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述語論理

述語論理における必要十分条件

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必要十分条件

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、それらに関する同等\(A\leftrightarrow B\)は恒真式であるとは限りません。つまり、解釈によっては\(A\leftrightarrow B\)から得られる命題が偽になる可能性があります。一方、同等\(A\leftrightarrow B\)が恒真式である場合には、すなわち、任意の解釈において\(A\leftrightarrow B\)から得られる命題が真であるならば、このことを、\begin{equation*}
A\Leftrightarrow B
\end{equation*}と表記します。またこのとき、\(A\)と\(B\)は論理的に同値(logically equivlent)であるとか、\(A\)と\(B\)はお互いに一方が他方であるための必要十分条件(necessary and sufficient condition)であると言います。

例(必要十分条件)
変数\(x\in X\)を持つ命題関数\(P\left( x\right) \)に関する以下の論理式\begin{equation}
P\left( x\right) \leftrightarrow \left( P\left( x\right) \wedge P\left(
x\right) \right) \quad\cdots (1)
\end{equation}について考えます。解釈を任意に選んだ上で、そのときに\(P\left( x\right) \)から得られる命題を\(P\left( \overline{x}\right) \)で表記すると、\(\left( 1\right) \)から得られる命題は、\begin{equation}
P\left( \overline{x}\right) \leftrightarrow \left( P\left( \overline{x}\right) \wedge P\left( \overline{x}\right) \right) \quad\cdots (2)
\end{equation}となります。ベキ等律より、\begin{equation*}
P\left( \overline{x}\right) \Leftrightarrow P\left( \overline{x}\right)
\wedge P\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(\left( 2\right) \)は恒真式です。任意の解釈のもとで同様の議論が成立するため、\(\left( 1\right) \)が恒真式であること、すなわち、\begin{equation*}
P\left( x\right) \Leftrightarrow \left( P\left( x\right) \wedge P\left(
x\right) \right)
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。つまり、\(P\left( x\right) \)と\(P\left( x\right) \wedge P\left( x\right) \)はお互いに、一方が他方であるための必要十分条件です。
例(必要十分条件)
変数\(x\in X\)を持つ命題関数\(P\left( x\right) \)に関する以下の論理式\begin{equation}
\left( \exists x\in X:\lnot P\left( x\right) \right) \leftrightarrow \lnot
\left( \forall x\in X:P\left( x\right) \right) \quad\cdots (1)
\end{equation}について考えます。量化記号\(\forall ,\exists \)の定義より、上の論理式は、\begin{equation}
\bigvee\limits_{x\in X}\lnot P\left( x\right) \leftrightarrow \lnot \left(
\bigwedge\limits_{x\in X}P\left( x\right) \right) \quad\cdots (2)
\end{equation}と言い換え可能です。解釈を任意に選んだ上で、そのときに\(P\left( x\right) \)から得られる命題を\(P\left( \overline{x}\right) \)で表記すると、\(\left( 1\right) \)から得られる命題は、\begin{equation}
\bigvee\limits_{x\in X}\lnot P\left( \overline{x}\right) \leftrightarrow
\lnot \left( \bigwedge\limits_{x\in X}P\left( \overline{x}\right) \right)
\quad\cdots (3)
\end{equation}となります。ド・モルガンの法則より、\begin{equation*}
\bigvee\limits_{x\in X}\lnot P\left( \overline{x}\right) \Leftrightarrow
\lnot \left( \bigwedge\limits_{x\in X}P\left( \overline{x}\right) \right)
\end{equation*}が成り立つため、\(\left( 3\right) \)は恒真式です。任意の解釈のもとで同様の議論が成立するため、\(\left( 1\right) \)が恒真式であること、すなわち、\begin{equation*}
\left( \exists x\in X:\lnot P\left( x\right) \right) \Leftrightarrow \lnot
\left( \forall x\in X:P\left( x\right) \right)
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。つまり、\(\exists x\in X:\lnot P\left( x\right) \)と\(\lnot \left( \forall x\in X:P\left( x\right) \right) \)はお互いに、一方が他方であるための必要十分条件です。

 

必要十分条件の代替的な定義

復習になりますが、論理式\(A,B\)が任意に与えられたとき、\begin{equation*}
\phi \left( A\leftrightarrow B\right) =\phi \left( \left( A\rightarrow
B\right) \wedge \left( B\rightarrow A\right) \right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、任意の解釈において、同等\(A\leftrightarrow B\)の値は論理式\(\left( A\rightarrow B\right) \wedge \left( B\rightarrow A\right) \)の値と常に一致するということです。\(A\Leftrightarrow B\)が成り立つこととは任意の解釈において\(A\leftrightarrow B\)の値が\(1\)であることとして定義されますが、先の議論より、これは任意の解釈において\(\left( A\rightarrow B\right) \wedge \left( B\rightarrow A\right) \)の値が\(1\)であることと言い換え可能です。さらに、\(\wedge \)の定義より、これは、任意の解釈において\(A\rightarrow B\)と\(B\rightarrow A\)の値がともに\(1\)であること、すなわち\(A\Rightarrow B\)と\(B\Rightarrow A\)がともに成り立つことと言い換え可能です。つまり、\(A\Leftrightarrow B\)が成り立つことは、\(A\Rightarrow B\)と\(B\Rightarrow A\)がともに成り立つこととして定義することも可能です。

以上を踏まえると、\(A\)が\(B\)であるための必要十分条件であることは、\(A\)が\(B\)であるための必要条件であるとともに、\(A\)が\(B\)であるための十分条件であることを意味します。同様に、\(B\)が\(A\)であるための必要十分条件であることは、\(B\)が\(A\)であるための必要条件であるとともに、\(B\)が\(A\)であるための十分条件であることを意味します。

次回から同値変形について学びます。

関連知識

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