教材一覧
DIFFERENTIATION OF FUNCTIONS

関数の片側微分(半微分)

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

片側極限にもとづく微分概念を導入する動機

復習になりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において微分可能であることとは、\(f\)が点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そこでの微分係数に関する以下の有限な極限\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h}\in \mathbb{R} \end{equation*}が存在することを意味します。関数の極限の定義より、上の極限が存在することとは、平均変化率\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)を変数\(h\)に関する関数とみなしたとき、\(h\)がどのような経路で\(0\)へ限りなく近づく場合においても、それに応じて\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)が必ずある1つの有限な実数\(f^{\prime}\left( a\right) \)へ限りなく近づくことを意味します。ただ、その検証を行うためには、\(h\)がどのような経路をたどって\(0\)へ限りなく近づく場合においても\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)が常に定義されている必要があります。言い換えると、\(0\)に限りなく近い任意の\(h\)について\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)が定義されている必要があるということです。関数\(f\)が点\(a\)の周辺の任意の点において定義されている場合、\(0\)に限りなく近い任意の\(h\)において\(f\left( a+h\right) \)が定義されているため、そのような任意の\(h\)において\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)もまた定義されています。したがって、このような場合には\(h\rightarrow 0\)のときに\(\frac{f\left( a+h\right)-f\left( a\right) }{h}\)が有限な値へ収束するかどうか検証可能です。

では、点\(a\)が関数\(f\)の定義域\(X\)の点ではあるものの、\(f\)が点\(a\)の周辺の任意の点では定義されていない場合にはどうでしょうか。例えば、有界な閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ s,t\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、定義域\(\left[ s,t\right] \)の左側の端点\(s\)に注目すると、\(h<0\)を満たす任意の実数\(h\)について\(f\left( s+h\right) \)は定義されておらず、したがって平均変化率\(\frac{f\left( s+h\right) -f\left( s\right) }{h}\)もまた\(h<0\)を満たす任意の実数\(h\)について定義されていないため、\(h\rightarrow 0\)のときに\(\frac{f\left( s+h\right) -f\left( s\right) }{h}\)が有限な値へ収束するか検証できません。言い換えると、\(f\)が点\(s\)において通常の意味で微分可能であるか検証できないということです。したがって\(f\)は点\(s\)において微分可能ではありません。一方、\(h>0\)を満たす十分小さい任意の\(h\)に関して平均変化率\(\frac{f\left( s+h\right) -f\left( s\right) }{h}\)は定義されているため、\(h\)が正の値をとりながら\(0\)に限りなく近づく場合の右側極限\begin{equation*}\lim\limits_{h\rightarrow 0+}\frac{f(s+h)-f(s)}{h}
\end{equation*}が存在するか検証することはできます。そこで、このような右側極限が有限な実数として定まる場合、これを\(f\)の点\(s\)における微分係数とみなします。より正確には、これを通常の微分係数と区別して右側微分係数と呼びます。

定義域\(\left[ s,t\right] \)の右側の端点\(t\)における微分可能性についても同様に考えます。つまり、\(h>0\)を満たす任意の\(h\)について\(f\left( t+h\right) \)は定義されておらず、したがって平均変化率\(\frac{f\left( t+h\right) -f\left( t\right) }{h}\)もまた\(h>0\)を満たす任意の実数\(h\)について定義されていないため、\(h\rightarrow 0\)のときに\(\frac{f\left( t+h\right) -f\left( t\right) }{h}\)が有限な値へ収束するか検証できません。言い換えると、\(f\)が点\(t\)において通常の意味で微分可能であるか検証できないということです。したがって\(f\)は点\(t\)において微分可能ではありません。一方、\(h<0\)を満たす十分小さい任意の\(h\)に関して平均変化率\(\frac{f\left( t+h\right) -f\left( t\right) }{h}\)は定義されているため、\(h\)が負の値をとりながら\(0\)に限りなく近づく場合の左側極限\begin{equation*}\lim\limits_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( t+h\right) -f\left( t\right) }{h}
\end{equation*}が存在するか検証することはできます。そこで、このような左側極限が有限な実数として定まる場合、これを\(f\)の点\(t\)における微分係数とみなします。より正確には、これを通常の微分係数と区別して左側微分係数と呼びます。

