定数関数であるための条件
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるとは、\(f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある特定の実数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}という形で表すことができることを意味します。つまり、定数関数とは入力する\(x\)の値によらず出力される値\(f\left( x\right) \)が常に一定であるような関数です。
場合によっては、導関数の形状を観察することにより、もとの関数が定数関数であることを判定できます。具体的には、関数\(f\)が区間\(I\)上に定義されており、定義域\(I\)上で連続であり、なおかつ定義域の内部\(I^{i}\)において微分可能であるものとします。その上で、導関数\(f^{\prime }\)が、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たす場合には、すなわち導関数がゼロのみを値としてとる定数関数である場合には、もとの関数\(f\)が定数関数になることが保証されます。証明ではラグランジュの平均値の定理を利用します。
\end{equation*}を満たす場合、\(f\)は\(I\)において定数関数である。
\end{equation*}を定める関数\(f-g:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。\(f\)と\(g\)はともに定義域\(I\)において連続であり、定義域の内部\(I^{i}\)において微分可能であり、導関数\(f^{\prime },g^{\prime }:I^{\prime }\rightarrow \mathbb{R} \)が、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) =g^{\prime }\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たすものとします。この場合、先の命題より関数\(f,g\)はともに定数関数になるため、それらの差として定義される関数\(f-g\)もまた定数関数になります。
関数の定義域が区間ではない場合、先の命題の主張は成り立つとは限りません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x\in \left[ 0,1\right] \right) \\
2 & \left( if\ x\in \left[ 2,3\right] \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。定義域\(\left[ 0,1\right] \cup \left[ 2,3\right] \)は区間ではありません。ただ、\(f\)は定義域において連続であり、定義域の内部において微分可能であり、任意の内点における微分係数は\(0\)であるため、定義域が区間であることを除き、先の命題が要求する条件をすべて満たしています。しかし、この関数\(f\)は明らかに定数関数ではありません。ちなみに、\(f\)の定義域を\(\left[ 0,1\right] \)に制限して得られる関数と、\(f\)の定義域を\(\left[ 2,3\right]\)に制限して得られる関数はともに定数関数です。
定数関数の微分係数はゼロであるため、先の命題の逆もまた明らかに成り立ちます。
\end{equation*}を満たす。
以上の2つの命題より、区間上に定義された関数が定数関数であることを以下のように特徴づけることができます。
\end{equation*}が成り立つことは、\(f\)が\(I\)において定数関数であるための必要十分条件である。
単調関数であるための条件
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が単調増加関数(単調非減少関数)であることとは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
\leq f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)が大きくなることはあっても小さくなることはないということです。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が単調減少関数(単調非増加関数)であることとは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
\geq f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)が小さくなることはあっても大きくなることはないということです。
先と同様、関数\(f\)は区間\(I\)上に定義されており、定義域\(I\)上で連続であり、なおかつ定義域の内部\(I^{i}\)において微分可能であるものとします。その上で、導関数\(f^{\prime }\)が、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) \geq 0
\end{equation*}を満たす場合には、すなわち導関数が非負の実数のみを値としてとる場合には、もとの関数\(f\)が単調増加であることが保証されます。逆に、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) \leq 0
\end{equation*}を満たす場合には、すなわち導関数が非正の実数のみを値としてとる場合には、もとの関数\(f\)が単調減少であることが保証されます。やはり証明ではラグランジュの平均値の定理を利用します。
\end{equation*}を満たすならば、\(f\)は\(I\)において単調増加関数であり、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) \leq 0
\end{equation*}を満たすならば、\(f\)は\(I\)において単調減少関数である。
関数の定義域が区間ではない場合、上の命題の主張は成り立つとは限りません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
x & \left( if\ x\in \left[ 0,1\right] \right) \\
