定数関数
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの実数\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値が、定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}という形で表すことができる場合、\(f\)を定数関数(constant function)と呼びます。つまり、定数関数とは入力する\(x\)の値によらず出力される値\(f\left( x\right) \)が常に一定であるような関数です。
\end{equation*}である場合、この\(f\)は定数関数です。
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x\leq 3\right) \\
2 & \left( if\ x>3\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。この関数\(f\)は定数関数ではありませんが、\(f\)の定義域を縮小して得られる関数\begin{eqnarray*}f &:&(-\infty ,3]\rightarrow \mathbb{R} \\
f &:&\left( 3,+\infty \right) \rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}はともに定数関数です。
f:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理します。そのレストランは食べ放題であり、何品食べても支払い価格は\(3000\)円で一定であるならば、この関数\(f\)は定数関数であり、任意の品数\(n\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{equation*}f\left( n\right) =3000
\end{equation*}を返します。
x:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理します。ある物体を観察したところ、任意の時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}x\left( t\right) =10
\end{equation*}でした。以上の事実は、この物体は地点\(10\)に留まったまま動かないことを意味します。
v:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理します。ある物体を観察したところ、任意の時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}v\left( t\right) =10
\end{equation*}でした。以上の事実は、この物体は常に瞬間速度\(10\)で等速直線運動していることを意味します。
定数関数のグラフ
定数関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在し、\(f\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}を定めるということです。このとき、\(f\)のグラフは、\begin{eqnarray*}G\left( f\right) &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{関数のグラフの定義} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \ |\ y=c\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \left( x,c\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \times \left\{ c\right\}
\end{eqnarray*}となりますが、これは平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上において点\(\left( 0,c\right) \)を通過する水平線です(下図)。
定数関数との合成関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。加えて、定数関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(g\)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、\begin{equation*}g\left( x\right) =c
\end{equation*}です。これらの関数の間には以下の関係\begin{equation*}
f\left( X\right) \subset \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つため合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right) \quad \because
\text{合成関数の定義} \\
&=&c\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、任意の関数\(f\)と定数関数\(g\)の合成関数\(g\circ f\)は定数関数である\(g\)と一致します。
g\left( x\right) &=&1
\end{eqnarray*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&1\quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めるため、\begin{equation*}
g\circ f=g
\end{equation*}が成り立ちます。
定数関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}です。加えて、関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。これらの関数の間に以下の関係\begin{equation*}f\left( \mathbb{R} \right) \subset X
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right) \quad \because
\text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( c\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めますが、これは定数です。つまり、定数関数\(f\)と任意の関数\(g\)の合成関数\(g\circ f\)は定数関数になります。
g\left( x\right) &=&2x+1
\end{eqnarray*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( 1\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&2\cdot 1+1\quad \because g\text{の定義} \\
&=&3
\end{eqnarray*}を定めるため、\(g\circ f\)は定数関数です。ただしこれは\(f\)とは異なる定数関数です。
定数関数の逆関数
定数関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在し、\(f\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}を定めるということです。2つの異なる実数\(x,x^{\prime }\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、\(f\)の定義より、\begin{equation*}f\left( x\right) =f\left( x^{\prime }\right) =c
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は単射ではありません。したがって定数関数\(f\)は逆関数を持ちません。
定数関数\(f\)の定義域が1点集合である場合には、例外的に逆関数が存在します。
\end{equation*}を定めるものとします。この場合、\(f\)は明らかに単射です。\(f\)の値域は、\begin{equation*}f\left( \left\{ 1\right\} \right) =\left\{ 2\right\}
\end{equation*}であるため逆関数\(f^{-1}:\left\{ 2\right\} \rightarrow \left\{ 1\right\} \)が存在し、これは、\begin{equation*}f^{-1}\left( 2\right) =1
\end{equation*}を定めます。定数関数の定義域が1点集合である場合には、上のような逆関数が存在します。
演習問題
\end{equation*}を定めるということです。始集合の部分集合\(X\subset \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、\(f\)による像\(f\left( X\right) \)を求めてください。また、\(f\)の値域\(R\left( f\right) \)を求めてください。
\end{equation*}を定めるということです。終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)を求めてください。また、終集合の部分集合\(Y\subset \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( Y\right) \)を求めてください。
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