WIIS

命題論理

命題論理における論理演算の言い換え

目次

Mailで保存
Xで共有

含意の言い換え

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、以下の同値関係\begin{equation*}A\rightarrow B\Leftrightarrow \lnot A\vee B
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、含意\(\rightarrow \)は否定\(\lnot \)と論理和\(\vee \)を用いて表現できます。

命題(含意の言い換え)

任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\rightarrow B\Leftrightarrow \lnot A\vee B
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q\)を任意に選んだとき、命題変数は論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}P\rightarrow Q\Leftrightarrow \lnot P\vee Q
\end{equation*}を得ます。

例(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q,R,S\)を任意に選んだとき、論理和と論理積\begin{eqnarray*}&&P\wedge Q \\
&&R\vee S
\end{eqnarray*}はともに論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \rightarrow \left( R\vee S\right) \Leftrightarrow
\lnot \left( P\wedge Q\right) \vee \left( R\vee S\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

論理式\(A\)が部分論理式\(B\rightarrow C\)を持つ場合、\(A\)中の\(B\rightarrow C\)を\(\lnot B\vee C\)に置き換えることにより得られる論理式を\(A^{\prime }\)で表します。先の命題より\(B\rightarrow C\)と\(\lnot B\vee C\)の真理値は任意の解釈のもとで一致するため、\(A\)と\(A^{\prime }\)の真理値もまた任意の解釈のもとで一致します。したがって、論理式の中に\(\rightarrow \)が含まれる場合には、それを\(\lnot \)と\(\vee \)に置き換えることができます。

例(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}\left( P\wedge \lnot Q\right) \rightarrow \lnot R
\end{equation*}を同値変形すると、\begin{eqnarray*}
\left( P\wedge \lnot Q\right) \rightarrow \lnot R &\Leftrightarrow &\lnot
\left( P\wedge \lnot Q\right) \vee \lnot R\quad \because \rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \lnot P\vee \lnot \lnot Q\right) \vee \lnot R\quad
\because \text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &\lnot P\vee Q\vee \lnot R\quad \because \text{二重否定}
\end{eqnarray*}となります。同値変形後の論理式\begin{equation*}
\lnot P\vee Q\vee \lnot R
\end{equation*}には\(\rightarrow \)が含まれません。

 

同等の言い換え

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、以下の同値関係\begin{equation*}A\leftrightarrow B\Leftrightarrow \left( A\rightarrow B\right) \wedge \left(
B\rightarrow A\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、同等\(\leftrightarrow \)は含意\(\rightarrow \)と論理積\(\wedge \)を用いて表現できます。

命題(同等の言い換え)

任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\leftrightarrow B\Leftrightarrow \left( A\rightarrow B\right) \wedge \left(
B\rightarrow A\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(同等の言い換え)
命題変数\(P,Q\)を任意に選んだとき、命題変数は論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}P\leftrightarrow Q\Leftrightarrow \left( P\rightarrow Q\right) \wedge \left(
Q\rightarrow P\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

例(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q,R,S\)を任意に選んだとき、論理和と論理積\begin{eqnarray*}&&P\wedge Q \\
&&R\vee S
\end{eqnarray*}はともに論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \leftrightarrow \left( R\vee S\right)
\Leftrightarrow \left( \left( P\wedge Q\right) \rightarrow \left( R\vee
S\right) \right) \wedge \left( \left( R\vee S\right) \rightarrow \left(
P\wedge Q\right) \right)
\end{equation*}が成り立ちます。

これまで示した命題を踏まえると以下を得ます。

命題(同等の言い換え)

任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\leftrightarrow B\Leftrightarrow \left( \lnot A\vee B\right) \wedge \left(
\lnot B\vee A\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の命題より、同等\(\leftrightarrow \)は否定\(\lnot \)と論理積\(\wedge \)と論理和\(\vee \)を用いて表現できることが明らかになりました。

例(同等の言い換え)
命題変数\(P,Q\)を任意に選んだとき、命題変数は論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}P\leftrightarrow Q\Leftrightarrow \left( \lnot P\vee Q\right) \wedge \left(
\lnot Q\vee P\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

