論理式 A,B,C,D について、「AならばB」「CならばD」「BでないかDでないかの少なくとも一方」という前提から「AでないかCでないかの少なくとも一方」という結論を導く推論規則を破壊的ジレンマと呼びます。
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破壊的ジレンマ

論理式\(A,B,C,D\)を任意に選んだとき、以下の真理値表を得ます。ただし、見やすさを考慮して、\(A\rightarrow B\)と\(C\rightarrow D\)の少なくとも一方が偽であるような解釈はいずれも真理値表に記していません。
$$\begin{array}{cccccccc}
\hline
A & B & C & D & A\rightarrow B & C\rightarrow D & \lnot B\vee \lnot D & \lnot A\vee \lnot C \\ \hline
1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
\end{array}$$

表:破壊的ジレンマ

真理値表より、\(A\rightarrow B\)と\(C\rightarrow D\)と\(\lnot B\vee \lnot D\)がすべて真であるような任意の解釈において\(\lnot A\vee \lnot C\)は真であるため、\begin{equation*}
\left( A\rightarrow B\right) \ \wedge \ \left( C\rightarrow D\right) \
\wedge \ \left( \lnot B\vee \lnot D\right) \ \Rightarrow \ \lnot A\vee \lnot
C
\end{equation*}が成り立ちます。ここから以下の推論規則を得ます。

命題(破壊的ジレンマ)
任意の論理式\(A,B,C\)に対して以下が成り立つ。\begin{equation*}
\left( A\rightarrow B\right) \ \wedge \ \left( C\rightarrow D\right) \
\wedge \ \left( \lnot B\vee \lnot D\right) \ \Rightarrow \ \lnot A\vee \lnot
C
\end{equation*}
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繰り返しになりますが、\(A\rightarrow B\)と\(C\rightarrow D\)と\(\lnot B\vee \lnot D\)がいずれも真であるような任意の解釈において\(\lnot A\vee \lnot C\)は必ず真になります。これは破壊的ジレンマ(destructive dilemma)と呼ばれる推論規則です。

例(破壊的ジレンマ)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし雨が降れば、私は濡れる。} \\
&&\text{もし吹雪になれば、私は凍える。} \\
&&\text{私は濡れていないか凍えていないの少なくとも一方である。} \\
&&\text{ゆえに、雨が降らなかったか吹雪にならなかったの少なくとも一方である。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}
P &:&\text{雨が降る} \\
Q &:&\text{吹雪になる} \\
R &:&\text{私は濡れる} \\
S &:&\text{私は凍える}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow S,\ \lnot R\vee \lnot S\ \therefore \ \lnot
P\vee \lnot Q
\end{equation*}と定式化されます。破壊的ジレンマより、これは妥当な推論です。
例(破壊的ジレンマ)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし雨が降れば、私は家にいる。} \\
&&\text{もし雨が降れば、私は電話をする。} \\
&&\text{私は家にいなかったか電話をしなかったかの少なくとも一方である。} \\
&&\text{ゆえに、雨は降らなかった。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}
P &:&\text{雨が降る} \\
Q &:&\text{私は家にいる} \\
R &:&\text{私は電話をする}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow Q,\ P\rightarrow R,\ \lnot Q\vee \lnot R\ \therefore \ \lnot P
\end{equation*}と定式化されます。\(P\rightarrow Q\)と\(P\rightarrow R\)と\(\lnot Q\vee \lnot R\)がいずれも真であるとき、破壊的ジレンマより\(\lnot P\vee \lnot P\)は真であるため、反射律より\(\lnot P\)もまた真です。すなわち、\begin{equation*}
P\rightarrow Q,\ P\rightarrow R,\ \lnot Q\vee \lnot R\ \models \ \lnot P
\end{equation*}が成り立ちます。先の推論は妥当です。
例(破壊的ジレンマ)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{もし雨が降れば、私は傘をさす。} \\
&&\text{もし吹雪になれば、私は傘をささない。} \\
&&\text{ゆえに、雨でなかったか吹雪でなかったかの少なくとも一方だ。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}
P &:&\text{雨が降る} \\
Q &:&\text{吹雪になる} \\
R &:&\text{私は傘をさす}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow \lnot R\ \therefore \ \lnot P\vee \lnot Q
\end{equation*}と定式化されます。\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow \lnot R\)はともに真であるものとします。排中律より\(R\vee \lnot R\)もまた真であるため、交換律より\(\lnot R\vee R\)も真です。すると破壊的ジレンマより\(\lnot P\vee \lnot Q\)は真です。すなわち、\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow \lnot R\ \Rightarrow \ \lnot P\vee \lnot Q
\end{equation*}が成り立ちます。先の推論は妥当です。

繰り返しになりますが、破壊的ジレンマとは、論理式\(A,B,C,D\)を用いて、\begin{equation*}
\left( A\rightarrow B\right) \ \wedge \ \left( C\rightarrow D\right) \
\wedge \ \left( \lnot B\vee \lnot D\right) \ \Rightarrow \ \lnot A\vee \lnot
C
\end{equation*}と表現される推論規則です。破壊的ジレンマを構成する論理和\(\vee \)を排他的論理和\(\veebar \)に置き換えると、\begin{equation*}
\left( A\rightarrow B\right) \ \wedge \ \left( C\rightarrow D\right) \
\wedge \ \left( \lnot B\veebar \lnot D\right) \ \Rightarrow \ \lnot A\veebar
\lnot C
\end{equation*}を得ますが、これは妥当ではありません。例えば、\(A,B,C\)が偽で\(D\)が真であるような解釈のもとでは、前提である\(A\rightarrow B\)と\(C\rightarrow D\)と\(\lnot B\veebar \lnot D\)がいずれも真である一方、結論である\(\lnot A\veebar \lnot C\)は偽です。

例(排他的論理和に関する構成的ジレンマ)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{もしこれが金ならば、私は大金持ちだ。} \\
&&\text{もしこれがパイライトならば、私は愚か者だ。} \\
&&\text{私は大金持ちでないか愚かでないかのどちらか一方である。} \\
&&\text{ゆえに、これは金でないかパイライトでないかのどちらか一方である。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}
P &:&\text{これは金である} \\
Q &:&\text{私は大金持ちである} \\
R &:&\text{これはパイライトである} \\
S &:&\text{私は愚か者である}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\rightarrow Q,\ R\rightarrow S,\ \lnot Q\veebar \lnot S\ \therefore \ \lnot
P\veebar \lnot R
\end{equation*}と定式化されます。この人が発見したものはパイライトでも金でもなく、なおかつこの人は大金持ちではない愚か者の場合、\(P\rightarrow Q\)と\(R\rightarrow S\)と\(\lnot Q\veebar \lnot S\)はいずれも真である一方、\(\lnot P\veebar \lnot R\)は偽であるため、この推論は妥当ではありません。

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