単一財オークションを記述する環境において、任意の入札者の利得関数が非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定を満たす場合、そのような環境を準線型環境と呼びます。
単一財オークション市場においてメカニズムを提示された入札者たちが直面する戦略的状況はベイジアンゲームとして定式化されます。そのようなゲームにおいて、それぞれの入札者は自身のタイプと信念にもとづいて他の入札者たちのタイプを予想し、その予想から算出される中間期待利得を最大化するような純粋戦略を採用するものとします。
メカニズムのもとでのベイジアンゲームは不完備情報であり、そこに均衡は存在するとは限りません。一方、共通事前分布を導入してゲームをハサーニ変換すればゲームは完備情報ゲームになるため、均衡の存在を保証できるとともに分析が容易になります。
単一オークション環境において入札者たちの利得関数に関して非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値を仮定するとともに、入札者たちのタイプに関して共通事前分布と分布独立性を仮定する場合、そのような環境をIPVモデルと呼びます。
単一オークション環境において入札者たちの利得関数に関して非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値を仮定するとともに、入札者たちのタイプに関して共通事前分布、分布独立性、分布対称性を仮定する場合、そのような環境をSIPVモデルと呼びます。
単一財オークションにおけるメカニズムのもとで、すべての入札者が正直戦略にしたがって入札することがベイジアンナッシュ均衡になる場合、そのようなメカニズムは誘因両立性を満たすと言います。
単一財オークションにおけるメカニズムが与えられたとき、すべての入札者にとって、メカニズムに参加することで損をしないことが保証されている場合、そのメカニズムは個人合理性を満たすと言います。
単一財オークションを行った結果として主催者の収支が常に均衡するようなメカニズムを狭義予算均衡メカニズムと呼び、主催者の収支が赤字にならないことを保証するメカニズムを広義予算均衡メカニズムと呼びます。
オークションを行った結果がパレート効率的であることが保証される場合、そのようなメカニズムは事後効率性を満たすと言います。特に、準線型環境における効率メカニズムは配分ルールの形状として特徴づけられます。
IPVモデルにおいて、配分ルールを共有する誘因両立的なメカニズムのもとでは、入札者の利得や支払い、オークションの主催者による収入などが一定になることを示します。
配分ルールを共有する2つの誘因両立メカニズムを任意に選んだとき、一定の条件のもとでは、入札者が均衡において直面する中間期待利得は、入札者のタイプに関わらず、どちらのメカニズムを採用する場合でも一致します。これを利得同値定理と呼びます。
配分ルールを共有する2つの誘因両立メカニズムを任意に選んだとき、一定の条件のもとでは、入札者が均衡において直面する中間期待支払いは、入札者のタイプに関わらず、どちらのメカニズムを採用する場合でも一致します。これを支払い同値定理と呼びます。
配分ルールを共有する2つの誘因両立メカニズムを任意に選んだとき、一定の条件のもとでは、オークションの主催者が直面する事前期待収入は、どちらのメカニズムを採用する場合でも一致します。これを収入同値定理と呼びます。
単一オークションのIPVモデルにおけるメカニズムが与えられたとき、任意の入札者の均衡中間利得関数が積分形式で表されるとともに均衡中間期待配分関数が単調増加であることは、そのメカニズムが誘因両立的であるための必要十分条件です。
単一オークションのIPVモデルにおけるメカニズムの配分ルールが上位落札性を満たすとともに、そのメカニズムが遂行する純粋戦略が対称的かつ単調増加である場合、そのメカニズムは事後効率的であることが保証されます。
単一オークションのSIPVモデルにおいて異なるメカニズムを採用した場合においても、メカニズムの均衡において入札者が直面する期待利得が等しくなるための条件を明らかにします。
単一オークションのSIPVモデルにおいて異なるメカニズムを採用した場合においても、メカニズムの均衡において入札者が直面する期待支払いが等しくなるための条件を明らかにします。
単一オークションのSIPVモデルにおいて異なるメカニズムを採用した場合においても、メカニズムの均衡においてオークションの主催者が直面する事前期待収入が等しくなるための条件を明らかにします。
