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全確率の定理

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全確率の定理

問題としている試行に関する確率空間\(\left(\Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、標本空間\(\Omega \)が有限個の排反事象に分割可能であるものとします。つまり、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow B_{i}\cap B_{j}=\phi \right) \\
&&\left( b\right) \ \bigcup\limits_{i=1}^{n}B_{i}=\Omega
\end{eqnarray*}をともに満たす有限\(n\)個の事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\in \mathcal{F}\)が存在する状況を想定するということです。すると、事象\(A\in \mathcal{F}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A &=&A\cap \Omega \quad \because A\subset \Omega \\
&=&A\cap \bigcup\limits_{i=1}^{n}B_{i}\quad \left( b\right) \\
&=&\bigcup\limits_{i=1}^{n}\left( A\cap B_{i}\right) \quad \because \text{分配律}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
P\left( A\right) =P\left( \bigcup\limits_{i=1}^{n}\left( A\cap B_{i}\right)
\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちますが、\(\left( a\right) \)より\(A\cap B_{1},\cdots ,A\cap B_{n}\)は排反であるため、確率測度\(P\)の有限加法性より、さらに、\begin{equation*}P\left( \bigcup\limits_{i=1}^{n}\left( A\cap B_{i}\right) \right)
=\sum_{i=1}^{n}P\left( A\cap B_{i}\right)
\end{equation*}を得ます。したがって、\begin{equation*}
P\left( A\right) =\sum_{i=1}^{n}P\left( A\cap B_{i}\right)
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。これを全確率の定理(law of total probability)と呼びます。

命題(全確率の定理)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow B_{i}\cap B_{j}=\phi \right) \\
&&\left( b\right) \ \bigcup\limits_{i=1}^{n}B_{i}=\Omega
\end{eqnarray*}を満たす有限\(n\)個の事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\in \mathcal{F}\)が存在する場合には、事象\(A\in \mathcal{F}\)を任意に選んだときに、\begin{equation*}P\left( A\right) =\sum_{i=1}^{n}P\left( A\cap B_{i}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。

つまり、標本空間\(\Omega \)が排反事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\)に分割可能である場合には、事象\(A\)の確率を求める際に、それを排反事象\(A\cap B_{1},\cdots ,A\cap B_{n}\)に分割して考えてもよいことを保証するのが上の命題です。

例(全確率の定理)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、標本空間\(\Omega \)が3個の事象\(B_{1},B_{2},B_{3}\in \mathcal{F}\)に分割可能であるものとします。つまり、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ B_{1}\cap B_{2}=B_{1}\cap B_{3}=B_{2}\cap B_{3}=\phi \\
&&\left( b\right) \ B_{1}\cup B_{2}\cup B_{3}=\Omega
\end{eqnarray*}が成り立つということです。事象\(A\in \mathcal{F}\)を任意に選んだとき、全事象の確率より、\begin{equation*}P\left( A\right) =P\left( A\cap B_{1}\right) +P\left( A\cap B_{2}\right)
+P\left( A\cap B_{3}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

例(全確率の定理)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、2つの事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意に選びます。標本空間は事象\(B\)と余事象\(B^{c}\)に分割可能であるため、つまり、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ B\cap B^{c}=\phi \\
&&\left( b\right) \ \Omega =B\cup B^{c}
\end{eqnarray*}が成り立つため、全事象の定理より、\begin{equation*}
P\left( A\right) =P\left( A\cap B\right) +P\left( A\cap B^{c}\right)
\end{equation*}を得ます。

 

条件付き確率を用いた全確率の定理

標本空間\(\Omega \)が有限\(n\)個の排反事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\)に分割可能である場合には、全確率の定理より、事象\(A\)の確率を、\begin{equation}P\left( A\right) =\sum_{i=1}^{n}P\left( A\cap B_{i}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}と評価できることが明らかになりました。さらに、事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\)が起こる確率が正である場合には、すなわち、\begin{equation*}P\left( B_{i}\right) >0\quad \left( i=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、条件付き確率に関して、\begin{equation*}
P\left( A|B_{i}\right) =\frac{P\left( A\cap B_{i}\right) }{P\left(
B_{i}\right) }\quad \left( i=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことが保証されるため、これを用いて\(\left( 1\right) \)を書き換えると、\begin{equation*}P\left( A\right) =\sum_{i=1}^{n}\left[ P\left( A|B_{i}\right) \cdot P\left(
B_{i}\right) \right] \end{equation*}を得ます。これもまた全確率の定理と呼ばれます。

命題(全確率の定理)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow B_{i}\cap B_{j}=\phi \right) \\
&&\left( b\right) \ \bigcup\limits_{i=1}^{n}B_{i}=\Omega \\
&&\left( c\right) \ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :P\left(
B_{i}\right) >0
\end{eqnarray*}を満たす有限\(n\)個の事象\(B_{1},\cdots ,B_{n}\in \mathcal{F}\)が存在する場合には、事象\(A\in \mathcal{F}\)を任意に選んだときに、\begin{equation*}P\left( A\right) =\sum_{i=1}^{n}\left[ P\left( A|B_{i}\right) \cdot P\left(
B_{i}\right) \right] \end{equation*}という関係が成り立つ。

事象\(A\)の確率を直接計算することが困難である場合でも、状況を\(B_{1},\cdots ,B_{n}\)と分割した上で、それぞれの場合における条件付き確率\(P\left( A|B_{i}\right) \cdot P\left( B_{i}\right) \)を求められる場合には、それらの確率の総和をとれば事象\(A\)の確率を得られることを保証するのが上の命題です。

