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ベクトル減法

\(n\)次元空間の点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x-y=x+\left( -y\right)
\end{equation*}と定義される\(\mathbb{R} ^{n}\)の点を\(x\)と\(y\)のベクトル差(vector difference)や(difference)などと呼びます。ただし、左辺の\(-\)はベクトル差、右辺の\(+\)はベクトル和、\(-y\)は\(y\)の逆ベクトルを表す記号です。定義より、\begin{eqnarray*}x-y &=&x+\left( -y\right) \quad \because \text{ベクトル差の定義} \\
&=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) +\left[ -\left( y_{1},\cdots
,y_{n}\right) \right] \quad \because x,y\in \mathbb{R} ^{n} \\
&=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) +\left( -y_{1},\cdots ,-y_{n}\right)
\quad \because \text{逆ベクトルの定義} \\
&=&\left( x_{1}+\left( -y_{1}\right) ,\cdots ,x_{n}+\left( -y_{n}\right)
\right) \quad \because \text{ベクトル和の定義} \\
&=&\left( x_{1}-y_{1},\cdots ,x_{n}-y_{n}\right) \quad \because \text{差の定義}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
x-y=\left( x_{1}-y_{1},\cdots ,x_{n}-y_{n}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。ただし、左辺の\(-\)はベクトル差、右辺の\(-\)は\(\mathbb{R} \)上の減法を表す記号です。つまり、\(x\)と\(y\)のベクトル差とはそれらの対応する成分を引くことにより得られる\(\mathbb{R} ^{n}\)の点です。

点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、実数空間\(\mathbb{R} \)が減法\(-\)について閉じていることからベクトル差\(x-y\)のそれぞれの成分\(x_{i}-y_{i}\)が1つの実数として定まることが保証されるため、\(x-y\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の1つの点として定まることが保証されます。したがって、\(\mathbb{R} ^{n}\)の点を成分とするそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \)に対して、\(\mathbb{R} ^{n}\)の点であるベクトル差\(x-y\)を定める二項演算\(-\)が定義可能です。これをベクトル減法(vector subtraction)と呼びます。\(\mathbb{R} ^{n}\)はベクトル減法\(-\)について閉じています。\(\left( x,y\right) \)に対して\(-\)を適用することを、\(x\)から\(y\)を引く(subtract)と言います。

例(ベクトル減法)
\(1\)次元空間の点\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=x-y
\end{equation*}となります。ただし、左辺の\(-\)はベクトル減法を表す記号であり、右辺の\(-\)は実数どうしの減法を表す記号です。つまり、\(1\)次元空間において、ベクトル減法と減法は等しくなります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}1-4 &=&-3 \\
\left( -1\right) -8 &=&-9 \\
\frac{4}{5}-\frac{1}{10} &=&\frac{7}{10}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(ベクトル減法)
\(2\)次元空間の点\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=\left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right)
\end{equation*}となります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
\left( 1,2\right) -\left( 3,1\right) &=&\left( 1-3,2-1\right) =\left(
-2,1\right) \\
\left( -1,7\right) -\left( 3,2\right) &=&\left( \left( -1\right)
-3,7-2\right) =\left( -4,5\right) \\
\left( \frac{2}{3},-1\right) -\left( -\frac{1}{2},-2\right) &=&\left( \frac{2}{3}-\left( -\frac{1}{2}\right) ,\left( -1\right) -\left( -2\right) \right)
=\left( \frac{7}{6},1\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(ベクトル減法)
\(3\)次元空間の点\(x,y\in \mathbb{R} ^{3}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=\left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2},x_{3}-y_{3}\right)
\end{equation*}となります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
\left( 1,2,3\right) -\left( 3,4,5\right) &=&\left( 1-3,2-4,3-5\right)
=\left( -2,-2,-2\right) \\
\left( -1,4,2\right) -\left( 0,1,-7\right) &=&\left( -1-0,4-1,2-\left(
-7\right) \right) =\left( -1,3,9\right) \\
\left( \frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4}\right) -\left( 0,-2,-\frac{1}{2}\right) &=&\left( \frac{1}{2}-0,\frac{1}{3}-\left( -2\right) ,\frac{1}{4}-\left( -\frac{1}{2}\right) \right) =\left( \frac{1}{2},\frac{7}{3},\frac{3}{4}\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

ベクトル減法は同一の空間に属する2つの点に対してのみ定義されます。異なる空間に属する点どうしにベクトル減法を適用することはできません。

例(ベクトル減法)
\(2\)次元空間の点\(x\in \mathbb{R} ^{2}\)と\(3\)次元空間の点\(y\in \mathbb{R} ^{3}\)をそれぞれ任意に選んだとき、これらは異なる空間に属する点であるため、これらのベクトル減法\(x-y\)は定義されません。

 

ゼロベクトルとのベクトル減法

点\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それとゼロベクトル\(0\in \mathbb{R} ^{n}\)の間には、\begin{eqnarray*}x-0 &=&x \\
0-x &=&-x
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。つまり、ベクトルからゼロベクトルを引いても変化は起こらず、ゼロベクトルからベクトルを引くと逆ベクトルが得られます。

命題(ゼロベクトルとのベクトル減法)
点\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ x-0=x \\
&&\left( b\right) \ 0-x=-x
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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ベクトル和やベクトル差の逆ベクトル

\(\mathbb{R} ^{n}\)はベクトル加法とベクトル減法について閉じているため、点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル和\(x+y\)やベクトル差\(x-y\)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)の点であるため、それらの逆ベクトルもまた\(\mathbb{R} ^{n}\)の点になります。これらについては、\begin{eqnarray*}-\left( x+y\right) &=&-x-y \\
-\left( x-y\right) &=&y-x
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。つまり、ベクトル和やベクトル差の逆ベクトルはいずれもベクトル差を用いて表現できます。

命題(ベクトル和やベクトル差の逆ベクトル)
点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ -\left( x+y\right) =-x-y \\
&&\left( b\right) \ -\left( x-y\right) =y-x
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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演習問題

問題(ベクトル減法)
点\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}-\left( -x-y\right) =x+y
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(ベクトル減法)
点\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}-\left( x+y+z\right) =-x-y-z
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(ベクトル減法)
点\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x-y=\left( x+z\right) -\left( y+z\right)
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

証明

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次回はスカラー乗法について解説します。

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