WIIS

確率

部分事象

目次

前のページ:

標本空間と事象

次のページ:

等しい事象

Mailで保存
Xで共有

部分事象

標本空間\(\Omega \)が与えられたとき、2つの事象\(A,B\subset \Omega \)を任意に選びます。このとき、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}が成り立つ場合、すなわち\(A\)が\(B\)の部分集合である場合には\(A\)を\(B \)の部分事象(sub event)と呼びます。

部分集合の定義より、\(A\)が\(B\)の部分事象である場合には、\begin{equation}\forall \omega \in \Omega :\left( \omega \in A\Rightarrow \omega \in
B\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちますが、これは何を意味するのでしょうか。問題としている試行のもとで事象\(A\)が起きた場合、それは\(A\)に属する何らかの標本点\(\omega \)が実現したことを意味します。つまり\(\omega \in A\)です。すると\(\left( 1\right) \)より\(\omega \in B\)が成り立ちますが、これは事象\(B\)が起きていることを意味します。つまり、\(A\)が\(B\)の部分事象であることとは、問題としている試行のもとで事象\(A\)が起こる場合には事象\(B\)も必ず同時に起こることを意味します。

例(部分事象)
「1つのサイコロを1回投げて出た目を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\{1,2,3,4,5,6\}
\end{equation*}です。例えば、「\(1\)の目が出る」という事象は、\begin{equation*}\left\{ 1\right\}
\end{equation*}として表現され、「奇数の目が出る」という事象は、\begin{equation*}
\left\{ 1,3,5\right\}
\end{equation*}として表現されますが、両者の間には、\begin{equation*}
\left\{ 1\right\} \subset \left\{ 1,3,5\right\}
\end{equation*}が成り立つため、「\(1\)の目が出る」ことは「奇数の目が出る」ことの部分事象です。
例(部分事象)
「1つのサイコロを2回投げて出た目を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \left( i,j\right) \ |\ i,j\in \left\{ 1,2,3,4,5,6\right\}
\right\}
\end{equation*}です。ただし、標本点\(\left( i,j\right) \)は「1回目に\(i\)が出て2回目に\(j\)が出る」という結果に相当します。例えば、「2回とも偶数の目が出る」という事象を\(A\)で表し、「2回の目の和が偶数である」という事象を\(B\)で表します。このとき、任意の標本点\(\left( i,j\right) \in \Omega \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( i,j\right) \in A &\Leftrightarrow &i\text{と}j\text{はともに偶数}\quad \because A\text{の定義} \\
&\Rightarrow &i+j\text{は偶数} \\
&\Leftrightarrow &\left( i,j\right) \in B\quad \because B\text{の定義}
\end{eqnarray*}すなわち\(A\subset B\)が成り立つため、「2回とも偶数の目が出る」ことは「2回の目の和が偶数である」ことの部分事象です。

 

部分事象ではないことの意味

繰り返しになりますが、事象\(A,B\subset \Omega \)について\(A\)が\(B\)の部分事象であること、すなわち\(A\subset B\)が成り立つことは、\begin{equation*}\forall \omega \in \Omega :\left( \omega \in A\Rightarrow \omega \in B\right)
\end{equation*}が成り立つこととして表現されます。逆に\(A\subset B\)が成り立たないことは、上の命題の否定である、\begin{equation*}\exists \omega \in \Omega :\left( \omega \in A\wedge \omega \not\in B\right)
\end{equation*}が成り立つこととして表現されます。つまり、\(A\)が\(B\)の部分事象でないこととは、\(A\)の要素だが\(B\)の要素ではない標本点\(\omega \)が存在すること、すなわち、問題としている試行のもとで事象\(A\)が起こると同時に事象\(B\)が起こらないような状況が生じ得ることを意味します。

例(部分事象ではないことの意味)
「1つのサイコロを1回投げて出た目を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\{1,2,3,4,5,6\}
\end{equation*}です。例えば、「奇数の目が出る」という事象は、\begin{equation*}
\left\{ 1,3,5\right\}
\end{equation*}として表現され、「\(1\)の目が出る」という事象は、\begin{equation*}\left\{ 1\right\}
\end{equation*}として表現されますが、両者の間には、\begin{equation*}
\left\{ 1,3,5\right\} \subset \left\{ 1\right\}
\end{equation*}という関係が成り立たないため、「奇数の目が出る」ことは「\(1\)の目が出る」ことの部分事象ではありません。言い換えると、「奇数の目が出る」場合には必ずしも「\(1\)の目が出て」いるとは限りません。実際、\(3\)や\(5\)の目が出る場合が反例になっています。
例(部分事象ではないことの意味)
「1つのサイコロを2回投げて出た目を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \left( i,j\right) \ |\ i,j\in \left\{ 1,2,3,4,5,6\right\}
\right\}
\end{equation*}です。ただし、標本点\(\left( i,j\right) \)は「1回目に\(i\)が出て2回目に\(j\)が出る」という結果に相当します。例えば、「2回の目の和が偶数である」という事象を\(A\)で表し、「2回とも偶数の目が出る」という事象を\(B\)で表すとき、両者の間に、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}という関係が成り立たないため、「2回の目の和が偶数である」ことは「2回とも偶数の目が出る」ことの部分事象ではありません。言い換えると、「2回の目の和が偶数である」場合には必ずしも「2回とも偶数の目が出て」いるとは限りません。実際、\(i\)と\(j\)がともに奇数であるような場合が反例になっています。

 

演習問題

問題(部分事象)
「1つのサイコロを1回投げて出た目を観察する」という試行において、「\(2\)の目が出る」という事象が「偶数の目が出る」という事象の部分事象であることを示してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(部分事象)
「1つのサイコロを2回投げて出た目を観察する」という試行において、「2回連続で奇数が出る」という事象が「少なくとも1回は奇数の目が出る」という事象の部分事象であることを示してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(部分事象)
歪みのない正六面体のサイコロのそれぞれの面には\(1\)から\(6\)までの数字が1つずつ記されています。このサイコロを2回振り、出た目を記録します。この試行に関連して、以下の3つの事象\begin{eqnarray*}A &:&2\text{回とも}3\text{が出る} \\
B &:&\text{出た目の和が偶数}
\\
C &:&\text{同じ目が出る}
\end{eqnarray*}について考えます。この中の2つに注目した場合、一方が他方の部分事象になるものは存在するでしょうか。議論してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(部分事象)
「表が出るまでコインを投げ続ける」という試行について考えます。このとき、「2回目までに表が出る」という事象の部分事象をすべて求めてください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

前のページ:

標本空間と事象

次のページ:

等しい事象

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録