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述語論理

真理集合

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開論理式の解釈と真理集合

論理式\(A\)は変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式であるものとし、そのことを、\begin{equation*}A\left( x\right)
\end{equation*}で表記します。開論理式\(A\left( x\right) \)の真偽を特定するためには以下の3つの要素\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{議論領域} \\
&&\left( b\right) \ \text{論理式}A\text{を構成するすべての命題関数の形状} \\
&&\left( c\right) \ \text{変数}x\text{の自由な現れに代入する値}\overline{x}
\end{eqnarray*}を具体的に指定する必要があります。形式的には同一の開論理式でも、上の3つの要素の中の少なくとも1つが変われば真偽は変わり得るということです。そこで、以上の3つの要素を開論理式\(A\left( x\right) \)の解釈(interpretation)と呼びます。

開論理式\(A\left( x\right) \)が与えられたとき、解釈を構成する3つの要素の中でも\(\left( a\right) \)と\(\left( b\right) \)を具体的に指定することにより得られる開論理式を、\begin{equation*}\overline{A}\left( x\right)
\end{equation*}で表記し、さらに\(\left(c\right) \)を具体的に指定することにより得られる命題を、\begin{equation*}\overline{A}\left( \overline{x}\right)
\end{equation*}で表記します。開論理式\(A\left( x\right) \)に解釈を与えれば真または偽を値としてとる命題\(\overline{A}\left( \overline{x}\right) \)が得られるということです。

論理式\(A\)が複数の変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)の自由な現れを持つ開論理式\(A\left( x_{1},\cdots,x_{n}\right) \)である場合にも同様に考えます。

例(開論理式の解釈)
命題関数\begin{equation*}
P\left( x\right)
\end{equation*}は変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式です。したがって、命題関数の真偽を特定するためには議論領域\(D\)を指定し(変数\(x\)の定義域\(X\)を特定し)、命題関数\(P\)の形状を特定するとともに、変数\(x\)の自由な現れに代入する値を指定する必要があります。解釈の具体例を挙げると、変数\(x\)の定義域は、\begin{equation*}X:\text{すべての自然数からなる集合}
\end{equation*}であり、命題関数\(P\)の形状が、\begin{equation*}P\left( x\right) :x\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{equation*}であり、なおかつ、変数\(x\)の自由な現れに以下の値\begin{equation*}x:4
\end{equation*}を代入する状況を想定します。以上の解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}4\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{equation*}が得られます。これは真です。議論領域\(D\)と関数\(P\)の形状はそのままで、変数\(x\)の自由な現れに代入する値だけを、\begin{equation*}x:3
\end{equation*}に変更すると、この新たな解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}3\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{equation*}が得られます。これは偽です。さらに別の解釈の例として、\begin{eqnarray*}
X &:&\text{すべての都道府県からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は関東地方にある} \\
x &:&\text{東京}
\end{eqnarray*}を採用する場合、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\text{東京は関東地方にある}
\end{equation*}が得られます。これは真です。議論領域\(D\)と関数\(P\)の形状はそのままで、変数\(x\)の自由な現れに代入する値だけを、\begin{equation*}x:\text{沖縄}
\end{equation*}に変更すると、この新たな解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\text{沖縄は関東地方にある}
\end{equation*}が得られます。これは偽です。

