ベキ等律
論理式\(A\)を任意に選んだとき、論理積\(\wedge \)と論理和\(\vee \)に関して以下の恒真式\begin{align*}& \left( a\right) \ A\wedge A\Leftrightarrow A \\
& \left( b\right) \ A\vee A\Leftrightarrow A
\end{align*}が成り立ちます。つまり、同じ論理式どうしの論理和や論理積はもとの論理式と論理的に同値であるということです。これをベキ等律(idempotent law)と呼びます。
& \left( b\right) \ A\vee A\Leftrightarrow A
\end{align*}が成り立つ。
ベキ等律と\(\Leftrightarrow \)の推移律より、任意の論理式\(A\)に対して、\begin{equation*}\left( c\right) \ A\wedge A\Leftrightarrow A\vee A
\end{equation*}という関係もまた成立します。つまり、同一の論理式どうしの論理積と論理和は論理的に同値です。
& \left( b\right) \ P\vee P\Leftrightarrow P
\end{align*}がともに成り立ちます。
\end{equation*}は論理式であるため、ベキ等律より、\begin{align*}
& \left( a\right) \ \left( P\rightarrow Q\right) \wedge \left( P\rightarrow
Q\right) \Leftrightarrow P\rightarrow Q \\
& \left( b\right) \ \left( P\rightarrow Q\right) \vee \left( P\rightarrow
Q\right) \Leftrightarrow P\rightarrow Q
\end{align*}がともに成り立ちます。
&\Leftrightarrow &\left( A\wedge A\right) \wedge A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &A\wedge \left( A\wedge A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
A &\Leftrightarrow &A\vee A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &\left( A\vee A\right) \vee A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &A\vee \left( A\vee A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}も成り立ちます。さらに、\(\Leftrightarrow \)の推移律より、ここに登場したすべての論理式は論理的に同値です。
ベキ等律の一般化
論理式\(A\)が任意に与えられたとき、\begin{eqnarray*}\left( A\wedge A\right) \wedge A &\Leftrightarrow &A\wedge A\quad \because
\text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &A\wedge \left( A\wedge A\right) \quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\left( A\wedge A\right) \wedge A\Leftrightarrow A\wedge \left( A\wedge
A\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、3つの\(A\)の間にある2つの\(\wedge \)のどちらを最初に作用させても最終的に得られる論理式はいずれも論理的に同値です。そこで、これら2つの論理式を区別せずに、\begin{equation*}A\wedge A\wedge A
\end{equation*}で表記します。論理和についても同様に考えると、\begin{equation*}
\left( A\vee A\right) \vee A\Leftrightarrow A\vee \left( A\vee A\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、これら2つの論理式を区別せずに、\begin{equation*}
A\vee A\vee A
\end{equation*}で表記します。
任意個の論理式\(A\)の論理積や論理和についても同様の議論が成立します。つまり、有限\(n\)個の論理式\(A\)の間にある\(n-1\)個の\(\wedge \)の中のどれを最初に作用させても最終的に得られる論理式はいずれも論理的に同値であるため、それらの論理式を区別せずに、\begin{equation*}\overset{n\text{個}}{\overbrace{A\wedge \cdots \wedge A}}
\end{equation*}で表記します。同様に、有限\(n\)個の論理式\(A \)の間にある\(n-1\)個の\(\vee \)の中のどれを最初に作用させても最終的に得られる論理式はいずれも論理的に同値であるため、それらの論理式を区別せずに、\begin{equation*}\overset{n\text{個}}{\overbrace{A\vee \cdots \vee A}}
\end{equation*}で表記します。
以上の表記を踏まえたとき、以下が成り立つことが論理式の個数\(n\)に関する数学的帰納法により示されます。
& \left( b\right) \ A\vee \cdots \vee A\Leftrightarrow A
\end{align*}が成り立つ。ただし、\(A\wedge \cdots \wedge A\)や\(A\vee \cdots \vee A\)は有限\(n\)個の\(A\)の論理積ないし論理和である。
& \left( b\right) \ P\vee \cdots \vee P\Leftrightarrow P
\end{align*}がともに成り立ちます。
ベキ等律の有用性
論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\wedge B &\Leftrightarrow &A\wedge B\wedge B\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &A\wedge B\wedge B\wedge B\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &\cdots \\
&\Leftrightarrow &A\wedge B\wedge B\wedge \cdots \wedge B\quad \because
\text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
A\wedge B\Leftrightarrow A\wedge B\wedge B\wedge \cdots \wedge B \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。\(\left( 1\right) \)の左側の論理式\begin{equation*}A\wedge B
\end{equation*}は、論理式\(A\)に対して「論理式\(B\)との論理積をとる」という操作を1回だけ行うことにより得られる論理式です。一方、\(\left( 1\right) \)の右側の論理式\begin{equation*}A\wedge B\wedge B\wedge \cdots \wedge B
\end{equation*}は、同様の操作を繰り返し行うことにより得られる論理式です。\(\left( 1\right) \)はこれらの操作の結果が一致することを保証します。
論理和についても同様に考えることにより、\begin{equation*}
A\vee B\vee B\vee \cdots \vee B
\end{equation*}を得ます。
つまり、「同じ論理式との論理積をとる」という操作や「同じ論理式との論理和をとる」という操作を繰り返し行うことは、その操作を1回だけ行うことと同じであることをベキ等律は保証します。したがって、ベキ等律を利用することにより、繰り返しを含む煩雑な操作を簡略化したり、逆に、同じ操作を繰り返し行ってもよいことが保証されます。
演習問題
A\vee A\right) \right) \Leftrightarrow A
\end{equation*}が成り立つことを示してください。
\end{equation*}と表現できますが、これは成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
\end{equation*}と表現できますが、これは成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
\end{equation*}と表現できますが、これは成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
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