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SINGLE OBJECT AUCTION

単一財オークションのモデル

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単一財オークション

1つの商品をめぐって複数の買い手たちが入札を行うオークションを想定します。問題としている商品は複数に分割できないものとします。それぞれの入札者は商品に対する評価額、すなわち商品に対して支払ってもよい金額を頭の中に思い描いています。商品への評価額は入札者ごとに異なりますが、これは入札者の私的情報であり、他の人たちがそれを事前に観察することはできません。以上のような資源配分問題を単一財オークション(single object auction)と呼びます。以降では単一財オークションをモデルとして定式化します。

 

プレイヤー集合

まずはプレイヤーの表現です。単一財オークションに参加するすべての入札者(bidder)からなる集合を入札者集合(bidder set)と呼び、これを\(I\)で表記します。特に、有限\(n\)人の入札者がオークションに参加する場合、入札者集合を、\begin{equation*}I=\left\{ 1,2,\cdots ,n\right\}
\end{equation*}と特定します。入札者集合\(I\)に属する\(i\ \left(=1,2,\cdots ,n\right) \)番目のプレイヤーを入札者\(i\)(bidder \(i\))と呼びます。\(i\in I\)です。

例(入札者集合)
問題としている単一財オークションに参加する入札者が\(3\)人であれば、入札者集合は、\begin{equation*}I=\left\{ 1,2,3\right\}
\end{equation*}となります。

商品の売り手をオークションのプレイヤーに含めるべきかどうかは重要な問題です。商品の所有者がオークションの主催者に商品の販売を委託する場合や、売り手自身がオークションを主催する場合などには、売り手をオークションのプレイヤーに含める必要はありません。一方、売り手もまた商品の販売希望額を提示するタイプのオークション(ダブルオークション)では、売り手もまた入札者とともにオークションのプレイヤーとみなした上で分析を行う必要があります。以降では特に断りのない場合において、入札者だけをオークションのプレイヤーとみなした上で分析を行います。

 

商品への支払い意思額

単一財オークションにおいて、それぞれの入札者\(i\in I\)は商品に対して支払ってもよい金額を頭の中で想定しているものとします。そのような金額の最大値を支払い意思額(willingness to pay)と呼び、それを\(\theta _{i}\)で表記します。つまり、入札者は問題としている商品に対して最大で\(\theta _{i}\)まで支払ってもよいと考えているということです。

すべての入札者の支払い意思額からなる組を\(\theta _{I}=\left( \theta _{i}\right) _{i\in I}\)で表記します。入札者\(i\)以外の入札者たちの支払い意思額からなる組を\(\theta _{-i}=\left( \theta _{j}\right) _{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }\)で表記します。\(\theta _{I}=\left( \theta _{i},\theta _{-i}\right) \)です。

入札者\(i\)の支払い意思額\(\theta _{i}\)がとり得る値からなる集合を、\begin{equation*}\Theta _{i}=\left[ \underline{\theta }_{i},\overline{\theta }_{i}\right] \subset \mathbb{R} \end{equation*}と表記します。つまり、\(\theta _{i}\)は\(\underline{\theta }_{i}\)以上\(\overline{\theta }_{i}\)以下の実数を値としてとり得るということです。多くの場合、任意の入札者\(i\in I\)について、\begin{equation*}\underline{\theta }_{i}=0
\end{equation*}が成り立つものと仮定します。つまり、支払い意思額が負の実数になる可能性を排除するということです。この場合、\begin{equation*}
\Theta _{i}=\left[ 0,\overline{\theta }_{i}\right] \subset \mathbb{R} \end{equation*}となります。

すべての入札者の支払い意思額集合からなる組を\(\Theta _{I}=\left( \Theta _{i}\right)_{i\in I}\)で表記します。\(\theta_{I}\in \Theta _{I}\)です。入札者\(i\)以外の入札者たちの支払い意思額集合からなる組を\(\Theta _{-i}=\left( \Theta_{j}\right) _{j\in I\backslash \left\{ i\right\} }\)で表記します。\(\theta _{-i}\in \Theta _{-i}\)です。また、\(\Theta _{I}=\left( \Theta_{i},\Theta _{-i}\right) \)です。

例(商品への支払い意思額)
入札者集合が\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であり、全員の支払い意思額が任意の非負の実数を値としてとり得るならば、\begin{equation*}\Theta _{i}=\mathbb{R} _{+}=[0,+\infty )\quad \left( i=1,2,3\right)
\end{equation*}となります。

 

