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PROPOSITIONAL LOGIC

命題論理における後件否定

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後件否定

論理式\(A,B\)をそれぞれ任意に選ぶと、否定と論理積および含意の定義より以下の真理値表が得られます。

$$\begin{array}{ccccccc}\hline
A & B & \lnot A & \lnot B & A\rightarrow B & \left( A\rightarrow B\right) \wedge \lnot B & \left( A\rightarrow B\right) \wedge \lnot B\rightarrow \lnot A \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
\end{array}$$

表:後件否定

上の真理値表より、任意の解釈において\(\left( A\rightarrow B\right) \wedge \lnot B\rightarrow \lnot A\)の値が\(1\)であることが確認できるため、以下の推論規則\begin{equation*}A\rightarrow B,\ \lnot B\ \models \ \lnot A
\end{equation*}を得ます。つまり、\(A\rightarrow B\)と\(\lnot B\)がともに真であるような任意の解釈のもとで\(\lnot A\)は必ず真になります。これは後件否定(denying theconsequent)やモーダストレンス(modus tollens)などと呼ばれる推論規則です。

命題(後件否定)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\rightarrow B,\ \lnot B\ \models \ \lnot A
\end{equation*}が成り立つ。

例(後件否定)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{彼がこの事件の犯人ならば、犯行時刻に現場にいたはずである。} \\
&&\text{彼は犯行時刻に現場にいなかった。} \\
&&\text{ゆえに、彼はこの事件の犯人ではない。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}P &:&\text{彼はこの事件の犯人である} \\
Q &:&\text{彼は犯行時刻に現場にいた}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow Q,\ \lnot Q\ \therefore \ \lnot P
\end{equation*}と定式化されます。後件否定よりこれは妥当な推論です。つまり、\begin{equation}
P\rightarrow Q,\ \lnot Q\ \models \ \lnot P \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。これは\(P\rightarrow Q\)と\(\lnot Q\)がともに真であるような状況において\(\lnot P\)が必ず真になることを意味します。では、「彼が犯人であるにも関わらず犯行時刻に現場にいなかった」場合には何が起きているでしょうか。「彼が犯人である」ことは\(P\)が真(\(\lnot P\)が偽)であることを意味し、「彼が犯行時刻に現場にいなかった」ことは\(Q\)が偽(\(\lnot Q\)が真)であることを意味します。推論規則\(\left( 1\right) \)が成り立つことを踏まえると、推論の結論である\(\lnot P\)が偽である場合、推論の前提である\(P\rightarrow Q\)と\(\lnot Q\)の少なくとも一方が偽です。今は\(\lnot Q\)が真である場合について考えているため\(P\rightarrow Q\)が偽でなければなりません。つまり、「彼が犯人であるにも関わらず犯行時刻に現場にいなかった」場合には「犯人ならば犯行現場にいたはず」という理屈そのものが間違っているという結論になります。例えば、彼が何らかの時限装置を用いて犯行に及んだ場合がそのようなケースに該当します。
例(後件否定)
論理式\(A,B,C\)に関する以下の推論\begin{equation*}\left( A\wedge B\right) \rightarrow \lnot C,\ C\ \therefore \ \lnot A\vee
\lnot B
\end{equation*}について考えます。\(\left( A\wedge B\right) \rightarrow \lnot C\)と\(C\)がともに真であるものとします。\(C\)が真であるとき、二重否定導入より\(\lnot \lnot C\)は真です。\(\left( A\wedge B\right) \rightarrow \lnot C\)と\(\lnot \lnot C\)がともに真であるとき、後件否定より\(\lnot \left(A\wedge B\right) \)は真ですが、ド・モルガンの法則より、この場合には\(\lnot A\vee\lnot B\)も真であるため、先の推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*}\left( A\wedge B\right) \rightarrow \lnot C,\ C\ \models \ \lnot A\vee \lnot
B
\end{equation*}が成り立ちます。

 

前件否定

含意の後件を否定する後件否定は妥当である一方で、含意の前件を否定する前件否定(denying the antecedent)は妥当ではありません。つまり、\begin{equation*}
A\rightarrow B,\ \lnot A\ \not\models \ \lnot B
\end{equation*}となります。実際、\(A\)が偽で\(B\)が真であるような解釈において、前提に相当する\(A\rightarrow B\)と\(\lnot A\)はともに真である一方で、結論に相当する\(\lnot B\)は偽になります。

例(前件否定)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{彼がこの事件の犯人ならば、犯行時刻に現場にいたはずである。} \\
&&\text{彼はこの事件の犯人ではない。} \\
&&\text{ゆえに、彼は犯行時刻に現場にいなかったはずである。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}P &:&\text{彼はこの事件の犯人である} \\
Q &:&\text{彼は犯行時刻に現場にいた}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow Q,\ \lnot P\ \therefore \ \lnot Q
\end{equation*}と定式化されます。これは前件否定に相当する推論であるため妥当ではありません。実際、犯人でない人が犯行時刻に現場にいる状況は起こり得るため、彼が犯人ではないからといって、彼が犯行時刻に現場にいなかったと結論付けることはできません。

 

演習問題

問題(後件否定)
繰り返しになりますが、後件否定とは、任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\rightarrow B,\ \lnot B\ \models \ \lnot A
\end{equation*}が成り立つという推論規則です。本文中では後件否定が成り立つことを真理値を用いて示しましたが、同じことを同値変形で示してください。

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問題(後件否定)
以下の推論は妥当であるかそうでないか、理由とともに答えてください。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし私が有罪ならば、私は罰せられる。} \\
&&\text{私は罰せられていない。} \\
&&\text{ゆえに、私は有罪ではない。}
\end{eqnarray*}
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問題(前件否定)
以下の推論は妥当であるかそうでないか、理由とともに答えてください。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし私が有罪ならば、私は罰せられる。} \\
&&\text{私は有罪ではない。} \\
&&\text{ゆえに、私は罰せられない。}
\end{eqnarray*}
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問題(背理法)
論理式\(A,B,C\)に関する以下の推論\begin{equation*}A\rightarrow \lnot B,\ A\rightarrow C,\ C\rightarrow B\ \therefore \ \lnot A
\end{equation*}が妥当であることを証明してください。

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次回は選言三段論法と呼ばれる推論規則について学びます。

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DISCUSSION

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