命題論理における選言三段論法

論理式 A,B について、「AまたはB」と「Aではない」という前提から「Bである」という結論を導く推論規則を選言三段論法と呼びます。

選言三段論法

論理式\(A,B\)を任意に選んだとき、以下の推論規則\begin{equation*} A\vee B,\ \lnot A\ \models \ B
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(A\vee B\)と\(\lnot A\)がともに真であるような任意の解釈のもとで\(B\)は必ず真になります。これは選言三段論法(disjunctive syllogism)と呼ばれる推論規則です。

命題(選言三段論法)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*} A\vee B,\ \lnot A\ \models \ B
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(選言三段論法)
命題変数\(P,Q\)を任意に選びます。命題変数は論理式であるため、選言三段論法より、\begin{equation*} P\vee Q,\ \lnot P\ \models \ Q
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(P\vee Q\)と\(\lnot P\)が真である場合には\(Q\)は真になります。同時にこれは、\(Q\)が偽である場合には\(P\vee Q\)または\(\lnot P\)の少なくとも一方が偽であることも意味します。
例(選言三段論法)
命題変数\(P,Q\)を任意に選びます。以下の論理式\begin{eqnarray*} P &\rightarrow &Q \\
Q &\rightarrow &R
\end{eqnarray*}に注目すると、選言三段論法より、\begin{equation*}
\left( P\rightarrow Q\right) \vee \left( Q\rightarrow R\right) ,\ \lnot
\left( P\rightarrow Q\right) \ \models \ Q\rightarrow R
\end{equation*}が成り立ちます。

例(選言三段論法)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{彼はコーヒーと紅茶の少なくとも一方が好きである。} \\
&&\text{彼はコーヒーが好きではない。} \\
&&\text{ゆえに、彼は紅茶が好きである。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*} P &:&\text{彼はコーヒーが好きである} \\
Q &:&\text{彼は紅茶が好きである}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\vee Q,\ \lnot P\ \therefore \ Q
\end{equation*}と定式化されます。選言三段論法よりこれは妥当な推論です。つまり、\begin{equation}
P\vee Q,\ \lnot P\ \models \ Q \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。これは\(P\vee Q\)と\(\lnot P\)がともに真であるような状況において\(Q\)が必ず真になることを意味します。では、「彼がコーヒーと紅茶を両方とも嫌い」である場合には何が起きているでしょうか。「コーヒーを嫌い」であることは\(P\)が偽(\(\lnot P\)が真)であることを意味し、「紅茶を嫌い」であることは\(Q\)が偽であることを意味します。推論規則\(\left( 1\right) \)が成り立つことを踏まえると、推論の結論である\(Q\)が偽である場合、推論の前提である\(P\vee Q\)と\(\lnot P\)の少なくとも一方が偽です。今は\(\lnot P\)が真である場合について考えているため\(P\vee Q\)が偽でなければなりません。つまり、「彼がコーヒーと紅茶を両方とも嫌い」である場合には「コーヒーと紅茶の少なくとも一方が好き」という主張がそもそも間違っているという結論になります。
例(選言三段論法)
論理式\(A,B\)に関する以下の推論\begin{equation*} \lnot \left( A\wedge B\right) ,\ A\ \therefore \ \lnot B
\end{equation*}について考えます。\(\lnot \left( A\wedge B\right) \)と\(A\)がともに真であるものとします。\(\lnot \left( A\wedge B\right) \)が真であるとき、ド・モルガンの法則より\(\lnot A\vee \lnot B\)は真です。\(A\)が真であるとき、二重否定導入より\(\lnot \lnot A\)は真です。\(\lnot A\vee \lnot B\)と\(\lnot \lnot A\)がともに真であるとき、選言三段論法より\(\lnot B\)は真であるため、先の推論が妥当であることが示されました。つまり、\begin{equation*} \lnot \left( A\wedge B\right) ,\ A\ \models \ \lnot B
\end{equation*}が成り立ちます。

 