オークションの結果

オークションにおいて起こり得る結果を記述するためには、商品を入手する入札者と、入札者が支払う金額をそれぞれ特定する必要があります。以降で順番に解説します。

単一財オークションを行った結果として実現し得る資源配分を配分(allocation)と呼び、これを、\begin{equation*}
a_{I}=\left( a_{1},\cdots ,a_{n}\right)
\end{equation*}と表記します。ただし、\(a_{i}\)は入札者\(i\)が商品を入手する確率であり、任意の配分\(a_{I}\)は以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall i\in I:a_{i}\in \left[ 0,1\right] \\
&&\left( b\right) \ \sum_{i=1}^{n}a_{i}\leq 1
\end{eqnarray*}を満たすものとします。条件\(\left( a\right) \)は、配分\(a_{I}\)においてそれぞれの入札者\(i\)が商品を入手する確率が\(0\)以上\(1\)以下であることを意味します。条件\(\left( b\right) \)は、配分\(a_{I}\)において何らかの入札者が商品を落札する確率が\(1\)以下であることを意味します。したがって、配分\(a_{I}\)において商品がいかなる落札者によっても落札されない(商品が売れ残る)確率は、\begin{equation*}1-\sum_{i=1}^{n}a_{i}
\end{equation*}となります。

以上の条件を満たす\(a_{I}\)を実現可能な配分(feasible allocation)と呼ぶこともあります。また、すべての実現可能な配分からなる集合を\(A\)で表記し、これを配分集合(allocation set)と呼びます。\(a_{I}\in A\)です。

配分\(a_{I}\)において\(a_{i}=1\)が成り立つ場合には入札者\(i\)を勝者(winner)と呼び、\(a_{i}=0\)が成り立つ場合には入札者\(i\)を敗者(lower)と呼ぶ場合もあります。勝者は商品を確実に入手し、敗者は商品を確実に入手できません。

例(配分)
入札者集合が\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であるとき、入札者\(1\)が商品を入手するという配分は、\begin{equation*}\left( a_{1},a_{2},a_{3}\right) =\left( 1,0,0\right)
\end{equation*}と表現されます。全員が等しい確率で商品を入手するという配分は、\begin{equation*}
\left( a_{1},a_{2},a_{3}\right) =\left( \frac{1}{3},\frac{1}{3},\frac{1}{3}\right)
\end{equation*}と表現されます。商品が売れ残るという配分は、\begin{equation*}
\left( a_{1},a_{2},a_{3}\right) =\left( 0,0,0\right)
\end{equation*}と表現されます。

単一財オークションを行った結果として実行される所得移転(transfer)を、\begin{equation*}
t_{I}=\left( t_{1},\cdots ,t_{n}\right)
\end{equation*}と表記します。ただし、\(t_{i}\)は入札者\(i\)に課される所得移転であり、任意の実数を値としてとり得るものとします。その上で、\begin{eqnarray*}t_{i} &>&0\Leftrightarrow \text{入札者}i\text{は}t_{i}\text{だけ支払う} \\
t_{i} &<&0\Leftrightarrow \text{入札者}i\text{は}t_{i}\text{だけ受け取る} \\
t_{i} &=&0\Leftrightarrow \text{入札者}i\text{の収支は均衡}
\end{eqnarray*}と定めます。

所得移転\(t_{I}\)が与えられたとき、すべての入札者による所得移転の総和\begin{equation*}\sum_{i=1}^{n}t_{i}
\end{equation*}をとると、これはオークションの主催者に課される所得移転に相当します。つまり、\begin{eqnarray*}
\sum_{i=1}^{n}t_{i} &>&0\Leftrightarrow \text{主催者の収支は黒字} \\
\sum_{i=1}^{n}t_{i} &<&0\Leftrightarrow \text{主催者の収支は赤字} \\
\sum_{i=1}^{n}t_{i} &=&0\Leftrightarrow \text{主催者の収支は均衡}
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。

任意の入札者\(i\in I\)に課される所得移転は\(t_{i}\in \mathbb{R} \)を満たすため、所得移転\(t_{I}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の点として表現されます。起こり得るすべての所得移転からなる集合\(\mathbb{R} ^{n}\)を所得移転集合(transfer set)と呼びます。\(t_{I}\in \mathbb{R} ^{n}\)です。

例(所得移転)
入札者集合が\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であるとき、入札者\(1\)だけが\(100\)を支払うという所得移転は、\begin{equation*}\left( t_{1},t_{2},t_{3}\right) =\left( 100,0,0\right)
\end{equation*}と表現されます。以上の所得移転のもとでオークションの主催者が直面する所得移転は、\begin{eqnarray*}
t_{1}+t_{2}+t_{3} &=&100+0+0 \\
&=&100
\end{eqnarray*}となります。つまり、主催者は収入\(100\)を得るということです。

