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グローヴスメカニズム

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グローヴスメカニズム

単一財オークション環境において準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つものとします。つまり、入札者\(i\in I\)が状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)において結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得が、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =v_{i}\left( a_{I},\theta
_{i}\right) -t_{i}
\end{equation*}であるということです。ただし、\(v_{i}\left( \cdot ,\theta_{I}\right) :A\rightarrow \mathbb{R} \)は評価関数です。以上の状況において、メカニズム\(\left( a,t\right) :\Theta_{I}\rightarrow A\times \mathbb{R} ^{n}\)が入札者たちが表明するタイプの組\(\hat{\theta}_{I}\in\Theta _{I}\)に対して定める結果が、任意の関数\(h_{i}:\Theta _{-i}\rightarrow \mathbb{R} \)を用いて、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ a\left( \hat{\theta}_{I}\right) &\in &\mathrm{argmax}_{a_{I}\in A}\sum_{i\in I}v_{i}\left( a_{I},\hat{\theta}_{i}\right)
\\
\left( b\right) \ t_{i}\left( \hat{\theta}_{I}\right) &=&h_{i}\left( \hat{\theta}_{-i}\right) -\sum_{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }v_{j}\left(
a\left( \hat{\theta}_{I}\right) ,\hat{\theta}_{j}\right)
\end{eqnarray*}という形で表される場合、このようなメカニズムをグローヴスメカニズム(Groves mechanism)と呼びます。これはどのような意味を持つのでしょうか。

準線型環境を想定しているため、入札者たちが表明するタイプの組が\(\hat{\theta}_{I}\)であるとき、配分\(a_{I}\in A\)がもたらす社会的余剰は、\begin{equation*}\sum_{i\in I}v_{i}\left( a_{I},\hat{\theta}_{i}\right)
\end{equation*}となります。グローヴスメカニズムは、この社会的余剰を最大化するような配分を選び取る配分効率的なメカニズムです。

グローヴスメカニズムが選択する配分\(a\left( \hat{\theta}_{I}\right) \)は配分効率的であるため、グローヴスメカニズムが入札者\(i\)に対して移転する金額\begin{equation*}\sum_{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }v_{j}\left( a\left( \hat{\theta}_{I}\right) ,\hat{\theta}_{j}\right)
\end{equation*}は、入札者\(i\)を含めたすべての入札者の間で商品を効率的に配分したときに、入札者\(i\)以外のすべての入札者たちが得る社会的余剰に相当します。グローヴスメカニズムは入札者\(i\)に対して以上の金額を支払う一方で、\(h_{i}\left( \hat{\theta}_{-i}\right) \)に相当する金額を支払わせることにより支出の穴埋めを行います。

例(グローヴスメカニズム)
単一財オークション環境において準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定に加えて非外部性の仮定が成り立つ場合、入札者\(i\in I\)が状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)において結果\(\left( a,t\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得は、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =a_{i}\cdot \theta _{i}-t_{i}
\end{equation*}となります。以上の状況において、グローヴスメカニズム\(\left(a,t\right) :\Theta _{I}\rightarrow A\times \mathbb{R} ^{n}\)は入札者たちが表明するタイプの組\(\hat{\theta}_{I}\in\Theta _{I}\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ a\left( \hat{\theta}_{I}\right) &\in &\mathrm{argmax}_{a_{I}\in A}\sum_{i\in I}a_{i}\cdot \hat{\theta}_{i} \\
\left( b\right) \ t_{i}\left( \hat{\theta}_{I}\right) &=&h_{i}\left( \hat{\theta}_{-i}\right) -\sum_{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }a_{j}\left(
\hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{j}
\end{eqnarray*}を定めます。ただし、\(h_{i}:\Theta _{-i}\rightarrow \mathbb{R} \)は任意の関数です。
例(グローヴスメカニズム)
単一財オークション環境において非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つものとします。入札者集合は\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であり、彼らの入札額が、\begin{equation*}\hat{\theta}_{I}=\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) =\left( 10,9,8\right)
\end{equation*}であるものとします。入札者\(1\)が最大の支払い意思額を表明しているため、入札者\(1\)を勝者とすることにより配分効率性は達成されます。したがって、グローヴスメカニズムの配分ルール\(a:\Theta _{I}\rightarrow A\)は、\begin{equation*}a\left( \hat{\theta}_{I}\right) =\left( a_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right)
,a_{2}\left( \hat{\theta}_{I}\right) ,a_{3}\left( \hat{\theta}_{I}\right)
\right) =\left( 1,0,0\right)
\end{equation*}を定め、移転ルール\(t:\Theta _{I}\rightarrow \mathbb{R} ^{3}\)が定める所得移転\(t\left( \theta _{I}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)は、\begin{eqnarray*}t_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) &=&h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) -\left[ a_{2}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{2}+a_{3}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{3}\right] =h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) \\
t_{2}\left( \hat{\theta}_{I}\right) &=&h_{2}\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{3}\right) -\left[ a_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{1}+a_{3}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{3}\right] =h_{2}\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{3}\right) -10 \\
t_{3}\left( \hat{\theta}_{I}\right) &=&h_{3}\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{2}\right) -\left[ a_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{1}+a_{2}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \hat{\theta}_{2}\right] =h_{3}\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{2}\right) -10
\end{eqnarray*}となります。

