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距離空間

距離空間の定義と具体例

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部分距離空間

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距離空間

非空の集合\(X\)を任意に選んだ上で、この集合\(X\)の要素を成分として持つそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、実数\(d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \)を1つずつ定める写像\begin{equation*}d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。この写像\(d\)が以下の4つの性質を満たすことを公理として定めるとき、\(d\)を距離関数(distance function)や距離(metric)などと呼びます。また、距離関数\(d\)が順序対\(\left( x,y\right) \)に対して定める実数\(d\left( x,y\right) \)と\(x\)から\(y\)への距離(distance \(x\)from \(y\))と呼びます。

距離関数\(d\)が満たすべき1つ目の公理は、\begin{equation*}\left( M_{1}\right) \ \forall x,y\in X:d\left( x,y\right) \geq 0
\end{equation*}であり、この性質を非負性(non-negativity)と呼びます。これは、集合\(X\)の点\(x,y\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離が必ず非負の実数になることを意味します。

距離関数\(d\)が満たすべき2つ目の公理は、\begin{equation*}\left( M_{2}\right) \ \forall x,y\in X:\left[ d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y\right] \end{equation*}であり、この性質を不可識別者同一性(identity of indiscernibles)や非退化性などと呼びます。これは集合\(X\)の点\(x,y\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離が\(0\)であることと\(x\)と\(y\)が等しい点であることが必要十分であることを意味します。

距離関数\(d\)が満たすべき3つ目の公理は、\begin{equation*}\left( M_{3}\right) \ \forall x,y\in X:d(x,y)=d\left( y,x\right)
\end{equation*}であり、この性質を対称性(symmetry)と呼びます。本来、2つの順序対\(\left( x,y\right) ,\left( y,x\right) \)は異なるものとして区別されるため、それらに対して\(d\)が定める値である\(d\left( x,y\right) \)と\(d\left(y,x\right) \)もまた区別されます。ただし、対称性のもとではこれらの値が一致することが保証されます。つまり、集合\(X\)の点\(x,y\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離と\(y\)から\(x\)への距離が一致することが保証されるということです。このような事情を踏まえると、\(x\)から\(y\)への距離を\(x\)\(y\)の間の距離(distance betweeen \(x\) and \(y\))と言っても差し支えありません。

距離関数\(d\)が満たすべき4つ目の公理は、\begin{equation*}\left( M_{4}\right) \ \forall x,y,z\in X:d\left( x,z\right) \leq d\left(
x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{equation*}であり、この性質を三角不等式(triangle inequality)と呼びます。これは、集合\(X\)の点\(x,y,z\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(z\)までの距離(左辺)は、\(x\)から\(y\)を経由して\(z\)へ至る場合の距離の合計(右辺)以下になることを意味します。

距離関数を規定する公理は以上の通りです。非空の集合\(X\)に対して定義された写像\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)が以上の4つの性質を満たすとき、すなわち\(d\)が距離関数である場合には、それらの組\(\left( X,d\right) \)を距離空間(metric space)と呼びます。ただし、距離関数\(d\)が定義されていることが文脈から明らかである場合には、距離空間をシンプルに\(X\)と表記できます。

定義(距離空間)
非空な集合\(X\)に対して定義された写像\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)が以下の公理\begin{eqnarray*}&&\left( M_{1}\right) \ \forall x,y\in X:d\left( x,y\right) \geq 0 \\
&&\left( M_{2}\right) \ \forall x,y\in X:\left[ d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y\right] \\
&&\left( M_{3}\right) \ \forall x,y\in X:d(x,y)=d\left( y,x\right) \\
&&\left( M_{4}\right) \ \forall x,y,z\in X:d\left( x,z\right) \leq d\left(
x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{eqnarray*}を満たす場合、\(d\)を距離関数と呼び、\(\left( X,d\right) \)を距離空間と呼ぶ。

距離空間を規定する4つの公理\(\left( M_{1}\right) ,\left( M_{2}\right),\left( M_{3}\right) ,\left( M_{4}\right) \)を総称して距離の公理(metricaxioms)と呼びます。公理によって距離空間という概念を定義した以上、距離空間に関する主張はすべて距離の公理から導く必要があります。

 

距離の公理の代替的な表現

点\(x\in X\)を任意に選んだとき\(x=x\)が成り立つため、これと\(d\)の不可識別者同一性より、\begin{equation*}d\left( x,x\right) =0
\end{equation*}を得ます。つまり、点\(x\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(x\)自身への距離は\(0\)です。