以上の議論では、関数の定義域が有界な閉区間である場合、その定義域の端点における微分可能性をどのように定義すればよいかという問題意識を背景に、片側極限にもとづく微分概念を導入しました。ただ、このような微分概念の適用範囲は有界な閉区間の端点に限定されません。関数\(f\)が点\(a\)以上の周辺の任意の点において定義されていれば\(f\)が点\(a\)において右側微分可能であるか検討できますし、逆に、関数\(f\)が点\(a\)以下の周辺の任意の点において定義されていれば\(f\)が点\(a\)において左側微分可能であるか検討できます。以上の議論を踏まえた上で、以降では右側微分や左側微分を定義します。

 

片側微分係数

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の定義域上の点\(a\in X\)を任意に選びます。加えて、\(f\)は点\(a\)以上の周辺の任意の点において定義されているものとします。変数\(x\)が点\(a\)から微小量\(h>0\)だけ変化したときの平均変化率\begin{equation*}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{equation*}をとり、これを変数\(h\)に関する関数とみなした上で、\(h\rightarrow 0+\)のときの右側極限\begin{equation*}\lim\limits_{h\rightarrow 0+}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{equation*}をとります。この右側極限は存在する(有限な実数に右側収束する)とは限りませんが、仮に存在する場合、この右側極限を\(f\)の\(a\)における右側微分係数(right-handdifferential coefficient at \(a\))と呼び、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) ,\quad f_{+}^{\prime }(a),\quad \frac{df\left(
a+0\right) }{dx},\quad \left. \frac{df\left( x+0\right) }{dx}\right\vert
_{x=a},\quad \left. \left[ f\left( x\right) \right] _{+}^{\prime
}\right\vert _{x=a}
\end{equation*}などで表します。つまり、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a+0\right) =\lim\limits_{h\rightarrow 0+}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\in \mathbb{R} \end{equation*}を満たすものとして右側微分係数\(f^{\prime }\left(a+0\right) \)は定義されるということです。右側微分係数\(f^{\prime }\left( a+0\right) \)が存在する場合、\(f\)は点\(a\)において右側微分可能(right-hand differentiable at \(a\))であると言います。

例(右側微分係数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は\(0\)より小さい任意の値において定義されていないため、点\(0\)における通常の意味での微分可能性や左側微分可能性を検討することはできません。一方、\(f\)は\(0\)以上の周辺の任意の点において定義されているため、点\(0\)における右側微分可能性を検討することはできます。具体的には、\begin{eqnarray*}\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left( 0+h\right) -f\left( 0\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left( 0+h\right) ^{2}-0^{2}}{h}\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}h \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため\(f\)は点\(0\)において右側微分可能であり、そこでの右側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 0+0\right) =0
\end{equation*}であることが明らかになりました。

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の定義域上の点\(a\in X\)を任意に選びます。加えて、\(f\)は点\(a\)以下の周辺の任意の点において定義されているものとします。変数\(x\)が点\(a\)から微小量\(h<0\)だけ変化したときの平均変化率\begin{equation*}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{equation*}をとり、これを変数\(h\)に関する関数とみなした上で、\(h\rightarrow 0-\)のときの左側極限\begin{equation*}\lim\limits_{h\rightarrow 0-}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{equation*}をとります。この左側極限は存在する(有限な実数に左側収束する)とは限りませんが、仮に存在する場合、この左側極限を\(f\)の\(a\)における左側微分係数(left-handdifferential coefficient at \(a\))と呼び、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a-0\right) ,\quad f_{-}^{\prime }(a),\quad \frac{df\left(
a-0\right) }{dx},\quad \left. \frac{df\left( x-0\right) }{dx}\right\vert
_{x=a},\quad \left. \left[ f\left( x\right) \right] _{-}^{\prime
}\right\vert _{x=a}
\end{equation*}などで表します。つまり、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a-0\right) =\lim\limits_{h\rightarrow 0-}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\in \mathbb{R} \end{equation*}を満たすものとして左側微分係数\(f^{\prime }\left(a-0\right) \)は定義されるということです。左側微分係数\(f^{\prime }\left( a-0\right) \)が存在する場合、\(f\)は点\(a\)において左側微分可能(left-hand differentiable at \(a\))であると言います。

