実数の区間上に定義された関数が区間上の点において微分可能であることの意味を定義します。また、区間の内点を微分可能な点の候補とする理由を解説します。

2019年6月5日:例を追加
2019年3月14日:公開

平均変化率

実数の部分集合(多くの場合には区間)を定義域とし、値として実数をとる写像\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R}\)を議論の対象とします。このような写像を正式には実変数の実数値関数(real-valued function of a real variable)や1変数の実数値関数(real-valued function of single real variable)などと呼びますが、以降ではシンプルに関数(function)と呼びます。

写像について復習する

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)が与えられたとき、変数\(x\)の値を区間の内点\(a\in I^{i}\)から\(h\not=0\)だけ変化させると、それに応じて\(f\left( x\right) \)の値は\(f\left( a\right)\)から\(f\left( a+h\right) \)まで変化します。このとき、\(f\left( x\right)\)の変化量と\(x\)の変化量の比に相当する\begin{equation*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}
\end{equation*}を、\(x\)が\(a\)から\(a+h\)まで変化するときの\(f\left( x\right) \)の平均変化率(average rate of change)と呼びます。

内点について復習する

 

図:平均変化率

平均変化率\(\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\)は関数\(f\)のグラフ上の2つの点\((a,f(a)),\ (a+h,f(a+h))\)を結んで得られる線分の傾きに相当するため、これは上図のグレーの線分の傾きに相当します。図からも明らかであるように、平均変化率\(\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\)は\(a\)や\(h\)の水準に依存して変化します。

例(平均変化率)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =x^{2}\)として定義されているとき、変数\(x\)が内点\(a\)から\(h\not=0\)だけ変化するときの平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h} &=&\frac{\left( a+h\right) ^{2}-a^{2}}{h}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\frac{2ah+h^{2}}{h} \\
&=&2a+h\quad \because h\not=0
\end{eqnarray*}となります。より具体的には、例えば\(a=1\)における平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( 1+h\right) -f\left( 1\right) }{h} &=&2\cdot 1+h \\
&=&2+h
\end{eqnarray*}となり、\(a=-3\)における平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( -3+h\right) -f\left( -3\right) }{h} &=&2\cdot \left( -3\right) +h \\
&=&-6+h
\end{eqnarray*}などとなります。
例(平均変化率)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \{0\}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =\frac{1}{x}\)として定義されているとき、変数\(x\)が内点\(a\)から\(h\not=0\)だけ変化するときの平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h} &=&\frac{\frac{1}{a+h}-\frac{1}{a}}{h}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\frac{\frac{-h}{a\left( a+h\right) }}{h} \\
&=&\frac{-1}{a\left( a+h\right) }\quad \because h\not=0
\end{eqnarray*}となります。より具体的には、例えば\(a=1\)における平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( 1+h\right) -f\left( 1\right) }{h} &=&\frac{-1}{1\cdot \left( 1+h\right) } \\
&=&\frac{-1}{1+h}
\end{eqnarray*}となり、\(a=-3\)における平均変化率は、\begin{eqnarray*}
\frac{f\left( -3+h\right) -f\left( -3\right) }{h} &=&\frac{-1}{\left( -3\right) \left( -3+h\right) } \\
&=&\frac{1}{3\left( -3+h\right) }
\end{eqnarray*}などとなります。

 

微分係数

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)の変数\(x\)が内点\(a\in I^{i}\)から\(h\not=0\)だけ変化したときの平均変化率\(\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\)が与えられたとき、\(a\)を固定して\(h\)を変数とみなした上で、\(h\rightarrow 0\)のときの極限\begin{equation*}
\lim\limits_{h\rightarrow 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{equation*}をとります。この極限は存在するとは限りませんが、仮に存在する場合には、すなわち、\begin{equation*}
\exists c\in \mathbb{R} ,\ \forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall h\in \mathbb{R} :\left( 0<\left\vert h\right\vert <\delta \ \Rightarrow \ \left\vert \frac{f(a+h)-f(a)}{h}-c\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、この極限\(c\)を\(f\)の\(a\)における微分係数(differential coefficient at \(a\))と呼び、\begin{equation*}
f^{\prime }(a),\quad \frac{df(a)}{dx},\quad \frac{d}{dx}f(a),\quad \left. \frac{df\left( x\right) }{dx}\right\vert _{x=a}
\end{equation*}などで表します。また、微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)が存在する場合には\(f\)は\(a\)において微分可能(differentiable at \(a\))であると言います。

