二重否定除去
論理式\(A\)を任意に選ぶと、否定および含意の定義より以下の真理値表が得られます。
$$\begin{array}{cccc}\hline
A & \lnot A & \lnot \lnot A & \lnot \lnot A\rightarrow A \\ \hline
1 & 0 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
上の真理値表より、任意の解釈において\(\lnot \lnot A\rightarrow A\)の値が\(1\)であることが確認できるため、以下の推論規則\begin{equation*}\lnot \lnot A\ \models \ A
\end{equation*}を得ます。つまり、論理式\(A\)の二重否定\(\lnot\lnot A\)が真であるような任意の解釈において\(A\)は必ず真になります。この推論規則を二重否定除去(double negation elimination)と呼びます。
\end{equation*}が成り立つ。
&&\text{今日は週末ではないことはない。} \\
&&\text{ゆえに、今日は週末である。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P\)を、\begin{equation*}P:\text{今日は週末である}
\end{equation*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
\lnot \lnot P\ \therefore \ P
\end{equation*}と定式化されます。二重否定除去よりこれは妥当な推論です。つまり、\begin{equation}
\lnot \lnot P\ \models \ P \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。これは\(\lnot \lnot P\)が真であるような状況において\(P\)が必ず真になることを意味します。
\end{equation*}について考えます。含意導入より、上の推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
A,\ \lnot \left( A\wedge \lnot B\right) \ \therefore \ B
\end{equation*}の妥当性を示しても問題ありません。\(A\)と\(\lnot \left( A\wedge \lnot B\right) \)がともに真であるものとします。\(\lnot \left( A\wedge \lnot B\right) \)が真であるとき、ド・モルガンの法則より\(\lnot A\vee \lnot\lnot B\)は真です。\(A\)が真であるとき\(\lnot A\)は偽です。つまり、\(\lnot A\vee \lnot \lnot B\)は真で\(\lnot A\)が偽ですが、このとき、\(\vee \)の定義より\(\lnot \lnot B\)は真です。したがって、二重否定除去より\(B\)は真であるため、先の推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*}A\ \models \ \lnot \left( A\wedge \lnot B\right) \rightarrow B
\end{equation*}が成り立ちます。
二重否定除去の一般化
二重否定除去より、任意の論理式\(A\)について、\begin{equation*}\lnot \lnot A\ \models \ A
\end{equation*}が成り立ちます。そこで、\(A\)として論理式\(\lnot A\)を採用すれば、\begin{equation*}\lnot \lnot \lnot A\ \models \ \lnot A
\end{equation*}を得ますし、\(A\)として論理式\(\lnot \lnot A\)を採用すれば、\begin{equation*}\lnot \lnot \lnot \lnot A\ \models \ \lnot \lnot A
\end{equation*}を得ます。以降についても同様です。
\lnot B\right) \right) \rightarrow B
\end{equation*}について考えます。含意導入より、上の推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
\lnot \lnot A,\ \lnot \left( \lnot \left( \lnot A\vee \lnot \lnot B\right)
\right) \ \therefore \ B
\end{equation*}の妥当性を示しても問題ありません。\(\lnot \lnot A\)と\(\lnot \left( \lnot \left( \lnot A\vee \lnot \lnot B\right)\right) \)がともに真であるものとします。ド・モルガンの法則より、\begin{eqnarray*}\lnot \left( \lnot \left( \lnot A\vee \lnot \lnot B\right) \right)
&\Leftrightarrow &\lnot \left( \lnot \lnot A\wedge \lnot \lnot \lnot
B\right) \\
&\Leftrightarrow &\lnot \lnot \lnot A\vee \lnot \lnot \lnot \lnot B
\end{eqnarray*}という同値変形が可能であるため、\(\lnot \left( \lnot\left( \lnot A\vee \lnot \lnot B\right) \right) \)が真であるとき、\(\lnot \lnot \lnot A\)と\(\lnot\lnot \lnot \lnot B\)の少なくとも一方は真です。ただ、\(\lnot \lnot A\)が真であるとき、その否定である\(\lnot \lnot\lnot A\)は偽です。したがって\(\lnot \lnot \lnot \lnot B\)は真です。すると二重否定除去より\(\lnot \lnot B\)は真であり、さらに二重否定除去より\(B\)は真です。したがって、もとの推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*}\lnot \lnot A\ \models \ \lnot \left( \lnot \left( \lnot A\vee \lnot \lnot
B\right) \right) \rightarrow B
\end{equation*}が成り立ちます。
演習問題
\end{equation*}が成り立つという推論規則です。本文中では二重否定除去が成り立つことを真理値を用いて示しましたが、同じことを同値変形で示してください。
\end{equation*}が成り立つことを示してください。
次回は二重否定導入と呼ばれる推論規則について解説します。
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