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DERIVATIVES OF MULTIVARIABLE FUNCTIONS

多変数関数の全微分と偏微分の関係

目次

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全微分可能な関数は偏微分可能

関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において全微分可能であることとは、\(f\)が点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\begin{equation*}\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -f^{\prime
}\left( a\right) \cdot h}{\left\Vert h\right\Vert }=0
\end{equation*}を満たす点\(f^{\prime }\left( a\right) \in \mathbb{R} ^{n}\)が存在することを意味します。関数\(f\)が点\(a\)において全微分可能であることを示すためには全微分係数\(f^{\prime}\left( a\right) \)の候補となる点が必要ですが、それをどのように特定すればよいでしょうか。実は、関数\(f\)が点\(a\)において全微分可能である場合、\(f\)はその点\(a\)において偏微分可能であることが保証されるとともに、そこでの全微分係数\(f^{\prime}\left( a\right) \)は勾配ベクトル\(\nabla f\left( a\right) \)と一致することが保証されます。

命題(全微分可能な関数は偏微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において全微分可能であるならば、\(f\)は\(a\)において偏微分可能であり、さらに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\nabla f\left( a\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。

証明

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例(全微分可能な関数は偏微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の定義域\(X\)は開集合であるとともに、\(f\)は定義域\(X\)上において全微分可能であるものとします。つまり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)が存在するということです。先の命題より、この場合には\(f\)は\(X\)上において偏微分可能であるため、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)が存在するとともに、これは\(f^{\prime }\)と一致します。つまり、\begin{equation*}\forall x\in X:f^{\prime }\left( x\right) =\nabla f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

 

偏微分可能な関数は全微分可能であるとは限らない

先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において偏微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において全微分可能であるとは限りません。そもそも関数\(f\)が点\(a\)において全微分可能ではない場合、たとえ\(f\)が点\(a\)において偏微分可能であっても、そこでの勾配ベクトルは全微分係数とは一致しないということです。以下の例より明らかです。

例(偏微分可能だが全微分可能ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{xy^{2}}{x^{2}+y^{4}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において偏微分可能です。実際、\begin{eqnarray*}f_{x}^{\prime }\left( 0,0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left(
h,0\right) -f\left( 0,0\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{0-0}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}0=0 \\
f_{y}^{\prime }\left( 0,0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left(
0,h\right) -f\left( 0,0\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{0-0}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}0=0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。その一方で、\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能ではありません。実際、\(f\)が点\(\left( 0,0\right) \)において全微分可能であるものと仮定すると、\begin{equation*}\lim_{\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{f\left(
h_{1},h_{2}\right) -f\left( 0,0\right) -c_{1}h_{1}-c_{2}h_{2}}{\left\Vert
h_{1},h_{2}\right\Vert }=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\lim_{\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{\frac{h_{1}h_{2}^{2}}{h_{1}^{2}+h_{2}^{4}}-c_{1}h_{1}-c_{2}h_{2}}{\sqrt{h_{1}^{2}+h_{2}^{2}}}=0
\end{equation*}を満たす点\(\left( c_{1},c_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)が存在することになります。実際には、\(\left( h_{1},h_{2}\right) \)を以下のような\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合\begin{equation*}\left\{ \left( h_{1},h_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ h_{1}=h_{2}^{2}\right\}
\end{equation*}上の点をとりながら点\(\left( 0,0\right) \)へ限りなく近づける場合、\begin{eqnarray*}\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) &\Leftrightarrow
&\left( h_{2}^{2},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) \quad \because
h_{1}=h_{2}^{2} \\
&\Leftrightarrow &h_{2}\rightarrow 0
\end{eqnarray*}であることに留意すると、\begin{eqnarray*}
\lim_{\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{\frac{h_{1}h_{2}^{2}}{h_{1}^{2}+h_{2}^{4}}-c_{1}h_{1}-c_{2}h_{2}}{\sqrt{h_{1}^{2}+h_{2}^{2}}} &=&\lim_{h_{2}\rightarrow 0}\frac{\frac{h_{2}^{4}}{h_{2}^{4}+h_{2}^{4}}-c_{1}h_{2}^{2}-c_{2}h_{2}}{\sqrt{h_{2}^{4}+h_{2}^{2}}}\quad \because h_{1}=h_{2}^{2} \\
&=&\lim_{h_{2}\rightarrow 0}\frac{\frac{1}{2}-c_{1}h_{2}^{2}-c_{2}h_{2}}{\sqrt{h_{2}^{4}+h_{2}^{2}}} \\
&=&\lim_{h_{2}\rightarrow 0}\frac{\frac{1}{\left\vert h_{2}\right\vert }\left( \frac{1}{2}-c_{1}h_{2}^{2}-c_{2}h_{2}\right) }{\sqrt{h_{2}^{2}+1}} \\
&=&\frac{\left( +\infty \right) \cdot \frac{1}{2}}{1} \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能ではありません。

