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COMBINATORIAL AUCTION

組合せオークションの準線型環境

目次

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非外部性の仮定

異なる種類の商品が同時に売りに出され、入札者が商品の組合せ、すなわちパッケージに対して入札を行うオークションを組合せオークションと呼ばれる環境として定式化しました。組合せオークションにおいて、それぞれの入札者\(i\)はパッケージどうしを比較する評価関数\(\theta _{i}:2^{X}\rightarrow \mathbb{R} \)に加えて、オークションにおいて起こり得る結果どうしを比較する利得関数\begin{equation*}u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) :A\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を持っているものとみなしました。つまり、利得関数は結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)を変数として持つ関数です。以上の事実は、入札者がオークションの結果から得る利得は、オークションの結果において自身が直面する結果\(\left( a_{i},t_{i}\right) \)だけに依存するのではなく、その結果において他の入札者たちが直面する結果\(\left( a_{-i},t_{-i}\right) \)にも依存することを意味します。ただ、組合せオークションの分析では多くの場合、入札者\(i\)にとって重要であるのはそれぞれの結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)において自身が直面する結果\(\left( a_{i},t_{i}\right) \)だけであり、他のエージェントたちが直面する結果\(\left(a_{-i},t_{-i}\right) \)は入札者\(i\)による結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)の評価に影響を与えないものと仮定します。このような仮定を非外部性(non-externality)の仮定と呼びます。

入札者\(i\)に関して非外部性の仮定が成り立つこととは、利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) :A\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)に対してある関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) :\left[ 0,1\right] \times \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、任意の結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =u_{i}\left( a_{i},t_{i},\theta
_{I}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことを意味します。つまり、入札者\(i\)が結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)から得る利得\(u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) \)は、他の入札者たちが直面する結果\(\left( a_{-i},t_{-i}\right) \)に依存せず\(u_{i}\left( a_{i},t_{i},\theta_{I}\right) \)で一定であるということです。

例(非外部性の仮定)
入札者集合が、\begin{equation*}
I=\left\{ 1,2,3\right\}
\end{equation*}であり、商品集合が、\begin{equation*}
X=\left\{ x_{1},x_{2}\right\}
\end{equation*}であるものとします。その上で、以下2つの結果\begin{eqnarray*}
\left( a_{I},t_{I}\right) &=&\left(
a_{1},a_{2},a_{3},t_{1},t_{2},t_{3}\right) =\left( \phi ,\left\{
x_{1},x_{2}\right\} ,\phi ,0,100,0\right) \\
\left( a_{I}^{\prime },t_{I}^{\prime }\right) &=&\left( a_{1}^{\prime
},a_{2}^{\prime },a_{3}^{\prime },t_{1}^{\prime },t_{2}^{\prime
},t_{3}^{\prime }\right) =\left( \phi ,\phi ,\left\{ x_{1},x_{2}\right\}
,0,0,100\right)
\end{eqnarray*}に注目します。つまり、結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)において入札者\(2\)はパッケージ\(\left\{ x_{1},x_{2}\right\} \)を落札して\(100\)だけ支払い、結果\(\left( a_{I}^{\prime },t_{I}^{\prime }\right) \)において入札者\(3\)がパッケージ\(\left\{ x_{1},x_{2}\right\} \)を落札して\(100\)だけ支払うということです。その一方で、双方において入札者\(1\)は商品を得られず所得移転も課されません。仮に、入札者\(1\)の利得関数が、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) >u_{i}\left( a_{I}^{\prime
},t_{I}^{\prime },\theta _{I}\right)
\end{equation*}を満たす場合、入札者\(1\)の利得関数は非外部性の仮定を満たしません。なぜなら、自身とは異なる入札者たちが直面する結果によって自身の利得関数が影響を受けているからです。非外部性の仮定と整合的であるためには、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =u_{i}\left( a_{I}^{\prime
},t_{I}^{\prime },\theta _{I}\right)
\end{equation*}である必要があります。

 

私的価値の仮定

組合せオークションを描写する環境において、入札者\(i\)が結果どうしを比較する利得関数を\(u_{i}\left( \cdot \right) \)ではなく\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)と表現する理由は、入札者\(i\)による結果の評価は自身にとってのパッケージへの評価体系\(\theta _{i}\)や他の入札者たちにとってのパッケージへの評価体系\(\theta _{-i}\)に依存するという状況が起こり得るからです。ただ、組合せオークションの分析では多くの場合、入札者の利得関数の形状は\(\theta _{i}\)のみに依存し、\(\theta _{-i}\)には依存しないものと仮定します。このような仮定を私的価値(private value)の仮定と呼びます。例えば、入札者はオークションを通じて得た商品を転売せずに自身でそのまま消費する場合、他の入札者による商品の評価は重要ではないため、このような状況は私的価値の仮定と整合的です。