関数の極限について復習する

 

図:微分係数

平均変化率\(\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\)が上図の2つの点\(A,B_{1}\)を結んで得られる線分の傾きであるとしましょう。\(a\)を固定したまま\(h\)を\(0\)に近づけることは、線分の左側の端点\(A\)を固定したまま右側の端点を\(B_{1}\rightarrow B_{2}\rightarrow B_{3}\rightarrow \cdots \)へと移動させていくことを意味します。\(h\)を\(0\)に限りなく近づけることは右側の端点を\(A\)に限りなく近づけることを意味するため、結局、微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)は\(A\)における\(f\)のグラフの接線の傾きとして近似的に表現できます。この点に関しては後ほど詳しく議論します。

例(微分係数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =x^{2}\)として定義されているとき、変数\(x\)が内点\(a\)から\(h\not=0\)だけ変化するときの平均変化率は、\begin{equation*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}=2a+h
\end{equation*}ですので、\(f\)の点\(a\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\left( 2a+h\right) =2a
\end{equation*}となります。したがって、例えば\(a=1\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( 1\right) =2\cdot 1=2
\end{equation*}であり、\(a=-3\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( -3\right) =2\cdot \left( -3\right) =-6
\end{equation*}などとなります。
例(平均変化率)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \{0\}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =\frac{1}{x}\)として定義されているとき、変数\(x\)が内点\(a\)から\(h\not=0\)だけ変化するときの平均変化率は、\begin{equation*}
\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}=\frac{-1}{a\left( a+h\right) }
\end{equation*}ですので、\(f\)の点\(a\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{-1}{a\left( a+h\right) }=-\frac{1}{a^{2}}
\end{equation*}となります。したがって、例えば\(a=1\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( 1\right) =-\frac{1}{1^{2}}=-1
\end{equation*}であり、\(a=-3\)における微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( -3\right) =-\frac{1}{\left( -3\right) ^{2}}=-\frac{1}{9}
\end{equation*}などとなります。

 

区間の内点を微分可能な点の候補とする理由

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)の点における微分可能性を定義する際に、その点が区間\(I\)の内点であることを前提としましたが、その理由を以下で解説します。ちなみに、内点の定義より、区間の任意の内点\(a\in I^{i}\)は、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:U_{\varepsilon }\left( a\right) \subset I
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
\exists \varepsilon >0:\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \subset I \tag{1}
\end{equation}を満たします。

内点について復習する

微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) =\lim\limits_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)の存在を検討する際には、関数の極限の定義より、十分小さい任意の\(h\not=0\)に対して\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)が定義されている必要があり、さらにそのためには\(f\)が点\(a+h\)において定義されている必要があります。つまり、十分小さい任意の\(h\not=0\)に対して\(a+h\in I\)でなければなりませんが、\(\left( 1\right) \)より、これを保証するためには\(h\)の水準が\(a+h\in \left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \)すなわち\(\left\vert h\right\vert <\varepsilon \)を満たすほど小さければ十分です。とは言え、微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)について考える際には\(h\rightarrow 0\)の状況を想定するため、\(\left\vert h\right\vert <\varepsilon \)が満たされます。したがって、区間\(I\)の任意の内点において\(f\)の微分可能性を検討できます。

