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代表的な確率分布

指数分布

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指数分布の確率密度関数

ある出来事が将来起こることが分かっているものの、いつ起こるかはランダムネスによって支配されており、そのタイミングを事前に特定できない状況を想定します。「ある出来事が起こるまでの待機時間を記録する」という試行標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =[0,+\infty )
\end{equation*}です。その出来事が起こるまでの待機時間を特定する確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を定めるため、その値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}という区間であり、したがって\(X\)は連続型の確率変数です。この確率変数\(X\)の確率分布をどのように特定できるでしょうか。

時間の単位として何を採用してもよいのですが、ここでは「秒」を採用します。待機を開始して\(t\geq 0\)秒が経過した時点において問題としている出来事がまだ起きていないという条件のもと、そこからさらに\(\Delta t\)秒間待機している間にその出来事が起こる確率は、以下の条件付き確率\begin{equation*}P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right)
\end{equation*}として表現されますが、これをどのように評価すればよいでしょうか。待機時間\(\Delta t\)を長くするほど、その間に問題としている出来事が起こる確率は高くなるものと考えるのが自然です。加えて、その確率の大きさは待機時間\(\Delta t\)の長さにおよそ比例するものと仮定します。つまり、単位時間(1秒間)あたりにその出来事が起こる確率を表す正の定数\(\lambda >0\)を導入すれば、待機時間\(\Delta t\)の間に問題としている出来事が起こる確率を、\begin{equation*}\lambda \Delta t
\end{equation*}によって近似的に表現できるものと仮定するということです。ただし、単位時間あたりに何かが確率\(\lambda \)で起こることと、単位時間あたりに何かが平均して\(\lambda \)回起こることは同義であるため、パラメータ\(\lambda \)の値は単位時間あたりに問題としている出来事が起こる平均回数でもあります。

以上の想定のもと、先の確率を、\begin{equation*}
P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right) =\lambda \Delta t+o\left( \Delta
t\right) \quad \left( \Delta t\rightarrow 0\right)
\end{equation*}と表現できるものと仮定します。ただし、\(o\left( \Delta t\right) \)は\(\Delta t\)よりも高位の無限小であるような関数です。高位の無限小の定義より、このとき、\begin{equation*}\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\frac{P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right)
-\lambda \Delta t}{\Delta t}=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\frac{P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right) }{\Delta t}=\lambda \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。左辺中の\begin{equation*}
\frac{P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right) }{\Delta t}
\end{equation*}は、時点\(t\)まではその出来事が起きなかったものの、その後の\(\Delta t\)秒間において、単位時間(1秒間)あたりにその出来事が起こる確率を表しています。したがって、\(\Delta x\rightarrow 0\)の場合の極限\begin{equation*}\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\frac{P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right) }{\Delta t}
\end{equation*}は、時点\(t\)までその出来事が起きなかったものの、次の瞬間にその出来事が起こる確率を表しています。\(\left( 1\right) \)より、その確率もまた\(\lambda \)と一致します。以上の議論は\(t\)の水準に依存しません。したがって、任意の時点\(t\)を選んだとき、その時点において問題としている出来事がまだ起きていないものの、次の瞬間にその出来事が起こる確率は常に\(\lambda \)で一定であることを仮定していることになります。

以上を想定する場合、問題としている出来事が起こるまでの経過時点を表す確率変数\(X\)の確率分布は以下のように特定されます。

命題(指数分布の確率密度関数)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域が、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}であるものとする。加えて、ある定数\(\lambda >0\)が存在し、任意の\(t\in\lbrack 0,+\infty )\)に対して、\begin{equation*}P\left( t<X\leq t+\Delta t|X>t\right) =\lambda \Delta t+o\left( \Delta
t\right) \quad \left( \Delta t\rightarrow 0\right)
\end{equation*}が成り立つものとする。このとき、\(X\)の確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\lambda e^{-\lambda x} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める。

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以上を踏まえた上で、確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域が、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}であるとともに、確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値が、何らかの正の定数\(\lambda >0\)を用いて、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\lambda e^{-\lambda x} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}と表される場合、確率変数\(X\)はパラメーター\(\lambda \)の指数分布(exponential distribution with parameter \(\lambda \))にしたがうといい、そのことを、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}で表記します。

パラ―メータ\(\lambda \)の値は単位時間あたりに問題としている出来事が起こる確率を表します。ただ、単位時間あたりに何かが確率\(\lambda \)で起こることと、単位時間あたりに何かが平均して\(\lambda \)回起こることは同義であるため、パラメータ\(\lambda \)の値は単位時間あたりに問題としている出来事が起こる平均回数でもあります。

例(指数分布)
「新たに客が入店するのを待つ」という試行において、時間の単位として「分」を採用します。標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =[0,+\infty )
\end{equation*}であり、待ち時間を与える確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を定めるため、その値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}です。それ以前の入店者数が新たな客の入店に影響を及ぼさないものとします。また、\(1\)分あたり\(5\%\)の確率で客が入店するものとします。つまり、\(1\)分あたり平均\(\frac{1}{20}\)回入店するということです。この場合、確率変数\(X\)はパラメータ\(\frac{1}{20}\)の指数分布にしたがいます。つまり、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{20}\right)
\end{equation*}が成り立つため、確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{1}{20}e^{-\frac{x}{20}} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right)
\right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。したがって、例えば、待ち時間が\(5\)分以上\(10\)分以下である確率は、\begin{eqnarray*}\int_{5}^{10}f_{X}\left( x\right) dx &=&\int_{5}^{10}\frac{1}{20}e^{-\frac{x}{20}}dx \\
&=&\frac{1}{20}\int_{5}^{10}e^{-\frac{x}{20}}dx \\
&=&\frac{1}{20}\left[ -20e^{-\frac{1}{20}x}\right] _{5}^{10} \\
&=&\frac{1}{20}\left( -20e^{-\frac{1}{2}}+20e^{-\frac{1}{4}}\right) \\
&=&-e^{-\frac{1}{2}}+e^{-\frac{1}{4}} \\
&=&0.17227
\end{eqnarray*}となります。