例(左側微分係数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は\(1\)より大きい任意の値において定義されていないため、点\(1\)における通常の意味での微分可能性や左側微分可能性を検討することはできません。一方、\(f\)は\(1\)以下の周辺の任意の点において定義されているため、点\(1\)における左側微分可能性を検討することはできます。具体的には、\begin{eqnarray*}\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( 1+h\right) -f\left( 1\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left( 1+h\right) ^{2}-1^{2}}{h}\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\left( 2+h\right) \\
&=&2
\end{eqnarray*}となるため\(f\)は点\(1\)において右側微分可能であり、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 1-0\right) =2
\end{equation*}であることが明らかになりました。

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されている場合においても、\(f\)の点\(a\)における右側微分可能性を検討できます。つまり、実際には\(f\)は点\(a\)の周辺にある任意の点において定義されているものの、\(x\)が\(a\)に近づく場合の経路を\(h\rightarrow 0+\)に限定した場合の平均変化率\(\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\)の極限が右側微分係数であるということです。左側微分についても同様です。

右側微分係数と左側微分係数を総称して片側微分係数(one-sided differential coefficient)や半微分係数(semi-differential coefficient)などと呼びます。関数\(f\)が定義域上の点\(a\)の周辺の任意の点において定義されている場合、右側微分係数\(f^{\prime}(a+0)\)と左側微分係数\(f^{\prime}\left( a-0\right) \)がともに存在するか検討できます。両者が存在する場合、\(f\)は点\(a\)において片側微分可能(one-sideddifferentiable)であるとか半微分可能(semi-differentiable)であるなどと言います。

例(片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は開集合であるため、点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されています。したがって\(f\)は点\(a\)以上の周辺の任意の点においても定義されているため、\(f\)が点\(a\)において右側微分可能か検討できます。具体的には、\begin{eqnarray*}\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left( a+h\right) ^{2}-a^{2}}{h}\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{2ah+h^{2}}{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( 2a+h\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}2a+\lim_{h\rightarrow 0+}h\quad \because \text{多項式関数の右側極限} \\
&=&2a+0\quad \because \text{定数関数および恒等関数の右側極限} \\
&=&2a
\end{eqnarray*}となるため\(f\)は点\(a\)において右側微分可能であり、そこでの右側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) =2a
\end{equation*}となります。また、\(f\)は点\(a\)以下の周辺の任意の点においても定義されているため、\(f\)が点\(a\)において左側微分可能か検討できます。具体的には、\begin{eqnarray*}\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left( a+h\right) ^{2}-a^{2}}{h}\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{2ah+h^{2}}{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\left( 2a+h\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}2a+\lim_{h\rightarrow 0-}h\quad \because \text{多項式関数の左側極限} \\
&=&2a+0\quad \because \text{定数関数および恒等関数の左側極限} \\
&=&2a
\end{eqnarray*}となるため\(f\)は点\(a\)において左側微分可能であり、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a-0\right) =2a
\end{equation*}となります。以上の議論より、\(f\)は任意の点\(a\in \mathbb{R} \)において片側微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) =f^{\prime }\left( a-0\right) =2a
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。

関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において片側微分可能であっても、右側微分係数と左側微分係数は一致するとは限りません。以下の例から明らかです。

例(片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
x & \left( if\ x\geq 0\right) \\
-x & \left( if\ x<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\in \mathbb{R} \)の周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)が点\(0\)において片側微分可能か検討可能です。\(h>0\)の場合、点\(0\)における平均変化率は、\begin{equation*}\frac{f\left( 0+h\right) -f\left( 0\right) }{h}=\frac{\left( 0+h\right) -0}{h}=1
\end{equation*}となるため、\(f\)の点\(0\)における右側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 0+0\right) =\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left( 0+h\right)
-f\left( 0\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}1=1
\end{equation*}となります。一方、\(h<0\)の場合、点\(0\)における平均変化率は、\begin{equation*}\frac{f\left( 0+h\right) -f\left( 0\right) }{h}=\frac{-\left( 0+h\right)
-\left( -0\right) }{h}=-1
\end{equation*}となるため、\(f\)の点\(0\)における左側微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 0-0\right) =\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( 0+h\right)
-f\left( 0\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}\left( -1\right) =-1
\end{equation*}となります。以上より、\(f\)は点\(0\)において片側微分可能である一方、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 0+0\right) \not=f^{\prime }\left( 0-0\right)
\end{equation*}となることが明らかになりました。

