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述語論理

命題関数の解釈

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1変数の命題関数の解釈

論理式の定義より、1つの変数を持つ任意の命題関数\begin{equation*}
P\left( x\right)
\end{equation*}は論理式です。加えて、命題関数\(P\left( x\right) \)は変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式であるため、その真理値を特定するためには以下の3つの要素\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{議論領域(変数}x\text{の定義域}X\text{)} \\
&&\left( b\right) \ \text{命題関数}P\text{の形状} \\
&&\left( c\right) \ \text{変数}x\text{の自由な現れに代入する値}\overline{x}
\end{eqnarray*}を具体的に指定する必要があります。上の3つの要素の中の少なくとも1つが変われば命題関数\(P\left( x\right) \)の真偽は変わり得るということです。つまり、以上の3つの要素が命題関数\(P\left( x\right) \)の解釈です。

例(1変数の命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域\(X\)はすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left(x\right) \)の形状を、\begin{equation*}x^{2}=1
\end{equation*}と定めます。変数\(x\)の自由な表れに値\(1\)を代入すると、以下の命題\begin{equation*}1^{2}=1
\end{equation*}が得られます。これは真です。一方、値\(2\)を代入すると、以下の命題\begin{equation*}2^{2}=1
\end{equation*}が得られます。これは偽です。

例(1変数の命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域\(X\)はすべての都道府県からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x\right) \)の形状を、\begin{equation*}x\text{の人口は}800\text{万人以上}
\end{equation*}と定めます。変数\(x\)の自由な表れに値「東京」を代入すると以下の命題\begin{equation*}\text{東京の人口は}800\text{万人以上}
\end{equation*}が得られます。これは真です。一方、値「沖縄」を代入すると以下の命題\begin{equation*}
\text{沖縄の人口は}800\text{万人以上}
\end{equation*}が得られます。これは偽です。

命題関数\(P\left( x\right) \)が与えられたとき、議論領域(変数\(x\)の定義域\(X\))と関数\(P\)の形状を具体的に指定すれば、変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式\begin{equation*}P\left( x\right) \quad \left( x\in X\right)
\end{equation*}が得られます。あとは変数\(x\)の自由な現れに代入する値\(\overline{x}\)を指定すれば命題\begin{equation*}P\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}が得られます。命題\(P\left( \overline{x}\right) \)が真になるような値\(\overline{x}\)からなる集合が開論理式\(P\left( x\right) \)の真理集合であり、これを、\begin{equation*}\phi \left( P\right)
\end{equation*}で表記します。つまり、任意の値\(\overline{x}\in X\)に対して、以下の関係\begin{equation*}\overline{x}\in \phi \left( P\right) \Leftrightarrow \text{命題}P\left( \overline{x}\right) \text{が真}
\end{equation*}を満たすものとして開論理式\(P\left( x\right) \)の真理集合\(\phi \left( P\right) \)は定義されます。

例(1変数の命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域\(X\)はすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left(x\right) \)を、\begin{equation*}x^{2}=1
\end{equation*}と定義します。\(x^{2}=1\)を満たす自然数\(x\)は\(1\)だけであるため、\(P\left( x\right) \)の真理集合は、\begin{equation*}\phi \left( P\right) =\left\{ 1\right\}
\end{equation*}です。したがって、例えば、\begin{eqnarray*}
1 &\in &\phi \left( P\right) \\
2 &\not\in &\phi \left( P\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(1変数の命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域\(X\)はすべての都道府県からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x\right) \)を、\begin{equation*}x\text{の人口は}800\text{万人以上}
\end{equation*}と定義します。\(800\)万人以上の都道府県は「東京、神奈川、大阪」だけであるため、\(P\left( x\right) \)の真理集合は、\begin{equation*}\phi \left( P\right) =\left\{ \text{東京},\text{神奈川},\text{大阪}\right\}
\end{equation*}です。したがって、例えば、\begin{eqnarray*}
\text{東京} &\in &\phi \left( P\right) \\
\text{沖縄} &\not\in &\phi \left( P\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

 

多変数の命題関数の解釈

論理式の定義より、2つの変数を持つ任意の命題関数\begin{equation*}
P\left( x,y\right)
\end{equation*}は論理式です。加えて、命題関数\(P\left( x,y\right) \)は変数\(x,y\)の自由な現れを持つ開論理式であるため、その真理値を特定するためには以下の3つの要素\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{議論領域(変数}x,y\text{の定義域}X,Y\text{)} \\
&&\left( b\right) \ \text{命題関数}P\text{の形状} \\
&&\left( c\right) \ \text{変数}x,y\text{の自由な現れに代入する値}\overline{x},\overline{y}
\end{eqnarray*}を具体的に指定する必要があります。上の3つの要素の中の少なくとも1つが変われば命題関数\(P\left( x,y\right) \)の真偽は変わり得るということです。つまり、以上の3つの要素が命題関数\(P\left( x,y\right) \)の解釈です。

例(多変数の命題関数の解釈)
変数\(x,y\)の定義域\(X,Y\)はともにすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x,y\right) \)の形状を、\begin{equation*}x+y\leq 3
\end{equation*}と定めます。変数\(x,y\)の自由な表れに値の組\(\left( 1,2\right) \)を代入すると以下の命題\begin{equation*}1+2\leq 3
\end{equation*}が得られます。これは真です。また、値の組\(\left( 2,1\right) \)を代入すると以下の命題\begin{equation*}2+1\leq 3
\end{equation*}が得られます。これも真です。一方、値の組\(\left( 2,2\right) \)を代入すると以下の命題\begin{equation*}2+2\leq 3
\end{equation*}が得られますが、これは偽です。

