線型近似としての微分

関数を微分することとは、その関数をシンプルな1次式で近似する(線型近似)ことを意味します。その意味をランダウの記号や無限小などの概念を用いて解説します。
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ランダウの記号

2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と定義域の内点\(a\in X^{i}\)が与えられているものとします。ただし、関数\(g\)は点\(a\)に十分近い任意の点において非ゼロの値をとるものとします。つまり、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0,\ \forall x\in U_{\varepsilon }\left( a\right)
\backslash \{a\}:g\left( x\right) \not=0
\end{equation*}が成り立つということです。ただし、\(U_{\varepsilon }\left( a\right) =\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)\)です。このとき、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }=0
\end{equation*}という関係が成り立つならば、\(a\)において\(f\)は\(g\)と比べて無視できるといい、このことを、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right)
\end{equation*}もしくは、\begin{equation*}
f\left( x\right) \ll g\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}などで表記します。なお、記号\(o\)をランダウのオー(Landau’s little o)と呼びます。

例(ランダウの記号)
関数\(f,g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
f\left( x\right) &=&x^{2}-2x+1 \\
g\left( x\right) &=&x-1
\end{eqnarray*}と定義されているものとします。点\(1\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 1}\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }=\lim_{x\rightarrow 1}\left( \frac{x^{2}-2x+1}{x-1}\right) =0
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
1\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。一方、点\(0\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }=\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}-2x+1}{x-1}\right) =-1
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
0\right)
\end{equation*}という関係は成り立ちません。また、点\(1\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 1}\frac{g\left( x\right) }{f\left( x\right) }=\lim_{x\rightarrow 1}\left( \frac{x-1}{x^{2}-2x+1}\right) =+\infty
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
g\left( x\right) =o\left( f\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
1\right)
\end{equation*}という関係は成り立ちません。

ランダウの記号の厳密な定義は先の通りですが、直感的には、これは何を意味するのでしょうか。2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、点\(a\in X^{i}\)において\(f\)が\(g\)と比べて無視できるならば、すなわち、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、定義より、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }=0
\end{equation*}という関係が成り立ちます。関数の極限の定義より、これは、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left(
0<|x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert \frac{f\left( x\right) }{g\left(
x\right) }\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}と表現できます。さらにここから、\begin{equation}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left(
0<|x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right) \right\vert
<\varepsilon \cdot \left\vert g\left( x\right) \right\vert \right) \tag{1}
\end{equation}を得ます。これは何を意味しているのでしょうか。限りなく小さい正の実数\(\varepsilon \)を任意に選んだ上で\(\varepsilon \cdot \left\vert g\left( x\right) \right\vert \)をとると、これは\(\left\vert g\left( x\right) \right\vert \)よりもさらに小さい値になります。それにも関わらず\(\left( 1\right) \)より\(\left\vert f\left( x\right) \right\vert <\varepsilon \cdot \left\vert g\left( x\right) \right\vert \)が成り立つのですから、\(a\)に十分近い任意の\(x\)において\(\left\vert f\left( x\right) \right\vert \)は\(\left\vert g\left( x\right) \right\vert \)よりもかなり小さい値になります。\(\varepsilon \)をどれほど小さくした場合においても同様の議論が成り立つため、結局、\(x\)を\(a\)に限りなく近づけたとき、\(\left\vert f\left( x\right) \right\vert \)の大きさは\(\left\vert g\left( x\right) \right\vert \)の大きさと比べると無視できるほど小さくなります。結論をまとめると、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right)
\end{equation*}が成り立つこととは、\(a\)に限りなく近い任意の\(x\)において\(\left\vert f\left( x\right) \right\vert \)の大きさが\(\left\vert g\left( x\right) \right\vert \)の大きさと比べると無視できるほど小さいことを意味します。

 