命題(等しい点の間の距離)
距離関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,x\right) =0
\end{equation*}を満たす。

\(x\not=y\)を満たす点\(x,y\in X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x\not=y &\Rightarrow &d(x,y)\not=0\quad \because d\text{の不可識別者同一性} \\
&\Leftrightarrow &d(x,y)\not=0\wedge d\left( x,y\right) \geq 0\quad \because
d\text{の非負性} \\
&\Leftrightarrow &d\left( x,y\right) >0
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
x\not=y\Rightarrow d\left( x,y\right) >0
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、異なる2つの点\(x,y\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離は正になります。

命題(異なる点の間の距離)
距離関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)は、任意の\(x,y\in X\)に対して、\begin{equation*}x\not=y\Rightarrow d\left( x,y\right) >0
\end{equation*}を満たす。

距離関数の非負性と不可識別者同一性から上の2つの命題を導きましたが、逆に、上の2つの命題から非負性と不可識別者同一性を導くことができます。したがって以下を得ます。

命題(非負性と不可識別者同一性の特徴づけ)
距離関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x,y\in X:d\left( x,y\right) \geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \forall x,y\in X:\left[ d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y\right] \end{eqnarray*}がともに成り立つことと、\begin{eqnarray*}
&&\left( c\right) \ \forall x\in X:d\left( x,x\right) =0 \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y\in X:\left[ x\not=y\Rightarrow d\left(
x,y\right) >0\right] \end{eqnarray*}がともに成り立つことは必要十分である。

証明

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以上の命題を踏まえると、距離空間を以下のように表現することもできます。

命題(距離空間の定義)

非空な集合\(X\)に対して定義された写像\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)が以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x,y\in X:d\left( x,x\right) =0 \\
&&\left( b\right) \ \forall x,y\in X:\left[ x\not=y\Rightarrow d\left(
x,y\right) >0\right] \\
&&\left( c\right) \ \forall x,y\in X:d(x,y)=d\left(
y,x\right) \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y,z\in X:d\left( x,z\right) \leq d\left(
x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{eqnarray*}を満たすことは、\(\left(X,d\right) \)を距離空間であるための必要十分条件である。

 

距離空間の具体例:ユークリッド距離

実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の点を成分とするそれぞれの順序対\(\left( x,y\right)\in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left(
x_{2}-y_{2}\right) ^{2}+\cdots +\left( x_{n}-y_{n}\right) ^{2}} \\
&=&\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_{i}-y_{i})^{2}}
\end{eqnarray*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。つまり、\(d\)はユークリッド距離関数であり、\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)はユークリッド空間です。

例(ユークリッド距離)
2次元ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)へのユークリッド距離は、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left(
x_{2}-y_{2}\right) ^{2}}
\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\sqrt{\left(
1-3\right) ^{2}+\left( 2-1\right) ^{2}}=\sqrt{5} \\
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\sqrt{\left(
-1-7\right) ^{2}+\left( 3-2\right) ^{2}}=\sqrt{65} \\
d\left( \left( \frac{2}{3},-1\right) ,\left( -\frac{1}{2},-2\right) \right)
&=&\sqrt{\left( \frac{2}{3}+\frac{1}{2}\right) ^{2}+\left( -1+2\right) ^{2}}=\frac{\sqrt{85}}{6}
\end{eqnarray*}などとなります。

ユークリッド距離関数は距離の公理を満たすため距離関数であり、したがって\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間です。つまり、ユークリッド空間は距離空間の1つの例であり、逆に、距離空間はユークリッド空間の一般化です。

命題(ユークリッド空間は距離空間)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left(
x_{2}-y_{2}\right) ^{2}+\cdots +\left( x_{n}-y_{n}\right) ^{2}} \\
&=&\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_{i}-y_{i})^{2}}
\end{eqnarray*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間である。

 

距離空間の具体例:絶対値に関する距離

実数空間\(\mathbb{R} \)の点を成分とするそれぞれの順序対\(\left( x,y\right)\in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。つまり、\(d\left( x,y\right) \)は数直線上における2つの点\(x,y\)の間の距離です。

例(絶対値に関する距離)
数直線上の点\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、先の関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)のもとでは、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( 1,4\right) &=&\left\vert 1-4\right\vert =3 \\
d\left( -1,8\right) &=&\left\vert -1-8\right\vert =9 \\
d\left( \frac{4}{5},\frac{1}{10}\right) &=&\left\vert \frac{4}{5}-\frac{1}{10}\right\vert =\frac{7}{10}
\end{eqnarray*}などとなります。

