論理式の論理和
論理式の定義より、論理式\(A,B\)に論理演算子\(\vee \)を作用させることで得られる、\begin{equation*}A\vee B
\end{equation*}もまた論理式です。\(\vee \)は論理和(logical sum)と呼ばれる論理演算子であり、論理式\(A\vee B\)を\(A\)と\(B\)の論理和(logical sum of \(A\) and \(B\))や\(A\)または\(B\)(\(A\) or \(B\))などと呼びます。
\\
Q &:&\text{彼は勉強する}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\begin{eqnarray*}
P\vee Q &:&\text{彼はテレビを見るか、または勉強する} \\
\lnot P\vee Q &:&\text{彼はテレビを見ないか、または勉強する} \\
P\vee \lnot Q &:&\text{彼はテレビを見るか、または勉強しない} \\
\lnot P\vee \lnot Q &:&\text{彼はテレビを見ないか、または勉強しない}
\end{eqnarray*}などとなります。
論理和の解釈
論理和\(A\vee B\)の値は\(A\)と\(B\)の値に依存しますが、その対応規則を以下の真理値表によって定義します。
$$\begin{array}{ccc}
\hline
A & B & A\vee B \\ \hline
1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$
つまり、論理和\(\vee \)は入力された論理式\(A,B\)に対して、それらの少なくとも1つの値が\(1\)である場合にのみ\(1\)を値としてとる論理式\(A\vee B\)を出力する論理演算です。残りの場合、すなわち\(A\)と\(B\)の値がともに\(0\)である場合、論理和\(A\vee B\)の値は\(0\)です。
日常生活において「\(A\)または\(B\)」という場合、\(A\)か\(B\)のどちらか一方だけが真というニュアンスで解釈されることがありますが、命題論理において「\(A\)または\(B\)」という場合、それは\(A\)と\(B\)の少なくとも一方が真であるという意味になります。つまり、\(A\)か\(B\)のどちらか一方だけが真である場合に加え、\(A\)と\(B\)がともに真である場合にも「\(A\)または\(B\)」という主張は真になります。
論理式の定義より、命題変数\(P\)や命題定数\(T,F\)もまた論理式であるため、これらもまた論理和\(\vee \)を作用させる対象となります。論理和の定義より、\(P,T,F\)およびそれらの論理和の真理値の組合せは以下のように定まります。
$$\begin{array}{cccccc}
\hline
P & T & F & P\vee T & P\vee F & T\vee F \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
$$\begin{array}{ccccc}
\hline
P & Q & R & P\vee Q & \left( P\vee Q\right) \vee R \\ \hline
1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$
が成り立ちます。
$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & \lnot P & \lnot Q & P\vee Q & \lnot P\vee Q & P\vee \lnot Q \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
が成り立ちます。
$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & R & \lnot P & \lnot R & \lnot P\wedge Q & \left( \lnot P\wedge Q\right) \vee \lnot R \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
が成り立ちます。
演習問題
- 夫が仕事中だが妻はそうではないか、または妻が仕事中で夫はそうではない。
- 加藤と鈴木の少なくとも一方は在宅中です。
- 加藤と鈴木のうちの一方だけが在宅中です。
- 彼は土曜または日曜に出勤します。
- \(x\)と\(y\)の少なくとも一方が\(0\)である。
Q &:&\text{加藤は試験に受かった} \\
R &:&\text{高橋は試験に受かった}
\end{eqnarray*}とおきます。このとき、以下の主張をそれぞれ論理式として定式化してください。
- 3人の中で1人だけが試験に受かった。
- 3人の中で少なくとも1人が試験に受かった。
- 3人の中で少なくとも2人が試験に受かった。
- 3人の中で2人が試験に受かった。
$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & T & F & P\wedge Q & \left( P\wedge Q\right) \vee T & \left( P\wedge Q\right) \vee F \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
\end{array}$$
$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & T & F & P\vee Q & \left( P\vee Q\right) \wedge T & \left( P\vee Q\right) \wedge F \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
\end{array}$$
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