一方、例えば有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ s,t\right] \rightarrow \mathbb{R}\)の端点\(s,t\)は区間\(\left[ s,t\right] \)の内点ではなく境界点ですが、これらの点について\(f\)の微分可能性を検討することはできません。実際、\(f\)が\(s\)において微分可能であることを検討するためには十分小さい任意の\(h\not=0\)に対して\(s+h\in \left[ s,t\right] \)である必要がありますが、任意の\(h<0\)に対して\(s+h\in \left[ s,t\right] \)は成り立たないため、\(f\)の\(s\)における微分可能性を検討できません。\(f\)の\(t\)における微分可能性を検討できない理由も同様です。なお、閉区間の端点における微分可能性を考える際には片側微分(one-sided differential)と呼ばれる概念を利用します。これについては場を改めて解説します。

 

増分を用いない微分可能性の表現

繰り返しになりますが、区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)の内点\(a\in I^{i}\)における微分係数は、\begin{equation}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim\limits_{h\rightarrow 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h} \tag{1}
\end{equation}と定義されます。ここで\(x=a+h\)とおけば\(h=x-a\)が成り立つため、これを用いて平均変化率を書き換えると、\begin{equation*}
\frac{f(a+h)-f(a)}{h}=\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) }{x-a}
\end{equation*}となります。さらに、\begin{align*}
\lim_{h\rightarrow 0}x& =\lim_{h\rightarrow 0}\left( a+h\right) \quad \because x=a+h \\
& =a
\end{align*}であるため、\(h\rightarrow 0\)は\(x\rightarrow a\)を含意します。逆に、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow a}h &=&\lim_{x\rightarrow a}\left( x-a\right) \quad \because h=x-a \\
&=&\lim_{x\rightarrow a}x-\alpha \\
&=&0
\end{eqnarray*}であるため、\(x\rightarrow a\)は\(h\rightarrow 0\)を含意します。つまり、\(h\rightarrow 0\)と\(x\rightarrow a\)は互いに言い換え可能です。以上を踏まえると、微分係数の定義として\(\left( 1\right) \)の代わりに、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{x\rightarrow a}\frac{f\left( x\right) -f\left( a\right) }{x-a}
\end{equation*}を採用しても一般性は失われません。

 

ライプニッツ流の微分可能性の表現

再び繰り返しますが、区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)の内点\(a\in I^{i}\)における微分係数は、\begin{equation}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim\limits_{h\rightarrow 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h} \tag{1}
\end{equation}と定義されます。ここで\(x\)の増分を\(\Delta x=h\)で表し、それに対応する\(f\left( x\right) \)の増分を\(\Delta y=f\left( a+h\right) -f\left( a\right) \)で表すならば、平均変化率は、\begin{equation*}
\frac{f(a+h)-f(a)}{h}=\frac{\Delta y}{\Delta x}
\end{equation*}と言い換えられます。さらに、\begin{align*}
\lim_{h\rightarrow 0}\Delta x& =\lim_{h\rightarrow 0}h\quad \because \Delta x=h \\
& =0
\end{align*}であるため、\(h\rightarrow 0\)は\(\Delta x\rightarrow 0\)を含意します。逆に、\begin{eqnarray*}
\lim_{\Delta x\rightarrow 0}h &=&\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\Delta x\quad \because \Delta x=h \\
&=&0
\end{eqnarray*}であるため、\(\Delta x\rightarrow 0\)は\(h\rightarrow 0\)を含意します。つまり、\(h\rightarrow 0\)と\(\Delta x\rightarrow 0\)は互いに言い換え可能です。以上を踏まえると、微分係数の定義として\(\left( 1\right) \)の代わりに、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\frac{\Delta y}{\Delta x}
\end{equation*}を採用しても一般性は失われません。これはライプニッツによる微分係数の表現です。

 

微分係数の一意性

関数が微分可能であるとき、微分係数は一意的に定まります。

命題(微分係数の一意性)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)が内点\(a\in I^{i}\)において微分可能であるとき、微分係数\(f^{\prime }\left( a\right) \)は一意的に定まる。
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次回は無限小を用いた微分の表現について学びます。
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