絶対値の性質を踏まえると、先の関数\(d\)が距離の公理を満たすことが示されるため\(d\)は距離関数であり、したがって\(\left( \mathbb{R} ,d\right) \)は距離空間です。

命題(絶対値に関する距離)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ,d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:内積に関する距離

実ベクトル空間の点\(a,b\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それらの内積は、\begin{equation*}a\cdot b=\sum_{i=1}^{n}\left( a_{i}\cdot b_{i}\right)
\end{equation*}と定義されます。以上を踏まえた上で、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。

例(内積に関する距離)
2次元ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、先の関数\(d:\mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)のもとでは、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) } \\
&=&\sqrt{\left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right) \cdot \left(
x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right) }
\end{eqnarray*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\sqrt{\left(
1-3,2-1\right) \cdot \left( 1-3,2-1\right) } \\
&=&\sqrt{\left( -2,1\right) \cdot \left( -2,1\right) } \\
&=&\sqrt{4+1} \\
&=&\sqrt{5}
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\sqrt{\left(
-1-3,7-2\right) \cdot \left( -1-3,7-2\right) } \\
&=&\sqrt{\left( -4,5\right) \cdot \left( -4,5\right) } \\
&=&\sqrt{16+25} \\
&=&\sqrt{41}
\end{eqnarray*}となります。

内積の性質を踏まえると、先の関数\(d\)が距離の公理を満たすことが示されるため\(d\)は距離関数であり、したがって\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間です。

命題(内積に関する距離)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\sqrt{\left( x-y\right) \cdot \left( x-y\right) }
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:ノルムに関する距離

実ベクトル空間の点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、そのノルムは、\begin{equation*}\left\Vert a\right\Vert =\sqrt{\sum_{i=1}^{n}a_{i}^{2}}
\end{equation*}と定義されます。以上を踏まえた上で、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\Vert x-y\right\Vert
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。

例(ノルムに関する距離)
2次元ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、先の関数\(d:\mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)のもとでは、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\left\Vert x-y\right\Vert \\
&=&\left\Vert \left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right) \right\Vert
\end{eqnarray*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\left\Vert \left(
1-3,2-1\right) \right\Vert \\
&=&\left\Vert \left( -2,1\right) \right\Vert \\
&=&\sqrt{4+1} \\
&=&\sqrt{5}
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\left\Vert \left(
-1-3,7-2\right) \right\Vert \\
&=&\left\Vert \left( -4,5\right) \right\Vert \\
&=&\sqrt{16+25} \\
&=&\sqrt{41}
\end{eqnarray*}となります。

ノルムの性質を踏まえると、先の関数\(d\)が距離の公理を満たすことが示されるため\(d\)は距離関数であり、したがって\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間です。

命題(ノルムに関する距離)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\Vert x-y\right\Vert
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:離散距離空間

非空の集合\(X\)を任意に選んだ上で、それぞれの\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x=y\right) \\
1 & \left( if\ x\not=y\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。このような関数\(d\)を離散距離(discrete distance)や自明の距離(trivial distance)などと呼び、\(\left( X,d\right) \)を離散距離空間(discrete metricspace)や自明な距離空間(trivial metric space)などと呼びます。

例(離散距離)
集合\(X=\left\{ a,b,c\right\} \)上に離散距離\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義したとき、\begin{eqnarray*}d\left( a,a\right) &=&0 \\
d\left( a,b\right) &=&1 \\
d\left( a,c\right) &=&1 \\
d\left( b,b\right) &=&0 \\
d\left( b,c\right) &=&1 \\
d\left( c,c\right) &=&0
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

離散距離空間は距離空間です。

命題(離散距離空間)
非空の集合\(X\)を任意に選んだ上で、それぞれの\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x=y\right) \\
1 & \left( if\ x\not=y\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(d:X\times X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( X,d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:マンハッタン距離空間

実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点を成分とするそれぞれの順序対\(\left(x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert +\left\vert
x_{2}-y_{2}\right\vert +\cdots +\left\vert x_{n}-y_{n}\right\vert \\
&=&\sum_{i=1}^{n}\left\vert x_{i}-y_{i}\right\vert
\end{eqnarray*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。このような関数\(d\)をマンハッタン距離(Manhattan distance)と呼び、\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)をマンハッタン距離空間(Manhattan metric space)と呼びます。