例(開論理式の解釈)
命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)に関する論理式\begin{equation}P\left( x\right) \rightarrow Q\left( x\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}について考えます。\(P\left( x\right) \)や\(Q\left( x\right) \)における\(x\)はいずれも変数\(x\)の自由な現れであるため、この論理式は開論理式です。したがって、この開論理式の真偽を特定するためには議論領域\(D\)を指定し(変数\(x\)の定義域\(X\)を特定し)、命題関数\(P,Q\)の形状を特定するとともに、変数\(x\)の自由な現れに代入する値を指定する必要があります。解釈の具体例を挙げると、変数\(x\)の定義域は、\begin{equation*}X:\text{すべての整数からなる集合}
\end{equation*}であり、命題関数\(P,Q\)の形状が、\begin{eqnarray*}P\left( x\right) &:&x^{2}>0 \\
Q\left( x\right) &:&x>0
\end{eqnarray*}であり、なおかつ、変数\(x\)の自由な現れに以下の値\begin{equation*}x:1
\end{equation*}を代入する状況を想定します。以上の解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}1^{2}>0\rightarrow 1>0
\end{equation*}が得られます。議論領域\(D\)と関数\(P,Q\)の形状はそのままで、変数\(x\)の自由な現れに代入する値だけを、\begin{equation*}x:-1
\end{equation*}に変更すると、この新たな解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\left( -1\right) ^{2}>0\rightarrow -1>0
\end{equation*}が得られます。さらに別の解釈の例として、\begin{eqnarray*}
X &:&\text{すべての人間からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{はアテナイ人である} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{はアテナイ生まれである} \\
x &:&\text{ソクラテス}
\end{eqnarray*}を採用する場合、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\text{ソクラテスはアテナイ人}\rightarrow \text{ソクラテスはアテナイ生まれ}
\end{equation*}という命題が得られます。また、議論領域\(D\)と関数\(P,Q\)の形状はそのままで、変数\(x\)の自由な現れに代入する値だけを、\begin{equation*}x:\text{アリストテレス}
\end{equation*}に変更すると、この新たな解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\text{アリストテレスはアテナイ人}\rightarrow \text{アリストテレスはアテナイ生まれ}
\end{equation*}が得られます。

変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式\(A\left( x\right) \)が与えられたとき、議論領域\(D\)および論理式\(A\left( x\right) \)を構成するすべての命題関数の形状を具体的に指定すれば開論理式\(\overline{A}\left( x\right) \)が得られます。あとは変数\(x\)の自由な現れに代入する値\(\overline{x}\)を指定すれば命題\(\overline{A}\left( \overline{x}\right) \)が得られますが、\(\overline{A}\left( \overline{x}\right) \)が真になるような値\(\overline{x}\)からなる集合を\(\overline{A}\)の真理集合(truth set)と呼び、これを、\begin{equation*}\phi \left( \overline{A}\right)
\end{equation*}で表記します。その上で、値\(\overline{x}\)が\(\phi \left( \overline{A}\right) \)に含まれること、すなわち命題\(\overline{A}\left( \overline{x}\right) \)が真であることを、\begin{equation*}\overline{x}\in \phi \left( \overline{A}\right)
\end{equation*}と表記します。逆に、値\(\overline{x}\)が\(\phi \left( \overline{A}\right) \)に含まれないこと、すなわち命題\(\overline{A}\left( \overline{x}\right) \)が偽であることを、\begin{equation*}\overline{x}\not\in \phi \left( \overline{A}\right)
\end{equation*}と表記します。

論理式\(A\)が複数の変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)の自由な現れを持つ開論理式\(A\left( x_{1},\cdots,x_{n}\right) \)である場合にも同様に考えます。

例(真理集合)
命題関数\begin{equation*}
P\left( x\right)
\end{equation*}は変数\(x\)の自由な現れを持つ開論理式です。議論領域と命題関数\(P\)の形状が、\begin{eqnarray*}X &:&\text{すべての自然数からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{eqnarray*}で与えられているとき、真理集合は、\begin{equation*}
\phi \left( P\right) :\text{すべての正の偶数からなる集合}
\end{equation*}となります。また、議論領域と命題関数\(P\)の形状が、\begin{eqnarray*}X &:&\text{すべての都道府県からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は関東地方にある}
\end{eqnarray*}で与えられているとき、真理集合は、\begin{equation*}
\phi \left( P\right) :\text{関東地方にある都道府県からなる集合}
\end{equation*}となります。

 

閉論理式の解釈

論理式\(A\)は変数の自由な現れを持たない閉論理式であるものとし、そのことを、\begin{equation*}A
\end{equation*}で表記します。開論理式\(A\)の真偽を特定するためには以下の2つの要素\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{議論領域} \\
&&\left( b\right) \ \text{論理式}A\text{を構成するすべての命題関数の形状}
\end{eqnarray*}を具体的に指定する必要があります。形式的には同一の閉論理式でも、上の2つの要素の中の少なくとも1つが変われば真偽は変わり得るということです。そこで、以上の2つの要素を閉論理式\(A\)の解釈(interpretation)と呼びます。