 

グローヴスメカニズムの耐戦略性

グローヴスメカニズムは耐戦略的なメカニズムです。つまり、グローヴスメカニズムでは正直戦略の組が支配戦略均衡になります。任意の入札者にとって、真の支払い意思額を正直に入札することが支配戦略になるということです。

命題(グローヴスメカニズムの耐戦略性)
単一財オークション環境において準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つ場合、グローヴスメカニズムは耐戦略性を満たす。

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例(グローヴスメカニズム)
単一財オークション環境において非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つものとします。入札者集合は\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であり、入札者\(1\)の真のタイプが、\begin{equation*}\theta _{1}=10
\end{equation*}であるものとします。入札者たちが表明するタイプが、\begin{equation*}
\hat{\theta}_{I}=\left( \hat{\theta}_{1},\hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right)
\end{equation*}であるものとします。ただし、\(\hat{\theta}_{2}\geq \hat{\theta}_{3}\)です。グローヴスメカニズムの配分ルール\(a\)は、\begin{equation*}a_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\quad \hat{\theta}_{1}\geq \hat{\theta}_{2}\right) \\
0 & \left( if\quad \hat{\theta}_{1}<\hat{\theta}_{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定め、移転ルール\(t\)は、\begin{equation*}t_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) & \left( if\quad \hat{\theta}_{1}\geq \hat{\theta}_{2}\right) \\
h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) -\hat{\theta}_{2} &
\left( if\quad \hat{\theta}_{1}<\hat{\theta}_{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるため、入札者\(1\)が得る利得は、\begin{equation*}a_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) \cdot \theta _{1}-t_{1}\left( \hat{\theta}_{I}\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
10-h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) & \left( if\quad
\hat{\theta}_{1}\geq \hat{\theta}_{2}\right) \\
\hat{\theta}_{2}-h_{1}\left( \hat{\theta}_{2},\hat{\theta}_{3}\right) &
\left( if\quad \hat{\theta}_{1}<\hat{\theta}_{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。したがって、\(10\geq \hat{\theta}_{2}\)である場合には\(\hat{\theta}_{1}\geq \hat{\theta}_{2}\)を満たす任意の\(\hat{\theta}_{1}\)が最適であり、逆に\(10<\hat{\theta}_{2}\)である場合には\(\hat{\theta}_{1}<\hat{\theta}_{2}\)を満たす任意の\(\hat{\theta}_{1}\)が最適です。\(\hat{\theta}_{1}=10\)すなわち\(\hat{\theta}_{1}=\theta _{1}\)はいずれの条件も満たすため、入札者\(1\)にとって正直戦略は支配戦略です。

