教材一覧
教材検索

目次

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

集合の間の距離

ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)はユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)に属する2つの点\(x,y\)の間の距離\(d\left( x,y\right) \)を定めますが、距離関数\(d\)を活用することにより、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合どうしの距離を定義することができます。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の空ではない部分集合\(A,B\)を任意に選びます。この2つの集合の距離としては、\(A\)に属する点と\(B\)に属する点の間の距離の中でも最も短いものを採用します。つまり、\(A\)の点\(a\)と\(B\)の点\(b\)をそれぞれ任意に選んだとき、この2つの点の間の距離は\(d\left( a,b\right) \)となるため、この距離がとり得る値の範囲は、\begin{equation}\left\{ d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}となりますが、この集合に属する値の中で最も小さいものとして、\(A\)と\(B\)の間の距離を定義するということです。

一般に、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\(X\)に対してその最小値\(\min X\)は存在するとは限らないため、\(\mathbb{R} \)の部分集合である\(\left(1\right) \)についても、その最小値は存在するとは限りません。したがって、\(A\)と\(B\)の間の距離を\(\left( 1\right) \)の最小値と定義してしまうと、集合の間の距離が定まらないという事態が起こり得ます。このような事態を回避するために、\(A\)と\(B\)の間の距離を\(\left( 1\right) \)の最小値として定義するのではなく、\(\left( 1\right) \)の下限として定義します。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)が与えられたとき、\(A\)から\(B\)への距離を、\begin{equation*}\mathrm{dist}\left( A,B\right) =\inf \left\{ d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\}
\end{equation*}と定義し、これを\(A\)から\(B\)へのユークリッド距離(Euclidean distance from \(A\) to \(B\))と呼びます。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)に対して、その要素\(a\in A,b\in B\)をそれぞれ任意に選びます。距離関数\(d\)の非負性よりそれらの間の距離\(d\left( a,b\right) \)は非負の実数になります。したがって、先の集合\begin{equation*}\left\{ d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\}
\end{equation*}は非負の非負の実数からなる\(\mathbb{R} \)の部分集合であるため下に有界です。すると、\(\mathbb{R} \)の連続性(下限性質)より、その下限\begin{equation*}\inf \left\{ d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\}
\end{equation*}すなわち\(\mathrm{dist}\left( A,B\right) \)が存在することが保証されます。しかも、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合の下限が存在する場合、それは必ず1つの実数として定まるため、\(\mathrm{dist}\left( A,B\right) \)もまた常に1つの実数として定まることが保証されます。以上の理由により、\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)をそれぞれ任意に選ぶと、\(A\)から\(B\)への距離\(\mathrm{dist}\left( A,B\right) \)は常に存在し、それは1つの有限な実数として定まることが保証されます。

例(集合の間の距離)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合である以下の2つの集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \\
B &=&\left[ 2,3\right] \end{eqnarray*}に注目すると、\(A\)の点と\(B\)の点の間の距離がとり得る値の範囲は、\begin{equation}\{d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in \left( 0,1\right) \wedge b\in \left[ 2,3\right] \}=\left(
1,3\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}であるため、\(A\)と\(B\)の間の距離は、\begin{eqnarray*}\mathrm{dist}\left( A,B\right) &=&\inf \left( 1,3\right) \quad \because
\left( 1\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります(厳密な証明は演習問題にします)。

例(集合の間の距離)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)の非空な部分集合である以下の2つの集合\begin{eqnarray*}A &=&\{\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x^{2}+y^{2}\leq 1\} \\
B &=&\{\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 2\leq x\leq 4,\ 2\leq y\leq 4\}
\end{eqnarray*}について考えます。下図中の円盤が\(A\)に、正方形が\(B\)にそれぞれ対応します。

図:集合の間の距離
図:集合の間の距離

\(A\)と\(B\)の間の距離は\(A\)上の点\(a=\left( \frac{\sqrt{2}}{2},\frac{\sqrt{2}}{2}\right) \)と\(B\)上の点\(b=\left( 2,2\right) \)の間の距離\begin{eqnarray*}\mathrm{dist}\left( A,B\right) &=&d\left( a,b\right) \\
&=&\sqrt{\left( 2-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) ^{2}+\left( 2-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) ^{2}} \\
&=&2\sqrt{2}-1
\end{eqnarray*}となります。

