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命題論理

命題論理における選言除去

目次

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選言除去

論理式\(A,B,C\)を任意に選んだとき、以下の推論規則\begin{equation*}A\rightarrow C,\ B\rightarrow C,\ A\vee B\ \models \ C
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(A\rightarrow C\)と\(B\rightarrow C\)と\(A\vee B\)がすべて真である場合には\(C\)が真になることが保証されます。これは選言除去(disjunction elimination)や\(\vee \)除去(\(\vee \) elimination)などと呼ばれる推論規則です。

命題(選言除去)
論理式\(A,B,C\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A\rightarrow C,\ B\rightarrow C,\ A\vee B\ \models \ C
\end{equation*}が成り立つ。

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選言除去\begin{equation}
A\rightarrow C,\ B\rightarrow C,\ A\vee B\ \models \ C \quad \cdots (1)
\end{equation}は推論規則であるため、\(\left( 1\right) \)を構成する\(A,B,C\)にそれぞれどのような具体的な論理式\(\alpha ,\beta ,\gamma \)を入れた場合においても、\begin{equation*}\alpha \rightarrow \gamma ,\ \beta \rightarrow \gamma ,\ \alpha \vee \beta \
\models \ \gamma
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(\alpha \rightarrow \gamma \)と\(\beta\rightarrow \gamma \)と\(\alpha \vee \beta \)が真である場合には\(\gamma \)もまた真になることが保証されます。逆に、結論として採用した具体的な論理式\(\gamma \)が偽である場合、前提である\(\alpha \rightarrow \gamma \)または\(\beta \rightarrow \gamma \)または\(\alpha \vee \beta \)の中の少なくとも1つが偽であることが保証されます。なぜなら、仮に\(\alpha \rightarrow \gamma \)と\(\beta\rightarrow \gamma \)と\(\alpha \vee \beta \)がいずれも真である場合、選言除去\(\left( 1\right) \)より\(\gamma \)が真であることが導き出され、これは\(\gamma \)が偽であることと矛盾するからです。

例(選言除去)
命題変数\(P,Q,R\)を任意に選びます。命題変数は論理式であるため、選言除去より、\begin{equation*}P\rightarrow R,\ Q\rightarrow R,\ P\vee Q\ \models \ R
\end{equation*}が成り立ちます。これは、\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow R\)と\(P\vee Q\)がいずれも真である場合には\(R\)が真であることを意味します。同時に、\(R\)が偽である場合には\(P\rightarrow R\)または\(Q\rightarrow R\)または\(P\vee Q\)の中の少なくとも1つが偽であることを意味します。
例(選言除去)
命題変数\(P,Q,R,S\)を任意に選んだとき、\(P,Q\)は論理式であり、さらに含意\begin{equation*}R\rightarrow S
\end{equation*}も論理式であるため、選言除去より、\begin{equation*}
P\rightarrow \left( R\rightarrow S\right) ,\ Q\rightarrow \left(
R\rightarrow S\right) ,\ P\vee Q\ \models \ \left( R\rightarrow S\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

例(選言除去)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし今日が平日ならば、私は仕事へ行く。} \\
&&\text{もし今日は週末ならば、私は仕事へ行く。} \\
&&\text{今日は平日または週末である。} \\
&&\text{ゆえに、私は仕事へ行く。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}P &:&\text{今日は平日である}
\\
Q &:&\text{今日は週末である}
\\
R &:&\text{私は仕事へ行く}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow R,\ P\vee Q\ \therefore \ R
\end{equation*}と定式化されます。選言除去よりこれは妥当な推論です。つまり、\begin{equation}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow R,\ P\vee Q\ \models \ R \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。これは\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow R\)と\(P\vee Q\)が真であるような状況において\(R\)が必ず真になることを意味します。では、「今日は仕事へ行かない」場合には何が起きているでしょうか。つまり、\(R\)が偽である場合について考えるということです。推論規則\(\left( 1\right) \)が成り立つことを踏まえると、推論の前提である\(R\)が偽である場合、推論の前提である\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow R\)と\(P\vee Q\)の中の少なくとも1つが偽になります。\(P\vee Q\)は明らかに真であるため、\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow R\)の少なくとも一方が偽です。つまり、「今日は仕事へ行かない」場合には、「平日は仕事へ行く」というルールや「週末は仕事へ行く」というルールの少なくとも一方がそもそも成立していないということになります。

 

選言除去の一般化

選言除去は以下のような形で一般化可能です。

命題(選言除去の一般化)
論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n},B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A_{1}\rightarrow B,\cdots ,\ A_{n}\rightarrow B,\ \bigvee_{i=1}^{n}A_{i}\
\models \ B
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(選言除去と含意除去の関係)
先の命題において\(n=1\)の場合の主張は、\begin{equation*}A\rightarrow B,\ A\ \models \ B
\end{equation*}となりますが、これは含意除去に他なりません。

例(選言除去の一般化)
先の命題において\(n=2\)の場合の主張は、\begin{equation*}A_{1}\rightarrow B,\ A_{2}\rightarrow B,\ A_{1}\vee A_{2}\ \models \ B
\end{equation*}となりますが、これは冒頭で示した選言除去に他なりません。

例(選言除去の一般化)
先の命題において\(n=3\)の場合の主張は、\begin{equation*}A_{1}\rightarrow B,\ A_{2}\rightarrow B,\ A_{3}\rightarrow B,\ A_{1}\vee
A_{2}\vee A_{3}\ \models \ B
\end{equation*}となります。

 

演習問題

問題(選言除去)
論理式\(A,B,C\)に関して、\begin{equation*}A\rightarrow C,\ B\rightarrow C\ \models \ \left( A\vee B\right) \rightarrow
C
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(選言除去の一般化)
論理式\(A,B,C,D\)に関して、\begin{equation*}A\rightarrow D,\ B\rightarrow D,\ C\rightarrow D\ \models \ \left( A\vee
B\vee C\right) \rightarrow D
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(選言除去)
ある通りに5軒のラーメン屋さんがありますが、どの店も美味しいことで有名です。この通りのお店でラーメンを食べたとき、必ず美味しいラーメンが食べられることを選言除去を用いて証明してください。

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問題(選言除去)
選言除去とは、任意の論理式\(A,B,C\)に対して、\begin{equation*}A\rightarrow C,\ B\rightarrow C,\ A\vee B\ \models \ C
\end{equation*}が成り立つという推論規則です。本文中では選言除去が成り立つことを真理値表を用いて示しましたが、同じことを同値変形で示してください。つまり、\begin{equation*}
\left( A\rightarrow C\right) \wedge \left( B\rightarrow C\right) \wedge
\left( A\vee B\right) \rightarrow C\Leftrightarrow \top
\end{equation*}が成り立つことを同値変形により証明してください。

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