準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つ環境においてグローヴスメカニズム\(\left( a,t\right) \)が運用されているものとします。状態\(\theta _{I}\)において、入札者\(i\)以外の入札者たちが正直戦略にしたがって\(\theta _{-i}\)を入札する一方で、入札者\(i\)が\(\hat{\theta}_{i}\)を入札することにより得られる利得は、\begin{eqnarray*}&&v_{i}\left( a\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right) ,\theta
_{i}\right) -t_{i}\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right) \\
&=&v_{i}\left( a\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right) ,\theta
_{i}\right) -\left[ h_{i}\left( \theta _{-i}\right) -\sum_{j\in I\backslash
\left\{ i\right\} }v_{j}\left( a\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right)
,\theta _{j}\right) \right] \quad \because t\text{の定義}
\\
&=&\sum_{j\in I}v_{j}\left( a\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right)
,\theta _{j}\right) -h_{i}\left( \theta _{-i}\right)
\end{eqnarray*}となります。注目すべきは、入札者\(i\)による支払い\(h_{i}\left( \theta _{-i}\right) \)は自身の入札額\(\hat{\theta}_{i}\)に依存しないため、入札者\(i\)のインセンティブに影響を与えないという点です。したがって、入札者\(i\)の意思決定において重要であることは社会的余剰\begin{equation*}\sum_{j\in I}v_{j}\left( a\left( \hat{\theta}_{i},\theta _{-i}\right)
,\theta _{j}\right)
\end{equation*}の部分であり、入札者\(i\)はこれを最大化するような入札額\(\hat{\theta}_{i}\)を選択しようとします。ただ、グローヴスメカニズムの配分ルール\(a\)は、状態\(\theta _{I}\)において、\begin{equation*}a\left( \theta _{I}\right) \in \mathrm{argmax}_{a_{I}\in
A}\sum_{j\in I}v_{j}\left( a_{I},\theta _{j}\right)
\end{equation*}を満たすため、入札者\(i\)は真の支払い意思額を表明することにより、すなわち\(\hat{\theta}_{i}=\theta _{i}\)とすることにより社会的余剰を最大化し、結果として自身が得る利得を最大化できます。つまり、グローブスメカニズムの誘因両立性を支えているのは移転ルール\(t\)の中でも入札者\(i\)に社会的余剰を移転している部分です。このような仕組みを設けることにより、入札者\(i\)による入札行動がもたらす外部効果が内部化され、その結果、入札者\(i\)が自身の真の支払い意思額を正直に入札するインセンティブが発生します。

グローヴスメカニズムが誘因両立性であることは私的価値の仮定に依存します。グローヴスメカニズムの移転ルール\(t\)は入札額の組\(\hat{\theta}_{I}\in \Theta _{I}\)に対して、\begin{equation}t_{i}\left( \hat{\theta}_{I}\right) =h_{i}\left( \hat{\theta}_{-i}\right)
-\sum_{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }v_{j}\left( a\left( \hat{\theta}_{I}\right) ,\hat{\theta}_{j}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を定めますが、上のように、入札者\(i\)の所得移転に他の入札者たちが得る余剰を組み込むことにより、メカニズムの誘因両立性を担保しています。一方、私的価値の仮定が成り立たない場合、入札者\(i\)による入札額\(\hat{\theta}_{i}\)は配分\(a\left( \hat{\theta}\right) \)に影響を与えるだけでなく、主催者が想定する他の入札者\(j\ \left( \not=i\right) \)たちの評価関数の形状\(v_{j}\left( \cdot ,\hat{\theta}\right) \)にも影響を与えることができます。この場合、入札者\(i\)は偽りのタイプを入札することにより他の入札者たちの評価関数の形状を誤った形で伝えることができ、そのような駆け引きを通じて\(\left( 1\right) \)の水準に影響を与えることができるため、自身の利得を高められる余地があります。私的価値の仮定が成り立つ場合、他の入札者たちの評価関数は\(v_{j}\left( \cdot ,\hat{\theta}_{j}\right) \)となり、入札者\(i\)による入札額の影響を受けないため、この場合には先のような駆け引きは不可能です。

 

グローヴスメカニズムの事後効率性

グローヴスメカニズムの配分ルールは表明されたタイプの組に対して効率的な配分を特定し、それを実行します。したがって、グローヴスメカニズムは事後効率的です。

命題(グローヴスメカニズムの事後効率性)
単一財オークション環境において準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つ場合、グローヴスメカニズムは事後効率性を満たす。