例(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q,R,S\)を任意に選んだとき、論理和と論理積\begin{eqnarray*}&&P\wedge Q \\
&&R\vee S
\end{eqnarray*}はともに論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \leftrightarrow \left( R\vee S\right)
\Leftrightarrow \left( \lnot \left( P\wedge Q\right) \vee \left( R\vee
S\right) \right) \wedge \left( \lnot \left( R\vee S\right) \vee \left(
P\wedge Q\right) \right)
\end{equation*}が成り立ちます。

論理式\(A\)が部分論理式\(B\leftrightarrow C\)を持つ場合、\(A\)中の\(B\leftrightarrow C\)を\(\left( \lnot B\vee C\right)\wedge \left( \lnot C\vee B\right) \)に置き換えることにより得られる論理式を\(A^{\prime }\)で表します。先の命題より\(B\leftrightarrow C\)と\(\left( \lnot B\vee C\right) \wedge \left( \lnot C\vee B\right) \)の真理値は任意の解釈のもとで一致するため、\(A\)と\(A^{\prime }\)の真理値もまた任意の解釈のもとで一致します。したがって、論理式の中に\(\leftrightarrow \)が含まれる場合には、それを\(\lnot \)と\(\wedge \)と\(\vee \)に置き換えることができます。

例(同等の言い換え)
命題変数\(P,Q\)に関する論理式\begin{equation*}P\leftrightarrow \lnot Q
\end{equation*}を同値変形すると、\begin{eqnarray*}
P\leftrightarrow \lnot Q &\Leftrightarrow &\left( P\rightarrow \lnot
Q\right) \wedge \left( \lnot Q\rightarrow P\right) \quad \because
\leftrightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \lnot P\vee \lnot Q\right) \wedge \left( \lnot
\lnot Q\vee P\right) \quad \because \rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \lnot P\vee \lnot Q\right) \wedge \left( Q\vee
P\right) \quad \because \text{二重否定}
\end{eqnarray*}となります。同値変形後の論理式\begin{equation*}
\left( \lnot P\vee \lnot Q\right) \wedge \left( Q\vee P\right)
\end{equation*}には\(\leftrightarrow \)や\(\rightarrow \)が含まれません。

 

排他的論理和の言い換え

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、以下の同値関係\begin{equation*}A\veebar B\Leftrightarrow \left( A\wedge \lnot B\right) \vee \left( \lnot
A\wedge B\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、排他的論理和\(\veebar \)は否定\(\lnot \)と論理積\(\wedge \)と論理和\(\vee \)を用いて表現できます。

命題(排他的論理和の言い換え)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\veebar B\Leftrightarrow \left( A\wedge \lnot B\right) \vee \left( \lnot
A\wedge B\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(排他的論理和の言い換え)
命題変数\(P,Q\)を任意に選んだとき、命題変数は論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}P\veebar Q\Leftrightarrow \left( P\wedge \lnot Q\right) \vee \left( \lnot
P\wedge Q\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

例(排他的論理和の言い換え)
命題変数\(P,Q,R,S\)を任意に選んだとき、論理和と論理積\begin{eqnarray*}&&P\wedge Q \\
&&R\vee S
\end{eqnarray*}はともに論理式であるため、先の命題より、\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \veebar \left( R\vee S\right) \Leftrightarrow \left(
\left( P\wedge Q\right) \wedge \lnot \left( R\vee S\right) \right) \vee
\left( \lnot \left( P\wedge Q\right) \wedge \left( R\vee S\right) \right)
\end{equation*}が成り立ちます。

論理式\(A\)が部分論理式\(B\veebar C\)を持つ場合、\(A\)中の\(B\veebar C\)を\(\left( A\wedge \lnot B\right) \vee \left( \lnot A\wedge B\right) \)に置き換えることにより得られる論理式を\(A^{\prime }\)で表します。先の命題より\(B\veebar C\)と\(\left( A\wedge \lnot B\right) \vee \left( \lnot A\wedge B\right) \)の真理値は任意の解釈のもとで一致するため、\(A\)と\(A^{\prime }\)の真理値もまた任意の解釈のもとで一致します。したがって、論理式の中に\(\veebar \)が含まれる場合には、それを\(\lnot \)と\(\wedge \)と\(\vee \)に置き換えることができます。

