恒等法則

任意の集合に対して、空集合との共通部分をとると空集合になり、全体集合との和集合をとると全体集合になります。また、任意の集合に対して、空集合との和集合や全体集合との共通部分をとるといずれももとの集合に戻ります。これを恒等法則と呼びます。
< 前のページ
次のページ >

零元としての空集合・全体集合

集合\(A\)を任意に選んだとき、全体集合の任意の要素\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}
x\in A\cap \phi &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\in \phi \quad \because
\cap \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\wedge \bot \quad \because \phi \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{恒偽式}\bot
\text{の性質} \\
&\Leftrightarrow &x\in \phi \quad \because \phi \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\left( a\right) \ A\cap \phi =\phi
\end{equation*}という関係が成り立ちます。集合と空集合の共通部分は空集合と一致するということです。上の命題において\(\cap \)と\(\cup \)を入れ替え、\(\phi \)を\(U\)に入れ替えると、\begin{equation*}
\left( b\right) \ A\cup U=U
\end{equation*}を得ますが、これもまた成り立ちます(演習問題にします)。つまり、集合と全体集合の和集合は全体集合と一致するということです。以上を恒等法則(identity law)と呼びます。

命題(恒等法則)
空集合\(\phi \)、全体集合\(U\)、そして任意の集合\(A\)に対して以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ A\cap \phi &=&\phi \\
\left( b\right) \ A\cup U &=&U
\end{eqnarray*}
証明を見る(プレミアム会員限定)
例(恒等法則)
集合\(A,B\)に関して、\begin{equation*}
\left( A\cap B\right) \cap B^{c}=\phi
\end{equation*}が成り立つことを示します。実際、\begin{eqnarray*}
\left( A\cap B\right) \cap B^{c} &=&A\cap \left( B\cap B^{c}\right) \quad
\because \text{結合律} \\
&=&A\cap \phi \quad \because \text{補集合法則}
\\
&=&\phi \quad \because \text{恒等法則}
\end{eqnarray*}となります。
例(恒等法則)
集合\(A,B\)に関して、\begin{equation*}
A\cap B=\left( A\cup B^{c}\right) \cap \left( A^{c}\cup B\right) \cap \left(
A\cup B\right)
\end{equation*}が成り立つことを示します。実際、\begin{eqnarray*}
\left( A\cup B^{c}\right) \cap \left( A^{c}\cup B\right) \cap \left( A\cup
B\right) &=&\left( A\cup B^{c}\right) \cap \left( \left( A^{c}\cap A\right)
\cup B\right) \quad \because \text{分配律} \\
&=&\left( A\cup B^{c}\right) \cap \left( \phi \cup B\right) \quad \because
\text{補集合法則} \\
&=&\left( A\cup B^{c}\right) \cap B\quad \because \text{恒等法則} \\
&=&\left( A\cap B\right) \cup \left( B^{c}\cap B\right) \quad \because \text{分配律} \\
&=&\left( A\cap B\right) \cup \phi \quad \because \text{補集合法則} \\
&=&A\cap B\quad \because \text{恒等法則}
\end{eqnarray*}となります。

 

単位元としての空集合・全体集合

集合\(A\)を任意に選んだとき、全体集合の任意の要素\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}
x\in A\cup \phi &\Leftrightarrow &x\in A\vee x\in \phi \quad \because \cup
\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\vee \bot \quad \because \phi \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\quad \because \text{恒偽式}\bot
\text{の性質}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\left( a\right) \ A\cup \phi =A
\end{equation*}という関係が成り立ちます。集合と空集合の和集合はもとの集合と一致するということです。上の命題において\(\cap \)と\(\cup \)を入れ替え、\(\phi \)を\(U\)に入れ替えると、\begin{equation*}
\left( b\right) \ A\cap U=A
\end{equation*}を得ますが、これもまた成り立ちます(演習問題にします)。つまり、集合と全体集合の共通部分はもとの集合と一致するということです。以上も恒等法則と呼びます。

命題(恒等法則)
空集合\(\phi \)、全体集合\(U\)、そして任意の集合\(A\)に対して以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ A\cup \phi &=&A \\
\left( b\right) \ A\cap U &=&A
\end{eqnarray*}
証明を見る(プレミアム会員限定)
例(恒等法則)
集合\(A,B\)に関して、\begin{equation*}
\left( A\cap B\right) \cup \left( A\cap B^{c}\right) =A
\end{equation*}が成り立つことを示します。実際、\begin{eqnarray*}
\left( A\cap B\right) \cup \left( A\cap B^{c}\right) &=&A\cap \left( B\cup
B^{c}\right) \quad \because \text{分配律} \\
&=&A\cap U\quad \because \text{補集合法則} \\
&=&A
\end{eqnarray*}となります。
例(恒等法則)
集合\(A,B\)に関して、\begin{equation*}
A\cup B=\left( A\cap B^{c}\right) \cup \left( A^{c}\cap B\right) \cup \left(
A\cap B\right)
\end{equation*}が成り立つことを示します。実際、\begin{eqnarray*}
\left( A\cap B^{c}\right) \cup \left( A^{c}\cap B\right) \cup \left( A\cap
B\right) &=&\left( A\cap B^{c}\right) \cup \left( \left( A^{c}\cup A\right)
\cap B\right) \quad \because \text{分配律} \\
&=&\left( A\cap B^{c}\right) \cup \left( U\cap B\right) \quad \because \text{補集合法則} \\
&=&\left( A\cap B^{c}\right) \cup B\quad \because \text{恒等法則} \\
&=&\left( A\cup B\right) \cap \left( B^{c}\cup B\right) \quad \because \text{分配律} \\
&=&\left( A\cup B\right) \cap U\quad \because \text{補集合法則} \\
&=&A\cup B\quad \because \text{恒等法則}
\end{eqnarray*}となります。

次回は双対原理と呼ばれる集合演算の性質について学びます。

次へ進む 質問・コメント(プレミアム会員限定) 演習問題(プレミアム会員限定)
Share on facebook
Share on twitter
Share on email
< 前のページ
次のページ >

プレミアム会員になると、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。プレミアム会員の方は以下からログインしてください。

会員登録 | パスワードを忘れましたか?

有料のプレミアム会員になると、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

本サイトは MathJax を実装しているため、コメント文中で LaTex コマンドを利用することで美しい数式を入力できます。その際、インライン数式は\(数式\)で、ディスプレイ数式は$$数式$$という形式でそれぞれ入力してください。 例えば、\(ax^{2}+bx+c=0\)と入力すると\(ax^{2}+bx+c=0\)と表示され、$$ax^{2}+bx+c=0$$と入力すると$$ax^{2}+bx+c=0$$と表示されます。MathJax(LaTex)の文法については次のサイト( https://easy-copy-mathjax.xxxx7.com )などを参照してください。 紙に手書きした数式や図をカメラやスマホで撮影した上で、コメント欄に張り付けることもできます。その場合、コメント入力欄にある「ファイルを選択」ボタンをクリックした上で画像をアップロードしてください。アップロード可能な画像フォーマットは jpg, gif, png の 3 種類、ファイルサイズの上限は 5 MB です。PDF ファイルの添付も可能です。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員だけが質問やコメントを投稿・閲覧できます。

集合
アカウント
ログイン