例(集合の間の距離)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\)を任意に選ぶと、\(A\)の2つの点の間の距離がとり得る値の範囲は、\begin{equation*}\left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in A\wedge y\in A\right\}
\end{equation*}となります。点\(x\in A\)を任意に選ぶと、ユークリッド距離関数\(d\)の同一性より、\begin{equation*}d\left( x,x\right) =0
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
0\in \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in A\wedge y\in A\right\}
\end{equation*}が成り立ちます。しかも、距離関数\(d\)の非負性より、任意の\(x,y\in A\)に対して\(d\left( x,y\right) \geq 0\)であることから、\begin{equation}\min \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in A\wedge y\in A\right\} =0 \quad \cdots (1)
\end{equation}となります。\(\mathbb{R} \)の部分集合\(X\)が最小値を持つ場合、それは下限と一致するため、\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation}\inf \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in A\wedge y\in A\right\} =0 \quad \cdots (2)
\end{equation}を得ます。以上より、\begin{eqnarray*}
\mathrm{dist}\left( A,A\right) &=&\inf \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in A\wedge y\in A\right\} \quad \because \text{集合の間の距離の定義} \\
&=&0\quad \because \left( 2\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\mathrm{dist}\left( A,A\right) =0
\end{equation*}となることが明らかになりました。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)の等しい部分集合どうしの距離は\(0\)です。
例(集合の間の距離)
点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選ぶと、\begin{eqnarray*}\mathrm{dist}\left( \{x\},\{y\}\right) &=&\inf \{d\left( a,b\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in \{x\}\wedge b\in \{y\}\}\quad \because \text{集合の間の距離の定義} \\
&=&\inf \{d\left( x,y\right) \} \\
&=&d\left( x,y\right)
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。つまり、集合\(\{x\},\{y\}\)を要素\(x,y\)とそれぞれ同一視したとき、集合の間の距離は点の間の距離と等しくなります。距離関数\(d\)は点の間の距離を与える関数ですが、それを集合どうしの距離も測れるように拡張したものが\(\mathrm{dist}\)であるということです。

 

点と集合の間の距離

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の点\(x\)と非空な部分集合\(A\)の間の距離としては、集合\(\{x\}\)から集合\(A\)への距離\(\mathrm{dist}\left( \left\{x\right\} ,A\right) \)を採用し、これを\(\mathrm{dist}\left( x,A\right) \)と表記します。つまり、\begin{eqnarray*}\mathrm{dist}\left( x,A\right) &=&\mathrm{dist}\left( \left\{ x\right\} ,A\right)
\\
&=&\inf \left\{ d\left( x,a\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in A\right\}
\end{eqnarray*}です。

例(点と集合の間の距離)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の点\(1\)と部分集合\(\left(3,7\right) \)に注目すると、\begin{equation}\{d\left( 1,a\right) \in \mathbb{R} \ |\ a\in \left( 3,7\right) \}=\left( 2,6\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}となるため、それらの間の距離は、\begin{eqnarray*}
\mathrm{dist}\left( 1,\left( 3,7\right) \right) &=&\inf \left( 2,6\right)
\quad \because \left( 1\right) \\
&=&2
\end{eqnarray*}となります(厳密な証明は演習問題にします)。

例(点と集合の間の距離)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)の以下の部分集合\(A\)に注目します。\begin{equation*}A=\{\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 2\leq x\leq 4\wedge 2\leq y\leq 4\}
\end{equation*}下図中の円がこの\(A\)に対応します。

図:点と集合の間の距離
図:点と集合の間の距離

この集合\(A\)と点\(\left( 0,3\right) \)の間の距離は、点\(\left(0,3\right) \)と\(A\)上の点\(\left( 2,3\right) \)の間の距離と一致するため、\begin{eqnarray*}\mathrm{dist}\left( x,A\right) &=&d\left( x,a\right) \\
&=&\sqrt{\left( 2-0\right) ^{2}+\left( 3-3\right) ^{2}} \\
&=&2
\end{eqnarray*}となります。