3個以上の変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)を持つ命題関数\(P\left(x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \)についても同様に考えます。

例(多変数の命題関数の解釈)
変数\(x,y,z\)の定義域\(X,Y,Z\)はいずれもすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x,y,z\right) \)の形状を、\begin{equation*}x+y+z=1
\end{equation*}と定めます。変数\(x,y,z\)の自由な表れに値の組\(\left( 1,2,3\right) \)を代入すると以下の命題\begin{equation*}1+2+3=1
\end{equation*}が得られますが、これは偽です。また、値の組\(\left( 1,1,1\right) \)を代入すると以下の命題\begin{equation*}1+1+1=1
\end{equation*}が得られますが、これも偽です。

命題関数\(P\left( x,y\right) \)が与えられたとき、議論領域(変数\(x,y\)の定義域\(X,Y\))と関数\(P\)の形状を具体的に指定すれば、開論理式\begin{equation*}P\left( x,y\right) \quad \left( \left( x,y\right) \in X\times Y\right)
\end{equation*}が得られます。あとは変数\(x,y\)の自由な現れに代入する値の組\(\left( \overline{x},\overline{y}\right) \)を指定すれば命題\begin{equation*}P\left( \overline{x},\overline{y}\right)
\end{equation*}が得られます。命題\(P\left( \overline{x},\overline{y}\right) \)が真になるような値の組\(\left( \overline{x},\overline{y}\right) \)からなる集合が開論理式\(P\left( x,y\right) \)の真理集合であり、これを、\begin{equation*}\phi \left( P\right)
\end{equation*}で表記します。つまり、任意の値の組\(\left( \overline{x},\overline{y}\right) \in X\times Y\)に対して、以下の関係\begin{equation*}\left( \overline{x},\overline{y}\right) \in \phi \left( P\right)
\Leftrightarrow \text{命題}P\left( \overline{x},\overline{y}\right) \text{が真}
\end{equation*}を満たすものとして開論理式\(P\left( x,y\right) \)の真理集合\(\phi \left( P\right) \)は定義されます。

例(多変数の命題関数の解釈)
変数\(x,y\)の定義域\(X,Y\)はともにすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x,y\right) \)を、\begin{equation*}x+y\leq 3
\end{equation*}と定義します。\(x+y\leq 3\)を満たす自然数の組\(\left(x,y\right) \)は\(\left( 1,1\right) ,\left( 1,2\right) ,\left( 2,1\right) \)の3つであるため、\(P\left(x,y\right) \)の真理集合は、\begin{equation*}\phi \left( P\right) =\left\{ \left( 1,1\right) ,\left( 1,2\right) ,\left(
2,1\right) \right\}
\end{equation*}です。したがって、例えば、\begin{eqnarray*}
\left( 1,1\right) &\in &\phi \left( P\right) \\
\left( 2,2\right) &\not\in &\phi \left( P\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

3個以上の変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)を持つ命題関数\(P\left(x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \)についても同様に考えます。

例(多変数の命題関数の解釈)
変数\(x,y,z\)の定義域\(X,Y,Z\)はいずれもすべての自然数からなる集合であるものとします。命題関数\(P\left( x,y,z\right) \)を、\begin{equation*}x+y+z=1
\end{equation*}と定義します。\(x+y+z=1\)を満たす自然数の組\(\left(x,y,z\right) \)は存在しないため、\(P\left( x,y,z\right) \)の真理集合は、\begin{equation*}\phi \left( P\right) =\phi
\end{equation*}です。ただし、\(\phi \)は要素を1つも含まない集合(空集合と呼ぶ)を表す記号です。

 

演習問題

問題(命題関数の解釈)
変数\(x\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)を、\begin{equation*}\left\vert x\right\vert <3
\end{equation*}と定義します。\(x\)の定義域\(X\)がすべての自然数からなる集合である場合の\(P\left( x\right) \)の真理集合と、\(X\)がすべての自然数からなる集合である場合の\(P\left( x\right) \)の真理集合をそれぞれ求めてください。
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問題(命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域は、\begin{equation*}X=\left\{ x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5}\right\}
\end{equation*}であり、これはある組織のメンバーからなる集合であるものとします。変数\(y\)の定義域は、\begin{equation*}Y=\left\{ y_{1},y_{2},y_{3}\right\}
\end{equation*}であり、これは別の組織のメンバーからなる集合であるものとします。命題変数\(P\left( x,y\right) \)を、\begin{equation*}x\text{と}y\text{は知り合いである}
\end{equation*}と定義します。\(x_{1}\)は\(y_{1} \)と知り合いであり、\(x_{3}\)は\(y_{1}\)および\(y_{3}\)と知り合いです。\(P\left( x,y\right) \)の真理集合を求めてください。
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問題(命題関数の解釈)
変数\(x\)の定義域\(X\)はすべての整数からなる集合であるものとします。以下の3つの命題変数\begin{eqnarray*}P\left( x\right) &:&\left\vert x\right\vert =1 \\
Q\left( x\right) &:&x^{2}=2 \\
R\left( x\right) &:&\left\vert x\right\vert =x
\end{eqnarray*}の真理集合をそれぞれ求めてください。

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