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ユークリッド空間

ユークリッド空間における集合の直径

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ユークリッド空間における集合の直径

ユークリッド空間\(\left( \mathbb{R} ^{n},d\right) \)が与えられているものとします。ユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)は距離の公理に相当する以下の性質\begin{eqnarray*}&&\left( M_{1}\right) \ \forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \geq 0 \\
&&\left( M_{2}\right) \ \forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{n}:\left[ d(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})=0\Leftrightarrow \boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\right] \\
&&\left( M_{3}\right) \ \forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) =d\left( \boldsymbol{y},\boldsymbol{x}\right) \\
&&\left( M_{4}\right) \ \forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{y},\boldsymbol{z}\in \mathbb{R} ^{n}:d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{z}\right) \leq d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) +d\left( \boldsymbol{y},\boldsymbol{z}\right)
\end{eqnarray*}を満たします。ユークリッド距離関数\(d\)はユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)に属する2つの点\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)の間の距離\(d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \)を定めますが、距離関数\(d\)を活用することにより\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合の直径を定義することができます。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\)を任意に選びます。この集合の直径としては、\(A\)に属する2つの点の間の距離の中でも最も長いものを採用します。つまり、2つの点\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in A\)を任意に選んだとき、この2つの点の間の距離は\(d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \)となるため、この距離がとり得る値の範囲は、\begin{equation}\left\{ d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \in \mathbb{R} \ |\ \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in A\right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}となりますが、この集合に属する値の中で最も大きいものを\(A\)の直径と定めるということです。

一般に、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合に対してその最大値は存在するとは限らないため、\(\mathbb{R} \)の部分集合である\(\left(1\right) \)についても、その最大値は存在するとは限りません。ただ、最大値は存在しない一方で上限が存在する事態は起こり得るため、\(A\)の直径を\(\left(1\right) \)の最大値として定義するのではなく、\(\left( 1\right) \)の上限として定義した上で、それを、\begin{equation*}d\left( A\right) =\sup \left\{ d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right)
\in \mathbb{R} \ |\ \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in A\right\}
\end{equation*}で表記します。これを集合\(A\)の直径(diameter)と呼びます。

空集合\(\phi \)の直径に関しては、便宜上、\begin{equation*}d\left( \phi \right) =-\infty
\end{equation*}と定めます。

例(集合の直径)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)における距離関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) ^{2}} \\
&=&\left\vert x-y\right\vert \quad \because \text{絶対値の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合である以下の集合\begin{equation*}A=\left( 0,3\right)
\end{equation*}に注目すると、その直径は、\begin{eqnarray*}
d\left( A\right) &=&\sup \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in A\right\} \\
&=&\sup \left\{ \left\vert x-y\right\vert \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in \left( 0,3\right) \right\} \\
&=&\sup [0,3) \\
&=&3
\end{eqnarray*}となります。

例(集合の直径)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)における距離関数\(d:\mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\times \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) =\sqrt{\left(
x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left( x_{2}-y_{2}\right) ^{2}}
\end{equation*}を定めます。\(\mathbb{R} ^{2}\)の非空な部分集合である以下の集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\right\}
\end{equation*}に注目すると、\(A\)は点\(\left( 0,0\right) \)を中心とする半径\(1\)の円盤に相当するため、その直径は、\begin{eqnarray*}d\left( A\right) &=&\sup \left\{ d\left( \left( x_{1},y_{1}\right) ,\left(
x_{2},y_{2}\right) \right) \in \mathbb{R} \ |\ \left( x_{1},y_{1}\right) ,\left( x_{2},y_{2}\right) \in A\right\} \\
&=&\sup \left[ 0,2\right] \\
&=&2
\end{eqnarray*}となります。