例(マンハッタン距離)
2次元ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、マンハッタン距離\(d:\mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)のもとでは、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert +\left\vert
x_{2}-y_{2}\right\vert
\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\left\vert
1-3\right\vert +\left\vert 2-1\right\vert =3 \\
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\left\vert
-1-3\right\vert +\left\vert 7-2\right\vert =9 \\
d\left( \left( \frac{2}{3},-1\right) ,\left( -\frac{1}{2},-2\right) \right)
&=&\left\vert \frac{2}{3}-\left( -\frac{1}{2}\right) \right\vert +\left\vert
-1-\left( -2\right) \right\vert =\frac{13}{6}
\end{eqnarray*}などとなります。

マンハッタン距離空間は距離空間です。

命題(マンハッタン距離空間)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert +\left\vert
x_{2}-y_{2}\right\vert +\cdots +\left\vert x_{n}-y_{n}\right\vert \\
&=&\sum_{i=1}^{n}\left\vert x_{i}-y_{i}\right\vert
\end{eqnarray*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:チェビシェフ距離空間

実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点を成分とするそれぞれの順序対\(\left(x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\max \left\{ \left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert
,\left\vert x_{2}-y_{2}\right\vert ,\cdots ,\left\vert
x_{n}-y_{n}\right\vert \right\}
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。\(\mathbb{R} \)の有限な部分集合は最大値を必ず持つため、\begin{equation*}\max \left\{ \left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert ,\left\vert
x_{2}-y_{2}\right\vert ,\cdots ,\left\vert x_{n}-y_{n}\right\vert \right\}
\end{equation*}すなわち\(d\left( x,y\right) \)が1つの実数として定まります。したがって\(d\)は関数として定義可能です。このような関数\(d\)をチェビシェフ距離(Chebyshev distance)と呼び、\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)をチェビシェフ距離空間(Chebyshev metric space)と呼びます。

例(チェビシェフ距離)
2次元ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、チェビシェフ距離\(d:\mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)のもとでは、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\max \left\{ \left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert
,\left\vert x_{2}-y_{2}\right\vert \right\}
\end{equation*}となります。したがって、\begin{eqnarray*}
d\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,1\right) \right) &=&\max \left\{
\left\vert 1-3\right\vert ,\left\vert 2-1\right\vert \right\} =2 \\
d\left( \left( -1,7\right) ,\left( 3,2\right) \right) &=&\max \left\{
\left\vert -1-3\right\vert ,\left\vert 7-2\right\vert \right\} =5 \\
d\left( \left( \frac{2}{3},-1\right) ,\left( -\frac{1}{2},-2\right) \right)
&=&\max \left\{ \left\vert \frac{2}{3}-\left( -\frac{1}{2}\right)
\right\vert ,\left\vert -1-\left( -2\right) \right\vert \right\} =\frac{7}{6}
\end{eqnarray*}などとなります。

チェビシェフ距離空間は距離空間です。

命題(チェビシェフ距離空間)
それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}d\left( x,y\right) =\max \left\{ \left\vert x_{1}-y_{1}\right\vert
,\left\vert x_{2}-y_{2}\right\vert ,\cdots ,\left\vert
x_{n}-y_{n}\right\vert \right\}
\end{equation*}を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)は距離空間である。
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距離空間の具体例:連続関数の差の絶対値の定積分

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界閉区間\(\left[ a,b\right] \)をとります。その上で、\(\left[ a,b\right] \)上に定義された連続な実数値関数をすべて集めてできる集合を\(C\left[ a,b\right] \)で表記します。この集合の要素である2つの関数\(f,g\in C\left[ a,b\right] \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right) =\left\vert f\left( x\right)
-g\left( x\right) \right\vert
\end{equation*}を定める関数\(\left\vert f-g\right\vert :\left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。連続関数の差は連続であるため\(f-g\)は\(\left[ a,b\right] \)上で連続であり、その絶対値をとった\(\left\vert f-g\right\vert \)もまた\(\left[ a,b\right] \)上で連続です。連続関数の定積分は有限な実数として定まるため、\begin{equation*}\int_{a}^{b}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right)
dx=\int_{a}^{b}\left\vert f\left( x\right) -g\left( x\right) \right\vert dx
\end{equation*}は有限な実数として定まることが保証されます。このような事情を踏まえると、\(C\left[ a,b\right] \)の要素である関数を成分とするそれぞれの順序対\(\left( f,g\right) \in C\left[ a,b\right] \times C\left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}d\left( f,g\right) =\int_{a}^{b}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right) dx
\end{equation*}を定める関数\(d:C\left[ a,b\right] \times C\left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。