ランダウの記号に関する注意

2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、内点\(a\in X^{i}\)において\(f\)は\(g\)と比べて無視できるものとします。つまり、\begin{equation}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right) \tag{1}
\end{equation}が成り立つということです。ただ、点\(a\)において関数\(g\)と比べて無視できる関数は一意的であるとは限らず、\(f\)とは異なる関数\(h:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)に関しても、\begin{equation}
h\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right) \tag{2}
\end{equation}が成り立つ可能性があります。\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)がともに成り立つ場合、\(f\)と\(h\)が等しい関数であることを必ずしも意味しません。ランダウの記号が関与する場合、等号\(=\)は通常の相等関係とは異なる意味が付与されます。つまり、\(\left( 1\right) \)が成り立つことは、「点\(a\)において関数\(g\)と比べて無視できる関数の具体例の1つが関数\(f\)である」ことを意味します。同様に、\(\left( 2\right) \)が成り立つことは、「点\(a\)において関数\(g\)と比べて無視できる関数の具体例の1つが関数\(h\)である」ことを意味します。

例(ランダウの記号)
\(\mathbb{R} \)上に定義された関数\(x,x^{2},x^{3}\)などについて考えます。点\(0\)において、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{3}}{x}\right) &=&\lim_{x\rightarrow
0}x^{2}=0 \\
\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}}{x}\right) &=&\lim_{x\rightarrow
0}x=0
\end{eqnarray*}がともに成り立ちますが、このことは、\begin{eqnarray*}
x^{3} &=&o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow 0\right) \\
x^{2} &=&o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow 0\right)
\end{eqnarray*}などと表記可能です。

同じ集合上に定義された3つの関数\(f,g,h:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、内点\(a\in X^{i}\)において関数\(f-g\)は関数\(h\)と比べて無視できるものとします。つまり、\begin{equation}
f\left( x\right) -g\left( x\right) =o\left( h\left( x\right) \right) \quad
\left( x\rightarrow a\right) \tag{1}
\end{equation}が成り立つということです。ここで、\(\left( 1\right) \)が成り立つことを、\begin{equation}
f\left( x\right) =g\left( x\right) +o\left( h\left( x\right) \right) \quad
\left( x\rightarrow a\right) \tag{2}
\end{equation}と表記してもよいものと定めます。つまり、\(\left( 2\right) \)と表記したとき、それは\(\left( 1\right) \)が成り立つことを意味するものと定めるということです。

例(ランダウの記号)
\(\mathbb{R} \)上に定義された関数\(x,x^{2},x^{3}\)などについて考えます。点\(0\)において、\begin{equation*}
x^{3}=x^{2}+o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow 0\right)
\end{equation*}という関係は成り立つでしょうか。定義より、これは、\begin{equation*}
x^{3}-x^{2}=o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow 0\right)
\end{equation*}が成り立つという主張に相当します。実際、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}\frac{x^{3}-x^{2}}{x}=0
\end{equation*}が成り立つため、もとの主張が成り立つことが明らかになりました。

 

無限小の比較

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域の内点\(a\in X^{i}\)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たす場合、\(f\)は\(a\)において無限小(infinitesimal)であると言います。

例(無限小)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が、\begin{equation*}
f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}と定義されているものとします。このとき、点\(0\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 0}x^{2}=0
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は\(0\)において無限小です。一方、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 1}f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 1}x^{2}=1
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は\(1\)において無限小ではありません。

2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がともに定義域の内点\(a\in X^{i}\)において無限小であるとともに、\(a\)において\(f\)は\(g\)と比べて無視できるならば、すなわち、\begin{equation*}
f\left( x\right) =o\left( g\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow
a\right)
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)において\(f\)は\(g\)よりも高位の無限小(infinitesimal of higher order)であると言います。

例(高位の無限小)
関数\(f,g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
f\left( x\right) &=&x^{2} \\
g\left( x\right) &=&x
\end{eqnarray*}と定義されているものとします。点\(0\in \mathbb{R} \)において、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}x^{2}=0 \\
\lim_{x\rightarrow 0}g\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}x=0
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(f\)と\(g\)はともに点\(0\)において無限小です。さらに、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }=\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}}{x}\right) =\lim_{x\rightarrow 0}x=0
\end{equation*}となるため、\(0\)において\(f\)は\(g\)よりも高位の無限小です。逆に、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}\frac{g\left( x\right) }{f\left( x\right) }=\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x}{x^{2}}\right) =\lim_{x\rightarrow
0}\left( \frac{1}{x}\right) =+\infty
\end{equation*}となるため、\(0\)において\(g\)は\(f\)よりも高位の無限小ではありません。

