有理数ベキ関数の微分
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が有理数ベキ関数であるものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値は、自然数\(n\in \mathbb{N} \)および整数\(z\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}と表すことができるということです。有理数ベキ関数の定義より、任意の\(x\in X\)について、\begin{equation*}x^{\frac{z}{n}}=\left( x^{\frac{1}{n}}\right) ^{z}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、有理数ベキ関数\(x^{\frac{z}{n}}\)は無理関数\(x^{\frac{1}{n}}\)と整数ベキ関数\(x^{z}\)の合成関数であるため、合成関数の微分より、\(x^{\frac{z}{n}}\)がゼロとは異なる定義域上の点\(a\in X\backslash \left\{ 0\right\} \)の周辺の任意の点において定義されている場合には点\(a\)において微分可能です。微分係数は以下の通りです。
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)がゼロとは異なる定義域上の点\(a\in X\backslash\left\{ 0\right\} \)の周辺の任意の点において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、そこでの微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\frac{z}{n}\cdot a^{\frac{z}{n}-1}
\end{equation*}となる。
上の命題では有理数ベキ関数\(f\left( x\right) =x^{\frac{z}{n}}\)が微分可能な点の候補から点\(0\)が除かれています。実施、無理関数は点\(0\)において微分可能ではありません。有理数ベキ関数\(x^{\frac{z}{n}}\)は無理関数\(x^{\frac{1}{n}}\)と整数ベキ関数\(x^{z}\)の合成関数ですが、無理関数\(x^{\frac{1}{n}}\)は点\(0\)において微分可能ではないからです。
\end{equation*}を定めるものとします。ゼロとは異なる点\(a\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているため、先の命題より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\frac{2}{3}x^{\frac{2}{3}-1}=\frac{2}{3}x^{-\frac{1}{3}}
\end{equation*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。ゼロとは異なる点\(a\in \mathbb{R} _{++}\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているため、先の命題より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} _{++}\)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} _{++}\)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\frac{5}{4}x^{\frac{5}{4}-1}=\frac{5}{4}x^{\frac{1}{4}}
\end{equation*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているため、先の命題より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =-\frac{2}{3}x^{-\frac{2}{3}-1}=-\frac{2}{3}x^{-\frac{5}{3}}
\end{equation*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{R} _{++}\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているため、先の命題より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} _{++}\)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} _{++}\)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =-\frac{5}{4}x^{-\frac{5}{4}-1}=-\frac{5}{4}x^{-\frac{9}{4}}
\end{equation*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数\(\sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\)と有理数ベキ関数\(x^{\frac{2}{5}}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、多項式関数の極限より\(\sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\)は点\(a\)において微分可能です。\(x^{\frac{2}{5}}\)の定義域は\(\mathbb{R} \)であり、したがって\(x^{\frac{2}{5}}\)は点\(\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\)および周辺の任意の点において定義されています。加えて\(\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\not=0\)であるため、\(x^{\frac{2}{5}}\)は点\(\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\)において微分可能です。すると、合成関数の微分より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\frac{d}{dx}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) ^{\frac{2}{5}}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dy}y^{\frac{2}{5}}\right\vert _{y=\sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1}\cdot \frac{d}{dx}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) \quad
\because \text{合成関数の微分} \\
&=&\left. \frac{2}{5}y^{\frac{2}{5}-1}\right\vert _{y=\sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1}\cdot \left( 4\sqrt{2}x^{3}+4x\right) \quad \because \text{有理数ベキ関数と多項式関数の微分} \\
&=&\frac{2}{5}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) ^{-\frac{3}{5}}\cdot
\left( 4\sqrt{2}x^{3}+4x\right)
\end{eqnarray*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は有理関数\(\frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\)と有理数ベキ関数\(x^{\frac{3}{5}}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、有理関数の極限より\(\frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\)は点\(a\)において微分可能です。\(x^{\frac{3}{5}}\)の定義域は\(\mathbb{R} \)であり、したがって\(x^{\frac{3}{5}}\)は点\(\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\)および周辺の任意の点において定義されています。加えて\(\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\not=0\)であるため、\(x^{\frac{3}{5}}\)は点\(\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\)において微分可能です。すると、合成関数の微分より\(f\)は点\(a\)において微分可能です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\frac{d}{dx}\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) ^{\frac{3}{5}}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dy}y^{\frac{3}{5}}\right\vert _{y=\frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}}\cdot \frac{d}{dx}\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) \quad \because
\text{合成関数の微分} \\
&=&\left. \frac{3}{5}y^{\frac{3}{5}-1}\right\vert _{y=\frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}}\cdot \left[ \frac{4x^{3}\left( x^{2}+1\right) -\left( x^{4}+1\right) 2x}{\left( x^{2}+1\right) ^{2}}\right] \quad \because \text{有理数ベキ関数と有理関数の微分} \\
&=&\frac{3}{5}\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) ^{-\frac{2}{5}}\cdot \left[ \frac{4x^{3}\left( x^{2}+1\right) -\left( x^{4}+1\right) 2x}{\left(
x^{2}+1\right) ^{2}}\right] \\
&=&\frac{6}{5}\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) ^{-\frac{2}{5}}\cdot \left[ \frac{x\left( x^{4}+2x^{2}-1\right) }{\left( x^{2}+1\right) ^{2}}\right] \end{eqnarray*}を定めます。
有理数ベキ関数の片側微分
片側微分についても同様の命題が成り立ちます。
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)がゼロとは異なる定義域上の点\(a\in X\backslash\left\{ 0\right\} \)以上の周辺の任意の点において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において右側微分可能であるとともに、そこでの右側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) =\frac{z}{n}\cdot a^{\frac{z}{n}-1}
\end{equation*}となる。また、\(f\)がゼロとは異なる定義域上の点\(a\in X\backslash \left\{ 0\right\} \)以下の周辺の任意の点において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において左側微分可能であるとともに、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a-0\right) =\frac{z}{n}\cdot a^{\frac{z}{n}-1}
\end{equation*}となる。
\end{equation*}を定めるものとします。\(n\in \mathbb{N} \)かつ\(z\in \mathbb{Z} \)です。定義域の内点\(a\in \left( 1,2\right) \)を任意に選んだとき、有理数ベキ関数の微分より、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\frac{z}{n}\cdot a^{\frac{z}{n}-1}
\end{equation*}が成り立ちます。定義域の端点\(1\)に注目したとき、有理数ベキ関数の右側微分より、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 1+0\right) =\frac{z}{n}\cdot 1^{\frac{z}{n}-1}=\frac{z}{n}
\end{equation*}が成り立ちます。定義域の端点\(2\)に注目したとき、有理数ベキ関数の左側微分より、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 1-0\right) =\frac{z}{n}\cdot 0^{\frac{z}{n}-1}=0
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、\(f\)は\(\left[ 1,2\right] \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\supset \left[ 1,2\right]\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 1,2\right] \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\frac{z}{n}\cdot x^{\frac{z}{n}-1}
\end{equation*}を定めます。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。導関数を求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。導関数を求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。導関数を求めてください。
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