 

片側微分係数の一意性

繰り返しになりますが、関数\(f\)の点\(a\)における右側微分係数\(f^{\prime}\left( a+0\right) \)は、\(f\)の点\(a\)における平均変化率\(\frac{f\left(a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)を変数\(h\ \left(>0\right) \)に関する関数とみなした上での\(h\rightarrow 0+\)の場合の右側極限として定義されます。一般に、関数が右側収束する場合に右側極限は一意的に定まるため、関数の右側極限として定義される右側微分係数もまた一意的です。左側微分係数についても同様です。

命題(片側微分係数の一意性)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\in X\)において右側微分可能であるとき、右側微分係数\(f^{\prime }\left(a+0\right) \)は一意的に定まる。また、\(f\)が\(a\)において左側微分可能であるとき、左側微分係数\(f^{\prime }\left( a-0\right) \)は一意的に定まる。

 

片側導関数

繰り返しになりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において右側微分可能であることとは、\(f\)が点\(a\)以上の周辺の任意の点において定義されているとともに、点\(a\)における右側微分係数に相当する有限な極限\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) =\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h}\in \mathbb{R} \end{equation*}が存在することを意味します。しかも、先に示したように右側微分係数は常に1つの実数として定まります。以上を踏まえると、\(f\)が右側微分可能な点からなる集合を\(Y\subset X\)で表記するとき、それぞれの\(x\in Y\)に対して、そこでの右側微分係数\(f_{+}^{\prime }\left( x\right) =f^{\prime}\left( x+0\right) \in \mathbb{R} \)を値として定める関数\begin{equation*}f_{+}^{\prime }:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これを\(f\)の右側導関数(right-hand derivative)と呼びます。

一般に、関数\(f\)は定義域\(X\)上の任意の点において右側微分可能であるとは限りません。定義域\(X\)の中に関数\(f\)が右側微分可能ではない点が存在する場合、右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)の定義域\(Y\)は\(X\)の真部分集合になります。関数\(f\)の右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)は、もとの関数\(f\)が右側微分可能な点においてのみ定義される関数であるということです。一方、関数\(f\)の定義域\(X\)と右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)の定義域\(Y\)が一致する場合、すなわち、関数\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において右側微分可能である場合、\(f\)は\(X\)上で右側微分可能(right-hand differentiable on \(X\))であるとか右側微分可能である(right-hand differentiable)などと言います。

例(右側導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\vert x\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)以上の周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)が点\(a\)において右側微分可能であるか検討可能です。\(a<0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、点\(a\)以上の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において\(f\left( x\right) =-x\)となるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
a+h\right) -f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{-\left( a+h\right) -\left( -a\right) }{h}\quad \because f\left( x\right) =-x \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{-h}{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( -1\right) \\
&=&-1\quad \because \text{定数関数の右側極限}
\end{eqnarray*}となります。\(a\geq 0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、点\(a\)以上の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において\(f\left( x\right) =x\)となるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
a+h\right) -f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left( a+h\right) -a}{h}\quad \because
f\left( x\right) =x \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{h}{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}1 \\
&=&1\quad \because \text{定数関数の右側極限}
\end{eqnarray*}となります。したがって\(f\)の右側導関数は\(f_{+}^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{+}^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において左側微分可能であることとは、\(f\)が点\(a\)以下の周辺の任意の点において定義されているとともに、点\(a\)における左側微分係数に相当する有限な極限\begin{equation*}f^{\prime }\left( a-0\right) =\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h}\in \mathbb{R} \end{equation*}が存在することを意味します。しかも、先に示したように左側微分係数は常に1つの実数として定まります。以上を踏まえると、\(f\)が左側微分可能な点からなる集合を\(Y\subset X\)で表記するとき、それぞれの\(x\in Y\)に対して、そこでの左側微分係数\(f_{-}^{\prime }\left( x\right) =f^{\prime}\left( x-0\right) \in \mathbb{R} \)を値として定める関数\begin{equation*}f_{-}^{\prime }:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これを\(f\)の左側導関数(left-hand derivative)と呼びます。