例(全確率の定理)
\(5\)枚のコインがあります。ただし、その中の\(4\)枚は「表と裏がある通常コイン」ですが、残りの\(1\)枚だけは「両面とも表の特殊コイン」です。以上の状況において、「\(1\)枚のコインをランダムに選び、選んだコインを\(1\)回だけ投げる」という試行について考えます。また、すべてのコインは歪みなく作られており、すべての標本点は同じ程度の確かさで起こるものと仮定します。「出た面が表である」という事象\(A\)の確率を求めます。この事象の確率\(P\left( A\right) \)を直接求めるのは困難ですが、それぞれのコインについて、そのコインが選ばれた場合に表が出る条件付き確率を求めることは難しくありません。具体的には、「通常コインが選ばれる」という事象を\(B_{1}\)で、「特殊コインが選ばれる」という事象を\(B_{2}\)でそれぞれ表記するのであれば、これらは明らかに排反であるとともに、標本空間\(\Omega \)は\(B_{1}\)と\(B_{2}\)に分割されます。したがって、全確率の定理より、\begin{equation}P\left( A\right) =P\left( A|B_{1}\right) \cdot P\left( B_{1}\right) +P\left(
A|B_{2}\right) \cdot P\left( B_{2}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}という関係が成り立つことが保証されます。\(P\left( A|B_{1}\right) \)は「通常のコインが選ばれるという条件のもとで表が出る条件付き確率」であるため、\begin{equation*}P\left( A|B_{1}\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}となります。また、\(P\left( A|B_{2}\right) \)は「特殊なコインが選ばれるという条件のもとで表が選ばれる条件付き確率」であるため、\begin{equation*}P\left( A|B_{2}\right) =1
\end{equation*}となります。\(P\left( B_{1}\right) \)と\(P\left( B_{2}\right) \)はそれぞれの種類のコインが選ばれる確率であるため、\begin{eqnarray*}P\left( B_{1}\right) &=&\frac{4}{5}>0 \\
P\left( B_{2}\right) &=&\frac{1}{5}>0
\end{eqnarray*}となります。これらと\(\left( 1\right) \)より、\begin{eqnarray*}P\left( A\right) &=&\frac{1}{2}\cdot \frac{4}{5}+1\cdot \frac{1}{5} \\
&=&\frac{3}{5}
\end{eqnarray*}であることが明らかになりました。

例(全確率の定理)
箱の中に2つの袋\(1,2\)が入っています。さらに、袋\(1\)の中には「\(7\)個の赤いボールと\(3\)個の白いボール」が、袋\(2\)の中には「\(2\)個の赤いボールと\(8\)個の白いボール」がそれぞれ入っているものとします。以上の状況において、「どちらか一方の袋をランダムに選び、さらに選んだ袋の中から\(1\)個のボールをランダムに取り出す」という試行について考えます。また、すべての標本点は同じ程度の確かさで起こるものと仮定します。「取り出したボールの色が赤である」という事象\(A\)の確率を考えます。この事象の確率\(P\left(A\right) \)を直接求めるのは困難ですが、それぞれの袋について、その袋が選ばれた場合にそこから赤いボールが選ばれる条件付き確率を求めることは難しくありません。具体的には、「袋\(1\)を選ぶ」という事象を\(B_{1}\)で、「袋\(2\)を選ぶ」という事象を\(B_{2}\)でそれぞれ表記するのであれば、これらは明らかに排反であるとともに、標本空間\(\Omega \)は\(B_{1}\)と\(B_{2}\)に分割されます。したがって、全確率の定理より、\begin{equation}P\left( A\right) =P\left( A|B_{1}\right) \cdot P\left( B_{1}\right) +P\left(
A|B_{2}\right) \cdot P\left( B_{2}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}という関係が成り立つことが保証されます。\(P\left( A|B_{1}\right) \)は「袋\(1\)が選ばれるという条件のもとで赤が選ばれる条件付き確率」であるため、\begin{equation*}P\left( A|B_{1}\right) =\frac{7}{10}
\end{equation*}となります。また、\(P\left( A|B_{2}\right) \)は「袋\(2\)が選ばれるという条件のもとで赤が選ばれる条件付き確率」であるため、\begin{equation*}P\left( A|B_{2}\right) =\frac{2}{10}
\end{equation*}となります。\(P\left( B_{1}\right) \)と\(P\left( B_{2}\right) \)はそれぞれの袋が選ばれる確率であるため、\begin{equation*}P\left( B_{1}\right) =P\left( B_{2}\right) =\frac{1}{2}>0
\end{equation*}となります。これらと\(\left( 1\right) \)より、\begin{eqnarray*}P\left( A\right) &=&\frac{7}{10}\cdot \frac{1}{2}+\frac{2}{10}\cdot \frac{1}{2} \\
&=&\frac{9}{20}
\end{eqnarray*}であることが明らかになりました。

 

演習問題

問題(全確率の定理)
ある店舗では、同一の商品を2つの業者から仕入れた上で販売しています。具体的には、その商品の\(8\)割を業者\(1\)から仕入れて、残りの\(2\)割を業者\(2\)から仕入れています。また、業者\(1\)が供給する商品の\(1\)パーセントが不良品であり、業者\(2\)が供給する商品の\(3\)パーセントが不良品であるものとします。その店舗でその商品をランダムに1つ購入した場合、それが不良品である確率を求めてください。
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