純粋戦略部分ゲーム完全均衡は純粋戦略ナッシュ均衡
問題としている戦略的状況が完備情報の動学ゲームであり、それが展開型ゲーム\(\Gamma \)として表現されているものとします。このゲーム\(\Gamma \)において純粋戦略の組\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)が広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡であるものとします。つまり、\(s_{I}^{\ast }\)は\(\Gamma \)の任意の部分ゲームに対して広義の純粋戦略ナッシュ均衡を導くということです。ただ、展開型ゲーム\(\Gamma \)はそれ自身が\(\Gamma \)の部分ゲームの1つであるため、\(s_{I}^{\ast }\)は\(\Gamma \)に対しても広義の純粋戦略ナッシュ均衡を導きますが、これは\(s_{I}^{\ast }\)が\(\Gamma \)における広義の純粋戦略ナッシュ均衡であることを意味します。つまり、展開型ゲームに広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡が存在する場合、それは必然的に広義の純粋戦略ナッシュ均衡でもあるということです。
上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、広義の純粋戦略ナッシュ均衡は広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡であるとは限りません。以下の例より明らかです。
それぞれのプレイヤーの純粋戦略集合は、\begin{eqnarray*}
S_{1} &=&A\left( \left\{ x_{0}\right\} \right) =\left\{ a_{11},a_{12}\right\}
\\
S_{2} &=&A\left( \left\{ x_{1}\right\} \right) =\left\{ a_{21},a_{22}\right\}
\end{eqnarray*}であり、この展開型ゲーム\(\Gamma \)の戦略型\(G\left(\Gamma \right) \)は以下の通りです。
$$\begin{array}{ccc}\hline
1\backslash 2 & a_{21} & a_{22} \\ \hline
a_{11} & 0^{\ast },10^{\ast } & 0,10^{\ast } \\ \hline
a_{12} & -1,1 & 5^{\ast },5^{\ast } \\ \hline
\end{array}$$
以下の純粋戦略の組\begin{eqnarray}
&&\left( a_{11},a_{21}\right) \quad \cdots (1) \\
&&\left( a_{12},a_{22}\right) \quad \cdots (2)
\end{eqnarray}はともに広義の最適反応からなる組であるため、これらはともに広義の純粋戦略ナッシュ均衡です。部分ゲーム\(\Gamma \left( x_{0}\right) \)はもとのゲーム\(\Gamma \)と一致するため、\(\left( 1\right) ,\left(2\right) \)は\(\Gamma \left( x_{0}\right) \)における広義の純粋戦略ナッシュ均衡であり、同時に、\(\Gamma \)における広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡の候補です。部分ゲーム\(\Gamma \left( x_{1}\right) \)に注目した上で\(\left( 1\right) ,\left( 2\right) \)を\(\Gamma \left(x_{1}\right) \)に制限すると、\begin{eqnarray*}&&\left( a_{21}\right) \\
&&\left( a_{22}\right)
\end{eqnarray*}となりますが、\(\Gamma \left(x_{1}\right) \)における広義の純粋戦略ナッシュ均衡は\(\left( a_{22}\right) \)であるため、\(\left( 1\right) \)のみが\(\Gamma \)における広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡の候補です。他に部分ゲームは存在しないため、\(\left( 1\right) \)は\(\Gamma \)における広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡である一方で、\(\left( 2\right) \)は\(\Gamma \)における広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡ではないことが明らかになりました。
純粋戦略ナッシュ均衡が純粋戦略部分ゲーム完全均衡であるための条件
ある展開型ゲーム\(\Gamma \)が自身以外に部分ゲームを持たない場合には、そのゲーム\(\Gamma \)の純粋戦略ナッシュ均衡は\(\Gamma \)のすべての部分ゲームに対して純粋戦略ナッシュ均衡を導くことを必然的に意味するため以下の命題が成り立ちます。
このゲーム\(\Gamma \)には以下の2つの広義の純粋戦略ナッシュ均衡\begin{eqnarray*}&&\left( a_{11},a_{21}\right) \\
&&\left( a_{12},a_{22}\right)
\end{eqnarray*}が存在します(演習問題)。加えて、\(\Gamma \)の部分ゲームは\(\Gamma \left(x_{0}\right) \)だけであるため、先の命題より、上の2つの純粋戦略の組は広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡でもあります。
展開型ゲームにおける純粋戦略ナッシュ均衡の分離定理を用いると、より一般的な状況において、純粋戦略ナッシュ均衡が純粋戦略部分ゲーム完全均衡であることを保証できます。
このゲーム\(\Gamma \)には以下の4つの広義の純粋戦略ナッシュ均衡\begin{eqnarray}&&\left( \left( a_{11},a_{13}\right) ,a_{21}\right) \quad \cdots (1) \\
&&\left( \left( a_{11},a_{14}\right) ,a_{21}\right) \quad \cdots (2) \\
&&\left( \left( a_{12},a_{13}\right) ,a_{21}\right) \quad \cdots (3) \\
&&\left( \left( a_{12},a_{14}\right) ,a_{22}\right) \quad \cdots (4)
\end{eqnarray}が存在します(演習問題)。中でも\(\left( 4\right) \)のもとでは\(\Gamma \)のすべての部分ゲーム\(\Gamma \left(x_{0}\right) ,\Gamma \left( x_{1}\right) ,\Gamma \left( x_{2}\right) \)が到達可能であるため、先の命題より\(\left(4\right) \)は\(\Gamma \)における広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡でもあります。ちなみに、\(\left(1\right) ,\left( 2\right) ,\left( 3\right) \)はいずれも広義の純粋戦略部分ゲーム完全均衡ではありません(演習問題)。
演習問題
このゲーム\(\Gamma \)の純粋戦略ナッシュ均衡と純粋戦略部分ゲーム完全均衡をそれぞれ求めてください。
このゲーム\(\Gamma \)の純粋戦略ナッシュ均衡と純粋戦略部分ゲーム完全均衡をそれぞれ求めてください。
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