入札者\(i\)に関して非外部性の仮定が成り立つこととは、利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) :A\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)に対してある関数\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{i}\right) :A\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、任意の結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta
_{i}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことを意味します。つまり、入札者\(i\)が結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)から得る利得\(u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) \)は、他の入札者たちにとっての商品の評価額\(\theta _{-i}\)に依存せず\(u_{i}\left(a_{I},t_{I},\theta _{i}\right) \)で一定であるということです。

例(私的価値の仮定)
入札者集合が、\begin{equation*}
I=\left\{ 1,2,3\right\}
\end{equation*}であり、商品集合が、\begin{equation*}
X=\left\{ x_{1},x_{2}\right\}
\end{equation*}であるものとします。その上で、以下の結果\begin{equation*}
\left( a_{I},t_{I}\right) =\left( a_{1},a_{2},a_{3},t_{1},t_{2},t_{3}\right)
=\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} ,0,0,100,0,0\right)
\end{equation*}に注目します。つまり、結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)において入札者\(1\)はパッケージ\(\left\{ x_{1},x_{2}\right\} \)を落札して\(100\)だけ支払うということです。評価関数プロファイル\(\theta _{I}\)のもとでは、\begin{eqnarray*}\theta _{1}\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&100 \\
\theta _{2}\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&100 \\
\theta _{3}\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&100
\end{eqnarray*}が成り立つとともに、別の評価関数プロファイル\(\theta _{I}^{\prime }\)のもとでは、\begin{eqnarray*}\theta _{1}^{\prime }\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&100 \\
\theta _{2}^{\prime }\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&200 \\
\theta _{3}^{\prime }\left( \left\{ x_{1},x_{2}\right\} \right) &=&200
\end{eqnarray*}が成り立つものとします。つまり、\(\theta _{I}\)と\(\theta _{I}^{\prime }\)を比較すると、後者において入札者\(2,3\)はパッケージ\(\left\{x_{1},x_{2}\right\} \)を\(2\)倍に高く評価しているということです。その一方で、双方において入札者\(1\)にとってのパッケージ\(\left\{ x_{1},x_{2}\right\} \)の評価額は一定です。仮に、入札者\(1\)の利得関数が、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}^{\prime }\right) >u_{i}\left(
a_{I},t_{I},\theta _{I}\right)
\end{equation*}を満たす場合、入札者\(1\)の利得関数は私的価値の仮定を満たしません。なぜなら、自身とは異なる入札者たちの評価関数の形状によって自身の利得関数が影響を受けているからです。私的価値の仮定と整合的であるためには、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}^{\prime }\right) =u_{i}\left(
a_{I},t_{I},\theta _{I}\right)
\end{equation*}である必要があります。

 

準線型性の仮定

組合せオークションを描写する環境において、入札者\(i\)の利得関数\(u_{i}\left( \cdot ,\cdot ,\theta _{I}\right) :A\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの結果\(\left(a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める値が、ある関数\(W_{i}\left( \cdot ,\theta_{I}\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)および\(v_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right):A\rightarrow \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =W_{i}\left( v_{i}\left(
a_{I},\theta _{I}\right) -t_{i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}という形で表される場合には準線型性(quasi-linearity)の仮定が成り立つと言います。

準線型性の仮定は何を要求しているのでしょうか。まず、関数\(v_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)は評価関数(value function)と呼ばれるものであり、これは配分\(a_{I}\)に対して、それと等価値な金銭\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) \)を値として返す関数です。\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) \)は配分\(a_{I}\)を金銭評価したものであるため、そこから自身に課される所得移転\(t_{i}\)を引いて得られる\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) -t_{i}\)は自身が直面する結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)を金銭評価したものに相当します。したがって、\(v_{i}\left(a_{I},\theta _{I}\right) -t_{i}\)を変数として持つ関数\(W_{i}\left( \cdot ,\theta_{I}\right) \)は所得を評価する関数であり、これはベルヌーイ関数(Bernolli function)やフォン・ノイマン=モルゲンシュテルン関数(v.N-M function)などと呼ばれます。

一般に、入札者\(i\)が配分\(a_{I}\)の価値を金銭に置き換えて評価する場合、その評価は自身が直面する所得移転\(t_{i}\)の水準に依存します。一方、準線型性の仮定のもとでは、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =W_{i}\left( v_{i}\left(
a_{I},\theta _{I}\right) -t_{i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}となり、配分\(a_{I}\)の金銭価値\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) \)と所得移転\(t_{i}\)が独立した形で評価されます。加えて、準線型性の仮定のもとでは、ニュメレールではない商品に対する所得効果はゼロになるため、配分\(a_{I}\)の金銭価値\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) \)は入札者の所得水準にも依存しません。以上の事実は、入札者が所得上の制約に直面していないことを意味します。この場合、入札者はオークションの主催者から指示された任意の金額を支払うことができることになります。問題としているオークションにおいて売りに出されている商品がそれほど高額でない場合、これは現実的な仮定となります。

