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命題論理

命題論理における論理式の解釈

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論理式の解釈

命題論理の対象は具体的な命題ではなく、命題を抽象化した命題変数と呼ばれる概念です。つまり、命題論理の最小単位は\(1\)または\(0\)を値として取り得る命題変数\begin{equation*}P,Q,\cdots
\end{equation*}です。命題論理では命題変数に対して論理演算子を作用させることにより論理式を得ますが、論理式の値を確定するためには、その論理式を構成するそれぞれの命題変数の値が\(1\)と\(0\)のどちらであるかを確定する必要があります。

論理式に含まれる命題変数の値の組み合わせをその論理式の解釈(interpretation)と呼びます。論理式の値を特定するためには何らかの解釈を与える必要があります。論理式のそれぞれの解釈は真理値表の行として表現されます。

例(論理式の解釈)
命題変数\(P,Q\)に関する論理式\begin{equation*}P\wedge \lnot Q
\end{equation*}について考えます。この論理式の値を特定するためには命題変数\(P,Q\)の値を具体的に指定する必要があります。したがって、この論理式の解釈とは、そこに含まれる命題変数\(P,Q\)の値の組み合わせのことです。2つの命題変数\(P,Q\)の値の組み合わせは\(4\)通り存在するため、与えられた論理式は\(4\)通りに解釈が可能です。それぞれの解釈は真理値表の行として表現されます。

$$\begin{array}{ccc}
\hline
P & Q & P\wedge \lnot Q \\ \hline
1 & 1 & 0 \\ \hline
1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 \\ \hline
0 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

\(P,Q\)の値がともに\(1\)という解釈のもとでは論理式\(P\wedge \lnot Q\)の値は\(0\)になります。\(P\)が\(1\)で\(Q\)が\(0\)という解釈のもとでは\(P\wedge \lnot Q\)の値は\(1\)です。\(P\)が\(0\)で\(Q\)が\(1\)という解釈のもとでは論理式\(P\wedge\lnot Q\)の値は\(0\)になり、\(P,Q\)の値がともに\(0\)という解釈のもとでは論理式\(P\wedge \lnot Q\)の値は\(0\)になります。

例(論理式の解釈)
命題変数\(P,Q\)に関する論理式\begin{equation*}\lnot P\rightarrow Q
\end{equation*}について考えます。この論理式の値を特定するためには命題変数\(P,Q\)の値を具体的に指定する必要があります。したがって、この論理式の解釈とは、そこに含まれる命題変数\(P,Q\)の値の組み合わせのことです。2つの命題変数\(P,Q\)の値の組み合わせは\(4\)通り存在するため、与えられた論理式は\(4\)通りに解釈が可能です。それぞれの解釈は真理値表の行として表現されます。

$$\begin{array}{cccc}
\hline
P & Q & \lnot P & \lnot P\rightarrow Q \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

\(P,Q\)の値がともに\(1\)という解釈のもとでは論理式\(\lnot P\rightarrow Q\)の値は\(1\)になります。\(P\)が\(1\)で\(Q\)が\(0\)という解釈のもとでは\(\lnot P\rightarrow Q\)の値は\(1\)です。\(P\)が\(0\)で\(Q\)が\(1\)という解釈のもとでは論理式\(\lnot P\rightarrow Q\)の値は\(1\)になり、\(P,Q\)の値がともに\(0\)という解釈のもとでは論理式\(\lnot P\rightarrow Q\)の値は\(0\)になります。

 

論理式の解釈の応用

日常言語を使って表現された問題をあえて論理式に翻訳した上で、それを解釈すれば、もとの問題を解く助けになります。

例(論理式の解釈の応用)
目の前に 2 つの箱があります。それらを\(1,2\)とそれぞれ呼びます。一方の箱には宝物が入っており、もう一方の箱には罠が仕掛けられていることは分かっているものとします。それぞれの箱には以下のメッセージが記されています。\begin{eqnarray*}\text{箱}1 &:&\text{少なくとも一方の箱に宝が入っている} \\
\text{箱}2 &:&\text{箱}1\text{の中に罠が仕掛けられている}
\end{eqnarray*}これらのメッセージは、ともに真実であるか、ともに偽りであるかのどちらか一方であることが分かっているものとします。このとき、箱を開けずに、宝が入っている箱を特定できるでしょうか。そこで、命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}P &:&\text{箱}1\text{に宝が入っている} \\
Q &:&\text{箱}2\text{に宝が入っている}
\end{eqnarray*}とそれぞれ定めます。一方の箱には宝物が入っており、もう一方の箱には罠が仕掛けられていることは分かっているため、\begin{eqnarray*}
\lnot P &:&\text{箱}1\text{に罠が仕掛けられている} \\
\lnot Q &:&\text{箱}2\text{に罠が仕掛けられている}
\end{eqnarray*}となります。それぞれの箱に記されているメッセージを論理式として表現すると、\begin{eqnarray*}
\text{箱}1 &:&P\vee Q \\
\text{箱}2 &:&\lnot P
\end{eqnarray*}となります。これらはともに真であるか、ともに偽りであるかのどちらか一方であることが分かっていますが、それは、同等\begin{equation*}
P\vee Q\leftrightarrow \lnot P
\end{equation*}の値が\(1\)であることを意味します。この論理式に関する真理値は以下の通りです。\(P\vee Q\leftrightarrow \lnot P\)の値が\(1\)であるのは真理値表の3行目の場合に限定されますが、このとき、\(P\)の値は\(0\)で\(Q\)の値は\(1\)です。したがって、箱\(2\)に宝物が入っていることが明らかになりました。

$$\begin{array}{ccccc}
\hline
P & Q & P\vee Q & \lnot P & P\vee Q\leftrightarrow \lnot P \\
\hline
1 & 1 & 1 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 1 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

 

演習問題

問題(論理式の解釈)
命題変数\(P,Q\)と命題定数\(F\)に関する論理式\begin{equation*}P\rightarrow F\vee Q
\end{equation*}を解釈してください。

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問題(論理式の解釈)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}P\rightarrow Q\vee R
\end{equation*}を解釈してください。

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問題(論理式の解釈)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}\lnot \left( P\wedge Q\right) \vee \lnot R
\end{equation*}を解釈してください。

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問題(論理式の解釈の応用)
あなたは森の中で道に迷っています。今、目の前に 3 本の道(左・中央・右)があります。道中、会った 3 人に道を聞いたところ、以下のようにそれぞれ教えてもらいました。3人とも嘘つきであることが分かっている場合、どの道へ行けば確実に森から出られるでしょうか。

  1. 左の道へ行けば森から出られるよ。あと、もし右の道から出られるなら、中央の道からも出られるよ。
  2. 左の道と右の道は、どちらを通っても森から出られないよ。
  3. 左の道へ行けば森から出られるよ。けど、中央の道へ行くと森から出られない。
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問題(論理式の解釈の応用)
目の前に3つの箱があります。それらを箱\(1,2,3\)とそれぞれ呼びます。箱の1つには宝物が入っており、他の2つの箱が空であることは分かっているものとします。それぞれの箱には以下のメッセージが記されています。\begin{eqnarray*}\text{箱}1 &:&\text{宝はこの中に入っていない} \\
\text{箱}2 &:&\text{宝はこの中に入っていない} \\
\text{箱}3 &:&\text{宝は箱}2\text{の中に入っている}
\end{eqnarray*}これらのメッセージのうち1つだけは真実で、残りの2つは偽りであることは分かっているものとします。このとき、箱を開けずに宝が入っている箱を特定できるでしょうか。

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関連知識

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