閉論理式\(A\)が与えられたとき、解釈\(\left( a\right) ,\left(b\right) \)を具体的に指定することにより得られる命題を、\begin{equation*}\overline{A}
\end{equation*}で表記します。開論理式\(A\)に解釈を与えれば真または偽を値としてとる命題\(\overline{A}\)が得られるということです。

例(閉論理式の解釈)
命題関数\(P\left( x\right) \)に関する論理式\begin{equation}\forall x\in X:P\left( x\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}について考えます。\(P\left( x\right) \)における変数\(x\)の現れは量化記号\(\forall \)によって束縛されているため、この論理式は閉論理式です。したがって、この論理式の真偽を特定するためには議論領域\(D\)を指定し(変数\(x\)の定義域\(X\)を特定し)、命題関数\(P\)の形状を特定する必要があります。以下の解釈\begin{eqnarray*}X &:&\text{すべての自然数からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は正の実数である}
\end{eqnarray*}のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\forall x\in X:x\text{は正の実数である}
\end{equation*}が得られます。議論領域\(D\)はそのままで、命題関数\(P\)の形状だけを、\begin{equation*}P\left( x\right) :x\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{equation*}に変更すると、この新たな解釈のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\forall x\in X:x\text{は}2\text{で割り切れる}
\end{equation*}が得られます。

例(閉論理式の解釈)
命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)に関する論理式\begin{equation}\forall x\in X:\left( P\left( x\right) \rightarrow Q\left( x\right) \right)
\quad \cdots (1)
\end{equation}について考えます。\(P\left( x\right) \)や\(Q\left( x\right) \)における変数\(x\)の現れはいずれも量化記号によって束縛されているため、この論理式は閉論理式です。したがって、この論理式の値を特定するためには議論領域\(D\)を指定し(変数\(x\)の定義域\(X\)を特定し)、関数\(P,Q\)の形状を特定する必要があります。以下の解釈\begin{eqnarray*}X &:&\text{すべての整数からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は素数である}
\\
Q\left( x\right) &:&x\text{は偶数である}
\end{eqnarray*}のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\forall x\in X:\left( x\text{が素数}\rightarrow x\text{は偶数}\right)
\end{equation*}が得られます。また、以下の解釈\begin{eqnarray*}
X &:&\text{すべての人間からなる集合} \\
P\left( x\right) &:&x\text{は日本人である} \\
Q\left( x\right) &:&x\text{の出生地は日本である}
\end{eqnarray*}のもとでは、論理式\(\left( 1\right) \)から以下の命題\begin{equation*}\forall x\in X:\left( x\text{が日本人}\rightarrow x\text{の出生地は日本}\right)
\end{equation*}が得られます。

 

述語論理における論理式の解釈

以上の議論を踏まえた上で、述語論理における論理式の解釈とは何であるかをまとめておきましょう。述語論理における論理式\(A\)の解釈とは、以下の3つの要素を具体的に特定することを意味します。

  1. 議論領域\(D\)を指定する。すなわち、論理式\(A\)に含まれるすべての変数の定義域を指定する。
  2. 論理式\(A\)に含まれるすべての命題関数の形状を指定する。
  3. 論理式\(A\)が開論理式である場合には、つまり\(A\)が変数の自由な現れを持つ場合には、そこに代入する値を定義域の中から指定する。

論理式\(A\)が命題定数などでない限り、論理式の真偽はそのままでは確定しません。論理式の真偽を確定するためには解釈を与える必要があります。形式的には同一の論理式でも、異なる解釈を与えればその論理式の値は変わり得るということです。

論理式の解釈という概念がどのようなものであるかが明らかになりました。続いて問題になるのは、論理式に対して何らかの解釈を与えたとき、その論理式の値をどのように定めるかという点です。次回からは論理式の値を特定する際に従うべきルールについて解説します。

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