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ユークリッド空間上の点列

点列のスカラー倍の極限(スカラー倍の法則)

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収束する点列のスカラー倍の極限

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、\begin{equation*}c\boldsymbol{x}_{v}=\left( cx_{v}^{\left( 1\right) },\cdots ,cx_{v}^{\left(
n\right) }\right)
\end{equation*}を一般項とする新たな点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が定義可能です。

点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する場合には点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束し、両者の極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( c\boldsymbol{x}_{v}\right)
=c\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}
\end{equation*}が成り立ちます。

つまり、収束する点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)のスカラー倍の形をしている点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が与えられたとき、\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた収束することが保証されるとともに、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)の極限をスカラー\(c\)倍すれば\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)の極限が得られることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)のスカラー倍の形をしている点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)の収束可能性を検討する際には、点列の収束の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)を分けた上で、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が収束することを確認すればよいということになります。

命題(収束する点列のスカラー倍の極限)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)を定義する。\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束するならば\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束し、それらの極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( c\boldsymbol{x}_{v}\right)
=c\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(収束する点列のスカラー倍の極限)
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ -\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)は点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)のスカラー\(-1\)倍であるため、仮に\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が収束するならば\(\left\{ -\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた収束し、その極限は、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( -\boldsymbol{x}_{v}\right)
&=&\lim_{v\rightarrow +\infty }\left[ \left( -1\right) \boldsymbol{x}_{v}\right] \quad \because \text{スカラー倍の定義} \\
&=&\left( -1\right) \lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}\quad
\because \text{スカラー倍の法則} \\
&=&-\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}
\end{eqnarray*}となります。

例(収束する点列のスカラー倍の極限)
\(\mathbb{R} ^{2}\)上の点列\(\{\boldsymbol{x}_{v}\}\)の一般項が、\begin{equation*}\boldsymbol{x}_{v}=\left( -\frac{2}{3v},-\frac{2}{3v^{2}}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v} &=&\lim_{v\rightarrow +\infty
}\left( -\frac{2}{3v},-\frac{2}{3v^{2}}\right) \quad \because \left\{
\boldsymbol{x}_{v}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( -\frac{2}{3}\left( \frac{1}{v},\frac{1}{v^{2}}\right) \right) \quad \because \text{スカラー倍の定義} \\
&=&\left( -\frac{2}{3}\right) \lim_{v\rightarrow +\infty }\left( \frac{1}{v},\frac{1}{v^{2}}\right) \quad \because \text{スカラー倍の法則} \\
&=&\left( -\frac{2}{3}\right) \left( 0,0\right) \\
&=&\left( 0,0\right)
\end{eqnarray*}となります。

 

収束する点列のスカラー商の極限

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)と非ゼロのスカラー\(c\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、\begin{equation*}\frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}=\left( \frac{x_{v}^{\left( 1\right) }}{c},\cdots ,\frac{x_{v}^{\left( n\right) }}{c}\right)
\end{equation*}を一般項とする新たな点列\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)が定義可能です。

点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する場合には点列\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束し、両者の極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right) =\frac{\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}}{c}
\end{equation*}が成り立ちます。

つまり、収束する点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)のスカラー商の形をしている点列\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)が与えられたとき、\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)もまた収束することが保証されるとともに、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)の極限をスカラー\(\frac{1}{c}\)倍すれば\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)の極限が得られることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)のスカラー商の形をしている点列\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)の収束可能性を検討する際には、点列の収束の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)を分けた上で、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が収束することを確認すればよいということになります。

命題(収束する点列のスカラー商の極限)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)と非ゼロのスカラー\(c\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから点列\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)を定義する。\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束するならば\(\left\{ \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束し、それらの極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\left( \frac{\boldsymbol{x}_{v}}{c}\right) =\frac{\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{x}_{v}}{c}
\end{equation*}という関係が成り立つ。

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演習問題

問題(定数倍の法則が要求する条件の吟味)
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する場合には、スカラー倍の法則より、点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束します。そこで、点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束しない場合には、点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束しない事態が起こり得ることを示してください。
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問題(定数倍の法則が要求する条件の吟味)
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する場合には、スカラー倍の法則より、点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束します。そこで、点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束しないものの、点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)は\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する事態が起こり得ることを示してください。
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問題(スカラー倍の法則の逆)
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)と非ゼロのスカラー\(c\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、点列\(\left\{ c\boldsymbol{x}_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束する場合には、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{v}\right\} \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点へ収束するでしょうか。主張が成り立つ場合には証明を行い、成り立たない場合には反例を提示してください。
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関連知識

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