 

リスク中立性の仮定

繰り返しになりますが、準線型性を仮定する場合、入札者\(i\)が結果\(\left( a,t\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得は、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =W_{i}\left( v_{i}\left(
a_{I},\theta _{I}\right) -t_{i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}となります。ただし、\(v_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) :A\rightarrow \mathbb{R} \)は配分の価値を金銭に置き換える評価関数であり、\(W_{i}\left( \cdot ,\theta_{I}\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は所得を評価するベルヌーイ関数です。

\(W_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)は所得を変数とする関数であり、通常、増加関数であるものと仮定します。さらに、\(W_{i}\)の形状によって入札者のリスク選好は、\begin{eqnarray*}W_{i}\text{は凹関数} &\Leftrightarrow &\text{入札者}i\text{はリスク回避的} \\
W_{i}\text{は線型関数} &\Leftrightarrow &\text{入札者}i\text{はリスク中立的} \\
W_{i}\text{は凸関数} &\Leftrightarrow &\text{入札者}i\text{のリスク愛好的}
\end{eqnarray*}と分類されます。組合せオークションの分析では多くの場合、入札者はリスク中立的であるものと仮定します。このような仮定をリスク中立性(risk-neutral)の仮定と呼びます。準線型性とリスク中立性を仮定する場合、入札者\(i\)が結果\(\left( a,t\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得を、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =v_{i}\left( a_{I},\theta
_{I}\right) -t_{i}
\end{equation*}と表現しても一般性は失われません。つまり、以上の仮定のもとでは、入札者\(i\)が結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \)から得る利得は、配分\(a_{I}\)を金銭評価\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{I}\right) \)したものから自身に課される所得移転\(t_{i}\)を差し引いて得られる所得水準と一致します。

 

組合せオークションの準線型環境

一般に、組合せオークションを描写する環境は、\begin{equation*}
\left( I,X,\left\{ \theta _{i}\right\} _{i\in I},A\times \mathbb{R} ^{n},\left\{ u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \right\} _{i\in I}\right)
\end{equation*}と定式化されます。ただし、\(I\)は入札者集合、\(X\)は商品集合、\(\theta_{i}\)は入札者\(i\)がパッケージどうしを比較する評価関数、\(A\times \mathbb{R} ^{n}\)は結果集合、\(u_{i}\left( \cdot,\theta _{I}\right) \)は入札者\(i\)が結果どうしを比較する利得関数です。

特に、任意のエージェントの利得関数に関して準線型性とリスク中立性に加えて私的価値を仮定する場合、そのような環境を準線型環境(quasi-linear environment)と呼びます。この場合、入札者\(i\in I\)が結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得は、\begin{eqnarray*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) &=&u_{i}\left(
a_{I},t_{I},\theta _{i}\right) \quad \because \text{私的価値の仮定} \\
&=&W_{i}\left( v_{i}\left( a_{I},\theta _{i}\right) -t_{i},\theta
_{i}\right) \quad \because \text{準線型性の仮定} \\
&=&v_{i}\left( a_{I},\theta _{i}\right) -t_{i}\quad \because \text{リスク中立性の仮定}
\end{eqnarray*}となります。つまり、入札者\(i\)が結果\(\left(a_{I},t_{I}\right) \)から得る利得は、配分\(a_{I}\)を金銭評価\(v_{i}\left( a_{I},\theta _{i}\right) \)したものから自身に課される所得移転\(t_{i}\)を差し引いて得られる値と一致します。

組合せオークションの分析において準線型環境というとき、多くの場合、準線型性とリスク中立性と私的価値に加えて非外部性も仮定します。この場合、入札者\(i\in I\)が結果\(\left( a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得は、\begin{eqnarray*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) &=&v_{i}\left( a_{I},\theta
_{i}\right) -t_{i}\quad \because \text{私的価値・準線型性・リスク中立性の仮定} \\
&=&v_{i}\left( a_{i},\theta _{i}\right) -t_{i}\quad \because \text{非外部性の仮定}
\end{eqnarray*}となります。ただし、\(v_{i}\left( a_{i},\theta _{i}\right) \)は評価関数\(\theta _{i}\)を持つ入札者\(i\)が自身に割り当てられるパッケージ\(a_{i}\)を金銭評価したものであるため、\begin{equation*}v_{i}\left( a_{i},\theta _{i}\right) =\theta _{i}\left( a_{i}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。したがって、この場合、\begin{equation*}
u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =\theta _{i}\left( a_{i}\right)
-t_{i}
\end{equation*}となります。

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