一般に、関数\(f\)は定義域\(X\)上の任意の点において左側微分可能であるとは限りません。定義域\(X\)の中に関数\(f\)が左側微分可能ではない点が存在する場合、左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)の定義域\(Y\)は\(X\)の真部分集合になります。関数\(f\)の左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)は、もとの関数\(f\)が左側微分可能な点においてのみ定義される関数であるということです。一方、関数\(f\)の定義域\(X\)と左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)の定義域\(Y\)が一致する場合、すなわち、関数\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において左側微分可能である場合、\(f\)は\(X\)上で左側微分可能(left-hand differentiable on \(X\))であるとか左側微分可能である(left-hand differentiable)などと言います。

例(左側導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\vert x\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)以下の周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)が点\(a\)において左側微分可能であるか検討可能です。\(a\leq 0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、点\(a\)以下の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において\(f\left( x\right) =-x\)となるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a-0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
a+h\right) -f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{-\left( a+h\right) -\left( -a\right) }{h}\quad \because f\left( x\right) =-x \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\left( \frac{-h}{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\left( -1\right) \\
&=&-1\quad \because \text{定数関数の左側極限}
\end{eqnarray*}となります。\(a>0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、点\(a\)以下の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において\(f\left( x\right) =x\)となるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
a+h\right) -f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left( a+h\right) -a}{h}\quad \because
f\left( x\right) =x \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\left( \frac{h}{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}1 \\
&=&1\quad \because \text{定数関数の左側極限}
\end{eqnarray*}となります。したがって\(f\)の左側導関数は\(f_{-}^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{-}^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x\leq 0\right) \\
1 & \left( if\ x>0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

右側導関数と左側導関数を総称して片側導関数(one-sided derivative)と呼びます。

以下は導関数と右側導関数、そして左側導関数がいずれも一致する例です。

例(導関数と片側導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)と右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)と左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)はいずれも\(\mathbb{R} \)上に定義された関数であり、これらはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =f_{+}^{\prime }\left( x\right) =f_{-}^{\prime }\left(
x\right) =2x
\end{equation*}を満たします。これは導関数と右側導関数と左側導関数が一致する関数の例です。

関数が与えられたとき、その導関数、右側導関数、左側導関数は一致するとは限りません。

例(導関数と片側導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\vert x\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。導関数は\(f^{\prime }:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x>0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。右側導関数は\(f_{+}^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{+}^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。左側導関数は\(f_{-}^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{-}^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x\leq 0\right) \\
1 & \left( if\ x>0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。これは導関数と右側導関数と左側導関数がすべて異なる関数の例です。

 

演習問題

問題(片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =3-x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)と右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)および左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)をすべて求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1+\left\vert x\right\vert -x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)と右側導関数\(f_{+}^{\prime }\)および左側導関数\(f_{-}^{\prime }\)をすべて求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回は微分可能性と片側微分可能性の関係について解説します。

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

関数の片側微分

片側微分を用いた微分可能性の判定

関数が点において右側微分可能かつ左側微分可能であるとともに左右の片側微分係数が一致することは、その関数がその点において微分可能であることと必要十分であるとともに、その場合、微分係数は片側微分係数と一致します。

関数の微分

導関数

関数が微分可能な定義域上のそれぞれの点に対して、そこでの微分係数(もしくは片側微分係数)を像として定める関数を導関数と呼びます。

関数の片側極限

関数の片側極限

関数が点において収束することの定義において、変数がその点に近づいていく際の経路に関して特に制約は設けられていません。一方、変数が点に近づいていく際の経路を指定する形で関数の極限を定義することも可能であり、その場合の極限を片側極限と呼びます。

関数の片側極限

数列を用いた関数の片側収束判定

関数が片側から収束することを示すためにイプシロン・デルタ論法を用いるのは面倒です。数列を用いて片側収束可能性を判定する方法について解説します。

関数の無限極限

関数の片側無限極限

関数の変数がある点に右側もしくは左側から近づくときに、変数の値が無限大や無限小へ発散する場合には、それらの極限を片側無限極限と呼びます。

関数の片側極限

関数の片側連続性

関数が定義域上の点において右側極限を持つとともに、それがその点における関数の値と一致する場合、その関数はその点において右側連続であると言います。また、関数が定義域上の点において左側極限を持つとともに、それがその点における関数の値と一致する場合、その関数はその点において左側連続であると言います。

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関数の微分