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多変数関数

多変数の定数関数の連続性

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多変数の定数関数の連続性

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されている場合、\(f\)が点\(a\)において連続であるか検討できますが、\(f\)は常に同一の値\(c\)をとることを踏まえると、\(f\)は点\(a\)において連続であることが予想されます。実際、これは正しい主張です。

命題(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において連続である。
証明

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例(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。\(\mathbb{R} ^{n}\)は開集合であるため、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(a\)の周辺にある任意の点において定義されています。したがって上の命題より、\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{R} ^{n}\)上の任意の点において同様の議論が成立します。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上に定義された定数関数は\(\mathbb{R} ^{n}\)上で連続であるということです。
例(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset N_{\varepsilon }\left( 0,0\right) \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in N_{\varepsilon }\left( 0,0\right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =3
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(N_{\varepsilon }\left(0,0\right) \)は中心が\(\left( 0,0\right) \)であり半径が\(\varepsilon \)であるような開近傍です。開近傍は開集合であるため、点\(\left( a,b\right) \in N_{\varepsilon }\left( 0,0\right) \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(\left(a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されています。したがって上の命題より、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において連続です。\(N_{\varepsilon }\left( 0,0\right) \)上の任意の点において同様の議論が成立するため、\(f\)は\(N_{\varepsilon }\left( 0,0\right) \)上で連続です。
例(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \\
1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( 0,0\right) \)とは異なる点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)を任意に選びます。\(\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)は開集合であることから、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そのような任意の点\(\left( x,y\right) \)において\(f\left(x,y\right) =1\)が成り立つため、定数関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}となります。その一方で、\(\left( a,b\right) \not=\left( 0,0\right) \)ゆえに、\begin{equation*}f\left( a,b\right) =1
\end{equation*}であるため、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right)
=f\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つこと、すなわち\(f\)が点\(\left( a,b\right) \)において連続であることが示されました。一方、点\(\left( 0,0\right) \)については、\(f\)の定義より、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そのような任意の点\(\left( x,y\right) \)において\(f\left(x,y\right) =1\)が成り立つため、定数関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}となります。その一方で、\begin{equation*}
f\left( 0,0\right) =0
\end{equation*}であるため、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right)
\not=f\left( 0,0\right)
\end{equation*}を得ます。したがって\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続ではありません。以上より、\(f\)は\(\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)上で連続であることが明らかになりました。

 

定義域の境界点における定数関数の連続性

以下は境界点における連続性の例です。

例(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。定義域の内点\(\left(a,b\right) \in \left( 0,1\right) \times \left( 0,1\right) \)を任意に選んだとき、内点の定義より、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)は点\(\left(a,b\right) \)において連続です。したがって\(f\)は定義域の内部\(\left( 0,1\right) \times \left( 0,1\right) \)において連続です。では、\(f\)は定義域の境界点において連続でしょうか。例えば、点\(\left( 1,1\right) \)は\(f\)の定義域の境界点であるため、\(f\)は点\(\left( 1,1\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとは言えません。この場合、\(\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) \)の場合の\(f\)の極限とは、変数\(\left( x,y\right) \)が\(x\leq 1\)かつ\(y\leq 1\)かつ\(\left( x,y\right) \not=\left( 1,1\right) \)を満たしながら\(\left( 1,1\right) \)へ限りなく近づく場合の\(f\)の極限に相当します。以上を踏まえた上で、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\leq 1 \\
&&\left( b\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :y_{v}\leq 1 \\
&&\left( c\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v},y_{v}\right) \not=\left( 1,1\right) \\
&&\left( d\right) \ \lim_{v\rightarrow \infty }\left( x_{v},y_{v}\right)
=\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}を満たす点列\(\left\{ \left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選びます。このとき、数列\(\left\{ f\left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) &=&\lim_{v\rightarrow
\infty }2\quad \because \left( a\right) ,\left( b\right) ,\left( c\right)
\text{および}f\text{の定義} \\
&=&2
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}となります。その一方で、\begin{equation*}
f\left( 1,1\right) =2
\end{equation*}であるため、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }f\left( x,y\right)
=f\left( 1,1\right)
\end{equation*}であること、すなわち\(f\)は点\(\left( 1,1\right) \)において連続であることが明らかになりました。他の境界点についても同様です。

 

演習問題

問題(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)が点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているならば点\(a\)において連続であることを本文中では関数の極限概念を用いて証明しましたが、同じことをイプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。
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問題(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ xy<0\right) \\
1 & \left( if\ xy\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続でしょうか。議論してください。
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問題(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(\left( 0,1\right) \)において連続でしょうか。議論してください。
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問題(多変数の定数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ xy<0\right) \\
1 & \left( if\ xy\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続でしょうか。議論してください。
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