単一財オークションにおける結果(outcome)は、配分と所得移転の組\begin{equation*}
\left( a_{I},t_{I}\right) =\left( a_{1},\cdots ,a_{n},t_{1},\cdots
,t_{n}\right)
\end{equation*}として定義されます。結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)において、入札者は確率\(a_{i}\)で商品を入手する対価として所得移転\(t_{i}\)が課されます。また、商品が売れ残る確率は、\begin{equation*}1-\sum_{i=1}^{n}a_{i}
\end{equation*}であり、オークションの主催者に課される所得移転は、\begin{equation*}
\sum_{i=1}^{n}t_{i}
\end{equation*}となります。起こり得るすべての結果からなる集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)を結果集合(outcome set)と呼びます。\(\left(a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)です。

例(結果)
入札者集合が\(I=\left\{ 1,2,3\right\} \)であるとき、入札者\(3\)が商品を入手する対価として\(100\)だけ支払い、他の入札者たちには所得移転が課されない場合、そのような結果は、\begin{equation*}\left( a_{1},a_{2},a_{3},t_{1},t_{2},t_{3}\right) =\left(
0,0,1,0,0,100\right)
\end{equation*}と表記されます。以上の結果においてオークションの主催者が直面する所得移転は、\begin{eqnarray*}
t_{1}+t_{2}+t_{3} &=&0+0+100 \\
&=&100
\end{eqnarray*}となります。つまり、主催者は収入\(100\)を得るということです。

 

結果どうしを比較する選好関係

それぞれの入札者\(i\)は商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)を持っていますが、単一財オークションにおいて起こり得る帰結が結果\(\left(a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)として表現されることを踏まえると、エージェント\(i\)は商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)だけでなく、結果どうしを比較する選好を持っていなければ、オークションにおいて起こり得る帰結を評価できないことになってしまいます。そこで、それぞれの入札者\(i\)は結果どうしを比較する結果集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)上に定義された選好関係(preference relation)を持っているものとし、これを\(\succsim _{i}\)で表記します。入札者\(i\)の選好関係\(\succsim _{i}\)は結果集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)上の二項関係であり、任意の結果\(x,y\in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}x\succsim _{i}y\Leftrightarrow \text{入札者}i\text{は}x\text{を}y\text{以上に好む}
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。

入札者\(i\)が結果どうしを比較する選好関係\(\succsim _{i}\)が与えられたとき、任意の結果\(x,y\in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}x\succ _{i}y\Leftrightarrow x\succsim _{i}y\wedge \lnot \left( y\succsim
x\right)
\end{equation*}を満たすものとして結果集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)上の新たな二項関係\(\succ _{i}\)を定義し、これを狭義選好関係(strictpreference relation)と呼びます。また、任意の結果\(x,y\in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}x\sim _{i}y\Leftrightarrow x\sim _{i}y\wedge y\sim _{i}x
\end{equation*}を満たすものとして結果集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)上の新たな二項関係\(\sim _{i}\)を定義し、これを無差別関係(indifferencerelation)と呼びます。

入札者\(i\)が結果どうしを比較する選好\(\succsim _{i}\)は、自身にとっての商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)に依存して変化します。なぜなら、例えば、入札者\(i\)が商品を不要と考えている場合には、入札者\(i\)はその商品を落札せず支払いも行わないことを最も好むと考えるのが自然です。逆に、入札者\(i\)が商品を高く評価している場合には、そのような結果よりも、商品を正の確率で落札し、支払いを行う結果を好むと考えるのが自然です。こうした事情を踏まえると、入札者\(i\)が配分どうしを比較する選好\(\succsim _{i}\)は、自身にとっての商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)に依存して変化するという意味を込めて、これを\(\succsim _{i}\left[ \theta_{i}\right] \)と表記すべきです。

入札者\(i\)が結果どうしを比較する選好\(\succsim _{i}\)は、自身にとっての商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)だけでなく、他の入札者たちにとっての商品への支払い意思額\(\theta _{-i}\)に依存する状況も起こり得ます。例えば、入札者\(i\)が落札した商品を転売することを見越した上でオークションに参加する場合、他の入札者たちが商品を低く評価しているならば、入札者\(i\)は商品を落札せず支払いも行わないことを最も好むと考えるのが自然です。逆に、他の入札者たちが商品を高く評価している場合には、そのような結果よりも、商品を正の確率で落札し、支払いを行う結果を好むと考えるのが自然です。こうした事情を踏まえると、入札者\(i\)が配分どうしを比較する選好\(\succsim _{i}\)は、自身にとっての商品への支払い意思額\(\theta _{i}\)だけでなく、他の入札者たちにとっての支払い意思額\(\theta _{-i}\)にも依存して変化するという意味を込めて、これを\(\succsim _{i}\left[ \theta_{i},\theta _{-i}\right] \)すなわち\(\succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \)と表記すべきです。

