すべてのものに当てはまることは、そのカテゴリーに属する特定のものにも当てはまることを保証する推論規則を全称除去と呼びます。

2019年6月3日:公開

全称除去

論理式\(A\)が変数\(x\in X\)の自由な現れを含む開論理式であることを\(A\left[ x\right] \)と表記します。また、\(A\left[ x\right] \)における変数\(x\)の自由な現れに値\(\overline{x}\in X\)を代入したものを\(A\left[ \overline{x}\right] \)と表記します。このとき以下の推論規則\begin{equation*}
\forall x\in X\ A\left[ x\right] ,\ \overline{x}\in X\ \Rightarrow \ A\left[ \overline{x}\right] \end{equation*}を妥当と定めます。つまり、全称命題\(\forall x\in X\ A\left[ x\right] \)が真になるような任意の解釈のもとでは、\(X\)の値\(\overline{x}\)について\(A\left[ \overline{x}\right] \)は真になります。これは全称除去(universal elimination)や\(\forall \)除去(\(\forall \) elimination)、全称例化(universal instantiation)などと呼ばれる推論規則です。

全称除去は、すべてのものに当てはまることは、そのカテゴリーに属する特定のものにも当てはまることを保証する推論規則です。

例(全称除去)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{すべての人間は DNA を持っている。} \\
&&\text{アリストテレスは人間である。} \\
&&\text{したがって、アリストテレスは DNA を持っている。}
\end{eqnarray*}変数\(X\)の定義域\(X\)はすべての人間からなる集合であるものとします。また、命題関数\(P\left( x\right) \)を、\begin{equation*}
P\left( x\right) :x\text{は DNA を持っている}
\end{equation*}と定義します。すると、与えられた推論は、\begin{equation*}
\overline{x}=\text{アリストテレス}
\end{equation*}という値を用いると、\begin{equation*}
\forall x\in X\ P\left( x\right) ,\ \overline{x}\in X\ \models \ P\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}と定式化できます。任意の人間は DNA を持っており、なおかつアリストテレスは人間ですから、全称例化より上の推論は妥当です。
例(全称除去)
命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)に関する閉論理式\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( P\left( x\right) \wedge Q\left( x\right) \right)
\end{equation*}が真ならば、全称除去より、任意の値\(\overline{x}\in X\)について、\begin{equation*}
P\left( \overline{x}\right) \wedge Q\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}は真です。
例(全称除去)
命題関数\(P\left( x,y\right) ,Q\left( x\right) \)関する開論理式\begin{equation}
\forall x\in X\ \left( P\left( x,y\right) \rightarrow Q\left( x\right) \right) \tag{1}
\end{equation}が与えられたとき、全称除去より、任意の値\(\overline{x}\in X\)について、\begin{equation}
P\left( \overline{x},y\right) \rightarrow Q\left( \overline{x}\right) \tag{2}
\end{equation}という論理式が導かれます。つまり、任意の解釈において、\(\left( 1\right) \)が真ならば\(\left( 2\right) \)も真になります。

 

全称含意除去

論理式\(A,B\)が変数\(x\in X\)の自由な現れを含む開論理式であることを\(A\left[ x\right] ,B\left[ x\right] \)でそれぞれ表記します。また、\(A\left[ x\right] ,B\left[ x\right] \)における変数\(x\)の自由な現れに値\(\overline{x}\in X\)を代入したものを\(A\left[ \overline{x}\right] ,B\left[ \overline{x}\right] \)とそれぞれ表記します。その上で、以下の推論\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) ,\ A\left[ \overline{x}\right] \ \therefore \ B\left[ \overline{x}\right] \end{equation*}について考えます。

\(\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) \)と\(A\left[ \overline{x}\right] \)がともに真であるような解釈を任意に選びます。\(\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) \)が真であるならば、全称除去より\(\overline{x}\in X\)について\(A\left[ \overline{x}\right] \rightarrow B\left[ \overline{x}\right] \)は真です。同時に\(A\left[ \overline{x}\right] \)は真ですので、含意除去より\(B\left[ \overline{x}\right] \)は真です。したがって先の推論は妥当です。全称除去と含意除去から上のようにして導かれる推論規則\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) ,\ A\left[ \overline{x}\right] \ \models \ B\left[ \overline{x}\right] \end{equation*}を全称含意除去(universal implication elimination)や全称モーダスポネンス(universal modus ponents)などと呼びます。

例(全称含意除去)
先の推論について再考します。\begin{eqnarray*}
&&\text{すべての人間は DNA を持っている。} \\
&&\text{アリストテレスは人間である。} \\
&&\text{したがって、アリストテレスは DNA を持っている。}
\end{eqnarray*}変数\(x\)の定義域\(X\)は任意です。また、命題関数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}
P\left( x\right) &:&x\text{は人間である} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{は DNA を持っている}
\end{eqnarray*}と定義します。すると、与えられた推論は、\begin{equation*}
\overline{x}=\text{アリストテレス}
\end{equation*}という値を用いると、\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left[ P\left( x\right) \rightarrow Q\left( x\right) \right] ,\ P\left( \overline{x}\right) \ \therefore \ Q\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}と定式化できます。全称含意除去よりこれは妥当な推論です。

 

全称後件否定

論理式\(A,B\)が変数\(x\in X\)の自由な現れを含む開論理式であることを\(A\left[ x\right] ,B\left[ x\right] \)でそれぞれ表記します。また、\(A\left[ x\right] ,B\left[ x\right] \)における変数\(x\)の自由な現れに値\(\overline{x}\in X\)を代入したものを\(A\left[ \overline{x}\right] ,B\left[ \overline{x}\right] \)とそれぞれ表記します。その上で、以下の推論\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) ,\ \lnot B\left[ \overline{x}\right] \ \therefore \ \lnot A\left[ \overline{x}\right] \end{equation*}について考えます。

\(\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) \)と\(\lnot B\left[ \overline{x}\right] \)がともに真であるような解釈を任意に選びます。\(\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) \)が真であるならば、全称除去より\(\overline{x}\in X\)について\(A\left[ \overline{x}\right] \rightarrow B\left[ \overline{x}\right] \)は真です。同時に\(\lnot B\left[ \overline{x}\right] \)は真ですので、後件否定より\(\lnot A\left[ \overline{x}\right] \)は真です。したがって先の推論は妥当です。全称除去と後件否定から上のようにして導かれる推論規則\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( A\left[ x\right] \rightarrow B\left[ x\right] \right) ,\ \lnot B\left[ \overline{x}\right] \ \Rightarrow \ \lnot A\left[ \overline{x}\right] \end{equation*}を全称後件否定(universal denying the consequent)や全称モーダストレンス(universal modus tollens)などと呼びます。

例(全称後件否定)
先の推論について再考します。\begin{eqnarray*}
&&\text{すべての人間は DNA を持っている。} \\
&&\text{ロボットは DNA を持っていない。} \\
&&\text{したがって、ロボットは人間ではない。}
\end{eqnarray*}変数\(x\)の定義域\(X\)は任意です。また、命題関数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}
P\left( x\right) &:&x\text{は人間である} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{は DNA を持っている}
\end{eqnarray*}と定義します。すると、与えられた推論は、\begin{equation*}
\overline{x}=\text{ロボット}
\end{equation*}という値を用いると、\begin{equation*}
\forall x\in X\ \left( P\left( x\right) \rightarrow Q\left( x\right) \right) ,\ \lnot Q\left( \overline{x}\right) \ \therefore \ \lnot P\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}と定式化できます。全称後件否定よりこれは妥当な推論です。

次回は全称導入と呼ばれる推論規則について学びます。

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