準線型環境において、グローヴスメカニズムと呼ばれるオークションルールを紹介した上で、それが耐戦略性と配分効率性を満たすことを証明します。
単一財オークション環境において非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つ場合、耐戦略的かつ配分効率的なメカニズムは必ずグローヴスメカニズムになります。これをグリーン=ラフォン=ホルムストロームの定理と呼びます。
クラークのピボットルールによって特徴づけられるグローヴスメカニズムをVCGオークションと呼びます。一定の条件のもと、VCGオークションは耐戦略性、配分効率性、事後個人合理性、弱予算均衡性を満たします。
最高額を入札した入札者を勝者とし、勝者に対して二番目に高い入札額に等しい金額を支払わせるオークションを第二価格封印オークション(セカンドプライス・オークション)と呼びます。第二価格封印オークションはVCGオークションと一致します。
単一財オークション環境がSIPVモデルである場合に、第二価格封印オークションの均衡である正直戦略の組において、入札者が直面する期待支払いや期待利得、オークションの主催者が直面する期待収入などを明らかにします。
単一財オークションでは複数の入札者が最高額を入札する状況が起こり得ます。そのような状況に対応できる形で第二価格封印オークション(セカンドプライスオークション)を修正します。
単一財オークションでは商品の売り手が最低落札価格の導入を望む状況は起こり得ます。そのような状況に対応できる形で第二価格封印オークション(セカンドプライスオークション)を修正します。
単一財オークションでは主催者が入札者たちから参加料を徴収することを望む状況は起こり得ます。そのような状況に対応できる形で第二価格封印オークション(セカンドプライスオークション)を修正します。
第一価格封印オークションについて解説します。
最高額を入札した入札者を勝者とし、勝者に対して自身の入札額に等しい金額を支払わせるオークションを第一価格封印オークション(ファーストプライス・オークション)と呼びます。第一価格封印オークションは誘因両立的ではありませんが、一定の条件のもとで均衡を持ちます。
単一財オークション環境がSIPVモデルである場合に、第一価格封印オークションのベイジアンナッシュ均衡において、入札者が直面する期待支払いや期待利得、オークションの主催者が直面する期待収入などを明らかにします。
単一財オークションでは複数の入札者が最高額を入札する状況が起こり得ます。そのような状況に対応できる形で第一価格封印オークション(ファーストプライスオークション)を修正します。
イングリッシュ・オークションについて解説します。
オークションの主催者が最低値から価格を段階的に上げていき、最後の1人を除いたすべての入札者が脱落した時点で売買が成立し、落札者は最後の脱落者が脱落した価格に相当する金額を支払うオークションを競り上げ式公開オークションと呼びます。一定の条件のもと、これは第二価格封印オークションと戦略的に同等です。
競り上げ式公開オークションにはいくつかのバリエーションが存在します。ここでは日本式オークションとイギリス式オークションについて解説します。
ダッチオークションについて解説します。
オークションの主催者が最高値から価格を段階的に下げていき、最初に買い手がついた価格で売買が成立し、落札者はその価格に相当する金額を支払うオークションを競り下げ式公開オークションと呼びます。これは第一価格封印オークションと戦略的に同等です。
競り下げ式公開オークション(オランダ式オークション)と第一価格封印オークション(ファーストプライス・オークション)は戦略的同等であるため、本来、得られる結果も同じはずですが、実際には様々な反例が観察されています。
以下の分野の知識があると本節を問題なく読み進めることができます。
微分は「変化」に関する学問です。微分を学べば物事や現象の「変化」を定量的に記述できるようになるだけでなく、変化がもたらす影響を評価したり、変化が起きる場での最適な状態を特定できるようになります。
集合のそれぞれの要素に対して別の集合の部分集合を1つずつ定める規則を対応と呼びます。ここでは対応、対応による像、逆像(上逆像・下逆像)、逆対応、対応の連続性(上連続性・下連続性)、ベルジュの最大値定理、および不動点定理などについて解説します。
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