例(排他的論理和の言い換え)
命題変数\(P,Q\)に関する論理式\begin{equation*}P\veebar \lnot Q
\end{equation*}を同値変形すると、\begin{eqnarray*}
P\veebar \lnot Q &\Leftrightarrow &\left( P\wedge \lnot \lnot Q\right) \vee
\left( \lnot P\wedge \lnot Q\right) \quad \because \veebar \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( P\wedge Q\right) \vee \left( \lnot P\wedge \lnot
Q\right) \quad \because \text{二重否定}
\end{eqnarray*}となります。同値変形後の論理式\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \vee \left( \lnot P\wedge \lnot Q\right)
\end{equation*}には\(\veebar \)が含まれません。

 

論理式の定義:再論

論理演算子として\(\lnot,\wedge ,\vee ,\rightarrow ,\leftrightarrow ,\veebar \)を定義しましたが、先に示したように\(\rightarrow,\leftrightarrow ,\veebar \)はいずれも\(\lnot,\wedge ,\vee \)によって言い換え可能であるため、結局、論理演算子として\(\lnot ,\wedge ,\vee \)だけ与えられれば任意の論理式を表現することができます。具体的には、論理式\(A,B\)がそれぞれ任意に与えられたとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\rightarrow B\Leftrightarrow \lnot A\vee B \\
&&\left( b\right) \ A\leftrightarrow B\Leftrightarrow \left( A\rightarrow
B\right) \wedge \left( B\rightarrow A\right) \\
&&\left( c\right) \ A\veebar B\Leftrightarrow \left( A\wedge \lnot B\right)
\vee \left( \lnot A\wedge B\right)
\end{eqnarray*}などの関係が成り立つため、これらの関係を適用することにより、論理式中の\(\rightarrow,\leftrightarrow ,\veebar \)を\(\lnot ,\wedge ,\vee \)に置き換えることができます。以上の事実を踏まえると、論理式を以下のように定義しなおしても一般性は失われません。

定義(論理式)
以下と定める。

  1. 命題変数\(P,Q,\cdots \)は論理式である。
  2. 命題定数\(T,F\)は論理式である。
  3. \(A\)が論理式ならば、\(\left( \lnot A\right) \)は論理式である。
  4. \(A,B\)が論理式ならば、\(\left( A\wedge B\right) \)は論理式である。
  5. \(A,B\)が論理式ならば、\(\left( A\vee B\right) \)は論理式である。
  6. 以上から論理式と判定されるものだけが論理式である。

 

演習問題

問題(含意の言い換え)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}\lnot P\rightarrow \lnot \left( Q\rightarrow \lnot R\right)
\end{equation*}を含意\(\rightarrow \)を用いずに表現してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(同等の言い換え)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}\left( P\wedge \lnot Q\right) \leftrightarrow \lnot R
\end{equation*}を含意\(\rightarrow \)や同等\(\leftrightarrow \)を用いずに表現してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(排他的論理和の言い換え)
命題変数\(P,Q,R\)に関する論理式\begin{equation*}\left( P\wedge \lnot Q\right) \veebar \lnot R
\end{equation*}を排他的論理和\(\veebar \)を用いずに表現してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理演算の言い換え)
任意の論理式\(A,B\)について、\begin{equation*}\lnot \left( A\rightarrow B\right) \vee \left( A\wedge B\right)
\Leftrightarrow A
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理演算の言い換え)
任意の論理式\(A,B\)について、\begin{equation*}\left( A\vee B\right) \wedge \left( \lnot A\rightarrow \lnot B\right)
\Leftrightarrow A
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理演算の言い換え)
任意の論理式\(A,B,C\)について、\begin{equation*}\left( A\rightarrow \lnot B\right) \rightarrow C\Leftrightarrow \left(
A\wedge B\right) \vee C
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理演算の言い換え)
任意の論理式\(A,B\)について、\begin{equation*}\left( \left( A\rightarrow B\right) \rightarrow B\right) \rightarrow
B\Leftrightarrow A\rightarrow B
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理演算の言い換え)
任意の論理式\(A,B\)について、\begin{equation*}\left( A\wedge \lnot B\right) \rightarrow \left( B\wedge \lnot B\right)
\Leftrightarrow A\rightarrow B
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録