高位の無限小という概念の厳密な定義は先の通りですが、直感的には、これは何を意味するのでしょうか。2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、点\(a\in X^{i}\)において\(f\)が\(g\)よりも高位の無限小であるものとします。定義より、\(f\)と\(g\)はともに\(a\)において無限小であるため、\(a\)に十分近い任意の\(x\)において\(f\left( x\right) \)と\(g\left( x\right) \)はともに\(0\)に限りなく近い値になります。では、\(f\left( x\right) \)と\(g\left( x\right) \)のどちらがより\(0\)に近いのでしょうか。限りなく小さい正の実数\(\varepsilon \)を任意に選んだ上で\(\varepsilon \cdot \left\vert g\left( x\right) \right\vert \)をとると、これは\(g\left( x\right) \)よりもさらに小さい値になります。それにも関わらず\(\left\vert f\left( x\right) \right\vert <\varepsilon \cdot \left\vert g\left( x\right) \right\vert \)が成り立つのですから、\(a\)に十分近い任意の\(x\)において\(f\left( x\right) \)は\(g\left( x\right) \)よりも大幅に小さい値であるはずです。\(\varepsilon \)をどれほど小さくした場合においても同様の議論が成り立つため、結局、\(x\)を\(a\)に限りなく近づけたとき、\(f\left( x\right) \)の大きさは\(g\left( x\right) \)の大きさと比べると無視できるほど小さくなります。結論をまとめると、点\(a\)において関数\(f\)が関数\(g\)よりも高位の無限小であることとは、変数\(x\)の値を\(a\)に近づけたときに\(f\left( x\right) \)と\(g\left( x\right) \)はともに\(0\)へ限りなく近づくだけでなく、\(a\)に限りなく近い任意の\(x\)において\(f\left( x\right) \)の大きさは\(g\left( x\right) \)の大きさと比べると無視できるほど小さいことを意味します。

例(高位の無限小)
繰り返しになりますが、関数\(f,g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)をそれぞれ、\begin{eqnarray*}
f\left( x\right) &=&x^{2} \\
g\left( x\right) &=&x
\end{eqnarray*}と定義したとき、点\(0\in \mathbb{R} \)において\(f\)は\(g\)よりも高位の無限小です。したがって、先の考察によると、変数\(x\)の値を\(0\)に近づけたときに\(f\left( x\right) \)と\(g\left( x\right) \)はともに\(0\)へ限りなく近づくだけでなく、\(0\)に限りなく近い任意の\(x\)において\(f\left( x\right) \)の大きさは\(g\left( x\right) \)の大きさと比べると無視できるほど小さくなるはずです。このことを具体的な数値例から確認しましょう。
\begin{array}{ccc}
x & f\left( x\right) =x^{2} & g\left( x\right) =x \\ \hline
1 & 1 & 1 \\
0.1 & 0.01 & 0.1 \\
0.01 & 0.0001 & 0.01 \\
\vdots & \vdots & \vdots \end{array}

上の表より、\(x=1\)の場合には\(f\left( x\right) \)と\(g\left( x\right) \)は一致しますが、\(x\)を\(0\)に近づけて\(x=0.1\)とした場合、\(f\left( x\right) \)の値は\(g\left( x\right) \)の値の\(\frac{1}{10}\)になります。さらに\(x\)を\(0\)に近づけて\(x=0.01\)とした場合、\(f\left( x\right) \)の値は\(g\left( x\right) \)の値の\(\frac{1}{100}\)になり、\(f\left( x\right) \)の\(g\left( x\right) \)に対する相対的な大きさはより小さくなります。\(x\)をさらに\(0\)に近づけると\(f\left( x\right) \)の\(g\left( x\right) \)に対する相対的な大きさはますます小さくなります。\(x\)を\(0\)に限りなく近づけたとき、\(f\left( x\right) \)の大きさは\(g\left( x\right) \)の大きさと比べると無視できるほど小さくなります。

 

