WIIS

命題論理

命題論理における論理和

目次

Mailで保存
Xで共有

論理式の論理和

論理式の定義より、論理式\(A,B\)に論理演算子\(\vee \)を作用させることで得られる、\begin{equation*}A\vee B
\end{equation*}もまた論理式です。\(\vee \)は論理和(logical sum)と呼ばれる論理演算子であり、論理式\(A\vee B\)を\(A\)\(B\)の論理和(logical sum of \(A\) and \(B\))や\(A\)または\(B\)(\(A\) or \(B\))などと呼びます。

例(論理和)
命題変数\(P,Q\)をそれぞれ、\begin{eqnarray*}P &:&\text{彼はテレビを見る}
\\
Q &:&\text{彼は勉強する}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\begin{eqnarray*}
P\vee Q &:&\text{彼はテレビを見るか、または勉強する} \\
\lnot P\vee Q &:&\text{彼はテレビを見ないか、または勉強する} \\
P\vee \lnot Q &:&\text{彼はテレビを見るか、または勉強しない} \\
\lnot P\vee \lnot Q &:&\text{彼はテレビを見ないか、または勉強しない}
\end{eqnarray*}などとなります。

 

論理和の解釈

論理和\(A\vee B\)の値は\(A\)と\(B\)の値に依存しますが、その対応規則を以下の真理値表によって定義します。

$$\begin{array}{ccc}
\hline
A & B & A\vee B \\ \hline
1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

つまり、論理和\(\vee \)は入力された論理式\(A,B\)に対して、それらの少なくとも1つの値が\(1\)である場合にのみ\(1\)を値としてとる論理式\(A\vee B\)を出力する論理演算です。残りの場合、すなわち\(A\)と\(B\)の値がともに\(0\)である場合、論理和\(A\vee B\)の値は\(0\)です。

日常生活において「\(A\)または\(B\)」という場合、\(A\)か\(B\)のどちらか一方だけが真というニュアンスで解釈されることがありますが、命題論理において「\(A\)または\(B\)」という場合、それは\(A\)と\(B\)の少なくとも一方が真であるという意味になります。つまり、\(A\)か\(B\)のどちらか一方だけが真である場合に加え、\(A\)と\(B\)がともに真である場合にも「\(A\)または\(B\)」という主張は真になります。

論理式の定義より、命題変数\(P\)や命題定数\(T,F\)もまた論理式であるため、これらもまた論理和\(\vee \)を作用させる対象となります。論理和の定義より、\(P,T,F\)およびそれらの論理和の真理値の組合せは以下のように定まります。

$$\begin{array}{cccccc}
\hline
P & T & F & P\vee T & P\vee F & T\vee F \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$

例(論理和の解釈)
命題変数\(P,Q\)が与えられたとき、その論理和\(P\vee Q\)は論理式であるため、さらにそれと命題変数\(R\)の論理和\(\left( P\vee Q\right) \vee R\)もまた論理式です。それらの真理値について以下の関係

$$\begin{array}{ccccc}
\hline
P & Q & R & P\vee Q & \left( P\vee Q\right) \vee R \\ \hline
1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

が成り立ちます。

例(論理和の解釈)
命題変数\(P,Q\)が与えられたとき、否定\(\lnot \)や論理和\(\vee \)の定義より、\(P\vee Q\)や\(\lnot P\vee Q\)や\(P\vee \lnot Q\)はいずれも論理式であり、それらの真理値について以下の関係

$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & \lnot P & \lnot Q & P\vee Q & \lnot P\vee Q & P\vee \lnot Q \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
\end{array}$$

が成り立ちます。

例(論理和の解釈)
命題変数\(P,Q,R\)が与えられたとき、否定\(\lnot \)や論理積\(\wedge \)、そして論理和\(\vee \)の定義より、\(\left( \lnot P\wedge Q\right) \vee \lnot R\)は論理式であり、その真理値について以下の関係

$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & R & \lnot P & \lnot R & \lnot P\wedge Q & \left( \lnot P\wedge Q\right) \vee \lnot R \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$

が成り立ちます。

 

演習問題

問題(論理式の定式化)
以下の言明をそれぞれ論理式として定式化してください。

  1. 夫が仕事中だが妻はそうではないか、または妻が仕事中で夫はそうではない。
  2. 加藤と鈴木の少なくとも一方は在宅中です。
  3. 加藤と鈴木のうちの一方だけが在宅中です。
  4. 彼は土曜または日曜に出勤します。
  5. \(x\)と\(y\)の少なくとも一方が\(0\)である。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(問題式の定式化)
命題変数\(P,Q,R\)をそれぞれ、\begin{eqnarray*}P &:&\text{鈴木は試験に受かった} \\
Q &:&\text{加藤は試験に受かった} \\
R &:&\text{高橋は試験に受かった}
\end{eqnarray*}とおきます。このとき、以下の主張をそれぞれ論理式として定式化してください。

  1. 3人の中で1人だけが試験に受かった。
  2. 3人の中で少なくとも1人が試験に受かった。
  3. 3人の中で少なくとも2人が試験に受かった。
  4. 3人の中で2人が試験に受かった。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理和の意味)
「授業料を払うか、または退学処分になる」という言明を題材に、日常における「または」の意味と、数学における「または」の意味の違いを説明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(真理値表)
以下の真理値表を完成させてください。

$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & T & F & P\wedge Q & \left( P\wedge Q\right) \vee T & \left( P\wedge Q\right) \vee F \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
\end{array}$$

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(真理値表)
以下の真理値表を完成させてください。

$$\begin{array}{ccccccc}
\hline
P & Q & T & F & P\vee Q & \left( P\vee Q\right) \wedge T & \left( P\vee Q\right) \wedge F \\ \hline
1 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
1 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & & & \\ \hline
0 & 0 & 1 & 0 & & & \\ \hline
\end{array}$$

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理積)
「\(2\)は偶数または\(4\)は奇数である」という主張を論理式として定式化した上で、その真偽を判定してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(論理積)
「\(2\)は偶数または\(4\)は奇数ではない」という主張を論理式として定式化した上で、その真偽を判定してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録