0 & \left( if\ x\in \left[ 2,3\right] \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。定義域\(\left[ 0,1\right] \cup \left[ 2,3\right] \)は区間ではありません。ただ、\(f\)は定義域において連続であり、定義域の内部において微分可能であり、任意の内点における微分係数は非負であるため、定義域が区間であることを除き、先の命題が要求する条件をすべて満たしています。しかし、この関数\(f\)は単調増加関数ではありません。ちなみに、\(f\)の定義域を\(\left[ 0,1\right] \)に制限して得られる関数と、\(f\)の定義域を\(\left[ 2,3\right]\)に制限して得られる関数はともに単調増加関数です。
先の命題の逆もまた成立します。
\end{equation*}を満たす。また、\(f\)が\(I\)において単調減少関数であるならば、導関数\(f^{\prime }\)は、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) \leq 0
\end{equation*}を満たす。
以上の2つの命題より、区間上に定義された関数が単調関数であることを以下のように特徴づけることができます。
\end{equation*}が成り立つことは、\(f\)が\(I\)において単調増加関数であるための必要十分条件である。また、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) \leq 0
\end{equation*}が成り立つことは、\(f\)が\(I\)において単調減少関数であるための必要十分条件である。
狭義単調関数であるための条件
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義単調増加関数であることとは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
<f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)は大きくなるということです。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義単調減少関数であることとは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
>f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)は小さくなるということです。
先と同様、関数\(f\)は区間\(I\)上に定義されており、定義域\(I\)上で連続であり、なおかつ定義域の内部\(I^{i}\)において微分可能であるものとします。その上で、導関数\(f^{\prime }\)が、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) >0
\end{equation*}を満たす場合には、すなわち導関数が正の実数のみを値としてとる場合には、もとの関数\(f\)が狭義単調増加であることが保証されます。逆に、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) <0
\end{equation*}を満たす場合には、すなわち導関数が負の実数のみを値としてとる場合には、もとの関数\(f\)が狭義単調減少であることが保証されます。証明は先の命題と同様です。
\end{equation*}を満たすならば、\(f\)は\(I\)において狭義単調増加関数であり、\begin{equation*}\forall x\in I^{i}:f^{\prime }\left( x\right) <0
\end{equation*}を満たすならば、\(f\)は\(I\)において狭義単調減少関数である。
関数の定義域が区間ではない場合、上の命題の主張は成り立つとは限りません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
x+5 & \left( if\ x\in \left[ 0,1\right] \right) \\
x & \left( if\ x\in \left[ 2,3\right] \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。定義域\(\left[ 0,1\right] \cup \left[ 2,3\right] \)は区間ではありません。ただ、\(f\)は定義域において連続であり、定義域の内部において微分可能であり、任意の内点における微分係数は正であるため、定義域が区間であることを除き、先の命題が要求する条件をすべて満たしています。しかし、この関数\(f\)は狭義単調増加関数ではありません。ちなみに、\(f\)の定義域を\(\left[ 0,1\right] \)に制限して得られる関数と、\(f\)の定義域を\(\left[ 2,3\right] \)に制限して得られる関数はともに狭義単調増加関数です。
定数関数や単調関数の場合とは異なり、先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、狭義単調増加関数の導関数が非正の値をとる状況や、狭義単調減少関数の導関数が非負の値をとる状況が起こり得るということです。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は\(\mathbb{R} \)において狭義単調増加関数です。加えて、\(f\)は多項式関数であるため定義域\(\mathbb{R} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =3x^{2}
\end{equation*}を定めます。このとき、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( 0\right) =0
\end{equation*}となりますが、これは正ではありません。したがって、狭義単調増加関数の導関数が非正の値をとり得ることが明らかになりました。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は定義域上において狭義の単調増加関数であることを示してください。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が狭義単調増加関数になるような定義域\(\mathbb{R} \)の部分集合を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が狭義単調増加関数になるような定義域\(\mathbb{R} \)の部分集合を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が狭義単調増加関数になるような定義域\(\mathbb{R} \)の部分集合を特定してください。
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。
次回はコーシーの平均値の定理について学びます。
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