ベキ等律
集合\(A\)を任意に選んだとき、共通部分\(\cap \)と和集合\(\cup \)に関して以下の関係\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A\cap A &=&A \\
\left( b\right) \ A\cup A &=&A
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、同じ集合どうしの共通部分や和集合はもとの集合と一致するということです。これをベキ等律(idemopotent law)と呼びます。
\left( b\right) \ A\cup A &=&A
\end{eqnarray*}が成り立つ。
ベキ等律と集合の相等関係\(=\)の推移律より、任意の集合\(A\)に対して、\begin{equation*}A\cap A=A\cup A
\end{equation*}という関係もまた成り立ちます。つまり、同一の集合どうしの論理積と論理和は一致します。
\end{equation*}であるとき、\begin{eqnarray*}
A\cap A &=&\left\{ 1,2,3\right\} \cap \left\{ 1,2,3\right\} \quad \because A\text{の定義} \\
&=&\left\{ 1,2,3\right\} \quad \because \text{共通部分の定義} \\
&=&A\quad \because A\text{の定義}
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
A\cup A &=&\left\{ 1,2,3\right\} \cup \left\{ 1,2,3\right\} \quad \because A\text{の定義} \\
&=&\left\{ 1,2,3\right\} \quad \because \text{和集合の定義} \\
&=&A\quad \because A\text{の定義}
\end{eqnarray*}であるため、ベキ等律が確かに成立しています。
\left( b\right) \ A^{c}\cup A^{c} &=&A^{c}
\end{eqnarray*}がともに成り立ちます。
&=&\left( A\cap B\right) \\
\left( b\right) \ \left( A\cap B\right) \cup \left( A\cap B\right)
&=&\left( A\cap B\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立ちます。
\begin{eqnarray*}
A &=&A\cap A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&=&\left( A\cap A\right) \cap A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&=&A\cap \left( A\cap A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
A &=&A\cup A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&=&\left( A\cup A\right) \cup A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&=&A\cup \left( A\cup A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。さらに、\(=\)の推移律より、ここに登場したすべての集合はすべて集合として一致します。
ベキ等律の一般化
集合\(A\)が任意に与えられたとき、\begin{eqnarray*}\left( A\cap A\right) \cap A &=&A\cap A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&=&A\cap \left( A\cap A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\left( A\cap A\right) \cap A\Leftrightarrow A\cap \left( A\cap A\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、3つの\(A\)の間にある2つの\(\cap \)のどちらを最初に作用させても最終的に得られる集合は等しくなります。そこで、これら2つの集合を区別せずに、\begin{equation*}A\cap A\cap A
\end{equation*}で表記します。和集合についても同様に考えると、\begin{equation*}
\left( A\cup A\right) \cup A=A\cup \left( A\cup A\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、これら2つの集合を区別せずに、\begin{equation*}
A\cup A\cup A
\end{equation*}で表記します。
任意個の集合\(A\)の共通部分や和集合についても同様の議論が成立します。つまり、有限\(n\)個の集合\(A\)の間にある\(n-1\)個の\(\cap \)の中のどれを最初に作用させても最終的に得られる集合はいずれも等しいため、それらの集合を区別せずに、\begin{equation*}\overset{n\text{個}}{\overbrace{A\cap \cdots \cap A}}
\end{equation*}で表記します。同様に、有限\(n\)個の集合\(A\)の間にある\(n-1\)個の\(\cup \)の中のどれを最初に作用させても最終的に得られる集合はいずれも等しいため、それらの集合を区別せずに、\begin{equation*}\overset{n\text{個}}{\overbrace{A\cup \cdots \cup A}}
\end{equation*}で表記します。
以上の表記を踏まえたとき、以下が成り立つことが集合の個数\(n\)に関する数学的帰納法により示されます。
& \left( b\right) \ A\cup \cdots \cup A=A
\end{align*}が成り立つ。ただし、\(A\cap \cdots \cap A\)や\(A\cup \cdots \cup A\)は有限\(n\)個の\(A\)の共通部分ないし和集合である。
ベキ等律の有用性
集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\cap B &\Leftrightarrow &A\cap B\cap B\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &A\cap B\cap B\cap B\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &\cdots \\
&\Leftrightarrow &A\cap B\cap B\cap \cdots \cap B\quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
A\cap B\Leftrightarrow A\cap B\cap B\cap \cdots \cap B \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。\(\left( 1\right) \)の左側の集合\begin{equation*}A\cap B
\end{equation*}は、集合\(A\)に対して「集合\(B\)との共通部分をとる」という操作を1回だけ行うことにより得られる集合です。一方、\(\left( 1\right) \)の右側の集合\begin{equation*}A\cap B\cap B\cap \cdots \cap B
\end{equation*}は、同様の操作を繰り返し行うことにより得られる集合です。\(\left( 1\right) \)はこれらの操作の結果が一致することを保証します。
論理和についても同様に考えることにより、\begin{equation*}
A\cup B\cup B\cup \cdots \cup B
\end{equation*}を得ます。
つまり、「同じ集合との共通部分をとる」という操作や「同じ集合との和集合をとる」という操作を繰り返し行うことは、その操作を1回だけ行うことと同じであることをベキ等律は保証します。したがって、ベキ等律を利用することにより、繰り返しを含む煩雑な操作を簡略化したり、逆に、同じ操作を繰り返し行ってもよいことが保証されます。
演習問題
A\right) \right) =A
\end{equation*}が成り立つことを示してください。
\end{equation*}と表現できますが、これは成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
\end{equation*}と表現できますが、これは成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】