例(集合の直径)
\(3\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)における距離関数\(d:\mathbb{R} ^{3}\times \mathbb{R} ^{3}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\times \mathbb{R} ^{3}\)に対して、\begin{equation*}d\left( \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\right) =\sqrt{\left(
x_{1}-y_{1}\right) ^{2}+\left( x_{2}-y_{2}\right) ^{2}+\left(
x_{3}-y_{3}\right) ^{2}}
\end{equation*}を定めます。\(\mathbb{R} ^{3}\)の非空な部分集合である以下の集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}\leq 1\right\}
\end{equation*}に注目すると、\(A\)は点\(\left( 0,0,0\right) \)を中心とする半径\(1\)の球体円に相当するため、その直径は、\begin{eqnarray*}d\left( A\right) &=&\sup \left\{ d\left( \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right)
,\left( y_{1},y_{2},y_{3}\right) \right) \in \mathbb{R} \ |\ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) ,\left( y_{1},y_{2},y_{3}\right) \in
A\right\} \\
&=&\sup \left[ 0,2\right] \\
&=&2
\end{eqnarray*}となります。

 

集合の直径は非負

ユークリッド空間の部分集合の直径は非負です。

命題(直径の非負性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}d\left( A\right) \geq 0
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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ユークリッド空間の部分集合の直径を最大値ではなく上限を用いて定義しましたが、それでもなお、直径が有限な実数として定まらない事態は起こり得ます。以下の例より明らかです。

例(無限大の直径)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)における距離関数\(d:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}d\left( x,y\right) &=&\sqrt{\left( x-y\right) ^{2}} \\
&=&\left\vert x-y\right\vert \quad \because \text{絶対値の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合である以下の集合\begin{equation*}A=[0,+\infty )
\end{equation*}に注目すると、その直径は、\begin{eqnarray*}
d\left( A\right) &=&\sup \left\{ d\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in A\right\} \\
&=&\sup \left\{ \left\vert x-y\right\vert \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in \lbrack 0,+\infty )\right\} \\
&=&\sup [0,+\infty ) \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となります。

 

有界な集合・有界ではない集合

\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)の直径が有限な実数として定まる場合、すなわち、\begin{equation*}0\leq d\left( A\right) <+\infty
\end{equation*}が成り立つ場合、\(A\)は有界である(bounded)と言います。一方、直径\(d\left( A\right) \)が有限な実数として定まらない場合には、\begin{equation*}d\left( A\right) =+\infty
\end{equation*}と定め、この場合には\(A\)は有界ではない(unbounded)と言います。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合の直径は有限な非負の実数または正の無限大として定まることが明らかになりました。このような事情を踏まえると、それぞれの\(A\in \mathcal{P}\left( \mathbb{R} ^{n}\right) \backslash \left\{ \phi \right\} \)に対して、\(A\)の直径\(d\left( A\right) \in \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)を定める拡大実数値関数\begin{equation*}d:\mathcal{P}\left( \mathbb{R} ^{n}\right) \backslash \left\{ \phi \right\} \rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\}
\end{equation*}が定義可能です。ただし、\(\mathcal{P}\left( \mathbb{R} ^{n}\right) \)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のベキ集合です。

例(有界な集合)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\begin{equation*}A=\left( 0,3\right)
\end{equation*}に注目します。先に明らかにしたように、この集合の直径は、\begin{equation*}
d\left( A\right) =3
\end{equation*}ですが、これは有限な実数であるため\(A\)は有界です。
例(有界な集合)
\(2\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\leq 1\right\}
\end{equation*}に注目します。先に明らかにしたように、この集合の直径は、\begin{equation*}
d\left( A\right) =2
\end{equation*}ですが、これは有限な実数であるため\(A\)は有界です。
例(有界な集合)
\(3\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}\leq 1\right\}
\end{equation*}に注目します。先に明らかにしたように、この集合の直径は、\begin{equation*}
d\left( A\right) =2
\end{equation*}ですが、これは有限な実数であるため\(A\)は有界です。
例(有界ではない集合)
\(1\)次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\begin{equation*}A=[0,+\infty )
\end{equation*}に注目します。先に明らかにしたように、この集合の直径は、\begin{equation*}
d\left( A\right) =+\infty
\end{equation*}であるため、\(A\)は有界ではありません。

 

演習問題

問題(有界な集合)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{equation*}A=\left( 0,1\right) \cup \left[ 3,7\right] \end{equation*}の直径を求めた上で、\(A\)が有界であることを示してください。
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問題(有界な集合)
\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 0\leq x\leq 1\wedge 0\leq y\leq 1\right\}
\end{equation*}の直径を求めた上で、\(A\)が有界であることを示してください。
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