論理式 A,B,C が任意に与えられたとき、前提が A と B で結論が C であるような推論が妥当である場合、前提が A で結論が B→C であるような推論もまた妥当になります。これは含意導入と呼ばれる推論規則です。
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含意導入

論理式\(A,B,C\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}
\left( A\wedge B\right) \rightarrow C &\Leftrightarrow &\lnot \left( A\wedge
B\right) \vee C\quad \because \rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \lnot A\vee \lnot B\right) \vee C\quad \because
\text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &\lnot A\vee \left( \lnot B\vee C\right) \quad \because
\text{結合律} \\
&\Leftrightarrow &\lnot A\vee \left( B\rightarrow C\right) \quad \because
\rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &A\rightarrow \left( B\rightarrow C\right) \quad \because
\rightarrow \text{の言い換え}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\left( A\wedge B\right) \rightarrow C\Leftrightarrow A\rightarrow \left(
B\rightarrow C\right)
\end{equation*}が成り立ちます。\(\Rightarrow \)は移出律(law of exportation)と呼ばれ、\(\Leftarrow \)は移入律(law of importation)と呼ばれます。

論理式\(A,B,C\)を任意に選んだ上で、以下の2つの推論\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A,B\ \therefore \ C \\
&&\left( b\right) \ A\ \therefore \ B\rightarrow C
\end{eqnarray*}について考えます。推論\(\left( a\right) \)が妥当であるものとします。これは論理式\(\left( A\wedge B\right) \rightarrow C\)が恒真式であることを意味しますが、移出律より、このとき論理式\(A\rightarrow \left( B\rightarrow C\right) \)もまた恒真式であるため、推論\(\left( b\right) \)は妥当です。したがって、推論\(\left( b\right) \)が妥当であることを示す代わりに、推論\(\left( a\right) \)が妥当であることを示してもかまいません。これは含意導入(implication introduction)や\(\rightarrow \)導入(\(\rightarrow \) introduction)と呼ばれる推論規則です。

命題(含意導入)
論理式\(A,B,C\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
A,B\ \models \ C
\end{equation*}が成り立つ場合には、\begin{equation*}
A\ \models \ B\rightarrow C
\end{equation*}もまた成り立つ。
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つまり、妥当であることを示したい推論が、\begin{equation*}
A\ \therefore \ B\rightarrow C
\end{equation*}というように、その結論が含意\(B\rightarrow C\)の形をしているとき、その前件\(B\)を前提とする新たな推論\begin{equation*}
A,B\ \therefore \ C
\end{equation*}を作った上で、それが妥当であることを示してもよいということです。後ほど詳しく解説しますが、これは条件付き証明と呼ばれる証明方法の根拠になります。

例(含意導入)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{今日が土曜日もしくは日曜日ならば、私は仕事が休みだ。} \\
&&\text{ゆえに、今日が土曜日ならば、私は仕事が休みだ。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q,R\)を、\begin{eqnarray*}
P &:&\text{今日は土曜日である} \\
Q &:&\text{今日は日曜日である} \\
R &:&\text{私は仕事が休みだ}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
\left( P\vee Q\right) \rightarrow R\ \therefore \ P\rightarrow R
\end{equation*}と定式化されます。含意導入より、この推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
\left( P\vee Q\right) \rightarrow R,\ P\ \therefore \ R
\end{equation*}が妥当であることを示しても構いません。つまり、\(\left( P\vee Q\right) \rightarrow R\)と\(P\)がともに真であるような任意の解釈において\(R\)が真であることを示すことが目標です。さて、\(P\)が真の場合には\(P\vee Q\)も真ですが、このとき\(\left( P\vee Q\right) \rightarrow R\)が真であるためには\(R\)は真でなければなりません。ゆえに目標は達成されました。つまり、もとの推論は妥当です。

 

含意導入の一般化

論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n},B,C\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}
\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \wedge B\rightarrow C
&\Leftrightarrow &\lnot \left( \left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \wedge
B\right) \vee C\quad \because \rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \lnot \left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \vee
\lnot B\right) \vee C\quad \because \text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &\lnot \left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \vee \left(
\lnot B\vee C\right) \quad \because \text{結合律} \\
&\Leftrightarrow &\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \rightarrow \left(
\lnot B\vee C\right) \quad \because \rightarrow \text{の言い換え} \\
&\Leftrightarrow &\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \rightarrow \left(
B\rightarrow C\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \wedge B\rightarrow C\Leftrightarrow
\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \rightarrow \left( B\rightarrow
C\right)
\end{equation*}が成り立ちます。\(\Rightarrow \)は移出律の一般化であり、\(\Leftarrow \)は移入律の一般化です。

論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n},B,C\)を任意に選んだ上で、以下の2つの推論\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) ,B\ \therefore \ C
\\
&&\left( b\right) \ \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\therefore \ B\rightarrow C
\end{eqnarray*}について考えます。推論\(\left( a\right) \)が妥当であるものとします。これは論理式\(\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \wedge B\rightarrow C\)が恒真式であることを意味しますが、移出律より、このとき論理式\(\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) \rightarrow \left( B\rightarrow C\right) \)もまた恒真式であるため、推論\(\left( b\right) \)は妥当です。したがって、推論\(\left( b\right) \)が妥当であることを示す代わりに、推論\(\left( a\right) \)が妥当であることを示してもかまいません。これは含意導入の一般化です。

命題(含意導入)
論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n},B,C\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) ,B\ \models \ C
\end{equation*}が成り立つ場合には、\begin{equation*}
\bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\ \models \ B\rightarrow C
\end{equation*}もまた成り立つ。
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つまり、妥当であることを示したい推論が、\begin{equation*}
\bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\therefore \ B\rightarrow C
\end{equation*}というように、その結論が含意\(B\rightarrow C\)の形をしているとき、その前件\(B\)を前提とする新たな推論\begin{equation*}
\left( \bigwedge_{i=1}^{n}A_{i}\right) ,B\ \therefore \ C
\end{equation*}を作った上で、それが妥当であることを示してもよいということです。

例(含意導入)
命題変数\(P,Q,R\)に関する以下の推論\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow R\ \therefore \ \left( P\vee Q\right)
\rightarrow R
\end{equation*}について考えます。含意導入より、この推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
P\rightarrow R,\ Q\rightarrow R,\ P\vee Q\ \therefore \ R
\end{equation*}の妥当性を示しても問題ありません。そこで、\(P\rightarrow R\)と\(Q\rightarrow R\)と\(P\vee Q\)がすべて真であるものとします。\(P\vee Q\)が真であるとき、\(\vee \)の定義より\(P\)と\(Q\)の少なくとも一方は真です。\(P\)と\(P\rightarrow R\)がともに真であるとき、\(\rightarrow \)の定義より\(R\)は真です。一方、\(Q\)と\(P\rightarrow R\)がともに真であるとき、やはり\(\rightarrow \)の定義より\(R\)は真です。いずれの場合にも\(R\)は真であるため、目標が達成されました。つまり、もとの推論は妥当です。

次回は連言除去と呼ばれる推論規則について学びます。

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