任意の論理式から矛盾律と呼ばれる恒偽式を構成できます。これは、論理式は任意の解釈において、真であると同時に偽であるような状況は起こりえないことを主張しています。
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矛盾律

論理式\(A\)と恒偽式\(\bot \)をそれぞれ任意に選んだとき、以下の真理値表が得られます。
$$\begin{array}{cccc}
\hline
A & \lnot A & A\wedge \lnot A & \bot \\ \hline
1 & 0 & 0 & 0 \\ \hline
0 & 1 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}$$

表:矛盾律

つまり、任意の解釈のもとで、論理式\(A\wedge \lnot A\)と恒偽式\(\bot \)の値は一致するため、\begin{equation*}
A\wedge \lnot A\Leftrightarrow \bot
\end{equation*}という関係が成り立ちます。これを矛盾律(law of contradiction)と呼びます。

命題(矛盾律)
任意の論理式\(A\)と恒偽式\(\bot \)の間には以下が成り立つ。\begin{equation*}
A\wedge \lnot A\Leftrightarrow \bot
\end{equation*}
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矛盾律は、任意の論理式\(A\)について\(A\wedge \lnot A\)が常に偽であることを主張しています。しかも、\(A\)と\(\lnot A\)の真理値は常に逆転しているため、\(A\wedge \lnot A\)が偽の場合には\(A\)と\(\lnot A\)がともに真であったりともに偽であることはありません。つまり、矛盾律とは、同一の論理式がそれぞれの解釈において真であるとともに偽であるような状況は起こりえないことを主張しています。

例(矛盾律)
命題定数\(F\)は典型的な恒偽式です。したがって、命題変数\(P\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
P\wedge \lnot P\Leftrightarrow F
\end{equation*}が成り立ちます。
例(矛盾律)
命題変数\(P,Q\)に関する論理式\begin{equation*}
\left( P\wedge Q\right) \wedge \left( \lnot P\vee \lnot Q\right)
\end{equation*}は恒偽式です。実際、この論理式を同値変形すると、\begin{eqnarray*}
\left( P\wedge Q\right) \wedge \left( \lnot P\vee \lnot Q\right)
&\Leftrightarrow &\left( P\wedge Q\right) \wedge \lnot \left( P\wedge
Q\right) \quad \because \text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{矛盾律}
\end{eqnarray*}となります。

 

矛盾律の妥当性

命題変数\(P\)を、\begin{equation*}
P:\text{外では雨が降っている}
\end{equation*}とおくとき、矛盾律より、「外では雨が降っていると同時に雨が降っていない」という状況は起こり得ません。しかし、東京では雨が降っていて大阪では雨が降っていない場合、\(P\)と\(\lnot P\)がともに真となり矛盾律が成り立ちません。また、現在は雨が降っていて 1 時間前には雨が降っていない場合にも、\(P\)と\(\lnot P\)がともに真となり矛盾律が成り立ちません。

また、命題変数\(Q\)を、\begin{equation*}
Q:\text{私はアイスクリームが好きだ}
\end{equation*}とおくとき、矛盾律より「私がアイスクリームが好きであると同時に好きではない」という状況は起こりません。しかし、アイスクリームが好きなAさんにとって\(Q\)は真である一方、アイスクリームが好きではないBさんにとって\(\lnot Q\)は真であるため、この場合にも矛盾律が成り立ちません。また、Aさんは子供の頃にはアイスが好きだったが、大人になってからはアイスが好きではなくなった場合にも、\(Q\)と\(\lnot Q\)はともに真となり、やはり矛盾律が成り立ちません。

しかし、以上の主張はやや詭弁です。矛盾律が主張していることは、ある言明を同一の意味で解釈した場合には、それが真であると同時に偽であるようなことは起こり得ないということであり、与えられた主張を様々な形で解釈してよいということではありません。つまり、先の命題変数\(P\)を、例えば、\begin{equation*}
P:\text{東京では現在雨が降っている}
\end{equation*}という形で厳密に表現するのであれば矛盾律は成り立ちますし、命題変数\(Q\)についても、例えば、\begin{equation*}
Q:\text{Aさんは現在アイスクリームが好きだ}
\end{equation*}という形で厳密に表現するのであれば矛盾律は成り立ちます。命題論理において具体的な言明を命題として扱うとき、それは文脈上、真もしくは偽のどちらか一方に定まるように厳密に表現する必要があります。

次回は排中律について学びます。
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