問題にします)、\(\left( \mathbb{R} ^{n},\cdot \right) \)はユークリッド空間であるとも言えます。
例(ユークリッド空間としてのノルム空間)
実ベクトル空間の点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、そのノルムを、\begin{equation}\left\Vert a\right\Vert =\sqrt{\sum_{i=1}^{n}a_{i}^{2}} \quad \cdots (1)
\end{equation}と定義すると、\(\left( \mathbb{R} ^{n},\left\Vert \cdot \right\Vert \right) \)はノルム空間としての性質を満たします。さらに、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation}d\left( x,y\right) =\left\Vert x-y\right\Vert \quad \cdots (2)
\end{equation}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\left\Vert x-y\right\Vert \quad \because \left(
2\right) \\
&=&\sqrt{\sum_{i=1}^{n}\left( x_{i}-y_{i}\right) ^{2}}\quad \because \left(
1\right)
\end{eqnarray*}となり、これは\(x\)から\(y \)へのユークリッド距離と一致します。加えて、ノルムの性質を用いることにより、\(d\)がユークリッド距離としての性質である\(\left( M_{1}\right) \)から\(\left( M_{4}\right) \)を満たすことが示されるため(演習問題にします)、\(\left( \mathbb{R} ^{n},\left\Vert \cdot \right\Vert \right) \)はユークリッド空間であるとも言えます。

以上の例を踏まえた上で、以降において\(\mathbb{R} ^{n}\)を「ユークリッド空間」と呼ぶとき、\(\mathbb{R} ^{n}\)にはユークリッド距離\(d\)が定義されているだけでなく、\(\mathbb{R} ^{n}\)が実ベクトル空間であることを前提として認めるものとします。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上にはベクトル加法やスカラー乗法、内積、ノルムなどが定義されていることを認めるということです。また、必要に応じて、\(\mathbb{R} ^{n}\)が実順序ベクトル空間であることも前提として認めるものとします。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上には標準的順序が定義されていることを認めるということです。

 

演習問題

問題(ユークリッド空間)
以下の問いに答えてください。

  1. 2つの点\(1,9\in \mathbb{R} \)の間のユークリッド距離を求めてください。
  2. 2つの点\(\frac{1}{2},-4\in \mathbb{R} \)の間のユークリッド距離を求めてください。
  3. 2つの点\(\left( 1,8\right) ,\left( 3,9\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)の間のユークリッド距離を求めてください。
  4. 2つの点\(\left( -1,\frac{1}{2}\right) ,\left( 7,-\frac{1}{3}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)の間のユークリッド距離を求めてください。
  5. 2つの点\(\left( 1,-1,-3\right) ,\left( \frac{1}{2},\frac{1}{2},5\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)の間のユークリッド距離を求めてください。
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問題(ユークリッド空間としての実数空間)
関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。この\(d\)がユークリッド距離関数であることを絶対値の性質から証明してください。
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問題(ユークリッド空間としての内積空間)
関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }
\end{equation*}を定めるものとします。この\(d\)がユークリッド距離関数であることを内積の性質から証明してください。
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問題(ユークリッド空間としてのノルム空間)
関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\Vert x-y\right\Vert
\end{equation*}を定めるものとします。この\(d\)がユークリッド距離関数であることをノルムの性質から証明してください。
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次回はユークリッド距離を用いてユークリッド空間の部分集合が有界であることを表現します。

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