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命題論理

命題論理における選言導入

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選言導入

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、以下の推論規則\begin{equation*}A\ \models \ A\vee B
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(A\)が真であるような任意の解釈において\(A\vee B\)は真になります。同様に、\begin{equation*}B\ \models \ A\vee B
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(B\)が真であるような任意の解釈において\(A\vee B\)は真になります。以上の推論規則を選言導入(disjunctionintroduction)や\(\vee \)導入(\(\vee \)introduction)などと呼びます。

命題(選言導入)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A\ &\models &\ A\vee B \\
\left( b\right) \ B\ &\models &\ A\vee B
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。

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例(選言導入)
命題変数\(P,Q\)を任意に選びます。命題変数は論理式であるため、選言導入より、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ P\ &\models &\ P\vee Q \\
\left( b\right) \ Q\ &\models &\ P\vee Q
\end{eqnarray*}がともに成り立ちます。\(\left( a\right) \)は、\(P\)が真である場合には\(P\vee Q\)が真であることを意味します。同時に、\(P\vee Q\)が偽である場合には\(P\)が偽であることを意味します。\(\left( b\right) \)についても同様です。
例(選言導入)
命題変数\(P,Q,R\)を任意に選んだとき、これらの含意\begin{eqnarray*}P &\rightarrow &Q \\
Q &\rightarrow &R
\end{eqnarray*}はともに論理式であるため、選言導入より、\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ P &\rightarrow &Q\ \models \ \left( P\rightarrow Q\right)
\vee \left( Q\rightarrow R\right) \\
\left( b\right) \ Q &\rightarrow &R\ \models \ \left( P\rightarrow Q\right)
\vee \left( Q\rightarrow R\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立ちます。

例(選言導入)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{今日は雨が降っている。} \\
&&\text{ゆえに、今日は雨が降っているか、もしくは寒い。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*}P &:&\text{今日は雨が降っている} \\
Q &:&\text{今日は寒い}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\ \therefore \ P\vee Q
\end{equation*}と定式化されます。選言導入よりこれは妥当な推論です。つまり、\begin{equation}
P\ \models \ P\vee Q \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。これは\(P\)が真であるような状況において\(P\vee Q\)が必ず真になることを意味します。では、上の推論の結論に相当する「今日は雨が降っているか寒い」が偽である場合には何が起きているでしょうか。つまり、\(P\vee Q\)が偽である場合について考えるということです。推論規則\(\left( 1\right) \)が成り立つことを踏まえると、推論の結論である\(P\vee Q\)が偽である場合、推論の前提である\(P\)もまた偽になります。つまり、「今日は雨が降っているか寒い」が偽である場合には「今日は雨が降っていない」ということになります。
例(選言導入)
論理式\(A,B,C\)に関する以下の推論\begin{equation*}\left( A\vee B\right) \rightarrow C\ \therefore \ A\rightarrow C
\end{equation*}について考えます。含意導入より、上の推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
\left( A\vee B\right) \rightarrow C,\ A\ \therefore \ C
\end{equation*}の妥当性を示しても問題ありません。\(\left(A\vee B\right) \rightarrow C\)と\(A\)が真であるものとします。\(A\)が真であるとき、選言導入より\(A\vee B\)は真です。\(A\vee B\)と\(\left( A\vee B\right) \rightarrow C\)が真であるとき、含意除去より\(C\)は真であるため、先の推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*}\left( A\vee B\right) \rightarrow C\ \models \ A\rightarrow C
\end{equation*}が成り立ちます。

 

選言導入の一般化

選言導入は以下のような形で一般化可能です。

命題(選言導入)
論理式\(A_{1},\cdots ,A_{n}\)が任意に与えられたとき、その中の1つの論理式\(A_{k}\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}A_{k}\ \models \ \bigvee_{i=1}^{n}A_{i}
\end{equation*}が成り立つ。

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例(選言導入)
命題変数\(P_{1},\cdots ,P_{n}\)を任意に選びます。命題変数は論理式であるため、その中の1つの命題変数\(P_{k}\)を任意に選ぶと、選言導入より、\begin{equation*}P_{k}\ \models \ \bigvee_{i=1}^{n}P_{i}
\end{equation*}が成り立ちます。

例(選言導入)
論理式\(A,B,C,D\)に関する以下の推論\begin{equation*}\left( A\vee B\vee C\right) \rightarrow D\ \therefore \ A\rightarrow D
\end{equation*}について考えます。含意導入より、上の推論の妥当性を示す代わりに、以下の推論\begin{equation*}
\left( A\vee B\vee C\right) \rightarrow D,\ A\ \therefore \ D
\end{equation*}の妥当性を示しても問題ありません。\(\left(A\vee B\vee C\right) \rightarrow D\)と\(A\)が真であるものとします。\(A\)が真であるとき、選言導入より\(A\vee B\vee C\)は真です。\(A\vee B\vee C\)と\(\left( A\vee B\vee C\right)\rightarrow D\)が真であるとき、含意除去より\(D\)は真であるため、先の推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*}\left( A\vee B\vee C\right) \rightarrow D\ \models \ A\rightarrow D
\end{equation*}が成り立ちます。

 

演習問題

問題(選言導入)
論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A\ &\models &\ A\vee B \\
\left( b\right) \ B\ &\models &\ A\vee B
\end{eqnarray*}が成り立つことを本文中では真理値を用いて示しましたが、同じことを同値変形で示してください。

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問題(選言導入)
任意の論理式\(A,B,C\)について、\begin{equation*}A,\ \left( A\vee B\right) \rightarrow C\ \models \ C
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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関連知識

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