 

ミンコワスキー差と集合の間の距離

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A-B=\left\{ a-b\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ a\in A\wedge b\in B\right\}
\end{equation*}と定義される\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)と\(B\)のミンコフスキー差(Minkowski difference)と呼びます。つまり、\(A\)の点と\(B\)の点のベクトル差からなる集合が\(A-B\)です。ミンコフスキー差は差集合\begin{equation*}A\backslash B=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ x\in A\wedge x\not\in B\right\}
\end{equation*}とは異なる概念であることに注意してください。

例(ミンコフスキー差)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)の以下の2つの部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ \left( 1,0\right) ,\left( 0,1\right) ,\left( 0,-1\right)
\right\} \\
B &=&\left\{ \left( 0,0\right) ,\left( 1,1\right) ,\left( 1,-1\right)
\right\}
\end{eqnarray*}について、それらのミンコフスキー差は、\begin{equation*}
A-B=\left\{ \left( 1,0\right) ,\left( 0,1\right) ,\left( 0,-1\right) ,\left(
-1,0\right) ,\left( -1,-2\right) ,\left( -1,2\right) \right\}
\end{equation*}となります。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)が与えられたとき、\begin{equation*}d\left( A,B\right) =d\left( \left\{ 0\right\} ,A-B\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、集合\(A,B\)の間の距離は、点\(0\)とミンコフスキー差\(A-B\)の間の距離と一致します。

命題(ミンコワスキー差と集合の間の距離)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}d\left( A,B\right) =d\left( \left\{ 0\right\} ,A-B\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

演習問題

問題(集合の間の距離)
以下の問いに答えてください。

  1. \(\mathbb{R} \)の部分集合である\(\left\{0,1,2\right\} \)と\(\left\{ -1,4\right\} \)の間の距離を求めてください。
  2. \(\mathbb{R} \)の部分集合である\(\left(0,1\right) \)と\(\left[ 2,3\right] \)の間の距離を求めてください。
  3. \(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合である以下の2つの集合\(A,B\)の間の距離を求めてください。\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x^{2}+y^{2}\leq 1\right\} \\B &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 2\leq x\leq 4\wedge 2\leq y\leq 4\right\}
    \end{eqnarray*}
  4. \(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合である以下の2つの集合\(A,B\)の間の距離を求めてください。\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ \left( 1,2\right) \right\} \\B &=&\left\{ \left( -1,3\right) \right\}
    \end{eqnarray*}
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(点と集合の距離)
以下の問いに答えてください。

  1. \(\mathbb{R} \)の点\(\frac{1}{2}\)と部分集合\(\left\{ 0,1,2\right\} \)の間の距離を求めてください。
  2. \(\mathbb{R} \)の点\(1\)と部分集合\(\left(3,7\right) \)の間の距離を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(集合の間の距離)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合である以下の2つの集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \\
B &=&\left[ 2,3\right] \end{eqnarray*}について、\begin{equation*}
\mathrm{dist}\left( A,B\right) =1
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(点と集合の間の距離)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の点\(1\)と部分集合\(\left(3,7\right) \)の間の距離は、\begin{equation*}\mathrm{dist}\left( 1,\left( 3,7\right) \right) =2
\end{equation*}であることを証明してください。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回はユークリッド空間の部分集合の直径について解説します。

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

ユークリッド距離

内積

実ベクトル空間上に内積と呼ばれる概念を導入したとき、その空間は内積空間としての性質を満たします。つまり、内積は非負性、定性、第一引数に関する加法性および斉次性、そして対称性を満たします。

ノルム

ノルム

実ベクトル空間上にノルムという概念を導入すると、その空間はノルム空間としての性質を満たすことが示されます。つまり、ノルムは非負性、定性、斉次性、劣加法性を満たします。

ユークリッド距離

絶対値

実数の絶対値と呼ばれる概念を定義した上で、その代表的な性質について解説します。

ユークリッド空間

ユークリッド空間

n 次元空間上にユークリッド距離と呼ばれる概念を定義するとき、その空間を n 次元ユークリッド空間と呼びます。ユークリッド距離は絶対値を一般化した概念です。

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録