線型近似としての微分

復習になりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が内点\(a\in X^{i}\)において微分可能であることとは、\begin{equation}
\exists f^{\prime }\left( a\right) \in
\mathbb{R} :\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) }{x-a}=f^{\prime }\left( a\right) \tag{1}
\end{equation}が成り立つことを意味します。このとき、\begin{eqnarray*}
&&\lim_{x\rightarrow a}\left[ f\left( x\right) -f\left( a\right) -f^{\prime
}\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \right] =0 \\
&&\lim_{x\rightarrow a}\left( x-a\right) =0
\end{eqnarray*}がともに成り立つとともに、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) -f^{\prime
}\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) }{x-a} &=&\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) }{x-a}-\lim_{x\rightarrow a}\frac{f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) }{x-a} \\
&=&\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) }{x-a}-\lim_{x\rightarrow a}f^{\prime }\left( a\right) \\
&=&f^{\prime }\left( a\right) -f^{\prime }\left( a\right) \quad \because
\left( 1\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}もまた成り立ちます。つまり、関数\(f\left( x\right) \)が点\(a\)において微分可能であるとき、関数\(f\left( x\right) -f\left( a\right) -f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)は関数\(x-a\)よりも点\(a\)において高位の無限小になります。これを定式化すると、\begin{equation*}
f\left( x\right) -f\left( a\right) -f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left(
x-a\right) =o\left( x-a\right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}となります。同じことですが、これを、\begin{equation*}
f\left( x\right) =f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left(
x-a\right) +o\left( x-a\right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}と表現することもできます。逆の議論も成立するため(演習問題にします)、微分可能性を以下のように表現できることが明らかになりました。

命題(線型近似としての微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が内点\(a\in X^{i}\)において微分可能であることと、\begin{equation*}
\exists c\in
\mathbb{R} :f\left( x\right) =f\left( a\right) +c\cdot \left( x-a\right) +o\left(
x-a\right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}が成り立つことは必要十分である。さらにこのとき、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =c
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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この命題はどのような示唆を与えてくれるのでしょうか。関数\(f\)が点\(a\)において微分可能である場合、上の命題より、\begin{equation*}
f\left( x\right) -\left[ f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot
\left( x-a\right) \right] =o\left( x-a\right) \quad \left( x\rightarrow
a\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。さらに、\begin{eqnarray*}
&&\lim_{x\rightarrow a}\left\{ f\left( x\right) -\left[ f\left( a\right)
+f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \right] \right\} =0 \\
&&\lim_{x\rightarrow a}\left( x-a\right) =0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、\(f\left( x\right) \)と\(f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)の誤差を与える関数と関数\(x-a\)はともに点\(a\)において無限小ですが、前者は後者よりも高位の無限小になります。言い換えると、変数\(x\)の値を\(a\)に近づけたとき、\(f\left( x\right) \)と\(f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)の誤差と\(x-a\)はともに\(0\)へ限りなく近づくだけでなく、\(a\)に限りなく近い任意の\(x\)において\(f\left( x\right) \)と\(f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)の誤差は\(x-a\)の大きさと比べると無視できるほど小さくなるということです。\(x\)を\(a\)へ限りなく近づける場合、すなわち\(x\rightarrow a\)について考える場合、\(x\)と\(a\)の差は限りなく小さくなりますが、上の議論より、\(f\left( x\right) \)と\(f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)の誤差はそれとは比べものにならないほど小さくなります。\(a\)に限りなく近い\(x\)において、\(f\left( x\right) \)は\(f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) \)と近似的に等しくなるということです。

以上の議論をまとめると、関数\(f\)が点\(a\)において微分可能である場合には、\(a\)に十分近い\(x\)において、\begin{equation*}
f\left( x\right) \approx f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \left(
x-a\right)
\end{equation*}という近似式が成り立ちます。言い換えると、関数\(f\)を点\(a\)で微分することとは、\(a\)の近傍において\(f\)を\(x\)に関する1次式\begin{equation*}
y=f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \left( x-a\right)
\end{equation*}で近似することを意味します。関数\(f\)が点\(a\)において微分可能であるとき、\(a\)の近傍において\(f\)のグラフは点\(\left( a,f\left( a\right) \right) \)を通過し傾きが\(f^{\prime }\left( a\right) \)の直線と近似的に等しくなるということです。そこでこの直線を\(f\)のグラフの点\(a\)における接線(tangent line)と呼びます(下図)。

図:微分の解釈

 

