選言導入
論理式\(A,B\)をそれぞれ任意に選んだときに、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A &\Rightarrow &A\vee B \\
\left( b\right) \ B &\Rightarrow &A\vee B
\end{eqnarray*}が成り立つことが示されるため、ここから以下の推論規則を得ます。
命題(選言導入)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A\ &\models &\ A\vee B \\
\left( b\right) \ B\ &\models &\ A\vee B
\end{eqnarray*}が成り立つ。
\left( b\right) \ B\ &\models &\ A\vee B
\end{eqnarray*}が成り立つ。
上の命題より、解釈を任意に選んだとき、\(A\)から得られる命題が真である場合、\(A\vee B\)から得られる命題が真になることが保証されます。また、\(B\)から得られる命題が真である場合、\(A\vee B\)から得られる命題が真になることが保証されます。以上の推論規則を選言導入(disjunctionintroduction)や\(\vee \)導入(\(\vee \)introduction)などと呼びます。
例(選言導入)
命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)がそれぞれ任意に与えられたとき、選言導入より、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ P\left( x\right) \ \models \ P\left( x\right) \vee
Q\left( x\right) \\
&&\left( b\right) \ Q\left( x\right) \ \models \ P\left( x\right) \vee
Q\left( x\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。
Q\left( x\right) \\
&&\left( b\right) \ Q\left( x\right) \ \models \ P\left( x\right) \vee
Q\left( x\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。
例(選言導入)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{任意の偶数は}2\text{で割り切れる} \\
&&\text{ゆえに、任意の偶数は}2\text{または}3\text{で割り切れる}
\end{eqnarray*}ただし、変数\(x\)の定義域はすべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)です。以下の命題関数\begin{eqnarray*}P\left( x\right) &:&x\text{は}2\text{で割り切れる} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{は}3\text{で割り切れる}
\end{eqnarray*}を定義すると、先の推論は、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{Z} :P\left( x\right) \ \therefore \ \forall x\in \mathbb{Z} :\left( P\left( x\right) \vee Q\left( x\right) \right)
\end{equation*}と定式化されます。推論の前提に全称除去を適用すると、\begin{equation*}
P\left( c\right)
\end{equation*}を得ます。これに選言導入を適用すると、\begin{equation*}
P\left( c\right) \vee Q\left( c\right)
\end{equation*}を得ます。さらにこれに全称導入を適用すると、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{Z} :\left( P\left( x\right) \vee Q\left( x\right) \right)
\end{equation*}を得るため、推論が妥当であることが示されました。
&&\text{任意の偶数は}2\text{で割り切れる} \\
&&\text{ゆえに、任意の偶数は}2\text{または}3\text{で割り切れる}
\end{eqnarray*}ただし、変数\(x\)の定義域はすべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)です。以下の命題関数\begin{eqnarray*}P\left( x\right) &:&x\text{は}2\text{で割り切れる} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{は}3\text{で割り切れる}
\end{eqnarray*}を定義すると、先の推論は、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{Z} :P\left( x\right) \ \therefore \ \forall x\in \mathbb{Z} :\left( P\left( x\right) \vee Q\left( x\right) \right)
\end{equation*}と定式化されます。推論の前提に全称除去を適用すると、\begin{equation*}
P\left( c\right)
\end{equation*}を得ます。これに選言導入を適用すると、\begin{equation*}
P\left( c\right) \vee Q\left( c\right)
\end{equation*}を得ます。さらにこれに全称導入を適用すると、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{Z} :\left( P\left( x\right) \vee Q\left( x\right) \right)
\end{equation*}を得るため、推論が妥当であることが示されました。
選言導入の一般化
選言導入は以下のような形で一般化可能です。
命題(選言導入)
任意の論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n}\)に対して、\begin{equation*}A_{j}\ \models \ \bigvee_{i=1}^{n}A_{i}\quad \left( j=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}が成り立つ。
\end{equation*}が成り立つ。
上の命題において\(n=2\)とおくと、\begin{eqnarray*}A_{1}\ &\models &\ A_{1}\vee A_{2} \\
A_{2}\ &\models &\ A_{1}\vee A_{2}
\end{eqnarray*}などが得られますが、これは先に示した選言導入に他なりません。
例(選言導入)
命題関数\(P_{1}\left( x\right) ,\cdots ,P_{n}\left(x\right) \)がそれぞれ任意に与えられたとき、先の命題より、\begin{equation*}P_{j}\left( x\right) \ \models \ \bigvee_{i=1}^{n}P_{i}\left( x\right) \quad
\left( j=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}が成り立ちます。
\left( j=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}が成り立ちます。
演習問題
問題(選言導入)
任意の論理式\(A,B,C,D\)に関して、\begin{equation*}\left( A\vee B\vee C\right) \rightarrow D\ \models \ A\rightarrow D
\end{equation*}が成り立つことを示してください。
\end{equation*}が成り立つことを示してください。
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