選言肯定

選言三段論法とは、選言\(A\vee B\)とそれを構成する一方の論理式の否定\(\lnot A\)から、もう一方の論理式\(B\)を導く推論規則です。では、選言\(A\vee B\)とそれを構成する一方の論理式\(A\)から、もう一方の論理式の否定\(\lnot B\)を導くことはできるのでしょうか。つまり、以下の推論\begin{equation*} A\vee B,\ A\ \therefore \ \lnot B
\end{equation*}は妥当でしょうか。これを選言肯定(affirming a disjunct)と呼びます。

選言肯定は妥当な推論ではありません。実際、\(A\)と\(B\)がともに真であるような解釈において、選言肯定の前提に相当する\(A\vee B\)と\(A\)はともに真である一方で、結論に相当する\(\lnot B\)は偽になります。つまり、\begin{equation*} A\vee B,\ A\ \not\models \ \lnot B
\end{equation*}が成り立つということです。

例(選言肯定)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{彼はコーヒーと紅茶の少なくとも一方が好きである。} \\
&&\text{彼は紅茶が好きである。} \\
&&\text{ゆえに、彼はコーヒーが好きではない。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*} P &:&\text{彼はコーヒーが好きである} \\
Q &:&\text{彼は紅茶が好きである}
\end{eqnarray*}とおくと、先の推論は、\begin{equation*}
P\vee Q,\ P\ \therefore \ \lnot Q
\end{equation*}と定式化されます。これは選言肯定であるため妥当な推論ではありません。実際、彼がコーヒーと紅茶の両方を好きであるとき、\(P\vee Q\)と\(P\)はともに真である一方で、\(\lnot Q\)は偽になります。

選言肯定は妥当でない一方で、選言肯定において論理和\(\vee \)を排他的論理和\(\veebar \)に置き換えることにより得られる以下の推論\begin{equation*} A\veebar B,\ A\ \therefore \ \lnot B
\end{equation*}は妥当です。

命題(選言肯定)
任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*} A\veebar B,\ A\ \models \ \lnot B
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(選言肯定)
以下の推論について考えます。\begin{eqnarray*}
&&\text{彼は家と学校のどちらかにいる。} \\
&&\text{彼は家にいる} \\
&&\text{ゆえに、彼は学校にいない。}
\end{eqnarray*}命題変数\(P,Q\)を、\begin{eqnarray*} P &:&\text{彼は家にいる} \\
Q &:&\text{彼は学校にいる}
\end{eqnarray*}とおくと、彼は家と学校の両方にいることはできないため、先の推論は、\begin{equation*}
P\veebar Q,\ P\ \therefore \ \lnot Q
\end{equation*}と定式化されます。これは排他的論理和に関する選言肯定であるため妥当な推論です。

 

演習問題

問題(選言三段論法)
選言三段論法とは、任意の論理式\(A,B\)に対して、\begin{equation*} A\vee B,\ \lnot A\ \models \ B
\end{equation*}が成り立つという推論規則です。本文中では選言三段論法が成り立つことを真理値を用いて示しましたが、同じことを同値変形で示してください。

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問題(選言三段論法)
以下の推論\begin{eqnarray*}
&&\text{加藤さんは日本人または米国人である。} \\
&&\text{加藤さんが日本人ならば、彼は日本生まれである。} \\
&&\text{加藤さんは日本生まれではない。} \\
&&\text{ゆえに、加藤さんは米国人である。}
\end{eqnarray*}が妥当であることを示してください。また、上の推論が妥当であることを踏まえたとき、加藤さんが「米国生まれの日本人であり米国人ではない」場合には何が起きているか議論してください。

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問題(選言三段論法)
以下の推論\begin{eqnarray*}
&&\text{鈴木さんは山か海のどちらかへ行く} \\
&&\text{鈴木さんは釣竿を持っていないならば海へは行かない} \\
&&\text{鈴木さんは山へは行かない} \\
&&\text{したがって、鈴木さんは釣竿を持っている}
\end{eqnarray*}が妥当であることを示してください。

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