 

連続微分可能な関数は全微分可能

関数が偏微分可能である場合、全微分可能であるとは限らないことが明らかになりました。一方、関数が偏微分可能であり、なおかつ偏導関数が連続であるならば、すなわち関数が\(C^{1}\)級であるならば、全微分可能であることが保証されます。

命題(連続微分可能な関数は全微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域の内点\(a\in X\)の周辺の任意の点において\(C^{1}\)級であるならば、\(f\)は点\(a\)において全微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\nabla f\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(連続微分可能な関数は全微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の定義域\(X\)は開集合であるとともに、\(f\)は定義域\(X\)上において\(C^{1}\)級であるものとします。先の命題より、この場合には\(f\)は\(X\)上において全微分可能であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)と全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)は一致します。つまり、\begin{equation*}\forall x\in X:f^{\prime }\left( x\right) =\nabla f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

例(連続微分可能な関数は全微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{4}+y^{4}-4x^{2}y^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の多項式関数であるため\(C^{1}\)級であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( x,y\right) &=&\left( f_{x}^{\prime }\left( x,y\right)
,f_{y}^{\prime }\left( x,y\right) \right) \\
&=&\left( 4x^{3}-8xy^{2},4y^{3}-8x^{2}y\right)
\end{eqnarray*}を定めます。先の命題より、\(f\)は全微分可能であり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x,y\right) =\left( 4x^{3}-8xy^{2},4y^{3}-8x^{2}y\right)
\end{equation*}を定めます。

例(連続微分可能な関数は全微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の有理関数であるため\(C^{1}\)級であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( x,y\right) &=&\left( f_{x}^{\prime }\left( x,y\right)
,f_{y}^{\prime }\left( x,y\right) \right) \\
&=&\left( -\frac{2x}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}},-\frac{2y}{\left(
x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}}\right)
\end{eqnarray*}を定めます。先の命題より、\(f\)は全微分可能であり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x,y\right) =\left( -\frac{2x}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right)
^{2}},-\frac{2y}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}}\right)
\end{equation*}を定めます。

例(連続微分可能な関数は全微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の単項式関数\(x^{2}y^{2}\)と1変数の正弦関数\(\sin \left( x\right) \)の合成関数であるため\(C^{1}\)級であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( x,y\right) &=&\left( f_{x}^{\prime }\left( x,y\right)
,f_{y}^{\prime }\left( x,y\right) \right) \\
&=&\left( 2xy^{2}\cos \left( x^{2}y^{2}\right) ,2x^{2}y\cos \left(
x^{2}y^{2}\right) \right)
\end{eqnarray*}を定めます。先の命題より、\(f\)は全微分可能であり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x,y\right) =\left( 2xy^{2}\cos \left( x^{2}y^{2}\right)
,2x^{2}y\cos \left( x^{2}y^{2}\right) \right)
\end{equation*}を定めます。

 

全微分可能な関数は連続微分可能であるとは限らない

先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、関数が全微分可能であることは\(C^{1}\)級であることを必ずしも含意しません。以下の例より明らかです。

例(全微分可能だが連続微分可能ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\left( x^{2}+y^{2}\right) \sin \left( \frac{1}{\sqrt{x^{2}+y^{2}}}\right) &
\left( if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能である一方で\(C^{1}\)級ではありません(演習問題)。

