微分可能な関数の和
定義域を共有する2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f+g\right) \left( x\right) =f\left( x\right) +g\left( x\right)
\end{equation*}を定める新たな関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。関数\(f,g\)がともに定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているならば、\(f,g\)が点\(a\)において微分可能であるか検討できます。\(f,g\)がともに点\(a\)において微分可能であるならば、そこでの微分係数に相当する有限な実数\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &\in &\mathbb{R} \\
g^{\prime }\left( a\right) &\in &\mathbb{R} \end{eqnarray*}が存在します。この場合、\(f+g\)もまた点\(a\)において微分可能であることが保証されるとともに、そこでの微分係数が、\begin{equation*}(f+g)^{\prime }\left( a\right) =f^{\prime }\left( a\right) +g^{\prime
}\left( a\right)
\end{equation*}として定まることが保証されます。
}\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。
つまり、点\(a\)において微分可能な2つの関数\(f,g \)の和の形をしている関数\(f+g\)が与えられたとき、\(f+g\)もまた点\(a\)において微分可能であることが保証されるとともに、点\(a\)における\(f \)の微分係数と\(g\)の微分係数を足せば点\(a\)における\(f+g\)の微分係数が得られることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの関数\(f,g\)の和の形をしている関数\(f+g\)の微分可能性を検討する際には、微分の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(f\)と\(g\)に分けた上で、それらがそれぞれ微分可能であることを確認すればよいということになります。
\end{equation*}を定めるものとします。\(\mathbb{R} \)は開集合であるため、定義域上の点を任意に選んだとき、\(f\)はその点の周辺の任意の点において定義されています。また、\(f\)は恒等関数の定数倍\(-\frac{x}{2}\)と定数関数\(3\)の和として定義されています。すると先の命題より\(f\)は微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\left( -\frac{x}{2}+3\right) ^{\prime }\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\left( -\frac{x}{2}\right) ^{\prime }+\left( 3\right) ^{\prime }\quad
\because \text{微分可能な関数の和} \\
&=&-\frac{1}{2}\left( x\right) ^{\prime }+\left( 3\right) ^{\prime }\quad
\because \text{微分可能な関数の定数倍} \\
&=&-\frac{1}{2}\cdot 1+0\quad \because \text{恒等関数および定数関数の微分} \\
&=&-\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}を定めます。
+g^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。つまり、\(\mathbb{R} \)上に定義された微分可能な関数の和として定義される関数もまた\(\mathbb{R} \)上で微分可能であるということです。
片側微分可能な関数の和
片側微分可能性に関しても同様の命題が成り立ちます。
}\left( a+0\right)
\end{equation*}を満たす。また、\(f\)と\(g \)がともに点\(a\in X\)において左側微分可能であるならば、\(f+g\)もまた点\(a\)において左側微分可能であり、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}(f+g)^{\prime }\left( a-0\right) =f^{\prime }\left( a-0\right) +g^{\prime
}\left( a-0\right)
\end{equation*}を満たす。
\begin{array}{cc}
-\frac{3}{2}x+\pi & \left( if\ x\leq 0\right) \\
x & \left( if\ x>0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(a<0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、その周辺の任意の点\(x\)において\(f\left( x\right) =-\frac{3}{2}x+\pi \)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \left( -\frac{3}{2}x+\pi \right)
^{\prime }\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義}
\\
&=&\left. \left( -\frac{3}{2}x\right) ^{\prime }\right\vert _{x=a}+\left.
\left( \pi \right) ^{\prime }\right\vert _{x=a}\quad \because \text{微分可能な関数の和} \\
&=&-\frac{3}{2}\left[ \left. \left( x\right) ^{\prime }\right\vert _{x=a}\right] +\left. \left( \pi \right) ^{\prime }\right\vert _{x=a}\quad
\because \text{微分可能な関数の定数倍} \\
&=&-\frac{3}{2}\left[ \left. 1\right\vert _{x=a}\right] +\left. 0\right\vert
_{x=a}\quad \because \text{恒等関数および定数関数の微分} \\
&=&-\frac{3}{2}\cdot 1+0 \\
&=&-\frac{3}{2}
\end{eqnarray*}となります。点\(0\)以下の周辺の任意の\(x\)において\(f\left( x\right) =-\frac{3}{2}x+\pi \)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0-0\right) &=&\left. \left( -\frac{3}{2}x+\pi \right)
_{-}^{\prime }\right\vert _{x=0}\quad \\
&=&\left. \left( -\frac{3}{2}x\right) _{-}^{\prime }\right\vert
_{x=0}+\left. \left( \pi \right) _{-}^{\prime }\right\vert _{x=0}\quad
\because \text{左側微分可能な関数の和} \\
&=&-\frac{3}{2}\left[ \left. \left( x\right) _{-}^{\prime }\right\vert _{x=0}\right] +\left. \left( \pi \right) _{-}^{\prime }\right\vert _{x=0}\quad
\because \text{左側微分可能な関数の定数倍} \\
&=&-\frac{3}{2}\left[ \left. 1\right\vert _{x=a}\right] +\left. 0\right\vert
_{x=a}\quad \because \text{恒等関数・定数関数の左側微分} \\
&=&-\frac{3}{2}\cdot 1+0 \\
&=&-\frac{3}{2}
\end{eqnarray*}となります。点\(0\)以上の周辺の点\(x\)については、\(x\)の値に応じて\(f\left(x\right) \)の形状は変化するため、定義にもとづいて右側微分係数を求めると、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
0+h\right) -f\left( 0\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left( 0+h\right) -\pi }{h}\quad \because h<0
\\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{h-\pi }{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( 1-\frac{\pi }{h}\right) \\
&=&-\infty
\end{eqnarray*}となります。したがって\(f\)は点\(0\)において右側微分可能ではなく、ゆえに微分可能でもありません。\(a>0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、その周辺の任意の点\(x\)において\(f\left( x\right) =x\)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \left( x\right) ^{\prime }\right\vert
_{x=a} \\
&=&\left. 1\right\vert _{x=a}\quad \because \text{恒等関数の微分} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。以上より、\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)の定義域は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-\frac{3}{2} & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x>0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。
演習問題
\begin{array}{cc}
3x+1 & \left( if\ x\leq 1\right) \\
5x-2 & \left( if\ x>2\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
次回は微分可能な関数どうしの差として定義される関数の微分可能性について解説します。
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