例(選好関係)
入札者\(i\)は自身が商品を落札する場合、支払金額が少ない方がより望ましいものと考えているものとします。このような選好を持つ入札者\(i\)の選好関係\(\succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \)のもとでは、\(a_{i}=1\)を満たす配分\(a_{I}\in A\)と\(t_{i}^{\prime }>t_{i}\)を満たす所得移転\(t_{I},t_{I}^{\prime}\in \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}\left( a_{I},t_{I}\right) \ \succ _{i}\left[ \theta _{I}\right] \ \left(
a_{I},t_{I}^{\prime }\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

入札者\(i\)の選好関係\(\succsim_{i}\left[ \theta _{I}\right] \)が与えられたとき、ある関数\(u_{i}\left(\cdot ,\theta _{I}\right) :A\times \mathbb{R} ^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、任意の結果\(x,y\in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}u_{i}\left( x,\theta _{I}\right) \geq u_{i}\left( y,\theta _{I}\right)
\Leftrightarrow x\ \succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \ y
\end{equation*}という関係が成り立つ場合には、この関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)のことを選好関係\(\succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \)を表現する利得関数(payoff function)と呼びます。また、利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)が結果\(x\)に対して定める値\(u_{i}\left(x,\theta _{I}\right) \)を\(x\)の利得(payoff)と呼びます。つまり、選好関係\(\succsim _{i}\left[\theta _{I}\right] \)を表現する利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)が存在する場合、結果\(x,y\)について\(x\)が\(y\)以上に望ましいことと、\(x\)の利得が\(y\)の利得以上であることが必要十分になります。入札者\(i\)の選好関係\(\succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \)を表現する利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)が存在する場合には、任意の結果\(x,y\in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{eqnarray*}u_{i}\left( x,\theta _{I}\right) &>&u_{i}\left( y,\theta _{I}\right)
\Leftrightarrow x\ \succ _{i}\left[ \theta _{I}\right] \ y \\
u_{i}\left( x,\theta _{I}\right) &=&u_{i}\left( y,\theta _{I}\right)
\Leftrightarrow x\ \sim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \ y
\end{eqnarray*}などの関係もまた成立します。利得関数を用いれば、結果どうしの相対的な望ましさを、結果がもたらす利得の大小関係として表現できるということです。

一般に、選好関係が与えられたとき、それを表現する利得関数は存在するとは限りません。ただ、利得関数が存在することを保証する上で必要とされる条件については様々なものが知られています。利得関数の存在条件については場を改めて詳しく解説します。以降では入札者の選好が利得関数によって表現されるものと仮定します。

例(利得関数)
入札者\(i\)は自身が商品を落札する場合、支払金額が少ない方がより望ましいものと考えているものとします。このような選好を持つ入札者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\cdot ,\theta _{I}\right) \)のもとでは、\(a_{i}=1\)を満たす配分\(a_{I}\in A\)と\(t_{i}^{\prime }>t_{i}\)を満たす所得移転\(t_{I},t_{I}^{\prime }\in \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}u_{i}\left( a,t,\theta _{I}\right) >u_{i}\left( a,t^{\prime },\theta
_{I}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

 

環境

単一財オークションを表現するモデルの要素は以上ですべてです。つまり、単一財オークション市場を描写するためには、そこに参加する入札者からなる集合\(I\)、それぞれの入札者\(i\in I\)にとっての商品への支払い意思額\(\theta _{i}\in \Theta _{i}\)、オークションの結果集合\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)、それぞれの入札者\(i\)が結果どうしを比較する選好関係\(\succsim _{i}\left[ \theta_{I}\right] \)を特定することになります。以上の要素からなるモデルを、\begin{equation*}\left( I,\left\{ \theta _{i}\right\} _{i\in I},A\times \mathbb{R}^{n} ,\left\{ \succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \right\} _{i\in I}\right)
\end{equation*}と表記し、これによって単一財オークションの定義とします。選好関係\(\succsim _{i}\left[ \theta _{I}\right] \)を表現する利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\cdot ,\theta _{I}\right) \)が存在する場合には、以上のモデルを、\begin{equation*}\left( I,\left\{ \theta _{i}\right\} _{i\in I},A\times \mathbb{R}^{n} ,\left\{ u_{i}\left( \cdot ,\cdot ,\theta _{I}\right) \right\} _{i\in
I}\right)
\end{equation*}と表現することもできます。いずれにせよ、このようなモデルを環境(environment)と呼ぶこともあります。

次回は準線型環境と呼ばれるモデルについて解説します。

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