 

全微分可能であることの判定方法

これまでの議論を整理しましょう。まず、\(C^{1}\)級の関数は全微分可能であることが保証されるため、関数が全微分可能であることを示すためには、まず、それが\(C^{1}\)級であるか判定することになります。

ただ、\(C^{1}\)級でない関数が全微分可能であることは起こり得るため、与えられた関数が\(C^{1}\)級でないことが判明した場合でも、それが全微分可能ではないとは限りません。ただ、関数\(f\)が全微分可能である場合、それは偏微分可能であることは確実であり、なおかつ、全微分係数は勾配ベクトルと一致します。したがって、勾配ベクトル\(\nabla f\left( a\right) \)を求めた上で、\begin{equation*}\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -\nabla
f\left( a\right) \cdot h}{\left\Vert h\right\Vert }=0
\end{equation*}が成り立つことを示せば、全微分可能性の定義より、\(f\)は\(a\)において全微分可能であることを示したことになります。

例(全微分可能であることの判定方法)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{x^{2}y^{2}}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能であることを示します。点\(\left( 0,0\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( 0,0\right) =\left( 0,0\right)
\end{equation*}であるため(演習問題)、仮に\(f\)が点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能であるならば、\begin{equation*}\lim_{\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{f\left(
0+h_{1},0+h_{2}\right) -f\left( 0,0\right) -\nabla f\left( 0,0\right) \cdot
\left( h_{1},h_{2}\right) }{\left\Vert \left( h_{1},h_{2}\right) \right\Vert
}=0
\end{equation*}が成り立つはずですが、実際にはこれは成り立つため(演習問題)、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において全微分可能です。

 

全微分可能でないことの判定方法

関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において全微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において偏微分可能です。対偶より、\(f\)が点\(a\)において偏微分可能でないならば、すなわち\(f\)が点\(a\)において少なくとも1つの変数\(x_{k}\)について偏微分可能でない場合には、\(f\)は点\(a\)において全微分可能ではありません。したがって、関数が全微分可能でないことを示すためには、それが偏微分可能ではないことを示せばよいということになります。

例(全微分可能でないことの判定方法)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sqrt{x^{2}+y^{2}}
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能でないことを示すために、\(f\)が\(\left( 0,0\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能でないことを示します。具体的には、\begin{eqnarray*}\frac{f\left( 0+h,0\right) -f\left( 0,0\right) }{h} &=&\frac{f\left(
h,0\right) -f\left( 0,0\right) }{h} \\
&=&\frac{\sqrt{h^{2}}}{h} \\
&=&\frac{\left\vert h\right\vert }{h}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left( 0+h,0\right) -f\left( 0,0\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left\vert h\right\vert }{h}=1 \\
\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( 0+h,0\right) -f\left( 0,0\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left\vert h\right\vert }{h}=-1
\end{eqnarray*}となり両者は異なるため、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能ではありません。したがって\(f\)は\(\left( 0,0\right) \)において全微分可能でないことが示されました。

関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において全微分可能でないことを証明する際に、先の命題を別の形で利用することもできます。具体的には、まず、関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において全微分可能であるものと仮定します。すると先の命題より、そこでの全微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)は勾配ベクトル\(\nabla f\left( a\right) \)と一致することが保証されます。すると全微分の定義より、\begin{equation*}\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -\nabla
f\left( a\right) \cdot h}{\left\Vert h\right\Vert }=0
\end{equation*}が成り立つはずです。したがって、上の関係が成り立たないことを示せば、\(f\)は\(a\)において全微分可能でないことを示したことになります。

例(全微分可能でないことの判定方法)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{xy^{2}}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能でないことを示します。点\(\left( 0,0\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( 0,0\right) =\left( 0,0\right)
\end{equation*}であるため(演習問題)、仮に\(f\)が点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能であるならば、\begin{equation*}\lim_{\left( h_{1},h_{2}\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{f\left(
0+h_{1},0+h_{2}\right) -f\left( 0,0\right) -\nabla f\left( 0,0\right) \cdot
\left( h_{1},h_{2}\right) }{\left\Vert \left( h_{1},h_{2}\right) \right\Vert
}=0
\end{equation*}が成り立つはずですが、実際にはこれは成り立たないため(演習問題)、\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能ではありません。