例(連続関数の差の絶対値の定積分)
有界閉区間\(\left[ 0,1\right] \)上に定義された連続関数をすべて集めてできる集合\(C\left[ 0,1\right] \)に注目した上で、それぞれの\(\left( f,g\right) \in C\left[ 0,1\right] \times C\left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}d\left( f,g\right) =\int_{0}^{1}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right) dx
\end{equation*}を定める関数\(d:C\left[ 0,1\right] \times C\left[ 0,1\right] \)を定義します。関数\(f,g\in C\left[ 0,1\right] \)がそれぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して定める値が、\begin{eqnarray*}f\left( x\right) &=&e^{x} \\
g\left( x\right) &=&-x-1
\end{eqnarray*}であるとき、\begin{eqnarray*}
d\left( f,g\right) &=&\int_{0}^{1}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right)
dx\quad \because d\text{の定義} \\
&=&\int_{0}^{1}\left\vert e^{x}-\left( -x-1\right) \right\vert dx\quad
\because f,g\text{の定義} \\
&=&\int_{0}^{1}\left\vert e^{x}+x+1\right\vert dx \\
&=&\int_{0}^{1}\left( e^{x}+x+1\right) dx \\
&=&\left[ e^{x}+\frac{1}{2}x^{2}+x\right] _{0}^{1} \\
&=&\left( e+\frac{1}{2}+1\right) -\left( e^{0}+0+0\right) \\
&=&e+\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}となります。

先の関数\(d\)が距離の公理を満たすことが示されるため\(d\)は距離関数であり、したがって\(\left( C\left[ a,b\right] ,d\right) \)は距離空間です。

命題(連続関数の差の絶対値の定積分)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、\(\left[ a,b\right] \)上に定義された連続関数をすべて集めてできる集合を\(C\left[ a,b\right] \)で表記する。その上で、それぞれの\(\left( f,g\right) \in C\left[ a,b\right] \times C\left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}d\left( f,g\right) =\int_{a}^{b}\left\vert f-g\right\vert \left( x\right) dx
\end{equation*}を定める関数\(d:C\left[ a,b\right] \times C\left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(\left( C\left[ a,b\right],d\right) \)は距離空間である。
証明

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距離空間の具体例:ヒルベルト空間

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{\infty }x_{n}^{2}=x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}+\cdots
\end{equation*}を定義します。この無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)が収束することとは、数列\(\left\{ x_{n}^{2}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)が有限な実数へ収束すること、すなわち、\begin{equation*}s_{n}=\sum_{v=1}^{n}x_{v}^{2}
\end{equation*}について、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }s_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty
}\sum_{v=1}^{n}x_{v}^{2}\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つことを意味し、この場合、無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)の和を、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{\infty }x_{n}^{2}=\lim_{n\rightarrow \infty
}\sum_{v=1}^{n}x_{v}^{2}
\end{equation*}と定めます。また、無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)が収束することを、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{\infty }x_{n}^{2}<+\infty
\end{equation*}で表記します。

例(無限級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{1}{2^{n-1}}
\end{equation*}で与えられているものとします。数列\(\left\{x_{n}^{2}\right\} \)の部分和は、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\sum_{v=1}^{n}x_{v}^{2} \\
&=&\sum_{v=1}^{n}\left( \frac{1}{2^{v-1}}\right) ^{2} \\
&=&\frac{4}{3}-\frac{4}{3}\left( \frac{1}{4}\right) ^{n}
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }s_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left[ \frac{4}{3}-\frac{4}{3}\left( \frac{1}{4}\right) ^{n}\right] \\
&=&\frac{4}{3}
\end{eqnarray*}です。したがって、無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)は収束します。
例(無限級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=1
\end{equation*}で与えられているものとします。数列\(\left\{x_{n}^{2}\right\} \)の部分和は、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\sum_{v=1}^{n}x_{v}^{2} \\
&=&\sum_{v=1}^{n}1^{2} \\
&=&\sum_{v=1}^{n}1 \\
&=&n
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }s_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }n \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}です。したがって、無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)は収束しません。

上の例から明らかであるように、数列\(\left\{x_{n}\right\} \)が与えられたとき、そこから定義される無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)は収束するとは限りません。そこで、無限級数\(\sum x_{n}^{2}\)が収束するような数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)をすべて集めてできる集合を、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{\infty }=\left\{ \left\{ x_{n}\right\} \ |\ \sum_{n=1}^{\infty}x_{n}^{2}<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。

\(\mathbb{R} ^{\infty }\)の要素である数列\(x=\left\{ x_{n}\right\} \in \mathbb{R} ^{\infty }\)およ