WIIS

確率

可算個の事象の独立性(ペア独立性・相互独立性)

目次

Mailで保存
Xで共有

可算個の事象の相互独立性

確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、2つの事象\(A,B\in \mathcal{F}\)が独立であることを、\begin{equation*}P\left( A\cap B\right) =P\left( A\right) \cdot P\left( B\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義しました。以上の定義を拡張することにより、有限\(n\)個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots ,A_{n}\in \mathcal{F}\)が独立(相互独立)であることを、\begin{equation*}\forall J\subset \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :P\left( \bigcap_{i\in
J}A_{i}\right) =\prod_{i\in J}P\left( A_{i}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義しました。同じことを、事象族\(\left\{A_{i}\right\} _{i=1}^{n}\)が独立であると言うこともできます。では、可算個の事象が独立であることをどのように定義すればよいでしょうか。

可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathcal{F}\)が与えられているものとします。その中から有限個の事象を任意に選んだとき、選ばれた事象が独立であることが保証されるのであれば、もとの可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \)は独立である(independent)とか相互独立である(mutual independent)であるなどと言います。同じことを、事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\)が独立であると言うこともできます。

可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathcal{F}\)が独立であることをどのように定式化できるでしょうか。まず、選ばれる事象の個数\(n\in \mathbb{N} \)によって場合を分ける必要があります。個数\(n\)を決定したら、続いて、可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \)の中から\(n\)個を任意に選んだ上で、それらを\(A_{\left( 1\right) },\cdots,A_{\left( n\right) }\)で表記します。その上で、選ばれた事象\(A_{\left( 1\right) },\cdots ,A_{\left( n\right) }\)が独立であるならば、すなわち、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall A_{\left( 1\right) },\cdots ,A_{\left( n\right) }\in \left\{
A_{1},A_{2},\cdots \right\} ,\ \forall J\subset \left\{ 1,\cdots ,n\right\}
:P\left( \bigcap_{i\in J}A_{\left( i\right) }\right) =\prod_{i\in J}P\left(
A_{\left( i\right) }\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、もとの可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \)は独立です。つまり、可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \)が独立であることとは、任意の有限集合\(I\subset \mathbb{N} \)に関する有限事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in I}\)が独立であることを意味します。

可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathcal{F}\)が独立ではない場合には、これらは従属である(dependent)と言います。同じことを、事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\)が従属であると言うこともできます。これは、少なくとも1つの有限集合\(I\subset \mathbb{N} \)に関する有限事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in I}\)が独立ではないことを意味します。

 

可算個の事象のペア独立性

確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に加えて可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathcal{F}\)が与えられたとき、その中の任意の異なる2つが独立である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall i,j\in \mathbb{N} :\left[ i\not=j\Rightarrow P\left( A_{i}\cap A_{j}\right) =P\left(
A_{i}\right) \cdot P\left( A_{j}\right) \right] \end{equation*}が成り立つ場合には、もとの可算個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots \)はペア独立である(pariwise independent)と言います。同じことを、事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\)がペア独立であると言うこともできます。

可算個の事象が独立(相互独立)である場合、それらの事象はペア独立です。

命題(相互独立な事象はペア独立)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられているものとする。可算事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\subset \mathcal{F}\)が独立(相互独立)であるならば、\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\)はペア独立である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

独立な事象族の部分集合の独立性

以降において「独立」という場合、それは「ペア独立」ではなく「相互独立」を指すものと定めます。

可算個の独立な事象の中から高々可算個の事象を任意に選んだとき、選ばれた事象どうしもまた独立になることが保証されます。

命題(独立な可算事象族の部分集合の独立性)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられているものとする。可算事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\subset \mathcal{F}\)が独立であるならば、その任意の部分集合もまた独立である。すなわち、\(I\subset \mathbb{N} \)を任意に選んだとき、事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in I}\)は独立である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

独立な可算個の事象と余事象

可算個の独立な事象が与えられたとき、その中の任意個の事象を余事象に置き換えても、それらの事象は独立なままです。

命題(独立な可算個の事象と余事象)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられているものとする。可算個の事象族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N} }\subset \mathcal{F}\)が独立であるならば、その中の任意個の事象を余事象に置き換えても、得られる事象族は独立である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録