 

演習問題

問題(全微分と偏微分の関係)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\left( x^{2}+y^{2}\right) \sin \left( \frac{1}{\sqrt{x^{2}+y^{2}}}\right) &
\left( if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能である一方で\(C^{1}\)級ではないことを示してください。
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問題(全微分と偏微分の関係)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{x^{2}y^{2}}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において全微分可能であるかどうか、理由とともに答えてください。
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問題(全微分と偏微分の関係)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{xy^{2}}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。このスカラー場\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において全微分可能であるかどうか、理由とともに答えてください。
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問題(全微分と偏微分の関係)
関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において全微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において偏微分可能であるとともに連続です。一方、\(f\)が点\(a\)において偏微分可能であるとき、\(f\)は点\(a\)において全微分可能であるとは限りません。加えて、\(f\)が点\(a\)において連続であるとき、\(f\)は点\(a\)において全微分可能であるとは限りません。では、\(f\)が点\(a\)において偏微分可能かつ連続である場合、\(f\)は点\(a\)において全微分可能であることを保証できるでしょうか。この主張は成り立ちません。関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left( xy\right) ^{\frac{1}{3}}
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において偏微分可能かつ連続である一方で全微分可能ではないことを証明してください。
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次回は全微分と方向微分の関係について解説します。

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偏微分
多変数関数の偏微分

多変数関数が与えられたとき、1つの変数以外のすべての変数の値を固定し、あたかも1変数関数であるかのようにみなした上で定義される微分概念を偏微分と呼びます。

偏微分
勾配ベクトル(グラディエント)

多変数関数が定義域上の点においてすべての変数に関して偏微分可能である場合、その点におけるそれぞれの変数に関する偏微分係数を成分とするベクトルが存在します。これを勾配ベクトル(グラディエント)と呼びます。

スカラー場の連続性
偏微分可能性と連続性

1変数関数に関しては微分可能性や偏微分可能性が連続性を含意する一方、2つ以上の変数を持つ多変数関数に関しては、偏微分可能性は連続性を必ずしも含意しません。

偏微分
高階の偏微分

多変数関数の偏導関数が偏微分可能である場合には偏導関数の偏導関数が得られますが、これを2階の偏導関数と呼びます。同様に、3階の偏導関数、4階の偏導関数なども定義可能です。これらを高階の偏導関数と呼びます。

ヘッセ行列
ヘッセ行列

多変数関数が任意の2つの変数の組み合わせに関して2階偏微分可能である場合には、2階偏微分係数を成分として持つ正方行列が定義可能です。これをヘッセ行列と呼びます。

偏微分
多変数関数の連続微分可能性

多変数関数が偏微分可能であることに加えてすべての変数に関する偏導関数が連続である場合、その関数は連続微分可能であると言います。

偏微分
偏微分の順序(クレローの定理)

開集合上に定義されたn階連続微分可能な多変数関数に関しては、n個の変数の順序によらず、n階偏導関数はすべて一致します。これをクレローの定理と呼びます。

全微分
多変数関数の全微分

多変数関数が偏微分可能もしくは方向微分可能である場合においても連続であるとは限りません。微分可能性から連続性を導くためには新たな微分概念が必要であるため、それを全微分と呼ばれる概念として定式化します。

全微分
多変数関数の全微分と方向微分の関係

スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において全微分可能であるとき、そのスカラー場はその点において任意の方向に関して方向微分可能であるとともに、方向微分係数は勾配ベクトルと方向ベクトルの内積と一致します。

スカラー場の連続性
多変数関数の全微分可能性と連続性

スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において全微分可能であるとき、そのスカラー場はその点において連続であることが保証されます。

連続微分可能性
関数の連続微分可能性

関数が微分可能であることに加えて導関数が連続である場合、その関数は連続微分可能であると言います。連続微分可能な関数は微分可能ですが、その逆は成立するとは限りません。

スカラー場の微分