微分と微分商

繰り返しになりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が内点\(a\in X^{i}\)において微分可能である場合には、\(a\)に十分近い\(x\)において、\begin{equation}
f\left( x\right) \approx f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \left(
x-a\right) \tag{1}
\end{equation}という近似関係が成り立ちます。議論の見通しを良くするために\(x\)の増分を、\begin{equation*}
\Delta x=x-a
\end{equation*}とおくと、それに応じた\(f\left( x\right) \)の増分は、\begin{equation*}
f\left( x\right) -f\left( a\right) =f\left( a+\Delta x\right) -f\left(
a\right)
\end{equation*}と表現できるため、これらを用いて\(\left( 1\right) \)を書き換えると、\(x\)の増分\(\Delta x\)が\(0\)に十分近い場合には、\begin{equation*}
f\left( a+\Delta x\right) -f\left( a\right) \approx f^{\prime }\left(
a\right) \cdot \Delta x
\end{equation*}という近似関係が成り立つことになります。つまり、\(x\)の増分が\(0\)に十分近い場合、\(f\left( x\right) \)の増分は微分係数と\(x\)の増分の積として近似できるということです。そこで、その積を\(f\left( x\right) \)の増分の主要部分(main part)や\(f\)の\(a\)における微分(differential at \(a\))と呼び、\begin{equation*}
df=f^{\prime }\left( a\right) \cdot \Delta x
\end{equation*}で表記します。\(\Delta x\)が\(0\)に十分近い場合には、\begin{equation*}
f\left( a+\Delta x\right) -f\left( a\right) \approx df
\end{equation*}という近似関係が成り立つということです。

例(微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が、\begin{equation*}
f\left( x\right) =3x^{2}-5x+4
\end{equation*}で与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} \)と\(h\not=0\)について、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h} &=&\frac{3\left( a+h\right)
^{2}-5\left( a+h\right) +4-\left( 3a^{2}-5a+4\right) }{h} \\
&=&\frac{3a^{2}+6ah+3h^{2}-5a-5h+4-3a^{2}+5a-4}{h} \\
&=&\frac{6ah+3h^{2}-5h}{h} \\
&=&6a+3h-5
\end{eqnarray*}となるため、\begin{eqnarray*}
f^{\prime }\left( a\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\left( 6a+3h-5\right) \\
&=&6a-5
\end{eqnarray*}となります。したがって、\(f\)の\(a\)における微分は、\begin{equation*}
df=f^{\prime }\left( a\right) \cdot \Delta x=\left( 6a-5\right) \cdot \Delta
x
\end{equation*}です。
例(微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が、\begin{equation*}
f\left( x\right) =x
\end{equation*}で与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} \)と\(h\not=0\)について、\begin{equation*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}=\frac{\left( a+h\right) -a}{h}=1
\end{equation*}となるため、\begin{eqnarray*}
f^{\prime }\left( a\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。したがって、\(f\)の\(a\)における微分は、\begin{equation*}
df=f^{\prime }\left( a\right) \cdot \Delta x=1\cdot \Delta x=\Delta x
\end{equation*}となります。

繰り返しになりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が内点\(a\in X^{i}\)において微分可能である場合、\(f\)の\(a\)における微分は、\begin{equation}
df=f^{\prime }\left( a\right) \cdot \Delta x \tag{2}
\end{equation}と定義されます。また、先に例で確認したように、変数\(x\)に関する関数\(x\)は任意の点\(a\)において微分であるとともに、そこでの微分は、\begin{equation}
dx=\Delta x \tag{3}
\end{equation}となります。\(\left( 3\right) \)を使って\(\left( 2\right) \)を書き換えると、\begin{equation*}
df=f^{\prime }\left( a\right) \cdot dx
\end{equation*}という関係が成り立ちますが、\(dx=\Delta x\not=0\)であることに注目し、上の等式の両辺を\(dx\)で割ると、\begin{equation*}
\frac{df}{dx}=f^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}を得ます。つまり、関数\(f\)が点\(a\)において微分可能である場合、そこでの微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)は関数\(f\)の点\(a\)における微分\(df\)と関数\(x\)の点\(a\)における微分\(dx\)の商として表現できるということです。このような事実を踏まえた上で、微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)を微分商(differential quotient)と呼ぶことができます。

次回は片側微分と呼ばれる概念について学びます。

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