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例(グローヴスメカニズム)
単一財オークション環境において非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つものとします。入札者集合は\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であり、彼らの真のタイプが、\begin{equation*}\theta _{I}=\left( \theta _{1},\theta _{2},\theta _{3}\right) =\left(
10,9,8\right)
\end{equation*}であるものとします。グローヴスメカニズムは耐戦略的であるため、入札者たちが真のタイプを表明するものと仮定すると、グローヴスメカニズムの配分ルール\(a\)は、\begin{equation*}a\left( \theta _{I}\right) =\left( a_{1}\left( \theta _{I}\right)
,a_{2}\left( \theta _{I}\right) ,a_{3}\left( \theta _{I}\right) \right)
=\left( 1,0,0\right)
\end{equation*}を定め、移転ルール\(t\)が定める所得移転\(t\left(\theta _{I}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)は、\begin{eqnarray*}t_{1}\left( \theta _{I}\right) &=&h_{1}\left( \theta _{2},\theta
_{3}\right) \\
t_{2}\left( \theta _{I}\right) &=&h_{2}\left( \theta _{1},\theta
_{3}\right) -10 \\
t_{3}\left( \theta _{I}\right) &=&h_{3}\left( \theta _{1},\theta
_{2}\right) -10
\end{eqnarray*}を定めます。入札者たちが得る利得は、\begin{eqnarray*}
a_{1}\left( \theta _{I}\right) \cdot \theta _{1}-t_{1}\left( \theta
_{I}\right) &=&10-h_{1}\left( \theta _{2},\theta _{3}\right) \\
a_{2}\left( \theta _{I}\right) \cdot \theta _{2}-t_{2}\left( \theta
_{I}\right) &=&10-h_{2}\left( \theta _{1},\theta _{3}\right) \\
a_{3}\left( \theta _{I}\right) \cdot \theta _{3}-t_{3}\left( \theta
_{I}\right) &=&10-h_{3}\left( \theta _{1},\theta _{2}\right)
\end{eqnarray*}であり、オークションの主催者が得る利得は、\begin{eqnarray*}
t_{1}\left( \theta _{I}\right) +t_{2}\left( \theta _{I}\right) +t_{3}\left(
\theta _{I}\right) &=&h_{1}\left( \theta _{2},\theta _{3}\right)
+h_{2}\left( \theta _{1},\theta _{3}\right) -10+h_{3}\left( \theta
_{1},\theta _{2}\right) -10 \\
&=&h_{1}\left( \theta _{2},\theta _{3}\right) +h_{2}\left( \theta
_{1},\theta _{3}\right) +h_{3}\left( \theta _{1},\theta _{2}\right) -20
\end{eqnarray*}であるため、社会的余剰はこれらの総和である\(10\)となります。上の命題より、これは実現可能な社会的余剰の最大値です。

 

グローヴスメカニズムにおける主催者の収支

グローヴスメカニズムは耐戦略性を満たすため、状態が\(\theta _{I}\)であるときに均衡において入札者\(i\)に課される所得移転は、\begin{equation*}t_{i}\left( \theta _{I}\right) =h_{i}\left( \theta _{-i}\right) -\sum_{j\in
I\backslash \left\{ i\right\} }v_{j}\left( a\left( \theta _{I}\right)
,\theta _{j}\right)
\end{equation*}となります。入札者たちが配分に対して非負の評価を与える場合には、\begin{equation*}
\sum_{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }v_{j}\left( a\left( \theta
_{I}\right) ,\theta _{j}\right) \geq 0
\end{equation*}となるため、入札者\(i\)はグローヴスメカニズムの均衡において上記の金額を主催者から受け取ります。したがって、\(h_{i}\left( \theta_{-i}\right) \)の値によっては、\begin{equation*}t_{i}\left( \theta _{I}\right) <0
\end{equation*}となるため、グローヴスメカニズムを実施した結果としてすべての入札者が主催者から支払いを受けることになり、主催者の収支は赤字になってしまいます。逆に言えば、主催者は\(t_{i}\left( \theta _{I}\right) \)が負にならないように関数\(h_{i}\)の形状を上手くデザインすることで、自身の収支が赤字にならないように保証できる可能性があります。

次回はグリーン=ラフォン=ホルムストロームの定理について解説します。

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