指数分布にしたがう確率変数の確率密度関数が確率密度関数としての性質を満たすことを確認しておきます。

命題(指数分布の確率密度関数)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)がパラメータ\(\lambda \)の指数分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x\in \mathbb{R} :f_{X}\left( x\right) \geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \int_{-\infty }^{+\infty }f_{X}\left( x\right) dx=1
\end{eqnarray*}をともに満たす。

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指数分布の分布関数

指数分布にしたがう確率変数の分布関数は以下の通りです。

命題(指数分布の分布関数)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)がパラメータ\(\lambda \)の指数分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
1-e^{-\lambda x} & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める。

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例(指数分布の分布関数)
先の客の入店の事例において、新たな客が入店するまでの待ち時間を表す確率変数\(X\)は、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{20}\right)
\end{equation*}を満たします。先の命題より、\(X\)の分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
1-e^{-\frac{x}{20}} & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

 

指数分布にしたがう確率変数の期待値

指数分布にしたがう確率変数の期待値は以下の通りです。

命題(指数分布にしたがう確率変数の期待値)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)がパラメータ\(\lambda \)の指数分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の期待値は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\frac{1}{\lambda }
\end{equation*}である。

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例(指数分布にしたがう確率変数の期待値)
先の客の入店の事例において、新たな客が入店するまでの待ち時間を表す確率変数\(X\)は、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{20}\right)
\end{equation*}を満たします。先の命題より、\(X\)の期待値は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\frac{1}{\frac{1}{20}}=20
\end{equation*}です。

 

指数分布にしたがう確率変数の分散

指数分布にしたがう確率変数の分散は以下の通りです。

命題(指数分布にしたがう確率変数の分散)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)がパラメータ\(\lambda \)の指数分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の分散は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\frac{1}{\lambda ^{2}}
\end{equation*}である。

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例(指数分布にしたがう確率変数の分散)
先の客の入店の事例において、新たな客が入店するまでの待ち時間を表す確率変数\(X\)は、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{20}\right)
\end{equation*}を満たします。先の命題より、\(X\)の分散は、\begin{equation*}\mathrm{Var}\left( X\right) =\frac{1}{\left( \frac{1}{20}\right) ^{2}}=400
\end{equation*}です。

 

指数分布にしたがう確率変数のモーメント母関数

指数分布にしたがう確率変数はモーメント母関数を持ちます。具体的には以下の通りです。

命題(指数分布にしたがう確率変数のモーメント母関数)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)がパラメータ\(\lambda \)の指数分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、モーメント母関数\(M_{X}\)が存在して、\(t<\lambda \)を満たす任意の\(t\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}M_{X}\left( t\right) =\frac{\lambda }{\lambda -t}
\end{equation*}を定める。

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例(指数分布にしたがう確率変数のモーメント母関数)
先の客の入店の事例において、新たな客が入店するまでの待ち時間を表す確率変数\(X\)は、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{20}\right)
\end{equation*}を満たします。先の命題より、\(X\)のモーメント母関数\(M_{X}\)が存在して、\(t<\frac{1}{20}\)を満たすそれぞれの\(t\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}M_{X}\left( t\right) &=&\frac{\frac{1}{20}}{\frac{1}{20}-t} \\
&=&\frac{\frac{1}{20}}{\frac{1-20t}{20}} \\
&=&\frac{1}{1-20t}
\end{eqnarray*}を定めます。

 

演習問題

問題(指数分布)
「地震が起こるのを待つ」という試行において、時間の単位として「日」を採用します。標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =[0,+\infty )
\end{equation*}であり、待ち時間を与える確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を定めるため、その値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}です。それ以前の地震の発生回数が新たな地震の発生に影響を及ぼさないものとします。また、地震は平均して\(400\)日に\(1\)回起こるものとします。つまり、\(1\)日あたり平均で\(\frac{1}{400}\)回地震が起こるということです。この場合、確率変数\(X\)はパラメータ\(\frac{1}{400}\)の指数分布にしたがいます。つまり、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \frac{1}{400}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

  1. 確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を求めてください。
  2. 次の地震が\(500\)日以内に地震が起こる確率を求めてください。
  3. 分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を求めてください。
  4. \(X\)の期待値を求めてください。
  5. \(X\)の分散を求めてください。
  6. \(X\)のモーメント母関数\(M_{X}\)を求めてください。
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問題(指数分布)
確率変数\(X\)はパラメータ\(1\)の指数分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( 1\right)
\end{equation*}が成り立つということです。以下の確率\begin{equation*}
P\left( X>2\right)
\end{equation*}を求めてください。

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問題(指数分布)
確率変数\(X\)はパラメータ\(\lambda >0\)の指数分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( \lambda \right)
\end{equation*}が成り立つということです。\(X\)が期待値\(E\left(X\right) \)以下の値をとる確率を求めてください。
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